《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

折り返し地点を過ぎて 主人公を勝手に格付けチェック。気づいたら格下げ されてました。

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やまもり 三香(やまもり みか)
ひるなかの流星(ひるなかのりゅうせい)
第07巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★★(8点)
 

初めての2人きりの遠出。頑張りたいすずめとは違ってなにか悩んでいる様子の獅子尾はちょっと冷たい…。両思いなのに不安なのはなぜ? 事態は思わぬ方向に進んでいく──。
【収録作品】ヒロインの流星

簡潔完結感想文

  • 初詣その1。自分を好きだと言ってくれた人はもう自分を特別扱いしない。そっか。
  • 初詣その2。一緒にいるはずなのに一線を引かれて自分を特別扱いしない。なんで?
  • 新年新学期。確かに新しい関係を望んだけど、こんなの望んでないよ、ティーチャー。

兎から追われていたはずが、一兎も私を追わなくなる 7巻。

栄枯盛衰。すずめ のモテ期も終了か。
流石に半年以上過ぎると転校の魔法が途切れたのかな。

物語は、主人公・すずめ にとって一番辛い時期。
恋愛の停滞期とも言えるかもしれない。

ただ、そんな停滞期にあっても
お話の展開はグダグダしていない。

一度 完読してから感想を書くにあたって改めて思うのが、
作者には、短いスパン(1巻ごとぐらい)に明確な構成があるということ。

いつでもプロットがしっかりしているので、
私としては感想を書くのがとても捗(はかど)る。


それもこれも獅子尾(ししお)と馬村(まむら)との一進一退の攻防があるからかもしれない。

一方だけだと見えなかったもの・気づけなかったことが、
もう一方から見ると気づくことが多い。

すずめ が意識的に、無意識的に比べる2人の男性によって、
彼らそれぞれの特性がよく見えてくる。

今回、すずめ は そんな2人の男性にとって特別な存在でなくなるのだが…。


『7巻』は、大晦日の夜から始まる。

すずめ の頭の中は、年末の先生(獅子尾)の自宅でのキス未遂事件でいっぱい。
先生の体温やにおいを五感で感じたことが頭を駆け巡る。

そんな中、クラスメイトたちに初詣に呼び出される すずめ。
だが、参拝客の多さに迷子になってしまった すずめ は、馬村一家に遭遇する…。

すずめ は出先では必ずと言っていいほどトラブルを起こしますね。
出掛ける場所の方角が毎回 悪いのでしょうか。


馬村は、すずめ の首に彼がクリスマスにあげたマフラーが巻かれていないことを目ざとく見つける。

そのことを乱暴に問うた馬村に対して、すずめ は
「大切にとっておこうと思って…」と返す。

その直後、女性の参拝客にぶつかった馬村の耳が赤かったのは、
女性との接触だけが原因じゃないはず。

馬村にとって望外に嬉しい言葉かもしれないが、
すずめにとっては、あのマフラーは封印に近い。

今は先生に気持ちを100%向ける。
そのすずめ の覚悟が馬村マフラの封印である。

もし今後、マフラーの封印が解かれることがあるのならば、
それは2人の関係が少し変わる予兆かもしれない。


すずめ は馬村が、女性に対して優しくなったと感じていたが、
自分に対する言葉の冷たさも感じていた。

このところの馬村のすずめへの捨て台詞のような言葉。

クリスマスに(獅子尾のために)精一杯のオシャレした すずめの服装に対して「フツー」と言ったり(『6巻』)、
(のちに一人で真っ赤になっていたけど)
恋愛成就のお守りを買ったことに対しても、
「オレには関係ねーことだし」と斬り捨てるような言葉を吐く。


これは馬村が以前と同じ気持ちを すずめに持っているにもかかわらず、
気持ちに蓋をしているからだろう。
今、すずめが交際しているのは獅子尾だという現実が彼にそうさせるのだろう。

