《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

数字でみる少女漫画分析 ご案内。

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少女漫画分析とは

《基本指針》
・少女漫画で単行本で全5冊以上、または全800ページ以上の漫画が対象です。
・基本的に恋愛漫画を中心に。異世界における作品なども恋愛要素が多ければ対象です。
「告白」「交際」「キス」「性行為」の4要素を数値化しています。

グラフ数字はコチラのページで まとめています。
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正体不明の謎の男として 好きな子と歩くランウェイ。そこは性別も気持ちも偽りのない一本道。

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福山 リョウコ(ふくやま りょうこ)
悩殺ジャンキー(ノーサツジャンキー)
第03巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★(6点)
 

モデル事務所「boom!」に所属するナカとウミ。「ジャンク」契約延長に成功した2人は、同じ会社のブランド「ノックス」のパーティに招待された。しかし、そこでナカが、デザイナーにドリンクをぶっ掛けてしまい大騒動に…!?

簡潔完結感想文

  • 自分のためにも相手のためにも仕事仲間としてナカと接する海だったが、ナカの気持ちは…。
  • トラブルを通じて仕事を獲得するナカの次の仕事は在学中の学園祭。極度に緊張するナカ。
  • 学園祭。男性のペアが失踪し、ナカがランウェイを一人歩く状況に。その時に現れたのは…。

実は本書はカメラマン・堤 郁依(つつみ いくえ)を中心に回っている疑惑の3巻。
『3巻』では堤の関係者がぞろぞろ登場します。

話題の中心は『2巻』の海(うみ)に続いて、ナカが自分の中にある気持ちに戸惑うという内容。
海 → ナカ の順で想いに気づくのが、このカップルらしいですね。

客観的には晴れて両想いな訳ですが、とそうは簡単に話は転がらない。
この海 → ナカ の「→」の間に、ウミは一つの覚悟を決めてしまっていたから。

その覚悟は、ナカとは仕事仲間として全力で接すること。

自分のナカへの想いは、女性モデルとして働く間にも顔を出し、
自分を女性から一人の男性にしてしまう。
ウミとしての仕事を完璧にこなすために、海という男の気持ちは黙殺する。
それが海の覚悟。

そしてそれはナカのためでもある。
『2巻』の間ずっと問われていた、ナカはウミと一緒でなければ仕事が出来ないのか、
ナカの躍進を拒む最大の理由はウミへの依存なのではないか、
という問いのウミとしての答えでもある。

お互いの前へ飛ぶために、身軽になるべき、
だから海の方は「男として」ナカに触れないことを決めた。

これは、仕事かプライベートかという二者択一に陥りがちな問題に似ていますね。
自分の調整力を高めるのではなく、どちらかに専念しないと上手くいかないと思い込む。

更には思春期ならではの相手を想うからこその一方的な思い込みでもあります。
ウミ・ナカはまだ自分たちが両思いとは知らない状態ですが、
少女漫画では交際中でも勝手に相手の気持ちを慮(おもんぱか)って、
話し合うことなく相手の進路を決めてしまったり、
時には相手の幸せのためと身を引いて、別れを選んでしまったりしますよね。

今回も海は、ナカの方から募る想いに気づかないまま、
「仕事」というA.T.フィールドで自他の境界線を明確に示す。

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「仕事」を盾にしてナカと接点を持つ海と、「仕事」という言葉が壁に感じるナカ。
そんな微妙な関係性が続く中、ナカ独りでの仕事が舞い込む。
それがデザイナーの母校であり、海ナカが在学している学校の学園祭でのショーモデル。

オーディションだと連戦連敗のナカが仕事を取れるのは、
関係者にコップに入った液体をかける時だけ(笑)
ナカは男に水をかけると、その男から気に入られる秘薬でも混入しているのでしょうか。

言葉遊びとしては、男に冷や水を浴びせていますが、物語には火に油を注いでいる感じです。

慣れないウォーキングに悪戦苦闘するナカ。
更にショーのトリを飾る対決相手・杏珠(あず)にウミより可愛いと褒められて、なぜか逆上する。
ウミの名誉を守るために対決を制し、発言を撤回させようと燃える。
これが本当は堤のお気に入りとなったナカのことを快く思わない相手に火に油を注ぐ結果になる…。

初登場の杏珠は本書では珍しく育たなかったキャラですかね。
喋り言葉にカタカナが混じって、読みにくいのが痛手だったのか、
モデルとしての確かな実力よりも親のコネを使っているという悪事が前面に出てしまったからなのか、
癖のある登場人物たちの中で、数少ない仕事に関して直接的な妨害を加えた人だからか、
どうにもこの後の出番や活躍に恵まれないキャラでしたね。

