《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画 感想リスト(ライト版) 著者名順

著者名順
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※書名の前に がある漫画は 特にお薦めです。
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あ行    か行    さ行   た行
な行    は行    ま行   や・ら・わ行

あ行
あいかわ ヒロ
・三神先生の愛し方 基本データ
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相原あいはら 実貴みき
・SO BAD! 基本データ
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青木あおき 琴美ことみ
・僕は妹に恋をする 基本データ
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・僕の初恋をキミに捧ぐ 基本データ
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赤瓦あかがわら もどむ
・兄友 基本データ
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ラブ・ミー・ぽんぽこ! 基本データ
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アサダ ニッキ
青春しょんぼりクラブ 基本データ
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星上くんはどうかしている 基本データwww.wwwbestlilium.com
・きみと青い春のはじまり 基本データ
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綾瀬あやせ 羽美うみ
・理想的ボーイフレンド 基本データ
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アルコ・河原かわはら 和音かずね(共著)
俺物語!! 基本データ
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アルコ・ひねくれ わたる(共著)
消えた初恋 基本データ
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餡蜜あんみつ
・カンナとでっち 基本データ
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いくえみ りょう
プリンシパル 基本データ
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いけ ジュン
・水玉ハニーボーイ 基本データ
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池山田いけやまだ ごう
・GET LOVE!! 基本データ
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・萌えカレ!! 基本データ
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・うわさの翠くん!! 基本データ
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伊沢いざわ れい津山つやま ふゆ
執事様のお気に入り 基本データ
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和泉いずみ かねよし
・ダウト!! 基本データ
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・そんなんじゃねえよ 基本データ
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岩下 慶子いわした けいこ
リビングの松永さん 基本データ
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岩本いわもと ナオ
町でうわさの天狗の子 基本データ
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上田 美和うえだ みわ
・Oh!myダーリン 基本データ
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宇佐美 真紀うさみ まき
・恋*音 基本データ
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・ココロ・ボタン 基本データ
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・夕暮れライト 基本データ
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大詩 りえおおうた    
・猫田のことが気になって仕方ない。 基本データ
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オザキ アキラ
・ハル×キヨ 基本データ
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音 久無おと ひさむ
・花と悪魔 基本データ
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小畑 友紀おばた ゆうき
僕等がいた 基本データ
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恩田 ゆじおんだ    
・神木兄弟おことわり + リトル・ブラザー 基本データ
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か行
加賀 やっこかが    
一礼して、キス 基本データ
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川上 ちひろかわかみ     
・後にも先にもキミだけ 基本データ
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北川 夕夏きたがわ ゆか
・影野だって青春したい 基本データ
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桐島 りらきりしま     
・世界の端っことあんずジャム 基本データ
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金田一 蓮十郎きんだいち れんじゅうろう
ライアー×ライアー 基本データ
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くまがい 杏子        きょうこ
・放課後オレンジ 基本データ
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・あやかし緋扇 基本データ
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呉 由姫 くれ ゆき(原案:ルビー・バーティー
金色のコルダ 基本データ
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幸田 もも子 こうだ ももこ
ヒロイン失格 基本データ
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小玉 ユキこだま ゆき
坂道のアポロン 基本データ
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月影ベイベ 基本データwww.wwwbestlilium.com

