《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画 感想リスト(ライト版) 著者名順

著者名順
※ 各巻の感想は、リンク先のページから お読みいただけます。

・書名の前に がある漫画は 特にお薦めです。

青木 琴美あおき ことみ
・僕は妹に恋をする 基本データwww.wwwbestlilium.com

赤瓦 もどむあかがわら        
・兄友 基本データwww.wwwbestlilium.com

アサダ ニッキ
星上くんはどうかしている 基本データwww.wwwbestlilium.com

アルコ・河原 和音かわはら かずね(共著)
俺物語!! 基本データwww.wwwbestlilium.com

いくえみ 綾いくえみ りょう
プリンシパル 基本データ
www.wwwbestlilium.com

池山田 剛いけやまだ ごう
・うわさの翠くん!! 基本データ
www.wwwbestlilium.com

和泉 かねよしいずみ       
・ダウト!! 基本データ
www.wwwbestlilium.com

岩本 ナオいわもと     
町でうわさの天狗の子 基本データwww.wwwbestlilium.com

宇佐美 真紀うさみ まき
・ココロ・ボタン 基本データ
www.wwwbestlilium.com

大詩 りえおおうた りえ
・猫田のことが気になって仕方ない。 基本データwww.wwwbestlilium.com

小畑 友紀おばた ゆうき
僕等がいた 基本データ
www.wwwbestlilium.com

北川 夕夏きたがわ ゆか
・影野だって青春したい 基本データwww.wwwbestlilium.com

金田一 蓮十郎きんだいち れんじゅうろう
ライアー×ライアー 基本データ
www.wwwbestlilium.com

くまがい 杏子        きょうこ
・放課後オレンジ 基本データ
www.wwwbestlilium.com

呉 由姫 くれ ゆき(原案:ルビー・バーティー
金色のコルダ 基本データwww.wwwbestlilium.com

幸田 もも子 こうだ ももこ
ヒロイン失格 基本データ
www.wwwbestlilium.com

小玉 ユキこだま ゆき
坂道のアポロン 基本データ
www.wwwbestlilium.com
月影ベイベ 基本データwww.wwwbestlilium.com

小村 あゆみこむら    
・ミックスベジタブル 基本データwww.wwwbestlilium.com

酒井 まゆさかい    
・ロッキン★ヘブン 基本データ
www.wwwbestlilium.com

咲坂 伊緒さきさか いお
ストロボ・エッジ 基本データwww.wwwbestlilium.com
アオハライド 基本データ
www.wwwbestlilium.com

栄羽 弥さこう  わたり
・コスプレ★アニマル 基本データ
www.wwwbestlilium.com

佐藤 ざくりさとう      
・おバカちゃん、恋語りき 基本データ
www.wwwbestlilium.com

椎名 軽穂しいな かるほ
君に届け 基本データ
www.wwwbestlilium.com

末次 由紀すえつぐ ゆき
・エデンの花 基本データ
www.wwwbestlilium.com

タアモ
たいようのいえ 基本データwww.wwwbestlilium.com

高須賀 由枝たかすか ゆえ
グッドモーニング・コール 基本データwww.wwwbestlilium.com

田中 メカたなか    
キスよりも早く 基本データ
www.wwwbestlilium.com

ぢゅん子ぢゅんこ
私がモテてどうすんだ 基本データwww.wwwbestlilium.com

椿 いづみつばき いづみ
親指からロマンス 基本データwww.wwwbestlilium.com

桃森 ミヨシとうもり みよし
ハツカレ 基本データwww.wwwbestlilium.com
悪魔とラブソング 基本データ
www.wwwbestlilium.com

時計野 はりとけいの はり
・お兄ちゃんと一緒 基本データwww.wwwbestlilium.com

南波 あつこなんば あつこ
スプラウト 基本データwww.wwwbestlilium.com
・隣のあたし 基本データ
www.wwwbestlilium.com