可愛そうなことに最終『16巻』の表紙からも外れています。
本編の中では何とか仕事仲間の一員として認められてますが…。
ですので、私が勝手に命名した、『悩殺・八犬伝』の8人の仲間には入っておりません。


『3巻』で登場する8人のうち4人目の仲間はメンズモデルの秋山 千洋(あきやま ちひろ)。

初登場時には、後で仲間になるとは とても思わない地味な役割。
本書初のメンズモデルの割に、目が大きすぎて、体も華奢で小さく見えメンズモデルには見えません。
カメラマンの堤の方が表情も体型も雰囲気もモデルっぽい。

こういう一般人とモデルの差がきっちり描けていないところは、ずっと気になっているところ。

同じ初登場の杏珠に比べて、千洋は後半にとんでもなく優遇されています。
どちらかというと杏珠の方が『悩殺』世界にはマッチしているような気がするが、
こればかりは作者も制御不能の領域なんでしょうね。

千洋登場前に出てきた、こんな人いたっけ?というのが堤の幼なじみの板倉(いたくら)。
最初で最後の登場でしょうか。
すっかり千洋(ちひろ)に堤の相方のポジションを奪われましたね。
っていうか役割被るのなら、千洋に一任すれば良かったのに、と思わないでもない。


ショー本番では杏珠の悪巧みもあり、ナカにピンチが訪れる。
相手役を務めるはずだった千洋が現れず、
ショーのトリを一人で歩くよう要求されてしまう。

そんな高いハードルに身を固くして動けなくなってしまったナカの前に現れたのは謎の男。

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窮地のナカの前に現れた謎の男。眼鏡もないし 髪型も違うので気づかれません…。
眼鏡を掛ければ別人、髪型を変えれば別人、それが漫画の約束。
(謎の男の件は、『4巻』でバレてましたね。こっちの秘密はバレてもいいから秘密だからでしょうか)

そういえば2人が男女モデルとしてランウェイを歩くのは初めてですよね。
ウミではなく海としての初共演。
初読時は何気なく読んでいましたが、再読時にはとんでもなくメモリアルな回だということを痛感しました。
今後、何度も回想シーンで使われそうな場面ですが、そこまで想起されることもなかったですね。
ナカとしてはウミとの仕事を想定しているからでしょうか。

お祭り騒ぎを通じて海とナカの想いも確定し、ますます次巻が楽しみなフィナーレになっている。
というか、これ以降はもういつでも漫画を終わらせられるような気がします。


残念なのは折角2人並んだショーの笑顔の一コマが、ちょっと変なこと。
手が大きすぎるのか、関節がぎこちないのか、足が大きく見えるのか、
なんだかバランスのおかしい大事な一コマになってしまっている。

作者も多分、連載終了の見えないカウントダウンと闘っている。出来ることは ひたすら全力投球。

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福山 リョウコ(ふくやま りょうこ)
悩殺ジャンキー(ノーサツジャンキー)
第02巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★(6点)
 

ちょっぴり仲良くなってきたナカとウミ。しかし、合宿オーディションで知り合ったカメラマン・堤のせいで、2人はギクシャクした雰囲気に…。堤の挑発に乗り、ウミと距離を置こうとするナカ。一方、ウミは仕事で単身ロスに旅立ってしまい…!?

簡潔完結感想文

  • 乱痴気騒ぎを繰り広げたカメラマン・堤は なぜかナカのことが気に入ったようで…。
  • 堤が見限っているのはウミの方。ナカに、遠からず離れるウミを忘れるよう言うが…。
  • ナカの横にいると「男」の顔が出ることを注意されたウミ。彼も独りで戦うのだが…。

登場人物の少なさから、お話が序盤だということが判別できる2巻。

物語の展開する手法も描き方が『2巻』で既に確立されていることに気づく。
そして自分の鈍感さを棚に上げて言わせていただくと、この後10数巻に亘って同じような話が繰り返されるんだぁ、と再読して感じました。

後半と違うのは登場人物の少なさと、彼らの間に流れる距離感。
その違いがしっかり描けているので、それで面白さとしては十分だという気持ちもあります。

けれど、この巻にはこのお話が入っていた、と思い出すような際立った内容ではない(作品への興味の問題かもしれないが)。
少しずつテーマは違うのは分かるが、どこかのエピソードと混同しかねない似たり寄ったりな感じがする。


それでも作品に疾走感をもたらしているのは何か。
それが早くも確立されている時間や数字を克明に表す手法だと思う。

これは今後、多用されるパターンで、
例えば この『2巻』では、2人というユニットではなく個々に仕事が出来ることを証明するために、
ウミとナカは別の場所で個人の仕事に邁進するのですが、
その離れている日数を織り込むことによって、それが作品にビートを生んでいる。

