《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

お金持ち高校が舞台だけど、最終巻のエピソードは再利用と再活用の エコ仕様。

桜蘭高校ホスト部(クラブ) 18 (花とゆめコミックス)
葉鳥 ビスコ(はとり びすこ)
桜蘭高校ホスト部(おうらんこうこうほすとくらぶ)
第18巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

母との再会後、ハルヒに告白された環。想いを確かめ合った二人の初デートは!? そんな中、ボストン留学の話に迷うハルヒ。環とホスト部員たちは? 更にホスト部主催の仮面舞踏会で、ハルヒは周囲に秘密を打ち明けることに! そして最後は驚愕の…☆ 感動&爆笑必至の最終巻!特別編も収録!!

簡潔完結感想文

  • 告白。笑いながら泣ける稀有な場面。そして復活のホスト部。原点に戻って第三音楽室。
  • デート回。完璧な1日を目指すはずが過剰演出でドン引き。1日の終わりに まさかの展開。
  • 最終回。『1巻』で披露しなかったダンスも、ついたままの嘘も全放出。まさかのオチ!

活、のちに休業。そして再開予定、と開店時間が不定期なホスト部の 最終18巻。

『18巻』全体がボーナストラックのような位置付けです。

『17巻』のラストで告白の言葉を伝えたハルヒ
その返答や結果など読者には自明であって、極端なことを言えば あの言葉で物語を締めくくっても良いぐらいだ。

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2人を阻害するモノは もう何もなく、空は ただ青く広がっている。

ハルヒが自分から想いを伝えるのは、彼女らしい強さだと思います。
最後に受け身のヒロインにならなくて良かったなぁ、と安堵した。

それだけでも満足だけど、『17巻』告白の続きが読めて良かったと心底 思うのが『18巻』。
まさか告白の場面で笑いが起きようとは思わなかった…。

ハルヒと環(たまき)らしい他の誰にも真似できない、
泣いて笑える、心が温かくなるシーンになりました。

そして そこからはボーナストラックに相応しく、
どこを切り取っても過剰なほどの読者サービスが展開される。

こんなに幸福感に包まれた話は他にないのではないかと思うぐらい。
どの人も、あぁ好きだなぁと思わせてくれる漫画であった。

遂に環が手に入れた本邸での穏やかな生活などは涙なくしては読めない。
色々な物を背負わされた環が、相変わらず バカやっている姿が本当に笑える。
環という人格があったからこそのラストである。

そして読者サービスの描き下ろし「ちょこっと未来予想」はホスト部員の その後の話が満載。
『あくまで「if」な感じ』らしいので正史としては扱えないが、やはり隅々まで読んでしまう。

隅々まで配慮の行き届いたホスト部のサービスを ご堪能下さい。


う、環一家の問題が解決したことで、正式にホスト部が復活する。

毎度おなじみ第三音楽室の扉を開けますと、
コスプレと、うるさいほど(笑)細かい絵と文字量が並んでいる。

この目に優しくない感じで、帰ってきたな、と思うのは私もホスト部の常連になった証か。


両想いになって初めてのホスト部の開店。
女性をもてなす環を見ても、彼女であるはずのハルヒは嫉妬の感情すら湧かないみたい。
それどころか環は毎日 忙しいみたいで交際の事実すら怪しい事態だそうで…。

しかしハルヒなりに戻ってきた日常を、満たされた心を楽しんでいた様子。

そういえばハルヒは以前に告白された光(ひかる)とも気軽に話せる間柄らしい。

環と両想いになったことで、改めて光が傷つく場面はあったが、
ハルヒが光を気遣ったり、変に遠慮する場面はありませんでしたね。

部内の雰囲気が悪くなって欲しい訳ではありませんが、
特定の人と交際し始めたサークルの姫としての立ち振る舞いの難しさを少しは描いて欲しかった。
あんまりにも綺麗事にし過ぎている気がする。


は環は初デートでハルヒを もてなすプランを練りに練りすぎてドロドロの液化させていた。

そのプランがようやくまとまった頃、ハルヒの方からデートのお誘いがあった…。

初デート回である。

『18巻』の1話目はホスト部通常営業など、所々に『1巻』の第1話を連想させる箇所がある。
中でも、ハルヒと環が一緒に水の中に入って濡れるのは、1話を念頭に置いた構成だろう。

あの時の自己犠牲を顧みず、自分のために身体を張ってくれた環が今、恋人として目の前にいる。
長い長い時間をかけて育ててきた恋情が今、鮮明な輪郭を持っている。

そして あのハルヒがこんなにも自分の胸中を詳細に語るなんて…、と彼女の変化にまた涙が出そうである。
ハルヒと環が、それも交際描写が中心となる話が読めるなんて、それだけで胸がいっぱいです。