葉月 かなえはづき     
好きっていいなよ。 基本データwww.wwwbestlilium.com

八田 鮎子はった あゆこ
オオカミ少女と黒王子 基本データwww.wwwbestlilium.com

葉鳥 ビスコはとり      
桜蘭高校ホスト部 基本データ
www.wwwbestlilium.com

春田 ななはるた    
・スターダスト★ウインク 基本データ
www.wwwbestlilium.com

樋野 まつりひの     
とらわれの身の上 基本データ
www.wwwbestlilium.com

平間 要ひらま かなめ
ぽちゃまに 基本データ
www.wwwbestlilium.com

福山 リョウコふくやま       
悩殺ジャンキー 基本データwww.wwwbestlilium.com

藤沢 志月ふじさわ しづき
・キミのとなりで青春中。 基本データwww.wwwbestlilium.com

星森 ゆきもほしもり      
ういらぶ。 基本データ
www.wwwbestlilium.com

みきもと 凜     りん
近キョリ恋愛 基本データwww.wwwbestlilium.com
きょうのキラ君 基本データ
www.wwwbestlilium.com

水野 十子みずの とおこ(原案:ルビー・バーティー
遙かなる時空の中で 基本データ
www.wwwbestlilium.com

水瀬 藍みなせ あい
・なみだうさぎ 基本データ
www.wwwbestlilium.com

水波 風南みなみ かなん
・レンアイ至上主義 基本データ
www.wwwbestlilium.com

南 塔子みなみ とうこ
・360°マテリアル 基本データwww.wwwbestlilium.com
・ReReハロ 基本データ
www.wwwbestlilium.com

森下 suuもりした すう
・日々蝶々 基本データ
www.wwwbestlilium.com

山田 デイジーやまだ     
・初恋はじめました。 基本データ
www.wwwbestlilium.com

山田 南平やまだ なんぺい
・空色海岸 基本データ
www.wwwbestlilium.com

やまもり 三香やまもり みか
ひるなかの流星 基本データ
www.wwwbestlilium.com

吉住 渉よしずみ わたる
ちとせetc. 基本データ
www.wwwbestlilium.com


ろびこ
となりの怪物くん 基本データ
www.wwwbestlilium.com


渡辺 あゆわたなべ あゆ
・L♥DK(エルディーケー) 基本データ
www.wwwbestlilium.com

どんな反応が返ってくるか怖いけれど、それ以上に表現したい気持ちがあるから…。

僕と君の大切な話(6) (デザートコミックス)
ろびこ
僕と君の大切な話(ぼくときみのたいせつなはなし)
第06巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★★(8点)
 

同じ学年の東くんに片想いしてきた相沢のぞみ。告白を忘れられて複雑な気持ちでいたけれど、告白を思い出し、相沢さんを意識し始めた東くんからデートに誘われる。駅のホーム、中庭、部室、喫茶店、図書室。沢山の会話を続けてきて、かみあわない2人の気持ちがついに通じ合う時が…!? 笑いもニヤニヤも”恋も”止まらない! すれ違う男女の新感覚”トーキング”ラブコメディー、第6巻!

簡潔完結感想文

  • 風邪回。東くんの家、その本丸である布団の中まで潜入することに成功。
  • 恋愛相談。東くんは反論はするけど否定はしない。なので友達の友達の話。
  • デート回。勇気が無くて逃げ回っていた自分は今日でお別れ。君に、届け!

こっ、この漫画のジャンルは少女漫画だったのか、の 6巻。

『6巻』は驚くほど少女漫画らしい内容となっております。
これまで5巻に亘る机上の空論編から一気に実践編に移った気がします。

これまで遊牧民族として、学校や街の特定の場所に一定期間いた主人公2人ですが、
もう彼らは自分たちの愛を拠点にして、どこへでも自由に行けるようになった。
彼らの巣立ちが心の底から嬉しい反面、寂しくもあるジレンマに陥っております。

そして机上の空論から実践に移ったのは恋愛だけではなかった。
中盤から徐々に明らかにされた東(あずま)くんの小説の創作も同じ経緯を辿る。
これまでは小説家の真似事をするだけで、書き終えたことがなかった。

それが今回、偶然にも顔見知りの文芸部部長・はまりん に作品を読まれることになり、
読み手を得たことで、彼の創作に対する熱意が変容していく。

f:id:best_lilium222:20210922200441p:plainf:id:best_lilium222:20210922200439p:plain
何かに触れて、自分の中から生まれるものがあるのならば、それを伝えるために言葉がある。

