吉岡 李々子(よしおか りりこ)
彼はトモダチ(かれはトモダチ)
第01巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★(4点)
中3のヒヨリは隣のクラスの水野に片想い中。そんなとき、席替えで隣になった佐々本が水野と幼なじみだということを知り、協力を依頼。だけど、友達だったはずの佐々本が次第に気になりはじめて……!? ゼロから始まるスクール・ラブ連載、待望の第1巻!!
簡潔完結感想文
- 全4回の短期連載のはずが、幸運にも読者に支持されて長期連載になったのが不幸の始まり。
- 支持率が不支持率と逆転するぐらい当初の美点が消失。中高生の不器用な恋は いづこへ…。
- 再読すると、1巻は こんなにも人を想う綺麗な心に溢れていたのか、と違う意味で泣ける。
予定通りに事が進んでいたら、あんな未来には辿り着かなかったのに、の 1巻。
(※上の画像は「完全版」ですが、私が読んだのは通常版で それを基にした感想文です)
本書は全4回の短期連載の予定が好評につき長期連載となった作品。
作者としては読者に作品が支持されて、長期連載になったことは望外の喜びだろうが、
作品としては全4回で終えた方が絶対に良かった。
もし全4回(単行本1冊分)だったら、基本的に5巻以上の長編しか読まない私の目に触れることはなかっただろうが。
全体を通しての感想としては、今回のタイトルにも しましたが、
自分の地味な顔立ちにコンプレックスを持っている人が、メイクを覚え、洗練されていくかと思ったら、
段々とメイクが濃くなりすぎ、整形にも手を出して、もう原形を留めなくなっていく様を見せられた気分である。
これは整形を止められない人と同じで、作者の不安の表れなんでしょうか。
長期連載というスターへの道が目の前に開け、読者に楽しんでもらおうと、
波乱の連続という間違った読者サービスを続けたら、作者の美意識が行方不明になってしまったのだろうか。
本書はヒロインの日和(ヒヨリ)が中学卒業まで あと半年の3年生の頃、
幼なじみだという男女3人(男2女1)と関わる事で四角関係となっていく話の流れである。
その関係を煮詰め続けて、ドロドロとさせていくのが連載の基本スタンスとなっていく。
これは講談社、特に掲載誌「別冊フレンド(別フレ)」の好きそうな内容である。
本書を読んで最も強く連想したのが、同じ「別フレ」の南波あつこ さん『スプラウト』・『隣のあたし』であった。
特に本書は『スプラウト』が連載中の2007年に連載を開始している事もあり、
ドロドロとした人間関係が雑誌読者や別フレ編集部の望む方向性である と推察する。
作者は、似たような話が同居する「別フレ」の中で、
差別化を図ろうとして他作品にはない要素を入れようともがいて、結果的に内容が過激にしていったのだろうか。
私の持論としては「別冊フレンド」に傑作なし、である。
傑作と言うか、私の好みに合う作品は現在過去未来において登場しないと思う。
そんな「別フレ」は、『スプラウト』も本書も、決してヒロインを善人にしない。
これは少女漫画誌において大変 勇気ある行動だと思う。
実際、本書のヒロイン・ヒヨリも、
名前も覚えていないようなクラスメイト・佐々本(ささもと)が、
自分が好きな男子生徒・水野(みずの)の友達だと分かったら、
佐々本を利用しようと彼に近づいているような現金な人間なのである。
佐々本と水野の幼なじみ・琴音(ことね)が常識から外れた言動をしているから、
ヒヨリが まともに見えるけれど、ヒヨリも基本的に自分本位な人間である。
最初にクラスの女生徒から嫌われている琴音に対して仲良くなろうと言ったことは綺麗な心が成せるヒロイン的な行動だが、
その後、琴音の方から話しかけてくる様子もないのに水野を巻き込むために4人で遊びに出掛けたり、
自分の恋のために琴音に嘘をついて追い払ったりと自分の都合でしか彼女と仲良くしていない。
女性同士の静かな戦い、エゴとエゴがぶつかる綺麗じゃない恋愛を読むのが楽しい人もいるだろう。
だが「別フレ」が意図的にヒロインを美化しないからといって、
ヒロイン自体が自分の性格の欠点に気づいているかというと、話は別物なのである。
結局、ヒロインが被害者意識丸出しで、自分の恋愛脳や自己中心的な思考に思い当たらないから、
話が進めば進むほど、ヒロインへの嫌悪感が増すのが「別フレ」なのである。
あと「別フレ」への不満としては、1コマが大きく、1ページあたりの内容がスカスカ。
そして これは少女漫画家全体に言えるが、巻を重ねるごとに省エネ作画が目立っていく。
本書の場合、連載中に絵が上達するのとは また違って、
絵(特に目)の描き方を試行錯誤している節があって、散らかっている感じを受ける。
やっぱり全4回の短期連載として読むと良い出来。
ヒヨリの好きが いつの間にかにスライドしていく様子とか、
佐々本の不器用な好意の見せ方とか、
席替えのエピソードを最初と最後で使っているのも良い。
というか、主役カップルだけ見れば、これ以上 延長する要素は ほぼない。
水野や琴音の想いを描かない事で この後の展開に繋げようとしているが、蛇足であった。
編集部側は、この4回の連載が好評だったことを作者の自信にしてもらって、
次の連載で、最初から長編化を想定して話を創ってもらった方が良かったのではないか。
まぁ同じ「別フレ」の大ヒット作、渡辺あゆ さん『L♥DK』も全8回の短期連載が全96回になったのだから、
売れそうな作品は長編化させてみたら化けるかもしれないのが この世界なのだろうけど。
トラブルメイカ―、『スプラウト』の言葉を借りるなら、天然デストロイヤーの琴音も、
4回の連載分の中では、良い感じの恋愛の障害の範疇である。
『彼はトモダチ』という書名も、エピソードの中で上手く消化されている。
ヒヨリが その立場に追いやられるからこそ、上手くいかない恋愛のもどかしさに繋がっている。
幼なじみという関係に立ち入っていく難しさ、
彼らの関係を壊してしまうヒヨリの立場など、
まだまだ未熟な中学生の恋愛の甘酸っぱさが十分に表されている。
佐々本の立場では、格好良くなり切れない感じが良い。
自分が好きなヒヨリは別の男が好きで、それでも接点を持つために奮闘している様子が可愛い。
琴音に対する煮え切らない対応も、彼の本質的な優しさであろう。
彼らの関係を理解しようとせず、二者択一を迫るヒヨリこそ幼く見える。
態度としてはハッキリしない部分も多い佐々本だが、精神年齢は常にヒヨリより高いだろう。
少女漫画的にキスをする展開であっても、交際していないからと自分から身を引く誠実さもある。
交際開始よりキスの方が早い作品が多いから『少女漫画分析』において、
順序が逆のグラフになってしまうこの少女漫画世界において、彼は少数派の真面目な人間なのである。
結婚相手に選ぶなら絶対 佐々本だろう。
将来も有望そうだし。
ただ少女漫画のヒーローとしては弱い部分がある。
そんな点もまた、本書が大袈裟なドラマに頼ってしまう一因だったのだろう。
ちなみに、偶然にも雪丸もえ さん『ひよ恋』に続いて、
ヒロインの名前がヒヨリである作品を2作連続で読んだが、内容がまるで違った。
『ひよ恋』が佳作だっただけに、本書でのヒヨリの言動に大きく落胆した。