この2人は力関係が変化し続けて面白いですね。
ハルヒの方は照れたり冷めたり感情の変動が忙しい。

それでも根本に幸福を感じられるから、こちらも幸せである。


ート回といっても、環とのデートですから笑いが満載。
環本人に笑わせるつもりがなくても笑いが起きてしまうのは、彼の人徳ゆえか 非常識さが原因か。

このデート回は尾行者・監視役であり、邪魔者であり、
そして環の心強い味方でもあるホスト部員男子生徒たちが良い味を出しています。

普段はかなり非常識な彼らが、ハルヒのために常識側に回るのが面白い。
人の立ち位置がグルグルと変わるのもホスト部の魅力かもしれない。

今回は遊園地デートで、学校外ということもあり他校の「ヅカ部」も久々にして最後の登場。

彼女たちの登場が尾行者たちがハルヒたちの前に姿を出すキッカケになる。

そしてハルヒが女性だと知る数少ない者の助言として、
環に恋をしたハルヒが「乙女」だと周囲が気づくのも時間の問題と、ヅカ部は忠告する。

話の繋げ方が上手いですね。
ハルヒの性別が最終回のメインの議題になるかと思いきや、
デートの最後で訪れた亡きハルヒの母の墓前で もっと大きな事件が起こる。

めぞん一刻』を例に出すまでもなく、墓前で愛を告白するのは感動せざるを得ませんね。
最近読んだ漫画では咲坂伊緒さん『アオハライド』も良い場面だったなぁ。

だが、ハルヒの母への交際の報告後、環は自分が知っているハルヒの秘密を告白する…。
まさか、まさかの もう一波乱である。

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きっと人は墓前に向かい合う時、嘘のない言葉しか紡げない仕組みになっている。

これで完璧に両家の両親への顔合わせが終わりましたね。
「結婚フラグ」は完全に成立しました。

作者の中ではハルヒと環は結婚する未来らしい。
「if」ではあるが未来予想では両家の御挨拶も済んで顔合わせもしている。
また環がハルヒの家で彼女の父に御挨拶をしに行く直前の場面もある。
そして両家の笑いものにされる運命である…(笑)


終話はハルヒアメリカ留学の話から始まる。

いかにも少女漫画的な留学による別離を最終話に持ってきましたね。
ただし別れや引き留める空港ネタは『17巻』で使用してしまったので封印されます。

だからなのか環はすんなりとハルヒを送り出すことを決める。
それは淡白なほどに。
ハルヒとの残された日本での日々も、
環がやっと手にした家族(祖母)との時間に費やす始末。
あまりの優先順位の低さにハルヒは寂しさを覚えるが…。


学に際して計画されるホスト部主催によるハルヒの送別パーティー

そこでハルヒは、自分の本当の性別を公表することを決める。
これは性別詐称漫画では避けられない宿命ですね。

でも、いくら須王家問題(特にハルヒを排除しようとする祖母)が片付いたとはいえ、
名門私立高校の学年主席が性別を偽っていたことを公表すれば、
ハルヒには重い処分が下されるのではないか?とも思う。
環はそれを案じてホスト部を自主退部するほどだったのに。

祖母や生徒たちが黙っていても、事情を知らない親御さんは抗議の声を上げるだろう。
なんだか、そこら辺が都合よく黙殺されているのが気になる(が、最終回なのどうでもいい)。


このパーティーで『1巻』2話で習得したダンスを最終回で披露するハルヒ
しっかり原点に戻っているところに好感が持てます。
習得したものは余さず使うという お金持ち高校とは真逆の精神が輝いている。

メインイベントはハルヒの「女装」披露。

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噂好きの女子生徒たちには何でもお見通し。…かと思いきや、多様性に寛大なだけであった。

ここは『17巻』で環を空港に到着させようと、
彼を慕う生徒たちで学校内が一丸となったのと同じ構図ですね。
ハルヒホスト部での活動の集大成と位置付けられます。

そして、この場面は良い意味で裏切られる。
珍しくハルヒが泣いているのに、実は言葉はすれ違っていたのだ。

環の家庭の事情は、主にホスト部の客の皆様は知っていたから、
ハルヒ側の事情も知っているかと思いきや、環と違って、
貧乏なハルヒは詮索しないという不可侵条約が女生徒の中で結ばれていたらしい。

高貴な人の下賤の者への優しさですね。

一度 実証された問題なので読者も そう決めつけてしまったが、
これは作者が周到に用意していたミスリーディング。
最後まで意外な展開を用意してくれて ありがとうございます。