それは多分、東くんの恋愛や女性に対する凝り固まった美化や偏見が、
相沢(あいざわ)さんという現実の女性との会話によって変わっていったのと同じ。
彼女と時間を過ごす内に、東くんの中に伝えたい気持ちが生まれた。
それは言葉でしか伝えられないものだから、人は告白をするのだ。
『1巻』で相沢さんが募らせた想いを、彼女が持った勇気を、東くんも持つことになる。

作中の東くんの創作への恐れを見ていると、
自分が属するジャンルを、メタ視点で評論をしながら、
同じジャンルを描くことの勇気や覚悟はどれだけ必要なのだろうかと思わせられる。

他者の創作物(文芸部の1年生の漫画)や、女性を鋭く論評しながらも、
いざ自分が行動をしようとすると、身がすくんでしまう。
頼りは恐怖心すらも打ち克つような情動なのだろう。

小説の中で表現したいこと、
現実の中で彼女に伝えたいこと。

それが明確になった時、彼はまた新しい一歩を踏み出していく。


者の凄いところは、少女漫画を構造的に考えて、
その矛盾や奇妙な慣習を鋭く突いていながら、それでいて この作品できっちりと少女漫画をしているところだ。

特に『6巻』は少女漫画的イベントが盛りだくさん。
冒頭は風邪回&お見舞い回である。そして同時にバレンタイン回でもある。
1コマだけの勉強回を挿んで、デート回。そして最後は…。

なんとも少女漫画成分が濃い。
デート中の2人にはニヤニヤが止まりませんでしたよ。

叔母であり1学年上の同じ学校の生徒の鈴(すず)が一世一代の告白をするというので、
長時間、真冬の寒空の下で彼女の帰りを待っていた東くん。
そんな彼は風邪をひき、学校を休んで早4日目になろうとしていた…。

バイオレンスな叔母として扱われる鈴が実は大変優しい女性であったように、
口では文句を言いながらも、彼女の側に居ようとする東くんもまた優しいのである。
他にも、例え恋のライバルであっても優しく接してくれる人がいるような世界なのです。


んな優しい東くんの受難から風邪回のはじまりです。
そして遂に遂に、相沢さんが東くんの部屋に初上陸します。

東くんの両親は共働き らしく、2人きりの家。
それを意識した時の、東くんの脳内バカ男子高生たちのバカな会話の中に、
クラスメイトの悪友に交じって、王子・環(たまき)もいるのがおかしい。

ただ、これで母親でも顔を出せば、少女漫画的には結婚フラグが成立したのに…と残念に思う。
(でも交際前だから無効か。そして顔を出したら話がややこしくなるだけだ。)

f:id:best_lilium222:20210922200317p:plainf:id:best_lilium222:20210922200314p:plain
相沢さんなら「3日もお風呂に入っていない東くんの体臭⁉ そんなのご褒美だわ!」と言いかねない。

この回では、言葉と現実の齟齬が面白かった。

東くんの部屋を見渡して、身近な男子の部屋と比べる相沢さん。
彼女の言う「弟の部屋」というのは1部屋を姉弟で分割している弟の領域のことだろうか。
この時、東くんの脳内に浮かんでいる弟くんの部屋と実際の部屋には大きなギャップがある。

そして病気の時にゼリーを食べたという相沢さんが想像するゼリーは、ホテルのフルーツてんこ盛りのゼリー。
ここもイメージの違いがあった。
そして彼女がこれを食べられたのは中1以前である。
なぜなら没落したから。
パンの耳を揚げて、おやつにしている現在の暮らしとの落差が凄い。
なのに東くんは相沢さんち お金持ち説の可能性を考えている。

この回のオチも素晴らしい。
東くんは言葉を武器にしながらも、言葉に裏切られている節がある。
やはり自分で地雷を踏みに行く愚か者でもある。
彼は自分の好みがハッキリしているから、色々なことに文句が出るのだろう。
今でこれなのだから、頭の固くなってくるであろう初老以降は、毎日 愚痴しか言わなくなるのではないか。

序盤の会話でバレンタインの話題を避けた相沢さんの心情が最後に分かるのも見事。
手作り女のレッテルから逃れるために、余計な傷を負った相沢さんの心境が悲しい。


邪の治り際にシャワーを浴び、よく乾かさないうちに
相沢さんの待たせた自室に戻ったため、熱がぶり返してしまった東くん。
そのお陰で風邪回ならではのハプニングが生まれたのだが、彼は学校を休み続ける。

