《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

天然で鈍感なオトナくんなので、精神的な距離ではなく身体的接触で胸キュンを発生させる。

となりのオトナくん(2) (別冊フレンドコミックス)
るかな
となりのオトナくん
第02巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

お隣に引っ越してきた日野っちのことを知れば知るほど惹かれていく莉々花。でも相手は5歳年上のサラリーマン!! 妹ポジションから恋愛対象になりたいけど、日野っちの無自覚な色気(!?)に翻弄されっぱなしで――――!! ギャル×サラリーマンのおとなりラブ、第2巻☆

簡潔完結感想文

  • 距離が縮まっているような いないような、面白いような面白くないような…。
  • ヒーローとは真逆の いかにも当て馬なチャラ男が出るが、なぜ出てきた!?
  • 文化祭は距離が縮まるチャンスなので、オトナくんを学校に召喚してみた。

簾(のれん)に腕押し という徒労感が拭えない 2巻。

作中では夏から秋にかけての様々なイベントが用意され、作者の読者を楽しませようという努力は見えるのだが、相手が天然のオトナ男子だからか、いまいち手応えのないまま『2巻』も終わってしまった。マイペースなことが愛おしくなるのがヒーロー・日野(ひの)の特徴なのだが、彼の気持ちが見えなさすぎて、ヒロイン・莉々花(りりか)の奮闘が空回っている印象に変わってしまう。彼女やライバルの存在など状況的な問題ではなく、最大の問題は日野の性格であることは物語として間違っていないのだが、歯車が回り始めた実感がない。つまらない、とは全く違うのだが、そんなに面白くない という言葉は否定できないというのが正直な感想。

作者も動いてくれない日野に業を煮やしてか、今回は肉体的な接近で胸キュン場面のノルマを終わらせていたような気がする。酔って寝てしまって莉々花に抱きつくとか、不法侵入をバレないように2人で身を寄せ合うとか、オトナ男子が犯罪にならない範囲で身体的な接触が出来るよう作者の苦心の痕跡が見え隠れする。本書は17歳と22歳の5歳差の恋愛を描いているが、JKと社会人という逮捕されうる身分の差があるので気を遣わざるを得ないのだろう。22歳の日野が17歳との接触に赤面したりしたら、その理由が下心があってもアウトだし、女体に緊張しているのではオトナ男子とは言えなくなってしまう。
精神的にも日野が早々に莉々花に好意をもってはいけない。誠実な日野だから気持ちに気づいた時は莉々花を受け入れる覚悟を持った時になるだろう。そして それは もう少し先でなければならない。ただでさえ日野はマイペースでポーカーフェイスだから彼の心は見えにくい。そういう理由で本書の恋心は なかなか動かない。ギャル設定といいオトナ設定といい、作者が設定に振り回されている印象が強くなるばかりである。

オトナからJKに手は出せないので、高所の物を取るとか声を出させない場合のみ身体的接触は可能。

私は日野のようなヒーローが嫌いじゃないから読んでいられるが、さすがに少女漫画連載として これが心から面白いかと言われると微妙なところである。失礼ながら面白くなりそうな予感が予感で終わるのが本書だと思う…。
日野に彼女がいないことも あっさり発表してしまったし、女遊びをしている疑惑も すぐに解消されてしまう。そして『2巻』から莉々花の学校に当て馬っぽい男性が登場するのだが、一体 何を目的にして作者が出したんだか行方不明のキャラになって終わる。男女のライバルを出さないままなら掲載誌「別冊フレンド」の短期連載で多い8回で終わらせるぐらいが ちょうど良い2人だったのではないかと正直 思ってしまった。日野のことは嫌いじゃないがヒーローとしては力不足な部分が正直ある。それなら彼が莉々花に好意を表せない理由があって、両片想いなのだけど、なかなか叶わない悲恋として描いた方が良かったような気がする。『2巻』までは得るものより虚しさの方が勝ってしまっている。