小村 あゆみこむら    
・ミックスベジタブル 基本データ
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・神様のえこひいき 基本データ
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紺野 りさこんの      
・胸が鳴るのは君のせい 基本データ
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さ行
酒井 まゆさかい       
・永田町ストロベリィ 基本データ
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・ロッキン★ヘブン 基本データ
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咲坂 伊緒さきさか いお
ストロボ・エッジ 基本データwww.wwwbestlilium.com
アオハライド 基本データ
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思い、思われ、ふり、ふられ 基本データ
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・サクラ、サク。 基本データ
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栄羽 弥さこう わたり
・コスプレ★アニマル 基本データ
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佐藤さとう ざくり
・おバカちゃん、恋語りき 基本データ
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・マイルノビッチ 基本データ
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里中 実華さとなか みか
・雛鳥のワルツ 基本データ
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佐野 愛莉さの あいり
・オレ嫁。~オレの嫁になれよ~ 基本データ
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椎名 軽穂しいな かるほ
君に届け 基本データ
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縞 あさとしま      
・君は春に目を醒ます 基本データ
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白石 ユキしらいし      
あのコの、トリコ。 基本データ
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師走しわす ゆき
高嶺と花 基本データ
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末次 由紀すえつぐ ゆき
・Only You ー翔べない翼ー 基本データ
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・エデンの花 基本データ
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杉山 美和子すぎやま みわこ
・花にけだもの 基本データ
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・True Love 基本データ
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すず ジュリエッタ
カラクリオデット 基本データ
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清野 静流せいの しずる
・純愛特攻隊長!+ 本気 基本データ
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た行
タアモ
たいようのいえ 基本データwww.wwwbestlilium.com
・地球のおわりは恋のはじまり 基本データ
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・あつもりくんのお嫁さん(←未定) 基本データ
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高須賀 由枝たかすか ゆえ
グッドモーニング・コール 基本データ
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田中 メカたなか    
キスよりも早く 基本データ
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ぢゅん子ぢゅんこ
私がモテてどうすんだ 基本データ
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築島 治つきしま はる
・私たちには壁がある。 基本データ
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筑波 さくらつくば       
・目隠しの国 基本データ
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椿 いづみつばき      
親指からロマンス 基本データ
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藤間 麗とうま れい
・黎明のアルカナ 基本データ
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とうもり ミヨシ
ハツカレ 基本データ
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悪魔とラブソング 基本データ
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桃森 ミヨシ × 鉄骨 サロとうもり       てっこつ    
・菜の花の彼 基本データ
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時計野 はりとけいの   
・お兄ちゃんと一緒 基本データ
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鳥海 ペドロとりうみ       
・甘い悪魔が笑う 基本データ
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な行
なかじ 有紀    ゆき
・ハッスルで行こう 基本データ
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・ビーナスは片想い 基本データ
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仲野なかの えみこ
・帝の至宝 基本データ
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中原なかはら アヤ
・おとななじみ 基本データ
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なかむら せい
・ニブンノワン!王子 基本データ
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仲村 佳樹なかむら よしき
・MVPは譲れない! 基本データ
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ななじ ながむ
・パフェちっく! 基本データ
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・コイバナ!ー恋せよ花火ー 基本データ
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那波ななみ マオ
3D彼女 基本データ
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南波 あつこなんば      
スプラウト 基本データ
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・隣のあたし 基本データ
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青Ao-Natsu夏 基本データ
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西形 まいにしかた      
・ヴィーナス綺想曲 基本データ
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野切 耀子のぎり ようこ
・甘くない彼らの日常は。 基本データ
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は行
葉月 かなえはづき     
好きっていいなよ。 基本データ
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八田 鮎子はった あゆこ
オオカミ少女と黒王子 基本データ
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葉鳥 ビスコはとり      
桜蘭高校ホスト部 基本データ
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林 みかせはやし      
・うそカノ 基本データ
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春木 さきはるき    
・ちっちゃいときから好きだけど 基本データ
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春田 ななはるた    
・スターダスト★ウインク 基本データ
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晴海 ひつじはるみ      
・斎王寺兄弟に困らされるのも悪くない 基本データ
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日高 万里ひだか ばんり
世界でいちばん大嫌い 基本データ
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ヒナチ なお
・恋するハリネズミ 基本データ
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樋野 まつりひの     
とらわれの身の上 基本データ
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めるぷり 基本データ
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平間 要ひらま かなめ
ぽちゃまに 基本データ
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ふくやま リョウコ
悩殺ジャンキー 基本データ
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モノクロ少年少女 基本データ
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覆面系ノイズ 基本データ
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藤沢 志月ふじさわ しづき
・キミのとなりで青春中。 基本データ
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・僕と君とで 虹になる 基本データ
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ふじもと ゆうき
キラメキ☆銀河町商店街 基本データ
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ふじもも
恋わずらいのエリー 基本データ
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ふじわら ヒロ
会長はメイド様! 基本データ
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ほしもり ゆきも
ういらぶ。 基本データ
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ま行
マキノ
黒崎くんの言いなりになんてならない 基本データ
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松月 滉まつづき こう
・幸福喫茶3丁目 基本データ
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みきもと りん
近キョリ恋愛 基本データ
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きょうのキラ君 基本データ
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・午前0時、キスしに来てよ 基本データ
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水野 十子みずの とおこ(原案:ルビー・バーティー
遙かなる時空の中で 基本データ
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水野 美波みずの みなみ
虹色デイズ 基本データ
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みつ はる
・放課後、恋した。 基本データ
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蜜野 みつの まこと
・お迎え渋谷くん 基本データ
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水瀬 藍みなせ あい
・なみだうさぎ 基本データ
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・ハチミツにはつこい 基本データ
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・恋降るカラフル 基本データ
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・きっと愛だから、いらない 基本データ
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水波 風南みなみ かなん
・レンアイ至上主義 基本データ
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蜜×蜜ドロップス 基本データ
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今日、恋をはじめます 基本データ
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南 塔子みなみ とうこ
・360°マテリアル 基本データ
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・ReReハロ 基本データ
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・テリトリーMの住人 基本データ
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みなみ マキ
・S・A(スペシャル・エー) 基本データ
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声優かっ! 基本データ
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宮城 理子みやぎ りこ
・花になれっ! 基本データ
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宮坂 香帆みやさか かほ
・微熱少女 基本データ
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三次 マキみよし   
PとJK 基本データ
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村田 真優むらた まゆ
・流れ星レンズ 基本データ
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ぐろ あむ
・ハニー 基本データ
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・てをつなごうよ 基本データ
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森下 suuもりした すう
・日々蝶々 基本データ
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・ショートケーキケーキ 基本データ
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森野 萌もりの めぐみ
おはよう、いばら姫 基本データ
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や・ら・わ行
夜神 里奈やがみ りな
・制服でヴァニラ・キス 基本データ
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やま デイジー
・初恋はじめました。 基本データ
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山田 南平やまだ なんぺい
紅茶王子 基本データ
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・空色海岸 基本データ
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やまもり 三香     みか
ひるなかの流星 基本データ
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椿町ロンリープラネット 基本データ
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のじん
・これは愛じゃないので、よろしく 基本データ
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ゆきまる もえ
ひよ恋 基本データ
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柚月 純ゆづき じゅん
・学園王子 基本データ
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吉岡 李々子よしおか りりこ
・彼はトモダチ 基本データ
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吉住 渉よしずみ わたる
ミントな僕ら 基本データ
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ちとせetc. 基本データ
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るかな
・となりのオトナくん 基本データ
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ろびこ
となりの怪物くん 基本データ
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僕と君の大切な話 基本データ
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渡瀬 悠宇わたせ ゆう
・思春期未満お断り 基本データ
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わたなべ あゆ
・L♥DK L・DK(エルディーケー) 基本データ
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家族とは遠慮せずに感情を出せる関係。封印した泣くという行為と一緒に溢れ出る好意。

