《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

几帳面な性格だけど宿題は やらないし、末っ子長男だけど女性に免疫がない ちぐはぐ主人公。

虹色デイズ 3 (マーガレットコミックスDIGITAL)
水野 美波(みずの みなみ)
虹色デイズ(にじいろデイズ)
第03巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

夏休みを迎えてみんなそわそわ。剛はイベントの準備で大忙し、補習明けにみんなで繰り出した海では恋の進展も…? さらに、新学期には夏樹の前に杏奈をめぐってライバルのモッチーが登場し波乱の予感が!?

簡潔完結感想文

  • ツッコみ所となる短所はないが、ここが良かった!という長所もない。夏樹と同じく人畜無害。
  • 4人の男子高校生たちの「つがい」が出揃ったり、当て馬が登場したり ようやく準備完了?
  • どこでもツバを吐くような人は性別関係なくNG。周囲が寛大で良かったね、ワガママ女さん☆

係性が0か100か なのが気になる 3巻。

序盤で まず本書が構築しようとしているのは男女各4人、計8人の仲良しグループ。作者は その4組のカップリングに命を燃やし、全員を平等に幸せにしようとする。4組4様の恋愛模様が描かれるが、どの組の恋愛も単体で長編作品だったら内容が弱い。飽くまでも男子高校生4人の日常が本体であって、恋愛要素は少女漫画誌の連載のための繕った体裁のようにも思えてくるぐらいに。

この『3巻』でメインキャラ8人が登場するが、まだまだ彼らは1つのグループになっていない。8人のグループが結成されてからが本書の本番かもしれない。それまでは まだまだ準備段階。早くも高校2年生の後半に突入しているが、恋愛も勉強も焦る時期では ないらしい。他の作品だったら、そろそろ進路調査票が配られ、将来について悩む時期だったりするのに彼らは能天気である。

欠けていた最後の1ピースが発見され、これで4人が平等に幸福になる準備は整ったと言える。

残念なのは、最後まで その8人のグループ内の関係性の濃淡が隅々まで描かれていないことだ。

作者も排他的な態度を取る まり が どうして苦手な男子たちと交流するかなどの理由付けは しっかり用意している。まり は杏奈(あんな)が行くところには自分も同行するという決意と覚悟を持っているから、集団行動をするような場面でも参加する。また体温の低い杏奈を行動させるのは社交性の高い ゆきりん で、彼女の存在の お陰で女子グループは円滑に回っている。かなり癖が強い まり に最初から優しい ゆきりん は天使なのかもしれない。

人に害意を持って接する まり は、割とマイペースな剛(つよし)以上に面倒な存在で場の空気を壊すリスクが高い。だが周囲は基本的に まり に優しい。というか まり が好きになりつつある智也(ともや)以外は彼女に対する気持ちが全く描かれていないのが残念だ。

例えば杏奈を巡って対立構造になっている夏樹(なつき)など まり に冷淡に対応されて恐れているだろう。だが彼は まり に対する悪口など絶対に口にしない。その逆はあるが、男性が女性の悪口はNGらしい。恋のライバルでもある この2人の関係は今後も描かれるだろうが、問題は恵一(けいいち)や剛と まり の関係である。この恋愛の利害関係が全くないグループ内の人間模様は全く描かれず、単純な仲良しグループとして距離感が最初から最後まで同じである。

よく私が感想文で書いているが、複数人の人がいたら、人同士の関係性は それぞれに違う。苦手意識や認める点など温度差が様々だと思うが、本書は恋愛において関係する者以外は全部あっという間に仲良しになった で片付けられているように思う。
人(智也)に対してツバを吐いたり、爪で顔を引っかいたりする まり に対する男性たちの内心が全く描かれていないのが最後まで気になった。そこが本書が のっぺりとした表情に見える原因のような気がする。8人の色々な組み合わせ、会話の中で、彼らが互いにどう思っているのかが見えてくるような場面があったら もっと良かったと思う。

また今回は夏樹に対する不満が膨らんだ。それは剛だけが まともで他の3人が いい加減すぎるように見えるからである。私には あまり夏樹が夏休み明けに宿題を写させてもらうのを当然とするような人には思えないのだ。そして彼らにとって剛が「自分に都合の良い人」と言う意味の「良い人」になっているのが気になる。前回の感想でも書いたが、時間を有効に使っている剛に対して、自力で何もしない夏樹たちが あまりにも自堕落に見える。

そして女性に対する免疫がないのも、彼の家庭環境(水商売の母と姉2人)からすると不自然に思う。もし夏樹が女性ヒロインだったらぶりっ子だなぁと思う場面が何回もあったように思う。どちらかにトラウマがある訳でもなく、ダラダラと告白しない彼の姿に好感度は下がる一方である。


頭は男子回の「虹色日和」。夏コミのための漫画制作がギリギリの剛。そこで夏樹たち3人が手伝うことになるが、几帳面な夏樹以外は戦力にならない。しかも成人向け映像を見だして、その過激さ夏樹が卒倒。戦力を奪われた剛が珍しくキレて、4人は大騒ぎ。剛は生まれて初めて母親の大声を聞く。
以前も書いたが、剛は今回のような単独行動(即帰宅・旅行)などをしていても友情が壊れないなら、他の3人も単独行動させればいいのに。剛が美味しいポジションだし、他の3人が薄っぺらく見える。特に夏樹は几帳面と言う性格なのに、テスト勉強はしないし、夏休みの宿題もしない(後述)のは、ちぐはぐさを感じる。また夏樹は本書ヒロイン役なのだろうけど、成人向け映像を見ただけで卒倒するのは カマトトぶっている気がしてならない。まして彼は女系家族で育っているのに。性欲や性知識が無いからガツガツ行動に出られないのだろうか。


