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少女漫画と小説の感想ブログです

本編は男子高校生の わちゃわちゃが主役だったが、番外編集は恋人たちのイチャイチャがメイン。

虹色デイズ 16 (マーガレットコミックスDIGITAL)
水野 美波(みずの みなみ)
虹色デイズ(にじいろデイズ)
第16巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

高校卒業後の春休み、剛と幸子は東京で物件探し、恵一と希美は初デート、智也とまりはお家で映画鑑賞。そして皆で行く卒業旅行で、夏樹と杏奈は!? もちろんバスケ部の面々も登場。番外編シリーズ「虹色日和」をすべて収録した完結巻!

簡潔完結感想文

  • カップル4組8人 + 運動部の その後が見られる番外編集。春休みが彼らを大人にする。
  • 恵一は精神的、夏樹は性的に大人になる!? 智也・剛の愛を知り彼女たちは幸せいっぱい。
  • 卒業旅行は早くも同窓会っぽい? メディアミックスが作品を全16巻という長編にした。

験生の高校3年生で交際を開始したため、卒業後がようやく この世の春になる 番外編集の16巻。

本編終了後に番外編集の発売が決定したのは、実写映画化を控えていたからだろう。この番外編集は2018年07月の実写映画公開の直前に1年2か月ぶりに発売された。ちょっと間が空いたので、当時のリアルタイム読者にとっては、本書に収録されている卒業旅行は、もはや ちょっとした同窓会・成人式気分になったのではないか。

卒業旅行が疑似お泊り回に。自分で杏奈を2人きりの旅行に誘う勇気がないであろう夏樹には僥倖か。

この『16巻』は番外編扱いである「虹色日和」を集めたものである。そして そのテーマは「大人」である気がする。冒頭はバスケ部の話だが、その後はメインの4人の それぞれのカップルの様子が見られる。本編では恋愛成就までを手厚く描いていたため、カップルが成立し交際すると放置気味になるのがデフォルトとなってしまった。だが今回「虹色日和」として それぞれに焦点が当てられる。そういえば女子目線の「Rainbow Girl」というジャンル分けも存在したはずだが、結局『2巻』の1回きりだったようだ(多分)。
卒業式からの1か月の間に恋愛の関係性が大きく動いている。ここまで約2年半近く、動かなかったのに、たった1か月で動くのは彼らが受験生という枷から解放されたからか。作者の言うように18歳の男女だから、早すぎるということはないんだろうけど、本編との心の動き方の差に慣れない部分もある。

さて今回4人の どんな「大人」の一面が描かれているかというと、掲載順に言うと恵一(けいいち)は本編最終盤のガキっぷりが嘘のように成長していて、恋の相手である希美(のぞみ)と これから変わっていく関係性を楽しめるだけの余裕が感じられた。彼女と次に会うこと、まだ知らない一面を見ることに好奇心を持って対応できている。これまでの恵一なら未来に楽しみを取っておくことや、未来を見据えることは出来なかっただろう。ちゃんと恵一がモラトリアムを脱し 大人になってから交際できたことは希美にとっても幸運だったのではないか。

そして智也(ともや)。実は彼は それほど変わっていないように見える。というか智也は いつの間にか、成長エピソードもなく成熟していった気がしてならない。自分の好きな女性に全てを捧げる覚悟を持っているため、彼女が自分を本当に受け入れるまで時間をかけるだけの余裕を持っている。関係性は変化しないが、その変化を許容できるだけの心の広さが智也の大人っぷりを際立たせている。

続いて剛(つよし)。彼は一番 遠い将来を見据えて行動している点が大人であろう。ゆきりん とは遠距離恋愛になってしまったが、自分の東京での新居に彼女が訪問することを念頭に置いて、彼女のための部屋を用意しているように見える。そして最後には口約束だけじゃなく、結婚も視野に入れたプレゼントの用意が ほのめかされる。もしかしたら剛が髪を切り、左目の「邪眼」を解放しようとするのは、前髪で素直な気持ちを隠してしまう照れを排除しようとする気持ちの表れかもしれない。好きな人にちゃんと愛情を伝えられる自分でいたいのだろう。