そして「となりのオトナくん」というタイトルだが早くも自宅マンション外での接触の方が圧倒的に多い。莉々花の料理上手設定もあるのだから、ゆっくりと食事を囲みながら距離感や関係性を縮めて欲しかったなぁ。そういう会話劇の中で愛しさが募るような物語として読みたかった。「別フレ」にノルマのように存在する胸キュン場面は どうも私は好きになれない。特に日野には わざとらしい展開をさせて欲しくなかった。


独な誕生日を日野が救ってくれたことで莉々花は救われ、そして その優しさに ますます日野への好意を深める。そして密室で食事をする2人。こういう行動を日野が出来るのは、莉々花にとって自分は「おじさん」の年齢で、完全に恋愛とは切り離されていると考えているからなのだろう。実際に この日の別れ際、莉々花に「近場のお兄ちゃん」くらいに気軽に頼って、と言っている。これは自分たちを男女と考えないから出来る行動。そう類推した莉々花は自分が日野を身内として考えたことはない、と好意を滲ませる発言を思わずしてしまう。日野が その真意を問い質す前に莉々花の両親が予定よりも早く帰宅し、この空気は霧散する。

夏休みに突入し、莉々花は母親との水入らずの時間を過ごす。だが試験前の家庭教師以後、日野とは会わない日々が続く。それを莉々花は自分の発言が原因と考える。そして距離を取られるのは、間接的な お断りで、莉々花は自分の年齢や幼さに その原因があると考えてしまう。
そんな娘の悩みを母親はお見通しで、彼女の背中を押す。こうして前向きになった莉々花は翌日に日野に会う勇気を取り戻す。だが当日中に気分転換で向かったコンビニで日野と遭遇し、それぞれ購入した同じアイスを食べながら歩く。それはまるで1つのアイスを分け合う良心のようで、莉々花は嬉しかったことだろう。

日野が音沙汰なかったのは莉々花の家庭の事情を考慮してのこと。久々の母親との時間を邪魔したくないから彼は遠慮していた。それに加え、自分が莉々花にとって「近場のお兄ちゃん」と驕っていたことを否定され、彼は多少 落ち込んでいたらしい。莉々花がネガティヴに考えていたように、日野も莉々花から距離を取られたと思っていた。その日野の思い違いを莉々花は訂正し、頼れるオトナだと日野を定義づける。

莉々花の両親が離婚していて、母親は遠い異国で生活している。その母親が娘の変化や悩みに気づいて背中を押す。これは最終回で使っても良いぐらいのネタなのではと思った。こんな あっさりと使ってしまうには勿体ない。

日野の恋愛対象外だから気軽な交流が出来るのだが、それでは満足できない莉々花のジレンマ。

休み中に友達と海に行く予定を立てていた莉々花。だが運転手役の父親が腰を痛め、その代行として日野が立候補する。ここで莉々花の友達と日野の初対面となる。『1巻』では日野の会社の同僚と莉々花が会っていたが、ここでは その逆である。お互いの世界を知っていく、というのが関係性を深めることに繋がるのだろう。しかし作画カロリーの問題なのか、少女漫画の夏の海って プライベートビーチかなってぐらい人が居ない…。

海シーンで行われるのがナンパ。日野は声を掛けられるがタオルを頭にかけて情報をシャットダウンすることで拒絶の姿勢を示す。日野らしからぬ冷淡な対応だと思うが、自分を見た目だけで好意的に受け入れ、一気に距離感の詰めるような女性との苦い思い出があるみたいだ。そうして一方的に期待され落胆された過去があるから日野は自分が傷つかないようにしているらしい。
それでも莉々花は長い期間、長い時間を共有しても日野に落胆したりしない。あちらから ずっと興味をもって話しかけてくれることは日野の安らぎになっているに違いない。年の差があっても それを乗り越えられるパワーとコミュ力、それがギャルの持つ陽性な資質なのではないか。

莉々花のお陰で彼女の友達とも自然と話せるようになった日野だが、当の莉々花は その場面を見て疎外感を覚える。そこで単独行動を取った際に、今度は莉々花がナンパされ強引に誘われる。そこを助けるのが日野。日野にしては珍しく少女漫画ヒーローらしい活躍をしている。その分、既視感がある展開だが。運転時の車庫入れの姿勢とかも よく指摘される萌えである。最後の もっと長く一緒にいたい莉々花の落胆を日野が勘違いしてフォローするとか、日野が撮った写真の中にいる自分の表情や、これを撮りたいと彼が思ってくれたことの嬉しさだけで萌えは成立している。保険のように入れているお約束展開が作品の足を引っ張っている気がする。