2回連続の風邪回です。
もしかして『6巻』は ずっと東くんの部屋が会話劇の舞台で、
彼は風邪をひき続ける運命にあるのかと危惧したが、ちゃんと治ります。

今回、相沢さんは共通の友人・はまりんを連れてきた。
カフェインくんから彼女が受けた告白が相談をするためという口実があるが、
恋のためなら友情を壁に投げつける勢いの彼女だから、自分の欲望のために利用したのが真相だろう。


友人の話として相談する はまりんだが、
友人という客観性のフィルターを付けると、
はまりん の言動は失礼千万で、そしてカフェインくんの告白は謎が多いことがよく分かる。

男というものは繊細で告白も ほぼ100%の確証がないと出来ないというのは東くんの持論。
自分で言って自分の耳が痛いのではないか。

「少なくとも彼は 勇気を出してくれたと思うぞ」
「次は自分の番じゃないか?」
というのは東くんが自分に語り掛ける言葉だろう。

そして確証はないが、それでも告白をしたカフェインくんの勇気が際立つ。
どんな結果になっても、伝えたい気持ちがあるというのは『6巻』共通のテーマか。
カフェインくんは、初登場から最後までずっと格好いいなぁ。

はまりん のバレンタイン回が おまけ漫画で無事に終えられているのも嬉しい。


くんの風邪により、延期に延期されるデートの約束。
だが彼は回復し、学年末テストも乗り越えて、いよいよ果たされる。

なんでしょう。
いざデートとなると、あんまり感想が浮かばない。
推論とか考察を挟む余地がないからでしょうか。
東くんにはずっと頭でっかちでいてほしいのか、私は…。

緊張で笑うことも忘れてしまったデート前半だったが、
互いの笑顔を見ることで気持ちがほぐれ、自然体の2人に戻ることが出来た。

東くんは、ずっと相沢さんの容姿(服装)を褒める機会を逃している。
相沢さんには申し訳ないけど、しばらくはギクシャクした関係でいてほしい。

そういえば相沢さん的には、嬉しい反面、大出費の1日ではなかったか。
そうならないように神様(作者)が配慮したのが、
『6巻』の最終盤から『7巻』へと続く東くんの心理的な問題なのかな。
しばらく心は満たされないが、個人破産は免れている。

デート回と『6巻』ラストの回は、本当に少女漫画的な次回への引きである。
後半はずっと相沢さん良かったねー、と彼女を応援する気持ちでいっぱいだった。

そして環とはまりん、それぞれが恋愛面と創作面で背中を押してくれているのも忘れてはならない。
はまりん の(友達の)恋愛相談も東くんの行動を促す大事な要素だったかもしれない。

東くんが逃げ回ろうとしていることに対して、
2人が意識的に(無意識でも)、応援してくれたことで彼は前へ進めた。

ここにきて改めて2人のことが好きになった。
カフェインくんといい、誰も彼もがいい人過ぎて幸せな気持ちに満たされる。

特に環は複雑な思いを抱えているのに(抱えるのは苦手な野菜だけ)、
その気持ちを一片も見せずに、ポジティブな言葉を紡いでいる。
好きだった人も、その人が好きな相手も悪く言わないなんて、人格まで王子である。


そして はまりん は小説の良い読み手なんだろうなぁ、と思った。
相沢さんと同じように、相手(創作者)を傷付けない言葉で、
その作品をちゃんと見ていることを伝えられている。
文芸部の はまりんが作品と東くんにとって こんなに大事な存在になるなんて思ってもみなかった。


最後に『6巻』での東くんの読書本。
・『火の鳥
・『銀河ヒッチハイク・ガイド
・『あとは野となれ大和撫子

少女漫画で人気のある恋愛設定(と失恋)は全部 脇役の皆さんに やってもらいました。

僕と君の大切な話(5) (デザートコミックス)
ろびこ
僕と君の大切な話(ぼくときみのたいせつなはなし)
第05巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★★(8点)
 

同じ学年の東くんに片想いしてきた相沢のぞみ。告白を忘れられて複雑な気持ちでいたけれど、一方の東くんは相沢さんの告白を思い出して、次第に意識し始めていた? 冬休みも毎日会って話すうちに、2人の距離はさらに縮まり、3学期はさらに一緒の時間が増えていき…!? 笑いもニヤニヤも止まらない! すれ違う男女の新感覚”トーキング”ラブコメディー、第5巻!