女子生徒たちの中では、環とハルヒ同性カップルとして扱われているらしい。
これも初期の頃によく見られたホモオチですね。


男装を告白して受け入れられるけど、本当は皆よく分かってなかった、というオチは
池山田剛さん『うわさの翠くん!!』でも見たオチですね。

これは性別詐称を物語の最後の問題にしないままでいられて、
しかも詐称した罪を本人に背負わせない便利な方法なのかもしれませんね。

少なくともハルヒは後ろめたさなく旅立っていますから。


してまさかのオチは続く。
しかも2連続で。
これはホスト部らしい予想外で、予想以上の喜びをもたらすオチである。

これによってネバーエンディングな話となり、ホスト部は永遠となる…。
夢のつづきをまた見させてくれるような終わり方で素敵である。

まぁ、冷静に考えると1年間の留学期間中だけの延長戦なんですけどね。

本編としては1年後にホスト部の復活の可能性は残されているけれど、
ラストの「特別編」では、常陸院(ひたちいん)の双子が付属の大学には進まないことを宣言。

桜蘭高校ホスト部は、全員の帰国後も半年間限定の復活でしかないのかな。
ホスト部はハニー&モリ先輩たちの下の世代に託されれば、それでいいかな。
だって書名は『桜蘭高校ホスト部』だもの。
部員は誰でもOKなのです。


末の「特別編」は留学先以外の海外でのホスト部員たちの旅行記

一応、鏡夜の問題を取り扱ってはいますが、
『12巻』の鏡夜のフランス研修旅行 以上に観光ガイドブック化している内容。
留学先のボストンは下宿先の部屋の中の描写だけだったが、
こちらは これでもか、というぐらいの建築物や風景の連続。

スペインも取材旅行に行ったのでしょうか。


観光案内も多いが、内容はホスト部の海外活動で間違いない。

今まで もてなしてきたのは桜蘭学院の生徒たちだけだったが(下は猫澤(ねこざわ)先輩の妹 3歳まで)
今回は学校外の、そして初めてのホスト部員の誰よりも年上女性へのサービス。
まぁ、この奈々子(ななこ)さん本人は決してホスト部の活動とか、彼らによる もてなしとは思っていないだろうけど。

この奈々子さんが鏡夜先輩の運命の人かと思いきや、鳳(おおとり)家的に利用価値が低いのでなさそうですね。

となると「if」を除けば、ホスト部員で恋人が出来たのはハニー先輩とハルヒたちだけだ。

家柄的に難しいのもあるだろうが、ホスト部の割に淋しい確率だなぁ。
少女漫画にありがちな、裏では適当に遊んでいる描写もない純真な子たちである。
案外、学校内アイドルであって、外に出たら大したことないのかも…??


ラストの環の卒倒には笑った。
最後まで笑わせてくれてありがとう、環。

ハルヒと環は お互いにドキドキした関係のまま、ずっと一緒にいるんでしょうね。お幸せに!

桜蘭高校ホスト部(クラブ) 18 (花とゆめCOMICS)

桜蘭高校ホスト部(クラブ) 18 (花とゆめCOMICS)

今回 自分が割った窓ガラス代を弁償できるまで ホスト部で働き続けるよ☆

桜蘭高校ホスト部(クラブ) 17 (花とゆめコミックス)
葉鳥 ビスコ(はとり びすこ)
桜蘭高校ホスト部(おうらんこうこうほすとくらぶ)
第17巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

環の退部騒動を受けホスト部は解散! 祖母との関係修復に環は悪戦苦闘する。彼の真意を察したハルヒは、環と出会う前の自分に戻ると宣言!! 一方、環を信じ待つ部員たちは、鏡夜を中心に理事長の裏計画を突き止めて!? 悩める環のために動き出すホスト部——緊迫!!

簡潔完結感想文

  • 冷却期間。環の行く道と方策を理解したハルヒは彼と出会う前まで自分をリセット。
  • お家 騒動。取締役会での謀反。土下座しろ! とは言わないけど退場させる親子喧嘩。
  • 誰かのために怒る、誰かの想いを伝える、動く、その原動力はその人が好きだから。

