星森ゆきも(ほしもり ゆきも)
ういらぶ。ー初々しい恋のおはなしー
第11巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★☆(5点)
大ヒットこじらせラブ、ついに完結!
残念系美少女とこじらせイケメンがついに結婚! ラブ最高潮のフィナーレ!!
優羽たちが高校を卒業して4度目の春…
ついに優羽と凛が結婚…! そして和真も暦にプロポーズ!?
さらに実花にも“運命の王子様”が現れて…!?
最後までラブもりだくさん! 最幸で最高の完結巻!
簡潔完結感想文
- お隣同士の幼なじみフォーエバー。最終回ラストページのために本書はあった。
- 番外編たち。凛は勝手に早い段階から結婚へと話が進めていることが分かる。
- 最後まで ぼっち だった実花救済のための短編。偽装交際率75%の少女漫画だお☆
籠の中の鳥は、世界の広さを知らないまま、の 最終11巻。
いよいよ最終回が収められた最終巻です。
高校卒業から4年後、結婚式に臨む優羽(ゆう)たちを描いて、物語も完結。
最終ページこそ作者が描きたかった理想形なのだろう。
11巻にも及ぶ連載で、少しも世界は広がらないことが結論であった。
凛(りん)に愛されながらも粘着質にイジメられる優羽の姿がメインかと思いきや、
幼なじみという言葉に呪縛されてしまった4人の姿が本題だったようだ。
幼なじみ4人組と その配偶者で完結している世界。
私は最終ページを見て、少しゾッとしました。
これを見てようやく、この物語でモブが徹底的にモブだった理由が分かった。
彼らは自分たち以外の人間を必要としていない。
そのことが伝わる一枚絵だった。
そのために優羽は高校生活で一人も友達が出来なかった。
それどころか名前を持つ登場人物は選ばれし上級国民7人+1以外に存在していない。
モブはモブ、その一線は どんなに物語が進んでも越えられないもの。
その身分制度を まざまざと見せつけられた作品となりました。
主人公たちを持ち上げるためだけに存在したモブ、
そんな あからさまな差別が作品に苦みを残してしまった。
大事なのは幼なじみ4人組、その理念からすると、
そこから外れる実花(みか)は実は、名前のあるモブなんじゃないか、という疑念が湧く。
なので彼女の幸せだけは永遠ではないのかもしれない。
あのラストシーンで住む家を与えられていないのも示唆的である。
実花のパートナーは、幼なじみたちの高校生活では面識のなかった尾田(おだ)くん。
幼なじみとの距離はさらに遠い…。
更には幼なじみたちの共通点は、初恋を成就させていることにある。
その「初(うい)ラブ」が仲間の証明だが、
実花は既に凛と蛍太(けいた)に恋をしていて、3度目の正直の恋愛成就である。
更に尾田くんも実花の前の男女交際を匂わせているので、初恋の資格がない。
初交際が継続しているという点では、「ういらぶ。」への参加資格があるのかもしれないが、
正直、当落ラインぎりぎりというところである。
だから あのラストの写真でも見切れるように収まっている。
いつ その存在が、写真から排除されても おかしくない。
そんなモブとの境界線上を生きる上級国民なのでした。
映画化などメディアミックスが多々あったということもあり、
いつにもまして各方面への感謝を綴る作者。
絶対に悪い人ではないのだろうけど、
個人宛のメッセージは紙面を使わなくてもいいのではないか、と思ってしまう。
『ういらぶ。』で代表作が出来て、漫画家生活も順風満帆化と思いきや
2021年に謎の改名をしたと知って驚いた。
折角、世の中に名前が定着してきた このタイミングで、である。
作者のメンタル面の問題でなければ良いのだが…。心配するばかりです。
それでは各話の感想を。
最終話(55話)。
約束通り、大学を卒業すると同時に入籍、結婚式を挙げる優羽と凛。
ここでは4年後時点での彼らの近況を知ることが出来る。
ただし新郎新婦である優羽と凛の具体的な近況は語られていない。
凛のことだから、当初の目標を叶えているだろうと思うが。
となると優羽も卒業後、即 専業主婦という道なのだろうか。
6年制の医学部と薬学部に通う和真(かずま)と暦(こよみ)は、まだ大学在籍中。
蛍太は商社勤務が決定。
るり先輩は この時点ではオーストラリア在住で、わざわざ結婚式に飛んできたらしい。
でも いくら優羽の友達が少ないとはいえ、優羽の友達と呼ぶには、るり先輩は関係性が薄いような気がする。
と思ったら、もっと縁遠い人が列席している。
それが実花の隣にいる尾田くん。
初読だと、こいつ誰だよ状態だが、その答えは中盤に収録されている「花とモンキー」にある。
けど、どう考えても尾田だけは結婚式に参列する間柄ではない。
描かれなかった彼らの大学生活の4年間めちゃめちゃ遊んだ、という脳内補完が必要です。
ちなみに、右ページの中段、最前列に並ぶ この眼鏡の人が未登場だった凛の父親なのだろうか。
