水野 美波（みずの みなみ）
虹色デイズ（にじいろデイズ）
第04巻評価：★★☆（5点）
総合評価：★★☆（5点）
ついに恵一にも恋の予感が？ 美人で大人な雰囲気の里見先生に夢中の恵一。だけど、恵一の兄・片倉先生はなぜか猛反対で…!? 虹色ボーイズがホストに扮する番外編も収録！ 【同時収録】虹色外伝 club RAINBOW
簡潔完結感想文
- ほぼ恵一のターンだが表紙は剛というチグハグさ（順番だからだが）。あと夏樹の影の薄さ。
- 相手の本性を知っているから その恋を止めたい身内・友達や 片倉先生の登場など既視感あり。
- 最後のメインキャラが登場して即 お泊り回。なぜ杏奈らがフットワークが軽いのか理解不能。
メインキャラ全員が揃ったら、即 団体行動、の 4巻。
ゆきりん万能説を唱えたい気分である。というか作者は ゆきりん に頼り過ぎである。
この『4巻』で男子高校生たち4人の それぞれの運命の相手が出揃い、メインキャラ8人が全員登場する。そうかと思ったら すぐに その8人での旅行回が始まる。全員 社交性の塊なのか、と私には理解が出来ない適応力である。
それを可能にするのが明るいオタクの ゆきりん。どうやら彼女の提案は彼氏である剛（つよし）や女性陣は断れない仕組みになっているらしい。本来なら剛は自分が彼女といる場面を友人に見られることに羞恥を覚えるタイプだと思うが、ゆきりん の発案によるグループ行動が多くなっていく。こういう変化を詳細に描いてくれれば、剛の変化として理解できるのだが、本書の場合はグループ行動という目的のために、それぞれの心の葛藤などは無視する傾向にある。
そして女性陣でいえば、決して社交的なタイプではない杏奈（あんな）が ゆきりん の提案なら あっという間に承諾しているのが気になる。女性陣にとっては今回の旅行は智也（ともや）の妹で、2学年下の中学3年生の希美（のぞみ）との初対面となる。知らない人との旅行というハードルが一切 考慮されないのは物語の作り方として雑に感じられる。杏奈の友人で男嫌いの まり も、杏奈が行くから付属品のように参加する。彼女はもっと杏奈の参加を拒絶してもいいし、杏奈に無茶な提案（男との交流）ばかりする ゆきりん に対して暗い感情を持っても おかしくはない。だが、そういう作者が目指す「仲良しグループ」の雰囲気を少しでも悪くするような不都合な面は全部カットされる。いつの間にか全員が旅行に前向きに参加する気持ちを持っているのが不自然でならない。
恋愛感情も友情も、一足飛びに結果しか描かれていないのが私の好みとは合わない。キャラに萌えられない人にとっては、中身がスカスカであるように思えるだろう。
また お話の内容も既視感を感じた。個性的な面々が集まっているはずなのに、話の1つ1つは全てがベタな展開である。「少女漫画あるある」のオンパレードだし、今回は本書の以前のネタの使い回しっぽい部分が気になった。
それが恵一（けいいち）の恋についてである。この回は臨時の保健の先生・里見（さとみ）に恋をした恵一に、その兄で この学校の教師である片倉（かたくら）が弟の恋に口出しするという内容。だが片倉は里見の秘密を熟知しているように見えるから、恵一は反発する。
この内容が『1巻』の夏樹（なつき）の2つのエピソードの焼き直しに見えた。1つは読切短編の夏樹の初めての彼女の話。彼女の本性を知ってしまった智也と恵一が夏樹に彼女の本性を伝えるが、それに夏樹は反発し、喧嘩状態に突入するという話だったが、恵一と片倉の話も ほぼ同じような展開を見せる。
更に この人の恋に忠告しようとするのは、智也と希美の関係においても見られる。弟妹や友人を大事に思うから、ロクでもない人間と交際して欲しくないという気持ちが芽生えるのだろう。ってことは 本書にはロクでもない人間が多すぎるから、同じような展開が繰り返されるのか…？
そして もう1つが同じく『1巻』の杏奈と初めて学校内で遭遇した時の夏樹の話。この時も片倉が杏奈と ただならぬ関係なのではないかと仮想敵のように使われていた。今回も片倉が存在感を見せ、里見と ただならぬ仲のように見えてくる。
ゆきりん が全員を一斉に行動させるのに便利なように、片倉も全てを支配する黒幕的な存在として便利に使われているように思える。
先は長いのに、この先に あまり期待が持てない。そして この先も良くも悪くも変わらないので、引き返したい人は この辺で引き返すのも勇気なのかもしれない。
冒頭は4人組の中で まだ特定の相手を見つけていない恵一の物語。
いつもの保健の先生の代理で来ている女性・里見に恋をした恵一。年上の元カノと同じ匂いを感じた恵一は、再び立場の逆転劇が楽しめると興奮する。それから連日 保健室に通うようになる恵一。恋は彼に生きる目的を与え、ご機嫌で日々を過ごす。こうして恵一は恋の駆け引きを楽しむが、片倉先生は その里見のことを何か知っているらしい。ちなみに「追いかけて つまかえる恋が好き」という恵一だが、その後は発言とは矛盾した恋をすることになることを彼は まだ知らない。
片倉先生は恵一に上から目線で あの人は止めろと警告するが、物事を全て分かったかのように説教する兄と兄弟喧嘩になる。だが壮絶な喧嘩で怪我を負っても、恵一は告白を強行しようとする。