ボを割った『1巻』から、窓ガラスを割るまでを描く漫画の 17巻。

ツボはハルヒの秘められた魅力、窓ガラスは境界を越えるという意味でしょうか。

色々 割ることで世界を広げる この漫画。
まだ最終『18巻』はありますが、物語としては ほぼ大団円を迎えます。

少々 スケールを大きくし過ぎた箇所もありますが、
環(たまき)の行動だけはブレずに、彼の信念を通した行動が描かれている。

環は最重要人物なのだし、漫画としては仕方がないが、
結局、連載初期に感じた「環だけが正しい世界を作る装置」という違和感が再燃する。

その為に今回、須王一族に間違った行動を取らせているように思える。
特に環の父親は大事な物を見落とすほど、根本の性格を変えてしまった気がする。


鏡夜(きょうや)が環の父に放った「あなたが母親への復讐の為に環を利用した」という
言葉を借りるならば、「作者が最終回っぽい展開の為に環の家庭環境を利用した」ように思う。

広げ過ぎた大風呂敷の弥縫策としては悪くはないが、恋の障害のための作為であることは否めない。

本来、環自身の問題とハルヒとの恋愛は関係のない問題なのに、
どれもこれも環の心の問題として扱って、恋愛問題を棚上げしたのは疑問である。

そして大人側の理論を子供である純真な環が打ち壊していく、という構図を見せたかったのだろうが、
理論武装するために大人側の事情を複雑化しすぎて、硬質な企業小説みたいになってしまった。

取締役会でのクーデターの場面は、
土下座してください、やれーーッ!! と言い出しかねない雰囲気だった。

『16巻』の感想でも書いたが、ハルヒの性別詐称を最終議題にしないためだと思うが、
物語の後半から持ち込まれた恋愛要素と環の内向世界、そして家族背景に切り込んだ展開は
色々と欲張りすぎたかな、と思わざるを得ない。

これは物語が破綻しているとか駄作という意味ではない。
ただただ 環に全部を背負わせすぎた無理が祟っただけである。


回、一身上の都合によりホスト部を自主退部し、独りで殻に閉じこもろうとする環。
彼を説得するも、冷たく拒絶されたハルヒは、環の祖母に直接 対話するために須王の本社に乗り込んだ。

だが、それが引き金となり、ホスト部は無期限活動停止を命じられてしまう。

このハルヒの行動も、環の父親と同じく本来の性格との不一致を感じる点。

活動停止というゴールがあってのハルヒの暴走がスタートするんだろうけど、
まことにもって ハルヒらしくない。

ハルヒは恋や、他人の言動に我を忘れるタイプでもないと思うのだが。
いくら その場にホスト部のブレインの鏡夜がいなかったとはいえ、
ハルヒが頭脳戦を繰り広げないでアクティブに、過激に行動するのは無理がある。
ここは光にでも暴走させれば良かったのではないか。

そして翌日、学校を休んで思索を巡らせているハルヒが本来の姿なのではないかと思う。

問題から適切な距離を置くことが出来たハルヒは、環の思考を正確にトレースすることが出来た。

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知り合って1年ちょっと(実質4年以上)、学年主席のハルヒは好きな人の考えていることぐらい分かるのです。

そうしてハルヒは全てを「リセット」する。
環と会う前の、ホスト部員ではない『1巻』登場時の 藤岡ハルヒに戻り学校生活を送るハルヒ

今は雌伏の時として、敢えて違う道を行く2人。
だけど思いは同じ2人。
この巻の中で私が一番好きな感動的な場面です。

というか、ハルヒの言動によるとハルヒホスト部に入学してからは
あれでも一応、本人なりに身だしなみに気を付けて学校に登校していたんですね。


回、どんな立場であっても物語の中心に居続けるのは環の祖母である。

権力を一手に振りかざしている祖母には数々の疑問が湧きあがる。

まずは環の祖母が、ハルヒを排除しきれない弁護士の高坂(こうさか)に、
「ここで失敗して 弁護士資格を失いたくないでしょう…?」という場面。

これの意味が分からない。
今回の失敗が、実績と引き換えに高額報酬を要求する弁護士としての面目を失う、というのは分かるが、
弁護士資格を失う、というのは意味が通らないのではないか。
いくら祖母でも資格を個人で どうにかできるものではないだろう。


…というか高坂弁護士って物語に必要だったのでしょうか。
ハルヒの両親(特に父親を昔から)を知っていて、敵でありながら味方というスパイのようなポジション。
環の父もそんな彼女の境遇を利用して彼女をハルヒへの防波堤として利用していた。

でも、いなくても話は通用するような気がしてならない…。
ハルヒの目標である弁護士といっても彼女が目標とするようなタイプじゃないし。
抑止力の面でも感情の面でも上手く作用していなかったなぁ。


