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少女漫画と小説の感想ブログです

親の監視下で、正々堂々 イチャつくためには、両親を眠らせて目を つむってもらおう。

高嶺と花 14 (花とゆめコミックス)
師走 ゆき(しわす ゆき)
高嶺と花(たかねとはな)
第14巻評価:★★★☆(7点)
 総合評価:★★★☆(7点)
 

晴れて恋人同士になった花と高嶺。お互いに慣れない関係にギクシャクしながらも、野々村家&高嶺で沖縄旅行中!! 一緒にいればいるほど高まる想い… しかし、そんな2人にアクシデント発生!? その運命やいかに…!2人の関係から目が離せない第14巻! 番外編も多数収録!

簡潔完結感想文

  • 教師と生徒の修学旅行その2。2人きりになるために必要なのは、遭難⁉
  • 幸福が逃げないように、不幸を追い払うように、2つの口を合わせてみよう。
  • 両想い後の状況整理と新しい問題の布石。家族問題は白泉社最後の関門。

の終わりに旅行先でロマンチックはじめました、の 14巻。

もはや主役カップルは結婚を前提とした お付き合いといえるが、
交際前から親と同居し、10歳の年齢差もあるので、年長者が気軽には手出しできない状況となっている。

そこで生み出されたのが、今回の家という檻からの脱出。
いくら豪邸であっても、家には誰かしら家族がいて、イチャラブに向かない。
そして恋愛においては常識人の高嶺(たかね)は家では手を出さない自制心が働いている。

なので家から飛び出して、沖縄の地で恋愛イベントは繰り広げられる。
ただしヒロインの花(はな)の家族も同行しており、彼らの目から逃れるためだけに作者は とある大きな事件を用意する。

それが今回の「遭難」。
誰にも見られない状況で初めてのことを経験させ、
そして その遭難によって、花の家族の精神力を削り、
その後に生還することで安堵させて全員を眠らせた上で、2人きりの忘れられない思い出を作る。
これによってギリギリ フェアな健全さを貫いている。

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御曹司との結婚という輝かしい未来は待っているが、現状では世間の目・家族の目があってイチャラブできない。

こんなに苦労していると、まるで本当に許されざる恋のようだ。
姉の婚約者(高嶺)を好きになってしまった女子高生の花。
彼らは同居しながら、家族の目を盗んで、2人きりになれる機会を窺っていた…、という内容でも通じる。
姉や家族が横で寝ているのに、2人で交わす口づけ、なんてドキドキが止まらない。

そういえば一つ前に読んだ『とある少女漫画』は、2人だけの世界を作るために、
親という存在を簡単に作品外に追放したり他界させたりしていたなぁ…。


縄のツアー旅行2日目。
ツアー客の手前、姉の夫である義兄(高嶺)と妹(花)という関係性なので、
いつも通りの会話も出来ず、不満が募る花。

その状況に花は、
「10分でも5分でもいいから だーれもいない2人だけの世界で過ごせたら――――…」
と、沖縄の地で願う。

そんな花の願いは思わぬ形で叶う。
神様は慈悲深いから10分と言わず1200分(推定)ほど2人きりにしてくれた。

その内訳は3時間の漂流、1時間の遠泳、そして16時間の島での遭難生活。

事の発端は、ダイビングのための船移動で、船上のデッキにいる花が船の揺れで海に落ちたことから始まる。
それを目撃した高嶺は、「花 !!」と名前を連呼しながら浮き輪と共に自分も海に入る。
必死な高嶺はちゃんと名前を呼んでくれるんですね。
こういう恥も外聞も自意識もなくなった、本当の高嶺さんが大好きです。

漂流の後、島を発見し 何とか上陸する2人。
他社の少女漫画なら、ギャグに走り過ぎと漫画を壁に投げつけるでしょうが、ここは白泉社の世界。
いかにも白泉社漫画らしい、とんでも展開で安心する。
やっぱり長期連載の中で1回ぐらいは遭難しないとね(笑)


難という窮地にこそ人間の本質が見える。
ここでは高嶺の年長者っぷり、そして知識や経験が大いに役に立っている。
女性を導いてくれる、たくましい後ろ姿にキュンとなる。

これは ここまでの高嶺の人生の窮地(貧乏や同居、全裸タップダンス未遂)なども影響している。
高嶺は孤高の存在ではなく、人に揉まれることで、ワイルドに進化を遂げていた。

一方でワイルドすぎて知性を欠落させ楽観的に生きる高嶺は、なかなかウザい。
ここでの花のツッコミには笑った。

だが高嶺は自分の知識が通用しないと簡単に凹む。
サバイブする知識はあるのに、それを乗り越える精神力が足りない。
どこまでも高嶺を完璧な存在にしないのが作者らしい。

どうにか熾(おこ)せた火を前に、無人島で暮らす自分たちについて語り合う2人。
だが 火は消えてしまい、花は この状況に不安を覚える。
そんな花の不安を感じ取り、高嶺は決意と共に花を自分のそばに呼び寄せた…。