対して、すずめは自分が馬村の中で特別からフツーの女子と同列に格下げされたことが原因だと理解する。

別れ際に馬村が言った言葉、
「マフラー 使えよな(中略)
 アレにたいした意味なんてねーよ」

この言葉を受け、上述の自分の格下げに思い当たり複雑な表情を見せる すずめ。
「そっか」と納得した言葉を重ねる すずめだが、内心は多少なりの落胆があったのではないか。

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あのマフラーは君を温めたいオレの気持ちであって、君の重荷になりたいわけじゃないんだ。

ちなみに女子生徒たちで引いたおみくじ。

すずめ の恋愛欄は「波乱あり」。
ろびこ さんの『となりの怪物くん』でも主人公が引いたおみくじは「波乱あり」でしたね。
残念ながら、少女漫画の主人公の恋は波乱と共にあるのです。


ゆか の おみくじ には「新しい出会いあり」。既に何か思い当たる節がありそう。

続く ゆゆか目線の一編から、ゆゆか の現在の心境が語られます。

曰く、「馬村くんへの恋心」の 主に8割は憧れだったってこと。

うーーん、これはどうでしょう。
次の恋を本物にするために前の恋を偽物にする手法は好きじゃないなぁ。
叶えられなかった恋だけど、それを次に活かす、というのなら分かるけど。

そして、一つの恋(ゆゆか曰く憧れ)を経た、
ゆゆか の恋愛観は、そのまま すずめ にも適用できそう。

「私はたぶん 憧れの存在よりも 私のことを本当に分かってくれる人が欲しかったんだ」
「私を理解して 受け入れて なぐさめて 見透かして そんな 特別な存在が」

ゆゆか の場合は先輩の後ろ姿が見えたようですが、
すずめ にとっては、前者が誰で、後者が誰なのでしょうか。
すずめ の場合も段々とその輪郭が鮮明になってきた気がしますが…。

この、ゆゆかの対 馬村における すずめへの敗北(?)宣言。
これはもし馬村との恋が成就しても、誰も悲しむ人がいないという地ならしか。

ちょっと恋愛における区画整理が過ぎる気がする。
まぁ、清く正しい純愛が本書の本分でもあるんだけど…。


生との新年初デートは初詣。
しかし、獅子尾は すずめ からのメールを見ても どこか顔が沈んだまま。

ゆゆか の恋愛アドバイスもあって、先生との密会中は周囲に気をつける すずめ。

確かにこの問題、今までは「偶然」誰にも見られずにいたけれど、
本来は注意を重ねなくてはいけないこと。

しかし、ゆゆかのアドバイス通りにしか動けない 不器用な すずめ。
これまでも言いつけを守って服装や髪形に気を配ってきたのはいいが、
今回のような、自分で判断しんきゃならないことだと やりすぎてしまうのが すずめ という人。


出掛けた初詣も電車の車両を別にしたり、ずっと一定の距離を取ったり。
2人で出掛ける意味さえなくしてしまう行為に、獅子尾は失望する。

そして獅子尾は すずめにも感じられる苛立ちを見せてしまう。

これは獅子尾の狭量さもあるだろうが、
すずめは必死でも、獅子尾はすずめの態度で、自らの立場を痛感したからという理由もあるだろう。

何だか ずっと気持ちが通じ合わない2人だ。

会えないこと、言えないことを不安がり、
たとえ、会えたとしても会うたびに不安が募る。

手を繋いだり、キス目前だったり、
肉体的接触におけるドキドキはあるが、心理的に満たされない。
恋愛ってこんなに楽しくないものなのか。


そして すずめ の外出&獅子尾といる時は(ワザとらしい)トラブルが付き物。

今回は遠出した初詣 先で大雪に見舞われ電車がストップ。
寒さをしのぐために入った民宿は一部屋しか空いておらず…。

そんな時、獅子尾にすずめの叔父・諭吉(ゆきち)から電話。
すずめ の居場所を問われたが、咄嗟に嘘をつく獅子尾。

友人であり、すずめ の保護者でもある諭吉に嘘を付いてまで続ける覚悟があるのか、
自分の気持ちを優先させることが すずめ の今後のためになるのか。

教師として、年長者として悩み続ける獅子尾の姿があった。

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布団を離すことで一線を設ける獅子尾。その一線を軽々と越えようとする すずめの若さが獅子尾には苦しい。