LOVE SO LIFE 10 (花とゆめコミックス)
こうち 楓(こうち かえで)
LOVE SO LIFE(ラブ ソー ライフ)
第10巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

詩春(しはる)は双子達と秋の行事を満喫☆ その一方で不安な気持ちを見すかれそうで、松永(まつなが)さんに優しくされると胸が苦しい…。そんな中、松永家でショックな出来事が! 松永さんは落ち込む詩春に!? 2人の関係が大きく動く!! ハートフルDAYS第10巻☆

簡潔完結感想文

  • 大事なマグカップを巡る価値観の相違で2人の精神的距離は ますます離れる。
  • 松永の優しさは詩春の我慢を崩壊させる。私の泣ける場所は特別な人の前。
  • 詩春は公私混同を避けるため、松永は社会的な死を避けるため両片想い継続。

情というパンドラの箱が開けられて 最後に残った愛情、の 10巻。

ここ最近が物語(双子との関わり)における大きな転換点であったならば、この『10巻』は詩春(しはる)にとっての大きな転換点となっている。そのキッカケが「泣く」という行為だった。彼女は5歳で母親を亡くし、施設で育つことになり その生活の中で、母の居ない淋しさの中で周囲に涙を見せまいと努めてきた。それは詩春の、母亡き世界で生きるための処世術だったのかもしれない。怖くても悲しくても泣かない、そう心に決めて詩春は自分の感情がどうであれ笑顔で過ごしてきた。

だが直近の2巻で詩春は立て続けに打ちのめされ、感情のコントロールが難しくなる。その原因の一つが双子との別れ。およそ1年後に彼らとの別れが設定され、彼らを引き取る優しい人たちと間近に接して、別れが具体性を帯びる。自分の願いと、自分ではどうしようもならない世界と、双子の幸せを考え詩春の心は千々に乱れる。自分の中の感情を処理しきれないまま彼女は日常を過ごすが、些細な事でも悲しみを引き起こすトリガーになり、それが理由で松永(まつなが)との価値観の違いを感じてしまう。ここ2巻の詩春の追い詰め方が非常に上手い。