砂浜のベッドではあるが、2人は初めて並んで眠ることになりました。
相手の体温を感じるほどのスキンシップは、これまでで最高の接近です。

人の目がないし、緊急事態でもあるから、高嶺も少し積極的。
逆に言えば、このぐらいの非日常でないと、2人は近づけないのかもしれない。


うして親密度が上がった2人は、翌朝には減らず口も再開。
付き合ってる実感が欲しいという花に、高嶺は返す刀で、花に改善を求める。

高嶺が望むのは、花のかわいい声と顔での自分へのヨイショ。
この状況でも、そんなものが欲しいのか…、と高嶺という人を疑う。

なぜ そんな賛辞が欲しいかというと、
「言葉はプレゼントなんだぞ!!」
というニコラの教えが、高嶺の恋愛行動に無事インプットされたからであった。
馬鹿の一つ覚えが更新されたみたいで何より。

そんな無駄話をしながら島を探索していた花たちは人を発見する。
島は島でも、ここは沖縄本島の端っこだった。

1泊の野宿で彼らが日常に戻れたのは、作者が彼らの理性を維持したかったからでしょうか。
不安が募って、お互いに身を寄せ合う(キスなどの肉体的接触)のは、作者の本意ではないのだろう。
理性と体力が残っている内に、彼らは救出されなければならない。


うして花は家族の下へ戻る。
誘拐劇の後に、この遭難劇、
花の家族の心配は尽きない。寿命が縮まってしまう。
そうして本人たち以上に眠れない一夜を過ごした花の家族は、人心地ついて、ぐっすりと眠る。

というか、彼らを眠らせるために遭難があったのではないか。
家という檻から解放されも、家族の監視は続いている。
しかし それでいて その家族は見ていない この状況がキスの絶対前提だったのではないだろうか。
2人が遭難中の非日常ではなく、無事 帰還した後にキスするというのも一つの前提だと思われる。

家族とは違い、前夜はぐっすりと眠れた花と高嶺は、2人だけ目を覚まし、ホテルのベランダで語らう。

そうして全ての条件が整ったことで、
初めて正気の高嶺が、顔を寄せて花にキスをする。

私の『少女漫画分析』のキスの場所は1話じゃなくて、ここにしようかな…。
でも作中で高嶺が1話のキスのことを根に持ってるのも確かだし…。悩む。

こうして いよいよ交際の実感が2人に生まれた。
もしかしたら これは花が初めて高嶺から欲しがったプレゼントではないか。

しかしキスをするためだけに この騒動。
結婚するまで、あとどれくらいの試練があるのだろうか。


愛イベントが本当に一段落したので、友人たちに全てを打ち明ける。

この友人たち、物語の一翼を担うかと思いきや、おかモン の告白あたり(『9巻』)から、
すっかりと初期の頃のような友人A・Bに戻りましたね。
(本書収録のラストの回は友人・水希(みずき)メインの話でしたが)

そして 当の本人おかモン。
彼は花が話す前から、サッカーで雑念を感じさせないプレーが出来てるほど、吹っ切っている。
これは高嶺との直接対決、そしてその終了を自分で決めたことが影響しているだろう。

花に 昔からしていたデコピンをくらわす おかモン。
これは「やなことあった時は こーすると わすれんの」という おかモンの気持ちの切り替え方だろう。

これで2人の間の恋愛感情は全て流れて、幼なじみという関係だけが残ったということか。
まぁ おかモンが自分を好きと知りながらも、「マリッジブルー」で最後の最後に彼を利用した花のズルさまで、
綺麗になかったことにしているのは、いかがなものかと思うが。
一度ぐらい ちゃんと謝りなさいよ。

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お゛か゛モ゛ォォォオオン…。優しすぎる人が当て馬になってしまう、少女漫画あるある です。

高嶺の側では、サポート役・霧ヶ崎(きりがさき)には言わずとも情報が漏れていた。
数少ない友人の りの とニコラにも話を切り出す。
りの は高嶺の前では阿鼻叫喚の現実逃避をするが、これは読者には事前に吹っ切れていることが明かされている。

そこに同席した霧ヶ崎は りの に見初められる。
花の姉・縁(ゆかり)と りの の2人に追い回される霧ヶ崎。
モテ期である。
霧ヶ崎が高嶺の右腕になることを決めたということは、
彼もまた鷹羽グループの本社に行く可能性のある人ということでもある。
今のうちに青田買いしておくのも悪くないだろう。


れぞれに交際報告会も終わって、次の話題は高嶺自身の問題になる予感。
それは これまでタブー視されてきた高嶺の両親について。

実は花は、母親を通じて高嶺の家族についての情報を得ていた。
高嶺の父は、高嶺が小さい頃に他界、そして母は健在だが詳細は不明。
だが、高嶺が珍しく自分の母の話題を話したので、どんな人か聞いてみても、
顔を曇らせて(怒りマークを浮かべて)忘れた、の一言で切り上げてしまう。
これは母が出てくる丁寧な布石ですね。

結婚を前提としている関係なので、親には会っとかないといけません。

「番外編1」…
酷暑の中で、高嶺を熱中症から守る花の奮闘。
テーマは「サマーラブ(ちょっとエロいの)」らしいが、
この服は着たくない、と駄々をこねる3歳児を何とかなだめすかせてるようにしか見えない…。

「番外編2」…
ニコラ主催の一発芸大会に揃って出場し、勝負をする2人。
2人とも負けず嫌いで、芸も欲張ってしまう、ということはよく分かった。

「番外編3」…
大学生の映像作品に、花の口車に乗りチンピラ役で出ることになった高嶺…。
高嶺は唯一無二の存在である高嶺にしかなれないということ、
そして『2巻』での姉の替え玉役といい、やはり花には演技の才能があると思った。