恵一は10歳離れていることを全く気にしていない。だが恵一にとっては自分が相手を好きになるかが重要で、相手が自分をどう見ているかを全く考えていない。この辺りが とんでもなく自信家だし、とんでもなく幼稚な気がする。恵一の場合、交際相手と性的嗜好が合致しても精神年齢の幼さが 段々と露呈していくのではないか。色々と自己満足なプレイが多そうだ。
夏樹たちの話を聞いて、恵一が里見に告白することを知った片倉は それを止めに行く。夏樹は子供の恋愛に大人が首を突っ込むな、と片倉を牽制するが、片倉は里見の正体が「元プロの女王様」だということを知っているから、弟を色々な傷から守るために強く警告したらしい。
実際、一度は交際を了承してもらい喜ぶ恵一だったが、里見が自分を「オス豚」として見ていることを知る。こうして自分が調教される側に回る恐怖を覚える恵一。性的嗜好において2人の相性は最悪だったようだ。どうして片倉が里見の本性を知っているかというと その界隈で有名な2人だったかららしい。本当のドＳは片倉（と里見）だったという話なのだろう。
続いては夏樹たちが在籍する2年3組の話。
女子生徒が家庭科の授業で「デスシュークリーム」を作り、男子生徒たちが標的にされた。夏樹たちは全員 はずれ を引いたため、復讐に燃え、ロシアンたこやきを作って女子生徒に食べさせる計画を立てる。だが ついでに自分たちも たこパで楽しもうとしたため、どれに何の具を入れたか分からず、自分たちための ロシアンたこやき になってしまう。
結果、自分たちの兵器の恐ろしさを知った彼らは、女子生徒に それを食べさせる罪悪感を覚え、復讐心が消えて、綺麗な心を取り戻す。
この時の調理場所は智也の家。この時、恵一と智也の妹・希美が海回以来（『3巻』）の再会を果たす。恵一は希美のことを覚えておらず、特に興味をひかれた様子はないが、恵一が兄の知り合いだと分かった希美は自分の幸運に感謝する。
希美は恵一に是非とも会いたいと智也に願うが、恵一の性癖を知っている智也は会わせたくない。これは夏樹・恵一の時と同じような状況だ。相手の本性を知っていると素直には紹介できない。
海での一件を知らない智也は、恵一が自分の妹を傷物にしたのではないかと疑う。智也の過剰な反応で彼が なかなかのシスコンであることが判明する。しかも希美と恵一の交際からの結婚まで妄想し、自分たちが義理の兄弟になること、そして片倉先生も親戚になりかねない状況に頭を痛める。
だが、末っ子＝夏樹、一人っ子＝剛、兄弟の弟＝恵一の立場から智也の兄としての横暴さを非難され、智也は希美と恵一が接点を持つことを許可する。
集合場所は川。偶然にも剛が ゆきりん と待ち合わせした場所と同じであった。そこに遅れて希美が登場し、恵一は そこで初めて希美が あの時の女性だと知る。
そこで ゆきりん は男女4人ずつ計8人での一泊旅行を提案する。
メインキャラが揃った途端に お泊り回が始まる。
遊園地の近くにある施設に泊まるので、まずは遊園地を楽しむことに。そこで夏樹は その遊園地のハート型の観覧車にまつわるジンクスを聞き、前のめりになる。男性主人公なのに、女性主人公と同様の話の作り方をするから、夏樹がジンクスに頼る情けない人間に見える。折角 男性視点であることが売りになっているのだから、既存の少女漫画とは違う角度で話を作ればいいのに（それが難しいのだろうけど）。
智也は知らなかったが、その旅行には希美も参加する（受験生なのに）。男子側は放任されて育っている感じがするが、女子側は どうやって親に説明したのだろうか。中学生の希美とか、こういうイベントをしたことがないであろう杏奈とかの家庭内の反応が知りたい。トラウマなどが登場しないからか、本書では親の存在は限りなく薄い。
希美は絶叫系の乗り物が苦手だが、恵一に「怖いのは最初だけ」と言われ、その言葉に誘導されるように着席する。未知の領域に足を踏み入れ、その快感を味わうという体験は、今後の希美の人生を表しているのだろう。こうやって希美は恵一に手籠めにされていくのか…。
絶叫系ばかり乗っていたため、剛と まり がダウンしてしまう。特に まり は杏奈に連れられてトイレに入るほど。トイレの外で杏奈が待っていると、ナンパ目的の男に手を引かれ連れ去られてしまう。まり に声をかける男性には智也が、そして杏奈には夏樹が駆けつけヒーローになる。
杏奈はナンパ男を強く拒絶できないまま観覧車に乗らされそうになっており、自分も観覧車には思い入れのある夏樹は、ナンパ男から杏奈を奪い去り、彼女と観覧車に駆け込む…。少女漫画では遊園地内で一番 大事な乗り物の観覧車に乗ったところで以下、次巻。いよいよ巻を跨ぐような話も出てきて長期連載作品と言った感じである。
「虹色外伝 club RAINBOW」…
もしも男性陣がホストクラブのホストだったら、という お話。ファンなら こういう「if」も楽しめるのだろうが、ファン以外はキツい。杏奈も夏樹の女神として登場するが、彼女がホストに通ったという設定から受け入れられない。以前の桃太郎の話も あんまりだったし、内輪ノリに ついていけない。