それでも松永は詩春に優しく接してくれて、でも その優しさが汚いには見合わないものだと思って詩春の感情は堰を切る。詩春が大泣きするのは2回目だが、以前も書いたが1回目(『8巻』)と違い今回の涙の成分は より利己的な感情が混じる。しかし松永は それを当然の感情として受け入れてくれて、松永家にとって詩春がどれだけ特別な存在か彼女を肯定してくれる。
だから詩春は松永に自分から触れる。ワイシャツの端だが、彼女が松永に自発的に触れるのは初めてで、松永も虚を突かれた表情をしている。松永に触れたのは詩春が自分が誰かを求めてもいいんだと思えたから。自分の全てを預けたいと思った。そして それは単純に言えば詩春が松永のことが好きだからである。詩春も そんな自分の変化を自覚し、赤面する。

自分より小さく弱い子に差し伸べてきた詩春の手。その手が松永に伸ばされただけで涙腺崩壊。

ダメだ。自分の文章で泣けてくる。本当に読み返すと しみじみ良い作品だなぁと思う点が幾つも見つかる。白泉社らしい鈍感ヒロインだが、その恋心に気づく過程や彼女を取り巻く環境、泣かないヒロインが泣くという感情の解放、詩春が初めて手を伸ばす描写など、他に類を見ないほど秀逸な場面だと思う。

同じ施設で育った幼なじみ的存在の直(なお)の存在も良い。といっても直は今回 蚊帳の外なのだが。直は詩春の無理な笑顔に気づく唯一の人間なので、今回の詩春の落ち込みに際して彼が何らかのアクションを起こすものだと思っていた。だが直は詩春の異変に気づきもせず、涙の解放は松永の役目になってしまった。凹んだ詩春は直にとって千載一遇のチャンスだったように思うが、その時に打席に立たせてもらえないのが直の悲しい宿命か。直は、これまでも泣けない詩春の感情を、彼女の手を繋ぐことで一緒に引き受けたことがあるが、彼女に泣く場所までは与えられなかった。そこが直と松永の ちょっとした、でも大きな違いだろう。そして詩春は直に手を引かれたことはあっても、自分から その手を求めたことはない。やはり詩春が手を伸ばす、という行為には大きな意味があるように思う。

そして詩春の感情の解放は、双子との関係の新たなスタートと言える。自分の中の双子への独占欲と向き合いながら、それでも詩春は双子を手放す準備を始める。
恋愛的にも人間的にも詩春が大きく成長した『10巻』で、双子の成長と同じように、読者は詩春の成長を心から嬉しく思う。描写は余りないが、松永の方も詩春や双子に対して誠心誠意 向き合っているのも良い。詩春を ここまで成長させてくれてありがとう、と作者にもお礼を言いたい。


分の不安を、それを押しとどめている心を見透かされそうになった詩春は思わず松永を突き飛ばしてしまう。その詩春の蛮行に保育所の人々は驚き、松永に陳謝するのだが、彼は虫がいたと嘘をついて詩春が責められないように庇ってくれた。自分の心の動きを恥じて詩春は電話で謝ることも出来ない。松永家にバイトに行くものの松永に謝れないまま1週間が過ぎる。

保育所での発表会の後、松永と交わす双子の成長の話から、彼らを見習って詩春も変わろうと松永に謝罪をする。だが それでも松永は詩春は悪くなくて こちらが悪かったと言ってくれて、その優しさに詩春の胸は苦しくなる。

一方で松永は詩春が自分を避け続けていることに悩んでいた。詩春を庇いながら、松永は内心で詩春に突き飛ばされたことにショックを受けていた。そして彼は彼で詩春に対する気持ちを持て余していた。極めて常識人の松永だから、詩春の年齢や自分の立場を考えて、自分の気持ちに向き合わない。


春は悲しみが重なり、それでも自分の力では泣けないことで苦しむ。しかも その上『5巻』で誕生日に松永から贈られた この家に居ていい証のように感じられていた自分のマグカップを不注意で割ってしまう。

こうして詩春は松永家での居場所を失った気持ちになる。でも彼にガッカリされたくなくてプレゼントを壊したことを松永に言えない。ほんの小さなことでも嫌な気持ちにさせたくないのは、きっと彼に笑って欲しい、自分をよく思って欲しいという願望の裏返しである。簡単に言えば恋は人を臆病にするのである。

そんな詩春を見て、松永は この家でのバイトが詩春の負担になっているのではと考え、彼女が辞める可能性を考える。だが翌日に勇気を出した詩春から聞かされたのはカップの件。もっと重いことを考えていた松永は この時、安堵のあまり「なんだ そんな事…」と口にするのだが、それが詩春を傷つけてしまう。

もちろん詩春も松永の優しさを理解しているから、松永が詩春の気持ちを踏みにじるような発言をした訳ではないと頭では分かっている。でもカップを巡る価値観の違いが露わになったようで詩春は悲しい。自分が何を大切にしているか、詩春は松永に分かって欲しいのだ。そういう自分の気持ちを彼に託したいのである。