最後は夏樹。彼には一定の達成が匂わされている。卒業旅行初日は杏奈の水着にドキドキしていた彼が、2日目では水着に動じない。それは彼が杏奈の肉体に触れたという暗示だろう。考えてみると、あまりロマンティックなシチュエーションではないが、作品内に このことを収録するには ここしかなかったのかな、と思う。
本編では夏樹は積極的な姿が まるで見えなくて、交際後も お家デート1回のみの描写しかなかった。しかし ここで夏樹の成長が見られて、逆に終わってしまうんだなぁと強く感じた。これでヘタレからの卒業ということか。


載終了直後から このような番外編が予告され、終了後1年以上が経過してから出版して貰えるのもメディアミックスの お陰であろう。読切短編だった出発点から、全メディアを制覇したような形になって、本当に幸せな作品である。これも複数の男子高校生目線という少女漫画らしくない形態の恩恵だろう。4人それぞれにファンがついて、声優さんの知名度で人気を上乗せして、アニメ化で更に話題になり、実写映画化に至る。

…が、以前から言っている通り、メディアミックスこそ本書を間延びさせたように思う。そもそも濃いファンがつくような設定以外、割と凡庸なエピソードの連続である本書である(実写化では そこが露呈したのではないかと危惧する)。そこへアニメ化のタイミングに合わせるようにクライマックスを用意したような展開となり、夏樹から勇気が奪い取られてしまった。そういう意味では幸福なんだか不幸なんだか分からない作品と言えよう。

「虹色日和 ~バスケ部の愉快な仲間たち2~」…
「2」とナンバリングされているように続・バスケ部の恋愛事情といったところか(「1」は『11巻』に収録)。そこで高校3年生の秋から交際を始めた たいぞーと千葉(ちば)ちゃんの交際までの詳細が初めて語られる。2人は塾が一緒で、そこでずっと一緒に行動していたら他校生からカップルと間違われた。そんなことが続くので それを事実にしようと たいぞーが軽く提案すると千葉ちゃんも同意した。大恋愛じゃなくても、一緒にいられる空気を感じた自然体の交際もあるという事例か。
彼とは逆に望月(もちづき)は まだ恋愛をする気が起きないらしい。いわゆるヒロインが主人公の少女漫画における当て馬と違って、いつまでも杏奈のことが好きだというヒロイン=読者に都合の良い展開ではないみたいだが、自分から長く好きだった人がいたことが影響して、よく知らない人との交際に積極的にならない。
そんな望月の現状維持を きっと喜んでいるのが筧(かけい)だろう。きっと望月が誰かと つき合う現実を目の当たりにした時が筧の言う「夢が覚める時」なのだろう。片想い状態の長い本書だから、筧は望月が誰か(異性)と交際したりする決定的な場面に直面していない。そう考えると冒頭の望月への下級生からの告白は、筧にとっても運命の時間だったはずだ。もしかしたら卒業を前に彼が誰かとつき合って失意の中で受験をしなくてはならない危機だった。
本編でも筧は望月の恋をずっと見守ってきた印象がある。筧の視線の先には常に望月がいた。よって筧の運命は望月が握っているだろう。自分から気持ちを伝えるような勇気はないが、せめて卒業まではバスケ部員として仲良くいたい、それが筧の本音だろう。本書では幾つかの告白があって、中には望月のような失恋もあった。その中で筧だけが告白をしないという選択をしたと言えよう。

「虹色日和 ~恵ちゃんと希美~」…
この回で初めて卒業式後のことが描かれ、本編の その先が見られる。それが恵一と希美の初めてのデート。2人の行き先は映画館。その後、ファミレスで昼食を取り、カラオケ、ボーリングに興じる。その中で趣味の合うこと、知らないこと、初めて知ることが多くあることに気づく2人。希美は恵一を妄信しているという部分もあるが、『15巻』では弱い所や意見の違いを見せていた。それを経ているから一層どんな恵一も肯定的に捉えることが出来るのだろう。
しかし楽しい時間も いつかは終わってしまう。それが辛くて希美は涙を流す。だが恵一は焦る必要は無いとアドバイスをする。次のデートがあるし、遊ぶ場所だって、まだまだ2人で したいこともある。だから今後の楽しみを取っておくことを楽しみにする。
これは『15巻』未来を信じられなかった恵一の変化とも言えよう。今ある幸せを最大幸福だと考え現状維持ばかりに固執していた彼が、変わっていくことや「次」を楽しめるようになっている。大人になったねぇ。
個人的には、恵一が まだドS設定なのかを見てみたいが、それは18禁になってしまうだろう。同人誌的な物を売ったら それはそれでボロい商売になるとは思うが…(出版社が許さないか)。

