《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

嘘つきは 恋泥棒の始まり。あの日から私の恋心は あなたに盗まれっぱなしだよ。

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八田 鮎子(はった あゆこ)
オオカミ少女と黒王子(おおかみしょうじょとくろおうじ)
第16巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

ついに卒業を迎える佐田くんとエリカ! あんなことやこんなこと、思い出せば佐田くんに振り回されてばっかり!? 高校生活ラストを飾るふたりの卒業式はいったいどんなものに─? そしてエリカが京都に進学した後の遠距離恋愛ストーリーや、同棲を始めたばかりのラブラブ(?)秘話も収録! さらに! 佐田くんとエリカの結婚の話も…!? 出会いは小さな「ウソ」から始まった。けして平坦ではなかったふたりの物語。「オオカミ少女と黒王子」、フィナーレです!
【収録作品】オオカミ少女と黒王子 番外編

簡潔完結感想文

  • 卒業式の後、誰もいなくなった校内を散策する2人。どんな場所でも いつもあなたが隣にいた。
  • 遠距離恋愛で初めて恭也がエリカの家に。彼女の家の生活感に戸惑いを隠せないなら いっそ…。
  • 最終話。元 オオカミ少女と元 黒王子は夫婦として親として普通で かけがえのない幸せの中にいる。

福に順序なんて関係ない、今ここにある全てが愛の結晶 の最終16巻。

高校1年生の時、友だちに彼氏がいると嘘をついたことからオオカミ少女・エリカの自業自得の苦難は始まる。
街中で盗撮した男性を彼氏だと偽ったら、その人は同級生。
嘘が露見する前にその男・佐田 恭也(さた きょうや)に偽装交際を申し込んだら、その人は黒王子。
人の嫌がることを楽しむ性格の王子様と、その飼い犬としての生活は いつしか一転。
偽りや装いはキレイに剥がれ落ち、その人は ただの交際相手となった。

好きになる順序も、そして子供が できる順序も 予定通りではなかったけど、何か問題でも?
幸せになる道筋は決して一つだけではないこと、それが私たちの教訓。


業式は、恭也の誕生日だった『14巻』に続いて思い出巡り。
好きになった人も なってくれた人も、ライバルも悪役も、もう一度 最後の顔見せ。
答辞は意外なあの人が立候補により努める。

恭也は設定全部乗せのスーパーエリートではないから答辞は努めませんでしたね。
「少女漫画あるある」として答辞の私的利用を恭也にもして欲しかった。
壇上から愛の告白をする恭也。離れたくないと泣きぬれる恭也。
…ないね。たとえ成績が学年一位だったとしても断固として拒否するのが恭也だよね。

こちらも定番ですが、2人だけでの学校巡りの場面は私まで感慨に浸りましたね。
さすが四六時中一緒にいたカップルだけあります。
少女漫画の中でも屈指の密着率だったんじゃないでしょうか。
恭也の言う通り。本当に「どっち向いても どこに行っても 全部おまえがい」る状態ですね。

宝物となった3年間、そして2人の物語は どこまでも続く。


れから4か月、7月後半となった時点から2編目が始まる。

新生活への対応と工芸学校の課題、そして先輩職人である おばさんの手伝い&修行でゴールデンウィークには帰省できなかったエリカ。
あれだけ四六時中一緒にいた恭也の姿を4か月間も見ていない。
その恭也と遂にエリカが住む京都で再会する…。

大きくページを割くのは京都観光。そして4か月経過した時点での友人たちの近況が語られる。

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素直な言葉は もらえないけど、以心伝心だよ。あと いつぞやの花火大会で切望した念願の浴衣コスプレだよ☆

どうやら過去のトラウマとマザコンを克服した恭也(私の持説)の最近の処世術は、
エリカに逆らうのに使う労力が無駄だということみたいですね。

『6巻』の神戸での花火大会ではお願いしても断固として着てくれなかった浴衣を、
今回は「…着るか? せっかくだから」と一緒に着用してくれる。
もしかしたら恭也は、あの時のことを覚えていたのかもしれないと思うとニヤニヤしちゃいます。