「10、9,8」とカウントダウンを刻むことによって、
読者に緊張感をもたらし、そして反対にいつまでも問題が停滞するわけじゃないという明るい先行きを示す。

『2巻』後半は怪我したウミの全治期間を1週間と定めることによって同じ効果をもたらしている。

この後も、期限付きの問題や残り時間の戦いなど、2巻に1回は使用されるんじゃないかという手法です。
ワンパターン、と言ってしまえばその通りなのですが、
あまり物語に没入しているとは言えない私のような読者でも、
取り敢えず このカウントがゼロになるまでは読んでみようかという気になるから効果は抜群。

また嵐が来る、雷が落ちる、などと事態の深刻度を先んじて表現する手法も多用されます。
「私は知らなかった。まさか あんなことが起こるなんて」という思わせ匂わせも多いですね。

展開のゆったりした恋愛メインの漫画でやられると嫌な手法ですが、
仕事の面で本当に試練が訪れているし、ウミには抱えた爆弾があるので、
結構、気になっちゃう煽りになっています。

そして、時間や数字を刻むことはウミの女モデルとしてのリミットとも関連していて、彼の緊張感にも繋がる表現になっている。

多分、ウミは母数が幾つなのか分からないカウントダウンの中に身を置いている。
女性モデルとして残された時間は1年? 数か月?
そんな見えない数字の恐怖と闘いながらウミは もがき続ける。

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堤に急所を突かれて絶不調のウミ。ウミが海の外の国にいる時、ナカは独りで仕事をこなそうとするが…。
『2巻』を通して描かれるのは海(うみ)の気持ち。
恋をする海は、やや過剰なほどのツンデレ男になることが判明。
ナカには一番近くにいて欲しいのに、一番ぞんざいに扱ってしまう裏腹な男。

ただギャグと分かっていながらも、ナカが殴られ投げ飛ばされているのは、何だか笑えません。
暴力込みのツンデレとか俺様彼氏とか、DVと同義なんじゃないかと。

女性モデルとして活躍する男である自分が、女であるナカに恋をしている。
この状況、考えただけでメンタルをやられそうです。

特に撮影時などウミとしてキャラを演じながらナカの存在を感じて、自分の「性」が安定しないだろう。


そして今回、所属事務所の社長や、ウミが男であることに気づきつつあるカメラマン・堤(つつみ)に、
ナカの横にいるウミは女のメッキが剥がれていること、
ナカはウミと違って限界がないことを指摘されるから、
さすがの海も精神崩壊の危機(大袈裟)。

自分のバーターとして引き上げたと思っているナカが堤に認められ活躍することもまた、
ウミのプライドを苛(さいな)む出来事。
これは堤との男としての勝負もあり、構造が複雑だ。

ナカという原石をカメラマン堤に見つけられ、彼の力でナカは次のステージに持ち上げられる。
更にはウミへの依存も断ち切るように言われたナカにも別離を宣言されて踏んだり蹴ったり。


DV男と非難もしたくなるが、なんだかんだで海は薄幸でカワイイやつなんですよね。
物語の後半では特に顕著になるが、
基本的に俺様でありながら、イジり甲斐のある人なんです。

そんな器用そうで不器用な彼の恋愛模様は目が離せません。

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自覚するよりも正直に動く肉体。海として止められない気持ち。
恋愛模様としては、堤がナカを狙うかと思いきや狙わないところが、良い意味での肩透かしでしたね。
(狙ってないと明確に分かるのは結構 後ですが)
堤が恋のライバルになれば強敵かつ一筋縄ではいかない展開が待ち受けていただろう。
けれど安易にナカの逆ハーレム状態が作られないのも本書の美点の一つかもしれない。

結局、恋愛としてはナカを好きになるのは1‐2人ぐらいですかね。
その内、1人は人畜無害の当て馬にもならないヘタレキャラだし(双子さん)、
もう1人も行動を起こすわけでも、正面切って対決する訳でもなかったですね(たらこ唇さん)。

恋は一筋に、王道カップルが揺るぎないのも作品の爽快感に繋がっているのかもしれません。


作品としては、やっぱり作者の字が気になります。
絵の上達と共に字も上達しなかったんでしょうか…。
上達というか「読み易い字」を心がけてほしい。

生徒会長の海ならば「読みづらい字のくせに直筆セルフツッコミを多用してるんじゃねー!」とブチ切れるところですよ。
判読するために無駄なストレスを感じます。