そんな先生の姿に、すずめ も変化に気づく。

一泊した民宿で抱きしめられるという肉体的接触はあったものの、
先生が自分に向けてくれる顔が他の生徒の子に見せる顔と同じであることに気づかされたのだ。

そう、馬村と同じく すずめ は(勝手に)格下げされたのだ。

男性2人から言い寄られている女王様の立場から、
急に どっちからも手を引かれた裸の女王様になってしまった すずめ。


してクライマックスは、諭吉バレ。
何でもメモにとって、それを実行しようとするメモ魔・すずめのメモがポケットから落ちたため、叔父であり保護者の諭吉にバレてしまった。

先日の宿泊まで諭吉にバレているかは不明だが、関係性は完全に露見した。

そして諭吉から直接 詰問された獅子尾は、何かを決断した様子で…。


迎えた新学期。
すずめ と2人きりになった校内で、
自分が、教師をやめると言ったらどうするか、と聞く獅子尾。

すずめ の答えは「わたしもついてく!」。

何という真っ直ぐな情熱。

もしこれが社会人だったら別。
だけどすずめは高校生。

高校生だから、全てを投げ出せる気軽さがある。
だけど、獅子尾の側には全てを投げ出させた責任と負い目が一生残る。

この問答によって、
すずめ の幼さからくる視野の狭さ、そして彼女のこの後の広大な未来を思い知らされた獅子尾は、
2人の関係の解消を申し出る。

「すき」という言葉が欲しくて獅子尾と話す機会を窺っていた すずめに対して、
「好きじゃなかった」と無情な答えを出す獅子尾。

獅子尾の立場になって考えれば、これは獅子尾の自制の賜物だろう。
自分の気持ちや欲望を優先するよりも、
一線を置くことが、彼女の幸せになるのなら…、と考えた結果。
彼なりの すずめ の愛し方と言えなくもないのですが、
それを分かるほど すずめ は大人じゃないんです…。


そして相変わらずフォロー上手の馬村です。
獅子尾が すずめを傷つけた時には絶対に現れるヒーロー。

諭吉の言う
「つらい時や おちこんだ時 さみしい時
 すぐ かけつけて ずっと いてやれる」人、それは馬村かもしれない。

先生だって、先生だって すずめが迷子になったら手を差し伸べてくれるヒーローなんだけど、
恋愛においては、すずめ を結果的に傷つけることになってしまうんだ…。

そこに立場や年齢差があるから、結果的に悪者になってしまうんだ…。


「ヒロインの流星」…
幸田もも子さんの『ヒロイン失格』(未読)とのコラボ漫画。
『ひるなか』から すずめ と ゆゆか、『ヒロイン』からも2人。
この4人と男性陣で合コンする前の女子トークという内容。

本編との落差が凄まじい…。
全編メタ視点。
そして『ヒロイン失格』のネタバレあり。
本編では絶対に挿めないような獅子尾先生批判が繰り広げられてます。

マーガレット系の漫画も複数登場。
同じ学校の、さわや科には『君に届け』の風早くんと、『アオハライド』洸くん。
不愛想ツンデレ科には、『マイルノビッチ』天祐くんと『日々蝶々』の川澄、がいるらしい。

これは、それぞれ作者の直筆なんでしょうか。

オチは すずめの元に道明寺さんから電話が掛かってくるというもの。
確かにマーガレット系の漫画に頂点に君臨してますね。

ひるなかの流星 7 (マーガレットコミックス)

ひるなかの流星 7 (マーガレットコミックス)