それは「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは、手短に(米澤穂信『氷菓』より)」、
という恭也の省エネ主義ともマッチした考え方かもしれない。

だが、裏を返せば、恭也はエリカの言いなりになっているとも言える。
これは主従逆転の静かなる下克上である。

今の恭也にならエリカが「3回まわってワン!」を命ずれば、やってくれる気もする。
根気比べの調教合戦での勝者は、しつこさの差でエリカなのかもしれない。
何だか恭也の考えもエリカに読まれている節もあるし…。

この回のメインは観光ではない。
エリカの一人暮らしの部屋に恭也が初めて入ることによって恭也が感じる気恥ずかしさと、それを解消する方法についてである。

再会すれば反動で別れの寂しさが大きく襲うだろうが、
恭也はその前に、エリカが たいそう喜ぶ置き土産の言葉を残して帰京する。
「卒業したら一緒に住むか」。

下世話な話になりますが、エリカの家では3日間何もなかったのでしょうか。
初日の夜は恭也が我慢している様子が描かれてますが、壁の薄さなどを気にしているのか?
高校生の頃もずっと手を出してこなかったりしたが、性に淡白な人たちなのかしら。


く番外編は、同棲編です。

知り合って5年ほど経過している2人だが、一緒に暮らすとなると性格の違いなどが如実に表れ始めた。
掃除や洗濯、生活のすべてに個々人のやり方、そして欠点が浮かび上がる。
妙に現実感に溢れた一編ですね。
親友・さんちゃん が いなければ、このカップル何度か別れてるんじゃ…。

幼い頃に両親が別居し、ほとんど一人暮らしのように生活していた恭也に初めて家に誰かが待つ生活。
それが家族の始まり。

が、エリカが恭也にとって母親のようなになってしまい、マザコンが再発する危険性もありますね。
エリカ、女であれ!


が、最終話ではエリカは名実ともに母親になっているから驚いた。

高校卒業から9年、27歳前後のエリカと恭也は、結奈(ゆいな)という娘(推定3歳)と3人で暮らしている。

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嘘から出た実(まこと)。2人から生まれた娘。あの時から そして これからも続く 幸せ。

2人は4年前に結婚式を挙げたそうだが、その時、エリカは妊娠中。
エリカに妊娠が告げられてからプロポーズをした(巻末おまけマンガより)。

結婚と妊娠の順序が恭也にとって予定外だったのは、交際と好きになった順序が違う2人らしい展開ですね。
どんな順番であっても、たとえ不純な動機から出発しても、
その人が運命の人であれば必ず幸せになれるという運命論っぽい感じですね。

繰り返しになりますが、本書は少女漫画の中でも純度の高い純愛漫画なのである。

初公開の父親としての恭也は娘に甘い良きパパ。
娘もまた いつの日にか彼氏を家に連れて来たり、妊娠から結婚という順序で幸せになるかもしれない。

因果応報。恭也という彼氏に初めて接したエリカ父のような一抹の寂しさを恭也も味わうのだろう。

そして初公開は酔うと可愛くなる恭也が見られます。
私としては酔ったエリカも見たかった。
酒癖の悪い父親の血を引いているかどうか検証したい。

もしかして結婚するより先に子供ができた裏には、お酒が絡んでいたりして…。

『16巻』の表紙は『1巻』と同じ構図、同じ服装の表情違い。
『1巻』ではどこか濁っているように見える恭也の眼だったが、『16巻』では素直に笑っている。
この変化こそが、本書が描いてきたものだろう。

さて、強烈なキャラクターを前面に押し出して始まった2人の恋模様も ここで終幕。
嘘つき と ご主人様、サイテーの2人の物語は、フツーの幸せな光景で幕を閉じる。
私も嘘でも ついてみようかな…。