八田 鮎子(はった あゆこ)
オオカミ少女と黒王子(おおかみしょうじょとくろおうじ)
第4巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
佐田くんに手作りチョコを渡そうとしたエリカだけど、草食男子・日下部くんにも同じものを上げていたことを知ると佐田くんは大激怒!! 偽装カップルを解消することになったエリカと佐田くん! 告白の返事が保留中のまま、日下部くんはホワイトデーにエリカをデートに誘うがエリカの気持ちは揺れまくり! いつも優しく接してくれる日下部くんと付き合うのが幸せなんだろうけど、佐田くんとこのまま別れていいの? 意地っ張りの2人が迎えた結末は…!?
簡潔完結感想文
- 恭也の嫉妬から出た言葉にエリカも応戦して二人は偽装カップル解消。新しい恋を望むエリカだが…。
- エリカが恋の迷いを吹っ切った時、ご主人様のお迎えと ご褒美の言葉が。いやぁ、良い最終回だった。
- 進級。登場人物たちが まとまる作為的クラス替え。新キャラ チャラ男の神谷は恭也を啓蒙するが…。
偽装解消、擬態解除、擬似餌に食いついたお前らに文句は言わせない 4巻。
いやー、良い最終回でしたね、と言いたくなる『4巻』の第11話でした。
(『2巻』に続いて2回目の最終回候補)。
少し強引な解釈だけれど、私は本書全体を最低のカップルが最高の2人になるまでを描く物語だと思っている。
この『4巻』冒頭では まだまだ最低ラインの2人だが、
後半では少しずつ2人は気持ちを寄り添わせ、どこにでもいるような普遍的なカップルになり始めている。
そしてオオカミ少女・エリカの虚言が真実となり、
偽装カップルが本物のカップルになったことで物語は一段落ついた。
そして、続く第12話からは、腹黒王子担当の恭也(きょうや)も無理したキャラ作りから卒業したと思われる。
売れるために自分を偽ったキャラは長持ちしません。
それなりの人気を得た後は、あれは事務所の意向で演じてたんです、と正直に言うしかない。
『オオカミ少女と黒王子』、これにてどちらのキャラ作りも崩壊を迎えました。
『16巻』のおまけマンガの作者のセルフツッコミの中に、
「あの頃(『1巻』3話)はまだ(恭也の)キャラが定まってなかったんだよ…」という言葉がありますが、
作者も恭也もキャラが定まらない中で人気が先行して、苦しい時期もあったのではないか。
結婚したり、子供が生まれると人生観が変わるように、
自分の中のエリカへの気持ちを素直に認め、エリカを想う恭也もまた変わったのだろう。
まぁ、様々な批判の声にも恭也なら
他人に対して変わった、ガッカリだというヤツは、
余程、自分が変わったことのない人生経験の乏しいヤツなんだろうな、と一蹴するだろう。
顔も知らないお前(読者)の理想の男として 俺が存在し続けなきゃいけない理由はないだろ、とも。
その点、恭也に1回もトキメかなかった私はダメージが少ないですね。
少女漫画としては、また一つ個性を失ってテンプレ物語に近づいなぁと多少の落胆はありますが。
そして腹黒王子から早くも卒業した恭也に残った特性と言えば、
イベント(主に恋愛関連)が嫌いな、彼女が出来なくて こじれた非モテ思考と、そして省エネ人間ですね。
そこから連想したのが今回の感想のタイトルにもなっている、
「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは、手短に」という言葉。
これはアニメ化・実写映画化されたミステリ作品『氷菓』の主人公のモットー。
省エネ人間の彼の言葉は、まんま恭也にも適応される気がします。
奇しくも、恭也と『氷菓』の主人公の実写映画化の際の演者は同じ人。
余力を残して、どこか気だるげに生きるのが現代的ですかね(『氷菓』は2001年の作品ですが)。
そして、エリカのことに関して『4巻』後半からは、
「やらなくてもいいこと」から「やらなければいけないこと」に格上げされたのも本当のカップルっぽいですね。
恭也の心境としては「逃れられないこと」かもしれませんが…。
それでも付き合ってあげるのが、彼氏としての自覚の出てきた恭也の優しさなのかも。
話は前後しましたが、本書のクライマックスは前半。
偽装カップルを解消して、一度距離を置いてみてからこそ、自分の隣の空白を感じた2人。
その空白は自分に好意を持ってくれる優しい男の子・日下部(くさかべ)では埋まらないものだった。
日下部は完全に当て馬役で、恭也との比較対象でしかないのが涙を誘いますね。
そして恭也が迎えに来る前に、エリカが独力で ちゃんと答えを出しているのが良いですね。
これでエリカが恭也の姿を見つけたから、日下部を突き放すなどしたら非難轟々だろう。
まぁ恭也に関しても自分の機嫌が悪い時、嫉妬した時にエリカに暴言を吐いて傷つけて、
それでエリカが誰かのものになりそうだから駆け寄ったら、エリカが戻ってくるんだから楽なもんです。
腹黒=ワガママで、こんな お子ちゃまなマザコン野郎(私の中では)が好きになるのなら、止めませんよ。
DV被害を受けていても離れられない心理って こんな感じなんでしょうか…。
ただ恭也がキャラ変して ようやく私の守備範囲の少女漫画になった気がします。
そして日下部くんは これにてお役御免。
一定以上の役割を果たしたので、2年生の進級時には同じクラスになれませんでした。
後々、マンネリ回避のサブストーリーとして登場するので、日下部ファンは要チェックです。
2年生になりました。
進級でエリカの本当の親友・三田(さんだ)さんがクラスメイトに。
これによって首の皮一枚で同じクラスになったものの、お払い箱になるのはマリンと手塚。
手塚が恭也のオマケという意味で「うちらなんかオマケのくせに」とエリカを問い詰めるが、友だちとしてもオマケ扱いです。
これは作者の愛着が故なんですかね。
三田さんがクラスメイトになる意味もあまりなく、
マリン&手塚とクラスが別にならない意味もあまりないように思われるが…。
そして新キャラとして神谷(かみや)が登場。
外見は、どこぞのYouTuberを連想しました。
顔の小ささとスタイルの良さが際立っているけど、顔自体だけでみるとイケメンじゃないよね的な(偏見)
そして典型的なチャラ男です。
なんで男の追加キャラってチャラ男が多いんでしょうか。
三枚目で お調子者でお話にバリエーションが出やすいからでしょうかねぇ。
どうしても私の中では『君に届け』の健人(けんと)が想起されます。
登場してすぐに主人公に ちょっかいを出してみたり、ヒーローの方(恭也・風早くん)にも遠慮なく近寄ったり、
博愛主義者で特定の女性と親しくならなかったり、結末は独り身だったり(ネタバレ)、共通点が多いです。
恋愛漫画としては実質最終回の次のお話といった感じで、
読者の誰も興味のない展開が だらだらと水増しされている感じが否めません。
『5巻』まで続く神谷メイン回が終わると、大人しくなって、
恭也を振り回すパワーの持ち主として かなり活躍するので、
眉を顰(ひそ)める人も、もう少しだけ我慢をするといいかもしれません。
今後は作品の良いムードメーカに なってくれます。
まぁ率直に言うと漫画としては佐田がキャラ変してしまっているので、
佐田の外見をした別人のような誰かが主人公のお話が『サザエさん』のように続いていくだけかもしれません(シビア)。