休みも終わり2学期が始まる。そんな区切りで登場するのが横原(よこはら)というクラスメイトの男子生徒。彼は日野とは真逆でチャラいことで有名な人。これは当て馬の投入かと思うのが自然であるが…。

どうでもいいが莉々花が朝に日野を待ち伏せするのがAM8:15というのは通学にしても通勤にしても遅い気がしてならない。そうして偶然を装った出会いで、莉々花は昨日 日野の家に人が泊まったらしいこと、その翌朝の電話で日野に「イヤリング」を忘れたという連絡が入ったことを横で聞く。莉々花に新キャラの男性が近づいたように、今度は日野には女性の影が見える、という話なのか。

莉々花は日野の「お泊り」について横原に相談し、彼によって お泊りした人との性的関係にあると断言され落ち込む。しかも日野は また莉々花の家での夕食を取らなくなり、しかも酒に酔って帰り、ワイシャツにはファンデーションが付着している。その調査をしたい莉々花の心は分かるが、酔った彼を介抱するために男性宅に乗り込むのが嫌だ。この後の接触も わざとらしい。まぁ こういうキッカケじゃないと距離感が近づかないのが年齢差のある2人だから仕方のない面もあるが。これによって莉々花が日野を肉体のある男性として より意識するという流れもあるし。

でも日野が潔白であるとか、誤解は解けるとかもパターン化しており、飽きる。莉々花が部屋から出て行った後、あっという間に酔いが醒めた日野は謝罪と説明をする。イヤリングの件も作中では2か月以上前の話であり、たった1回会っただけの人に そういうことが起きるのかが微妙なところ。連絡先を交換したり、あの日は たった2,3時間のあいだで事件が起き過ぎじゃないか。
この回は日野の中で莉々花の存在や心を許す範囲が広がっている、という話らしいが なんとも歩みの遅い恋愛模様である。


2学期は莉々花は文化祭の準備に忙しい。文化祭実行委員でもあるので他の生徒より やる気を出す。恋愛をするのが同じ学校の生徒なら こういう居残りの準備で距離を縮めるのだろうが、当て馬の候補の横原はバイトで早々に帰宅し、やる気を出して作業する莉々花に好感を持ち始めた男子生徒も声を掛けずに帰ってしまう。

そこで召喚されるのは当然 日野。日野が持っているプラネタリウムを教室の展示に使う約束をしており、日野が それを発掘した連絡を受けた莉々花は家にいないという意味で学校にいることを彼に伝える。その莉々花の言葉を日野は学校に届けてと翻訳したため、彼らは夜の学校で会うことになった。
莉々花は日野を教室に招き、早速プラネタリウムの試写を始める。莉々花の手作りドームの中で並んで疑似的な満天の星空を見上げる2人。そして見回りの気配を察知した2人は、その中で身を寄せ合う。莉々花が声を出しそうになったことで日野は咄嗟に彼女の口を押え、身体を寄せる。前回に引き続き肉体的接近による胸キュンが演出されている。

学校という特殊な空間に一緒にいることで、莉々花は日野との年の差を忘れることが出来る。だから莉々花は日野を気軽に文化祭に誘う。遠慮する日野に、友達は彼氏と回って孤独だと訴えると、莉々花も彼氏を作ればと言われてしまう。その流れで莉々花は好きな人と回りたい、それが日野であることを伝えようとするのだが、それよりも先に日野から文化祭に来るのは無理だと言われてしまう。まるで一線を引かれたかのような発言だが、莉々花は もう日野への気持ちを抑えることは出来ない…。
『2巻』のラストで望みのない恋愛でもヒロインが諦めきれない、という状況確認をする場面が描かれる。まるでベテラン作家のような贅沢なページの使い方だなぁ。