隣の黒髪の人(モノローグの吹き出しで髪と手しか見えないが)が凛の母親だろうから、
彼が父親である可能性は非常に高い。
左ページの左上は両家の両親が母親同士、そして父親同士で歓談しているところかな。
そうなると凛は髪の色も顔も母の血を色濃く継いでいるみたいだ。
でも実は凛父もモラハラ夫だったりして…。キャー。
この日のことは、暦視点で語られて、この日、優羽に負けないぐらい幸せなのは暦だという話で終わる。
凛が この結婚式で言っていた自分たちの新居というのが最終ページのものなのかは不明。
経済的問題など 敢えて考慮しないで、このラストシーンが描きたかったのだろう。
そして るり先輩も日本に戻ろうとか言い出すし、話がグッと内向き志向になった。
大学卒業後の、この2年余りはオーストラリアで働けたのかなぁ…。
彼女だけ外向きな夢を見ていたのに、幼なじみの引力から逃れられなかった印象を残す。
果たして これが本当に幸せなのか年齢のいっている私などは疑問に思ってしまう。
ラストページは、そこからまた数年後だろうか。
優羽は子供を抱いている。
とても凛似の子だが、女の子かもしれない(笑)
優羽の肩に乗る文鳥の文乃助(ぶんのすけ)は、本当に初期の優羽の個性を出すためだけに存在した。
彼の出番は物語の進行と共に激減し、まるで愛情が薄れていったかのように映った。
それが一番悲しかったかも。
ラストの写真、他のカップルは結婚時期が違うこともあってか子供はいない様子。
この作品なら、子供同士も同級生にして、彼らがまた幼なじみで交際するなんて話に持っていきそうだったけど。
でも まだ優羽たちの第二子とタイミングを合わせることはできるぞ!
まぁ この場合、交際するのが蛍太の子供か暦の子供か、で揉めそう。
次は今回は起きなかった幼なじみによる三角関係ラブストーリーか(笑)
連載終了後15年ぐらい経過したら、それをやって欲しいなぁ。
番外編#1。
交際したての幸せな一幕。
娘の夜間の外出など、優羽の親たちは何も言わないのか、と気になってしまう。
厳しいのか放任なのか、よく分からない設定だった。
特別編。
旅行後(『10巻』)の2人の話。なので性交渉は禁止。
優羽の両親が親族の家に一泊して、2人きりの夜を過ごす。
まだまだ素直になれない凛は反省を繰り返すが、優羽は どんなことでも嬉しい。
メンタル面の変動を考えると優羽の方が健やかに幸せにそうですね。
しかし優羽の将来は専業主婦にフィックスされていて、
料理など家事など分担しないと宣言している凛はどうだろう。
彼自身が親の不在で歪んでしまったから、その反動で保守的な家庭像を夢見てしまった結果なのかな。
女性の社会進出と反対向きの話が出来上がっている。
スキンシップ過剰で気を失うのは優羽のデフォルト設定みたいだ。
彼女は いつ気を失わなくなったのだろうか…。
番外編#2
彼らが同棲生活をするようになった初日の様子。
初日で羽を伸ばして、約束を破ったら面白かったんだけど。
勝手に約束をした凛と違って、優羽の方が欲求不満になりそうだ。
番外編#3
暦のバレンタイン話。
これは優羽の時とあんまり変わらない流れだなぁ(『7巻』)
素直になれない暦は、凛とよく似ているのかもしれない。
凛とカップルになったら、ツンツンカップルで喧嘩ばかりな日常だろう。
そして もし暦が男だったら、本気で優羽を奪いに来ただろう。
素直になれないから、凛と共に2人して彼女をイジメる毎日。
けど時々、双方とも抜け駆けして優羽に甘い言葉を囁く。
優羽の苦労は2倍になるが、それはそれで面白そうな漫画になりそう。
花とモンキー
高校3年生になっても彼氏が出来ない実花の物語。
地元の友達に彼氏同伴で夏祭りに行くと言ってしまった実花は…。
はぁ…、ここでも偽装交際か。
本書で偽装交際をしなかったのって、蛍太と るり先輩だけじゃん。
メインカップルの3/4が偽装から恋が始まるって どうなのよ。
引き出しが少ないというか…。
新キャラ・尾田くんは白い凛って感じですね(主に髪)。
そして彼もまた舌を出す。
引き出しの少なさよ。
ここでも容姿を褒め称えるのは常にモブ。
そういえば優羽たちの時も、好きになる相手の容姿は関係がなく、その人を好きになっている。
実花は凛と蛍太のルックスから入っていたが、尾田は違う。
でも、凛との類似性を考えると、無意識にビジュアルで選んでいる疑惑が拭えないが。
ここでは大学生となった優羽たちもゲスト出演。
蛍太の顔立ちは、どんどんと薄くなっていくなぁ。
一方で鼻ばかり高く大きくなっていくからバランスが悪い。
恋するレイジー番外編
作者の次回作の出張版。
無気力イケメンでも、成績学年トップ。
そんな人に無条件に愛されるドジっ子の私。
猛烈なモラハラはないが、溺愛系には変わりなさそう。
作風が あまり変わらないのではないかと心配する。
私の中では、この作品で次作を猛烈に読みたいと思わなかった。