簡潔完結感想文

  • ライバルは学校一の美人と美男⁉ 当て馬と見せかけて踏み台にしたぁ⁉
  • 進む速さが うさぎ でも かめ でも恋は恋。恋愛成就と失恋のサンプルを。
  • サイレント失恋。言葉は対話するためにあり拒絶されるべきものではない。

道ジャンルと比較することで、本書の特殊性が際立つ 5巻。

少女漫画に関するメタ発言も多い本書ですが、
この『5巻』で出てくる恋は全て少女漫画の王道パターンではないかと思った。

例えば『5巻』初登場の、一ノ宮 鈴(いちのみや すず)。
ネタバレになるが、彼女の恋は「教師と生徒」という王道ジャンル。
ちなみに鈴は、東くんの4人の叔母の内、最年少の叔母である。

続いて学園の王子である環(たまき)の恋は、
モテモテの彼が ただ一人の女性を見つけて遊びを止める運命の恋パターン。

そして文芸部部長の はまりん とバレー部のカフェインくん の恋は、
恋愛に興味のない陰キャのオタク系女子が、
人望があって どこまでも優しい陽キャと付き合うことになる、読者の願望パターン。

そんな どれも連載化したら人気が出そうな設定を贅沢にも全部 脇役で使用している。

そこで際立つのは、本書の主人公カップルの特殊性、いや普遍性か。
パッと見こそ東(あずま)くんはメガネ陰キャで、相沢(あいざわ)さんは学年一の美女という違いがある。
これが少年漫画なら、都合よく相沢さんが東くんにベタ惚れして格差ラブコメが始まるところだ。

本書も女性が男性に惚れる状況ではあるが、東くんは決して陰キャではない。
学校中に顔見知りの生徒がいるし、女性人気も悪くない。
特別なことと言えば彼がいつも人との対話をオープンにしていることぐらい。

少女漫画として際立った設定に頼らないのが特徴の、この作品。
それでも読者を惹きつけるのは彼らの会話の内容が格段に面白いからであり、
そして その普遍性が読者の親近感に繋がっていく。


きなり内容のネタバレですが、サイレント失恋3連発です!

『4巻』の感想文で述べたことだが、はまりん&カフェインくん の恋愛は、
東くん&相沢さん ではまだしばらくかかりそうな両想いや交際を先回りするためにあるのだろう。
それとは逆に『5巻』は、東くん&相沢さんが幸運にも回避するであろう失恋を描くために存在するのではないか。
脇役の皆さんは主役に代わって様々な役割を託されているのである。

カフェインくんが色々すっ飛ばして交際を申し込んでいるのも
デートへの お誘いすら悶々と悩んでいる東くんとの対称性を出すためではないか。
それでいて彼らは お互いを認め合う友人なのだから人間は面白い。


して『4巻』では相沢さんの家の背景が気になって仕方がなかったが、
今回は東くんの家の背景が気になるところ。

東くん曰く、彼だけではなく、彼の父も「叔母の命令は絶対」らしい。
美人5姉妹の長女と結婚した東父。
しかし義理の妹たちに頭が上がらない様子。

そこで考えたのは、東くんの家は母方の血統や財力が凄いのではないかということ。
結構な財力がなければ、いくら血縁とはいえ4人の娘に加えて、
鈴を養子として迎え、育て上げるなんてなかなか難しい。
そして鈴にも高校卒業後に進学をして欲しいと願っている。

もしかしたら東くんの父は婿養子かもしれないとも考えたが、
この『5巻』で初登場の彼の叔母・鈴の名字が一ノ宮なのだから婿養子説はないか。

ただし、それでも育った環境の圧倒的な権力差が父にも及んでいるとは考えられる。
そう考えると東くんは繁栄継続中の名家、相沢さんは没落した元 名家なのだろうか。


ちなみに鈴が高校卒業後は進学するつもりがないと今の両親に伝えると、ぶっ飛ばされたらしい。
4歳で養子に迎えられた鈴は、今の親によく似たのだろう。
暴力で人を黙らせるきらいのある鈴だが、育った環境がそうさせたのかもしれない。

…ちょっと待て。家系図を書いて考えて見ると、この鈴の養父というのは、東くんの母方の祖父母ではないか??
そして その祖父母から生まれたのが、自由奔放な叔母たちなのだ。
母方は かなりファンキーだと推察される。