休み中も3バカは補習。少しは青春らしいことをしようと海へ繰り出す計画をする。
海回では、いつもの4人組以外に剛経由で情報を得た ゆきりん が杏奈と まりを召喚する。女性陣は『2巻』で交流が出来たとはいえ、人付き合いを得意としない杏奈や まり が ほいほいと応じる動機が いまいち分からない。恋愛以外の距離の詰め方が雑だ。

そして この回で4組8人のカップリングが決定する。杏奈は相変わらず鈍感ヒロイン。夏樹は積極的なアプローチではないけれど杏奈が勘付いても良いレベルでは彼女への好意を滲ませている。動くと見せかける「告白するする詐欺」は この後も何回も繰り返される。

智也も まり と平行線の議論を続けるだけ。ただ智也は まり の杏奈に対する固執に友情以上のものを感じたようだ。これは男嫌いの まり が、男子グループの中に入って行動する際の大きな理由になっている。まりが全ての集まりに参加しない、では智也との交流も生まれない。だから杏奈がいるところには絶対まりがいるという状況のためにも この気持ちは必要なのだろう。

恵一はガラスを踏んだ女性の怪我の手当てと搬送をする。初登場の怪我の女性は髪型もあり まり に見える。全員 同じ目をしているのが本書の欠点だろう。恵一が彼女と再会してからが恋愛模様の本番か。まだまだ物語は序盤なので、夏樹が告白しないのも当然だよね☆


くも夏休みが明ける。暇していたのに夏休みの宿題をしていない3人には幻滅である。せめて剛以外の3人で宿題をやろうとかいう気は起きないのだろうか。ザ・男子という設定にしたいのだろうが、私は この3人のいい加減さが好きになれない。

この回で杏奈の「鼻炎」設定が少し出てきた。忘れさられた設定なのかと思ってた。別クラスの夏樹が杏奈の動きを把握していないだけで、彼女は結構 教室からいなくなったり してるんだろうか。

『2巻』で登場したバスケ部員の中から望月(もちづき)が当て馬になる。ロシアの血が流れる美形が夏樹の強力ライバル。画力的に全く外国の血が入っているとは思えないところが残念。そして当て馬が登場したからと言って夏樹が実際に行動に出るわけではない。焦るだけで告白しないのが この男だ。

ただし学食で望月と杏奈(と まり)が一緒に食事しているのを見た夏樹は、他の3人に背中を押され、その場に割って入る。だが望月は夏樹が まり の隣に座りたいのだと杏奈に誤情報を与える。色白な望月は なかなかの腹黒のようだ。ちょっと勇気を出したところは見られるが、目標が低いので何も変わらない日々が続く。やはり白泉社漫画と同じく、現状維持が最優先らしい。


月の登場で杏奈への告白を考え出した夏樹(← するとは言ってない)。そこで友達相手に告白の練習をし、そして「理想の告白」の妄想が始まる。『2巻』の女子回「Rainbow Girl」の妄想の話と似ている。妄想でページを埋めている気がしないでもない。

この話は男子回である「虹色日和」なのかと思いきや違う。ゆきりん が出てくるからか、それとも連載が定期化したから特別編をする必要がなくなったのか。剛は なんだかんだで ゆきりん が喜ぶ行動をしてくれている。2人とも互いの距離感をちゃんと分かっている人たちなので本書で唯一 穏やかな交際模様が見られるのだろう。


日、まり は杏奈と待ち合わせして遊びに出る予定。だが それを智也が目撃し合流。杏奈の提案で夏樹も参加する。
それにしても杏奈は まり の男性たちに対する攻撃的な言動に顔色一つ変えないが、それを注意したりしないのだろうか。まり の本質を見抜いているから全部が許せるということでもないだろうに。私なら学校内でツバを吐いた時点で友達やめさせてもらうわ、となるだろう。

まり は少ないサンプルで好きになったり嫌いになったり思い込みの激しい人なのだろう。

まり は杏奈に近づく夏樹を敵視しており、彼の格好悪い場面を杏奈に見せようとし、その魂胆を知った智也が それを阻止するために行動する。こうして いつの間にかに目的を忘れ犬猿の仲の2人だけで行動している。まりが それに気づいた時、杏奈は夏樹と どこかに行ってしまった。智也と2人で待機するが、まりが席を外したら、智也が夏樹たちと連絡を取り合っているのを知り、まり は男に対する不信感や、自分がバカにされているという気持ちが増幅されてしまった。だが智也はバカになどしていないと まり の勝手な憶測を強い口調で否定する。

そして まり を夏樹から指定されていたカラオケに連れていき、その部屋で まり の誕生会が用意されていた。こうして「きっと今日で みんなとの距離が近くなった」と まり も思う。人に対して厳しい・汚い態度を取っていたのに優しくされると あっという間に ほだされてしまう自分勝手な まりちゃん なのでした☆

最後に恵一が海で助けた女性が、智也の妹だと判明する。