どんな自分の言動もフォローしてくれた松永に突き放され、詩春の孤独は いよいよ極まる。

日、帰ってきた松永に詩春は発表会の写真を渡す。彼は全ての写真を2枚ずつ購入していたので詩春は その意図を問う。松永は1セットを彼らの祖父母に送るために2セット購入していたのだ。優しい松永の行動だが それは詩春の心を曇らせる。

松永は この日、詩春に新しいカップを買って帰っていた。その予想外の松永の行動に詩春は嬉しさよりも申し訳なさでいっぱいになる。なぜなら自分の心は汚いから。こんなことをしてもらう資格なんてないのだ。

優しさを前にして詩春は飾らない本音を吐露する。昨夜の松永の発言をひどいと思ったこと、自分は双子の祖父母が彼らを引き取ることを断念して欲しいと ずっと願っていること、そういう自分を隠そうとしても不安が湧き上がってくること。松永家の幸せを心から願うことの出来ない自分はベビーシッターの資格がないと彼女は悩んでいた。自分の都合ばっかりの自分が詩春は嫌いになっていた。


んな詩春を松永は抱きしめる。松永が意識的に詩春と接触したのはこれが初めてだろう。
そして詩春は彼に触れられると心の蓋が全て開いてしまう。双子の祖父母と会って、彼らとの別れが具体性を帯びてから ずっと泣けなかった詩春は ようやく泣くことが出来た。だが松永は詩春の泣き声に我に返り、自分の軽率な行動を反省し、文字通り詩春に手を出した手を包丁で罰する。これは松永の心象表現だろうが この自傷行為は なかなか怖い。
松永は詩春の心の推移を自分勝手だとは思わない。詩春を この家の事情に巻き込んで、そして また家の事情で彼女を悲しませている。そういう意識が松永にはあるから、詩春の不安や不満を共有したいと考えている。

施設育ちということもあり我慢強くなってしまった詩春だが、松永は何もかも受け止めてくれるという。だから詩春は この1か月ほどに立て続けに自分が感じた孤独を松永に話す。そんな詩春に松永は、詩春は この家の誰にとっても特別だということを伝えてくれる。双子だけじゃなく自分も含めているのが今回の発言の いつもと違うところだろう。そうして どこまでも自分を受け入れてくれる松永に詩春は特別な感情を抱いていることに気づく。


生(りお)は詩春が恋を自覚する前後の異常を全て見てきた。明らかに異常行動の多い詩春に問い質すと彼女は松永への恋心を梨生に話す。ただし詩春は双子のベビーシッターである間はプライベートな感情を持ち込まないと決めていた。ベビーシッターは命を預ける仕事だから。それに自分が恋愛と仕事を両立できるような人ではないと自己分析するから詩春は現状を維持する。今の幸せが詩春にとって大事なのだ。

恋心と これからの方針を梨生に話して気持ちを切り替えた詩春。その後も いつも通りを心掛けるが、一緒に居る時間が長くなると気持ちが浮つき始めるのも感じる。

11月に入り 梨生は詩春を元気づけようと もみじ狩りを企画して、詩春・双子・梨生・健(たける)・真菜(まな)の6人で秋を満喫する。この時、詩春は梨生に再び元気づけられ、思わず涙する。彼女の優しさが沁みたからなのだが、詩春が泣ける場所があることは良いことだ。我慢し過ぎて心が壊れそうになる前に、泣いて不安や不満を吐き出すことが出来ることを詩春は学ぶ。

そして双子と離れても自分には自分の世界が残る。そこには優しい友人がいる。双子との別れが世界の崩壊ではないことを当たり前のように理解して、詩春の心は また少し軽くなる。ここでは梨生の言葉と存在が軽くないのが良い。梨生は名ばかりの親友でなく、クラス内で標的にされた時も一緒に耐え忍んだ仲だし(『4巻』)、自分の境遇を聞いても梨生は他の人と変わらない接し方をしてくれている。梨生が良い子だということは読者も理解しているから、詩春が彼女を信頼するのも分かる。そして それが嬉しい。双子の世界が広がったように、この世界には詩春の世界もある。そういう大きな世界の中に作品世界がある感じが とても健やかに感じられる。言い換えれば それは詩春の客観性の獲得でもあるだろう。それが彼女をまた大人にさせている。

整腸と言えば3歳を過ぎて自己主張が増え理解力が増していく双子たち。その成長の恩恵なのか、この頃から双子の弟・葵(あおい)は詩春への好意を隠さない。葵は詩春との結婚まで考えているようで、彼からプロポーズされて詩春は承諾してしまう。松永への気持ちはどうした!? と言いたいが、葵のアプローチはちょっと遅かった。もう というか ようやく詩春が松永への気持ちに気づいたばかりなのである。でも この婚約が松永との恋愛の障害になったりする…??