きっと東くんは父親似で、彼たちだけが常識的なのだろう。
常識的だが、この一族ではマイノリティだから迫害も受けてしまうのだ…。

ただし今回の鈴と東くんの会話を見ていると、どうにも非が彼にあることも ままある。
東くんは基本的に減らず口をたたくというか、進んで地雷を踏みに行くようなところがある。

ちなみに、そんな叔母を東くんが相沢さんに説明する時、
「うちにはオバが人いるんだが それぞれが1言えば100返してくるような連中なんだ」
という言葉を使っているのだが、それに対する相沢さんの返答が、
「ええっ 東くんよりも⁉」
というのには笑った。
やっぱり相沢さんは、東くんのこと「ただの へ理屈おしゃべり野郎」だと思っている節がある(『3巻』おまけページより)。
しかし間違っていない。
例え、一族の中では常識的な部類であっても、我が家の常識、世間の非常識なのである。


回、初登場の鈴の存在は、仮想ライバルなんでしょうね。
仮想とつくのは、結果的に鈴はライバルではないから。

相沢さんと読者のミスリーディングを誘い、恋愛に緊迫感を出したのは1話限りで終わる。
血縁が遠いから恋愛や結婚も可能であると思わせる為の養子設定かと思った。
初登場の1話の後は、ライバルというよりは お邪魔虫です。
そして上述の通り、失恋要員でもあるんですが…。

ライバルどころか、暴力と血で その本質が隠されているが、鈴と相沢さんは よく似ている。
一途に人を想い、自分からは声を掛けられない日々を送っていた共通点を持つ。
微妙にポジティブな妄想で、恋に恋している点も似ている。
この類似性と親近感が2人の距離を急速に近付けた。
先輩である鈴を気遣い、彼女を立ち上がらせる言葉を持つ相沢さんが素敵だった。

f:id:best_lilium222:20210921195811p:plainf:id:best_lilium222:20210921195808p:plain
文芸部員の漫画の助言といい、相沢さんの言葉には人を前進させる力がある。聖母!

ちなみに鈴先輩は園芸部(3年生の3学期なので全て自主的な活動だろうか)。
園芸部と言えば『2巻』で東くんたちが中庭でお昼ご飯を食べるようになった時から、
注意書きの立て札で登場していましたね。

鈴が先生に恋をしていると知った東くんが
少女漫画に見られる教師と生徒の恋愛の、目的と矛盾を語っている内容に膝を打つ。
メタ発言、面白いなぁ。
こんなの書いたら作者は教師モノは描けないだろう。

矛盾については、職業倫理感が皆無のロリコン教師、で片づけられる。
そして先生と恋愛する目的が女生徒側の承認欲求という指摘が慧眼。
同じく人気ジャンルである芸能人との恋と、根本的な精神構図は同じなのか。
芸能人の方が ずっと夢見がちだと思っていたが、相手の特別性という意味では同類のようだ。
『1巻』1話と同じく相沢さんが少女漫画側フォローしているのが面白い。


性に対する偏見が過ぎる東くんが その原因を考えると、
それは叔母たちから受けたトラウマが原因だった。
『1巻』の環の初登場回でも語っていた、竹とんぼのお兄さんが叔母の一人に振られた件は、
子供の東くんに相当な傷を負わせたらしい。

少女漫画的には叔母というトラウマを克服することが、
恋愛解禁に繋がるのではないかと心配したが、
今後も主に登場する叔母は鈴一人だけで胸をなでおろした。
叔母たちは直接登場して出ずっぱりになるとカロリーが高すぎて胃が もたれそう。

ただし『5巻』の内容からすると、
4歳で養子に迎えられた鈴に対して、分け隔てのない愛情をくれた姉妹たちである。
なかなかに優しいのではないか。

そして鈴も、自分の卒業後であろう春に花が咲くように花壇の手入れをしている。
そんな女性が優しくない訳がない。
優しさは本書の中でも大事な美徳である。


いて当て馬&お邪魔虫になるのは、王子・環。

『4巻』では東くんは、幼なじみの圭介(けいすけ)が相沢さんと喋っていただけで、嫉妬で行動がおかしくなりましたが、
今回は学園の王子的存在の環という強敵が現れたから大変。