「虹色日和 ~まっつんとまりちゃん~」…
受験が終わって晴れて心から交際を楽しむことが出来ると踏んでいた智也だったが、まり は彼に爪を立て、一定の距離感を保つ。それはきっと まり が一度 智也に甘えてしまうと そんな自分を自分で軽蔑しそうだからではないか。これまで兄や杏奈には依存するように甘えてきた。だけど そこに恋愛感情・肉体関係を伴うとなると躊躇してしまうのだろう。ちなみに映画を見ている日の お家デートは、希美が恵一とデートした日と同じ日であろう(希美の格好が同じだ)。
多くの作品では好きなのに上手く言えずに2人に距離が出来るという展開になりがちだが、まり の前では格段に精神年齢が高くなる智也は彼女の自分への確かな愛情を信じているし、そして不器用な所も愛している。そうして智也は少しずつ まり の頑なな鎧を脱がしていくのだろう。本人が望むようなゼロ距離には なっていないが、一度 恋に溺れさせたら まり は絶対に揺るがないことも予想される。

「虹色日和 ~つよぽんゆきりん~」…
上京を前に物件を探しに来た剛と ゆきりん。今日は その2日目が描かれる。
剛の物件の譲れない条件は、ゆきりん が好きかどうか、なのだろう。ゆきりん も長期休みなどで この部屋に住む剛に会いに行くことを想定している。剛は ゆきりん が会いに来てくれる日まで自分を律し、努力する糧とする。
この2人は上の2組と違って肉体関係があることが示唆されている。智也や恵一が煩悩を捨てたような高校の後半2年間だったが、剛は恋人とコンスタントに旅行に行ったりと恋愛を謳歌している。遠距離恋愛も含め、他の3人には出来ないことを やってのけているのが剛の立ち位置の特殊性である。
ネタバレになるので書かなかったが『1巻』収録の、高校生の恋愛、大学生の遠距離、卒業後の同居が描かれた読切短編は剛と ゆきりん に酷似している。剛が遠距離恋愛になって、あぁ同じこと繰り返してるなぁと思った。

剛は大学生になったら邪眼を解放し、照れなく ゆきりん に愛を伝えることが暗示される。愛は無限だ。

「虹色日和 ~なっちゃんと杏奈~」…
仲間の8人で卒業旅行をするはずが、相次ぐトラブルで夏樹と杏奈だけで出発することになった。初日は観光予定だったが、遅れるメンバーのために2人は旅館に留まることにする。部屋は男子部屋と女子部屋の2部屋とってある。女子部屋には部屋に露天風呂が付いている。そこで2人はプール用の水着を着て2人で混浴することになる。だが女性の身体に免疫がない夏樹は まともに杏奈のことを見られない。
お湯に入って、身体が見えなくなることで気持ちは落ち着き、やがて夏樹は杏奈の手を取りキスをし、そして顔を近づける。結局、本編では見られなかった本気のキスが見られる。交際後、半年を過ぎているからか、照れはするものの積極的にキスを繰り返す2人に時間の経過を感じる。
遅れて到着した まり が見つけたのは杏奈の首筋に残るキスマーク。これは そういうことを意味するのか。

「虹色日和 ~最終回~」…
2日目は函館観光とホテルの別館のプールで遊ぶ。水着回『3巻』の希美初登場以来だろうか。ここで前日には照れて見られなかった水着姿の杏奈と夏樹が普通に接していられるのは、その前日に夏樹の経験値が上がったからなのだろう。
その前から風邪を引いていた まり はプールには入らないが、完治してから智也と2人で どこかデートに行くことを約束する。剛は上京を前に ゆきりん に指輪の号数を聞き出し、お揃いで左手の薬指にすることを提案する。なんだか卒業から大学入学までの間に、4組とも関係性が大きく変わっているような気がする。本編では動きが遅かったというのに…。
そして そのプールで運動部合同の卒業旅行と合流する。望月、たいぞー、千葉ちゃんなど名前持ちのキャラが大集合。

ラストは大学の授業初日(入学式ではないのね)。夏樹だけの特権である彼女と同じ大学に通える幸せを噛みしめて終わる。