3歳児じゃなくて17歳だから駄々もこねないし泣きもしない。…泣いてはいけないんだ。

LOVE SO LIFE 9 (花とゆめコミックス)
こうち 楓(こうち かえで)
LOVE SO LIFE(ラブ ソー ライフ)
第09巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

修学旅行中、詩春は偶然会った直に連れ出される! 直は詩春に想いを伝えようとするが…⁉ 松永家は、誕生会や祖父母の所へお出掛けなど楽しい毎日。でも、双子との別れや進路のことで、不安な気持ちになる詩春は…⁉ ハートフルDAYS、第9巻☆

簡潔完結感想文

  • 直前の詩春の勘違いが無ければ直の好意は ちゃんと伝わっていただろうか。
  • 永遠の2歳児かと思われた双子も いよいよ3歳に。個性と成長、そして別れ。
  • 「せっかく仲良くなった… もっと遊びたかった」という心の声に蓋をして。

春の「イヤイヤさん」は空に羽ばたかない、の 9巻。

『8巻』では第41話が大きなターニングポイントで好きな話ですが、この『9巻』は第50話が大好きで涙が溢れてきてしまった。再読して気づいたのは この回の迷い犬と双子の交流こそ双子と詩春(しはる)の立場であるという構図や、感情の処理を詩春から教えてもらった茜(あかね)、そして転んでも泣かない葵(あおい)の中に詩春の思いが託されていることに気づいて、こんな お話作りが出来る作者を ますます好きになった。初読では終盤まで感情が大きく揺らぐことが無かったと思うが、再読では中盤から大きく気持ちが揺さぶられている。本当に素敵な作品だなぁ と気づかされるばかりである。

素敵な夫婦に育てられた娘だったから、冷たい家庭に育った松永兄は心から惹かれたのだろう。

50話そして51話と詩春が泣かない/泣けないことに また涙が溢れそうになる。泣いていいんだよ 詩春、と声をかけたくて たまらない。あなたはまだ17歳で、3歳児と違って将来が見据える力を持っているから悲しくて、だけど その悲しみを全身で表現できるほど子供じゃない。でも その一方で その悲しみを自分の中だけで処理することは出来ない。そんな大人と子供の真ん中の存在だからこそ、詩春は涙を流せない。
それは彼女の性格にも起因する。母親を5歳で亡くし、施設で育ってから彼女は どんなに自分が悲しくても周囲を悲しませないように笑顔を見せる。その無理な笑顔が同じの施設で育った直(なお)は苦手だったが、彼は詩春の笑顔は彼女の心の強さだということを理解し、彼女に心から笑顔でいて欲しいと願う。

そんな詩春が大泣きしたのが『8巻』41話。松永(まつなが)に触れられて心の蓋が開いてしまった詩春は心中で渦巻いていた感情が飛び出し、彼の前で大泣きする。
今回もまた松永との接触によって詩春は泣いてしまう自分を予感し、だから彼を遠ざける。なぜなら前回以上に今回 詩春が抱える感情はワガママで、その感情を見せては周囲が困惑するだけだと分かっているから。
その泣く/泣かない の違いは何かといえば50話で双子の祖父母との出会いがあったからだった。41話では詩春にとって祖父母は会ったことがなく、彼らを単純に双子を奪う仮想敵として考えることも出来た。しかし50話で直接 会った彼らは善良で、双子の人生を支えてくれる正統な人物であることを詩春は理解する。しかも彼らは双子の母である自分の娘を亡くしており、彼らが娘の遺児である双子との同居を望む心情も詩春には痛いほど理解できる。でも彼らが正しく真っ当なほど、詩春は自分の中に澱のように溜まる自分勝手でワガママな感情があることを恥ずかしく思う。茜に教えたようには自分の感情は空に放てないのである。

詩春は自分の中に汚い感情が処理できずにあることを松永に見抜かれたくなくて、彼との接触によって自分の心の蓋が開いてしまうのを嫌がっているのではないか。それに加えて母と暮らした故郷というべき場所が消失して詩春は打ちのめされる。泣けない日々が続き、詩春は子供の頃のように無理に明るく振る舞う。50話、51話と誰の悪意も そこにはないのだけど、詩春が確実に傷つく お話になっていて、彼女を着実に追い詰めるのは見事としか言いようがない。