環の分かりやすい恋心アピールを見て、東くんは自分の方がお邪魔虫だと思うほど。

そのアピールとは、環が得意のりんごの皮むきで相沢さんを喜ばせようとするというもの。
だが、相沢さんは彼の技術に感動するものの、
口から出る言葉は「す すごいわ 早く食べましょう!! 早く」「美味しいわ!! 美味しいわ!!」と色気より食い気の人であった。
没落一家の彼女は りんご すら滅多に口に出来ないのだろうか。

ちなみに りんごの皮むきは手先が器用な環の一つの芸。
美術の授業でも とんでもない作品を制作している。

だが そんなアピールも空しく、相沢さんが東しか見ていないことを悟る環。

失恋を予感した環は、想いを告げずに黙って立ち去る。
全てを承知した上で自己満足に告白しても、相沢さんを、好きな女子を困らせてしまうから。
環の願いは、彼女には笑っててほしい、というもの。

この基本姿勢は作品自体にも適用できるのではないか。
環(や鈴)に余計な悲しみを与えないために、事前に手を打っているように思う。
どんな場合でも発せられた言葉が無下に拒絶されないように細心の注意を払っているのだろう。

f:id:best_lilium222:20210921195922p:plainf:id:best_lilium222:20210921195918p:plain
上げて落とされた恋心わかってるの⁉とは『3巻』の相沢さんの言葉。無自覚加害者。

当て馬になりそうでならなかった環。
と、思いきや彼は東くんの気持ちを奮い立たせる役割は果たした。

東くんが ずっと言えなかったデートを約束する日が来たのだ。
夢にまで見た言葉を告げられ、ここで少しだけ涙を流す(分かりやすい演出だろうが)相沢さんが可愛い。
そして奥ゆかしい。
やはり彼女は大正時代の女生徒なのだ。
そう考えると叔母たちは現代女性の象徴なのだろうか。
口を開けば人を(男性を)否定する言葉を並べる魔女たち。

そう考えると、一途に想いを秘してきた鈴も大正時代の人であり、
なんだかんだで東くんとの相性は良いのではないか。
先生に失恋した後は、東に猛アタックしてきたら笑える。

忘れていましたがサイレント失恋3連発の3発目は、東くんを想うクラスメイトの九藤(くどう)さん。
彼女もまた密かに想いを寄せていたら、相沢さんが登場し、逆転が叶いそうもない状況になってしまった。
環と同様に、成仏できない苦い気持ちを しばらく抱えることになる。


が冬の園芸部での活動でも麦わら帽子を被っているのは、
野呂(のろ)先生が、2年前の夏、部活中に熱中症で倒れた自分に くれた物(私物ではない)だから。

4歳の夏に父親が出て行った鈴は少しファザコン気味なのだろうか。

学校における教師という特別性ではなく父性に惹かれているのではないか。
自分のトラウマである父が出て行った夏。
その夏から自分を守る手段をくれた人。
それで寂しい思い出の詰まった少女時代の鈴が救われたのではないか。

ちなみに その野呂先生は29歳にして(その2年前から)既にお腹の出ている、どう見ても冴えない先生。

しかし それでいて野呂先生がちゃんと格好良く見えるから不思議だ。
知的だし、大人だし、先生としても大変 素晴らしい人物。


作品の性質上、サイレント失恋を運命づけられた鈴ですが、
その中でも最悪な形で失恋してしまう。
先生の指に、これまでは なかったはずの結婚指輪があることに気づいたのだ。
野呂先生の結婚相手が、最近 結婚したらしい体育のマダム南と考えるのは邪推か、裏設定か。


鈴の失恋をもって、『5巻』の主な舞台、図書館の日々は終わる。
そして失恋が東くんにもたらしたものは…、次巻への布石。

彼は、自分のこの気持ちを何と名付けられるか、ようやく悟ったのでした。


最後に東くんの読書本。
ちなみに相沢さんが図書室で読んでいたのは、お金関連の投資本。
そして生活用品が当たるクロスワード雑誌。
更には恋愛小説など彼女もジャンルを問わず乱読している。

・『むかし僕が死んだ家』
・おまけ漫画でシェイクスピア作品。
・あとは紙面からは書名は読み取れなかったが どうやらエッセイ本も読んでいるようだ。