次に、祖母の須王(すおう)グループを「最後まで見届け」たかった、という希望は何を意味するのかが分からない。

このまま会長として生涯現役を目指した言葉なのか、
解任という形ではなく自分の納得がいくまで会長職を全うしたかったのか。

彼女の執念と才覚は確かなものだが、
いずれにせよ遅かれ早かれ不満分子にクーデターを起こされていたでしょう。

そして夫を亡くして30年余(推測)、トップが交代しない企業はあまり健全ではない。
また巨大グループ企業の同族経営自体が時代にそぐわない気もする。

蘭学院のクラス分けの基準である「家柄 + 成績」の家柄の部分が、
時代の変化と合わなくなっているのかもしれません。

今なら外資投資ファンドに経営権を奪われる危機が描かれたかもしれませんね。
そうしたら須王の3代が即刻 和解して 手を取り合ったかもしれません。
もうジャンルが完全に経済小説ですが。


母はともかく、父は環の咬ませ犬に成り果てましたね。
環の正しさを貫き通すために、父が犠牲になった気がする。

これまでの経緯からすれば父にとって妻と子は第一優先事項であり、
母へのコンプレックスで目が曇ったりしないと思うのだけど。

ここも暴走したハルヒと同じく性格の破綻を感じるところです。

そんな誤った手段を使った環の父と、ホスト部の対面で、一番 激昂しているのが鏡夜だというのが良いですね。
『17巻』後半のシーンといい、やっぱり鏡夜は単純に環の親友なのです。

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画竜点睛を欠く。自分の家族を再集結させるはずの計画が再破綻を招いてしまった。

結局、理想論や正義感が勝つのは少女漫画だからか。
それとも環たち一族が大好きな時代劇の日本人的な人情だろうか。

ただ今回は環の人道主義が、祖母や父の現実路線より勝ったが、
環もいつか厳しい経営者としての視点を持つようになるのだろうか。

このままでは環は、自分の子供がどんなに経営の才能がなかったとしても
子供に厳しく接することが出来ない気がするなぁ。

環に追放されたのは『1巻』1話の綾小路(あやのこうじ)さんぐらいか。
彼女は今回の ほぼ全キャラ登場回でも出てきてませんよね。
ハルヒに悪意を持った者は完全に排除か。ガクブル。


ハルヒは自分が守りたい世界を守ってきた弁護士の母と同じ道を行けばいいが、
環は大局的な視点を持つことが出来るのでのか疑問符が付く。

須王グループの維持や発展という点では非情になれなくて赤字部門を切り捨てられなそうだ。
一方で、運には恵まれていそうなので思わぬ分野で利益を上げそうですが。


書を恋愛モノとして見た時は非常にオーソドックスな少女漫画である。

お互い高校生にして初めての恋愛感情を抱く初心な2人だし、
ハプニングキスとか三角関係とか古典的な場面が多い。

そして少女漫画のクライマックスの場面が空港なのも王道展開だろう。
といっても空港で呼び止めるのはヒロインではなく、来日していた環の母なのだけど。

この母との再会場面では、環のホスト部員としての活動が身を結ぶ。
ホスト部の活動が桜蘭学院の生徒たちを繋いでいく。

自然な流れでこれまでの登場人物を再登場させられているし、
物語の核であった「ホスト部」が再び主役に返り出た印象を強く残す。

やっと らしさが戻ってきましたね。
須王グループとか どうでもいいんで、学校内の描写に終始して欲しかったものだ。

そしてホスト部員がバトンを繋ぐように環たちを輸送していく様子はテンポも良く映画のようである。

その輸送では3年生コンビ、常陸院(ひたちいん)の双子、鏡夜と、物語の重要度順に脱落していく(笑)

これは主人公とダンスを踊った順に脱落していった(と私は考える)『金色のコルダ』のように、
ハルヒの心の最終順位を表しているのかと考えたが、
光を差し置いて鏡夜が2位に躍り出るのは不自然なので、素直に環の友情度と考えるべきか。


巻末のあとがきで 新薬のことや企業のこと、輸送ルートを入念に考えた様子が うかがえるが、
余り理論的になり過ぎるよりは、ホスト部らしいバカバカしい笑える展開も欲しかったなぁ。

物語の後半は動きよりも言葉で説明している部分が多い。
それが初期の勢いを感じさせない一因でもあるのではないか。

作者も変に真面目にならず、環のような純真さと幼稚さで物語を楽しめば よかったのに(他人事)。


そして少女漫画的 結婚フラグで言えば、
環はハルヒの父と母の遺影に挨拶済みで、
今回、ハルヒが環の母親にも面識が出来たということで両家への御挨拶が終了した。

さぁ、勢い余って環が本当に結婚を口走るのか、
最終巻がどうなるのか、今から楽しみです。

桜蘭高校ホスト部 17 (花とゆめCOMICS)

桜蘭高校ホスト部 17 (花とゆめCOMICS)