この詩春の異変に気づくのは これまで通り直なのか。直によって詩春の心は軽くなるのかが次巻の見所になるのかな。


巻から引き続く修学旅行では、同じ北海道にいる詩春も直も それぞれに楽しむ。それぞれに恋愛イベントが起こるかと思いきや、詩春のは ただの勘違いだった。一方、直は穂乃香(ほのか)から熱烈なアプローチを受けるが、直には穂乃香のアプローチが本気だとは思えない。ただ穂乃香は ためらっている内に他の人にとられたくないから行動するという潔さを見せる。この考え方は健(たける)を取られたくなかった梨生(りお)の考えに近いものがあるなぁ。穂乃香の考えに接して直は自分が臆病で傷つきたくないからだと思い知らされたようだ。

2日目の夜、松永から電話がかかってきて詩春は双子とも話す。茜は元気いっぱいに今日の出来事の報告をして、葵は詩春に会えない淋しさで胸がいっぱいになり言葉が出ない。でも詩春にとって嬉しいのは松永の声。それが確認できた電話だったのではないか。松永の特別性が何回も重ねられていく。


終の3日目。偶然にも詩春は直と遭遇する。すると直は半ば強引に詩春を引っ張っていってしまう。詩春に関して自分のペースにしてしまう直の俺様行動を見て梨生は、詩春が これまで恋愛と無関係で生きていたのは、これまで詩春の側で直が周囲を威圧していたからじゃないかと思い当たる。

直に詩春を連れて行きたい店なんかないと分かると詩春は帰ろうとする。だが2人きりの時間を壊されたくない直は彼女に施設の人々への お土産の相談ということで彼女を繋ぎ止めようとする。松永が絶対に介入しない今だけは詩春を独り占めに出来るのだから。
詩春は直と制服で街中を歩くのは初めて。だが自分も直も あと1年ちょっとで施設を出なくてはならず、家族のように育った2人はバラバラになる宿命。それが嫌で詩春は直と兄弟みたいに その後も出掛けたいと告げてみる。すると直は千載一遇のチャンスとばかりに、恋人や家族になれば ずっと一緒に居られることを告げるため、自分の好意をほのめかす。だが詩春は それを本気と取らない。なぜなら前日に男子生徒が自分を好きだという勘違いをしたばかりだから。こうして直の純情は全く伝わらなかった。詩春の中で直は飽くまでも家族としての関係だと固定されたままで、直となら気安く同居が出来るとまで考えている。詩春と近すぎる距離は、恋愛において直の弱点にもなるのか。


うして修学旅行が終わり、その翌朝から詩春は松永家に顔を出すのだが、松永のミスもあり茜が風邪を引いてしまった。
それにより、葵だけが保育園に行き、帰りは詩春と2人きりで自宅へ向かう。詩春と葵にとって2人きりでの買い物は初めて。そう告げると葵は、久々の詩春を独占できると分かったのか彼女に甘える。双子らしい甘え方のように見える。

大人だから手を出せない松永、家族だから意識されない直、子供だから甘えられる葵(笑)

家では ご近所の健の母親が茜の看病をしてくれていて、帰ってきた詩春は彼女とバトンタッチをする。健の母親は久々に一緒に居た茜が人見知りをしなくなったことに驚き、彼らの父親の失踪からの時間を思う。この人見知りの解消は『5巻』ぐらいから、詩春が色々な所に彼らを連れ出し、そして色々な人と交流をした成果であろう。詩春の双子へ懸ける愛情は確実に彼らの世界を広げている。双子の個性や、それを見守る詩春、そして双子たちをちゃんと向き合う松永の優しさなど、何だか不意に涙が出そうになった話だった。

詩春は帰宅した松永に お茶を淹れる。これは詩春の不在で松永が希求していたもの。詩春を お茶汲み要員だと思っているとかではなく、松永にとって詩春のお茶を飲む空間が心地よいはずだ。お茶は彼の望む温かな家庭の象徴なのだろう。詩春は双子にも松永にも それぞれ お土産を用意して それぞれに喜ばれる。中でも やはり松永に喜んでもらうことが詩春にとって重要だと思われる。


9月は双子の誕生月。松永は過ぎてしまって作中で お祝いをしていないが、これで詩春・双子・松永の誕生日が判明した。双子たちは具体的に何日という設定なのだろうか。

松永は仕事の合間を縫って、一時帰宅して彼らの誕生日を当日に祝おうとする。これは詩春も松永も来年は一緒に祝えないかもしれないという気持ちがあるからだろう。閉店間際のケーキを受け取ったり、すぐに とんぼ返りしたり松永は大変なのだが、詩春の笑顔で それも帳消しになる。そして詩春はケーキを落としたミスも帳消しにしてくれた。何だか いつもとは逆で詩春が どっしりと構えていて、落ち着かない松永が詩春の存在に救われている。

プレゼントを渡し落ち着いた後、松永は詩春に、入院中の祖母に外泊許可が出たため、松永と双子、そして詩春で彼女の居る静岡行きを提案する。思わぬ提案に詩春は自分は部外者だと一線を引くが、松永にとって詩春は双子を笑顔にしてくれる最高で最強の人。それはもう家族と言っていい存在なのだ。


うして9月半ばの週末、彼らは双子の祖父母が住む静岡に向かう。って双子の誕生日って9月の末なんじゃなかったのか?(『8巻』水族館回より) それに高校の修学旅行も9月の2学期開始直後に行ったのか? 何だか色々と日程が不自然でならない。それにイチョウの葉が落ちるのも早すぎないか。ここは北海道ではなく静岡なんだぞ…。

松永は詩春がいると自然体の双子の姿を祖父母に見せられるという考えもあって詩春を同行させている。

祖父母宅の近所の公園でで詩春は初めて双子の祖父母・竹川(たけかわ)夫婦に会う。真っ直ぐ家に向かおうとしない双子たちの要望を聞いて、公園で遊んでくれたり、(あまり笑えない)冗談を言ったり、詩春は竹川夫婦に好印象を抱く。だけど同時に彼らは詩春にとって双子を連れ去ってしまう人でもある。それが双子の為と思っても彼らの介入は別れが近づくことを意味しているから詩春は割り切れない。

逆に詩春も癇癪を起しかけている茜、そして無言で悲しみを噛みしめている葵の感情を上手にコントロールすることでベビーシッターとしての才能を見せ、竹川夫婦を感心させたことだろう。そんな詩春の姿は子供好きだった娘、つまり双子の母親に似ていると祖母は言ってくれる。だが娘のことを語ると祖母の目から涙が溢れ、詩春は改めて彼らは娘を失った人たちだということを思い出す。娘を亡くした祖父母にとって双子は彼女の忘れ形見。その子たちを手元に置いて育てたいと思うのは悲しくて切実な願望だろうと詩春は気付く。

だから詩春は少しずつ、茜が「イヤイヤ」を空に放って小さくしていったように、自分のワガママと言える感情を減らし、真に双子のためになる道を考え始める。ただ詩春の中で小さくしようとしても消えないから困るのだ。


校2年生の2学期は進路を考える時期。
詩春の現在の志望校は3年制の夜間大学の幼児教育学科。彼女は他の生徒と違い、進路だけでなく卒業後の暮らしを考えなくてはいけない。一人暮らし、学費、生活の事、それら全てを卒業後は背負って生きる。

詩春が この大学を志望するのは、かつて母と暮らした家から近いから という理由があった。それが新生活の後押しになると考え、彼女は その大学を志望する。高校2年生の今から真剣に考えるのは、1年後の自分の心境が分からないから。もしかしたら1年後の今頃は既に双子との別れを終え、胸にポッカリ穴が開いて何も考えられないかもしれない。だから心身が健やかな今の内から、将来に向けて動き始める。

詩春は同学年で同じ境遇の直にも話を聞く。彼は予想に反して就職を選ぶ。成績は優秀だが人に借りを作る奨学金を利用してまで大学に行きたくないらしい。だから社会に出て、その後で学びたくなったら自分の貯金で改めて進学するかもしれないという。直らしいし、彼は一刻も早く詩春を守れる大人になることが目標なのだ。

今 できることとして詩春は自分が今後 住むかもしれない、かつて母と住んでいた土地を訪れる。だが彼女が母と暮らしていたのは10年以上前。街並みは様変わりしており、自分の故郷だと思っていた この土地は知らない街に思えた。しかも住んでいた思い出のアパートは跡形もなくなっており、彼女は母との思い出が消えたように思えたことだろう。その後、詩春は駅のホームで魂が抜けたように茫然としている。泣いたら少し楽になれるのに、詩春は性格上 泣くことが出来ない。
これは今の詩春には泣きっ面に蜂だろう。泣きたい時こそ泣かないのが詩春の強さなのだが、それは心の負荷に なり得るもの。

弱い自分を見せないよう詩春はテンションを上げ笑顔のキープに努める。しかし『8巻』の墓前の時のように松永の前では弱さが溢れ出すことを恐れた詩春は松永を力強く拒絶してしまう…。