《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画あるある。登場する新聞部、部長は生徒間の恋愛を勝手に暴きがち。部員 少なめ。

執事様のお気に入り 12 (花とゆめコミックス)
伊沢 玲 + ストーリー構成・津山 冬(いざわ れい・つやま ふゆ)
執事様のお気に入り(しつじさまのおきにいり)
第12巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

カップルになって初めてのデートに出かけた良と伯王。伯王は、以前から連れて行きたかった場所へ良を誘う。楽しい時間を過ごす際中、突然見知らぬ美少女が登場し戸惑う良。伯王が下の名前で呼ぶその少女が気になって…?

簡潔完結感想文

  • 絶対に波乱が起こる新しい年の始まり。伯王たち執事3人組は姉妹に振り回される運命。
  • ナチュラルにイチャイチャしていたから交際後も周囲の反応は変わらないという幸運。
  • ライバルキャラ確定。だけど真琴に比べると家柄が しょぼいような。その分 ガツガツ?

年度の学園内のスパイは一掃できるけど、来年度の獅子身中の虫は分からない、の 12巻。

作中で昨年11月から良(りょう)と伯王(はくおう)の交際が始まったが、高校2年生の現段階で、彼らは卒業までの時間を意識している。それは伯王の、神澤(かんざわ)家という大きすぎる家柄が2人の交際を妨害することが目に見えているからだ。だから残された1年強の間で彼らは互いに成長し、誰もが認めるような自分にならなくてはならない。
だが、物語は そのタイムリミットの設定を少しずつ早めていく方向に進む。それが来年度に この学校に入学することが明らかになった高島 紗英(たかしま さえ)という女性の存在。彼女は伯王の父の右腕を務める人間を父に持ち、親族の絆や結束が好きな神澤グループは、近しい人間同士と血縁関係を結び、盤石な経営を試みようとしていた。

今回は紗英の存在で良が やきもち を妬くが、紗英の入学後には その逆の嫉妬の嵐が吹き荒れる!?

1年強残されていたと思われた2人の安泰な時間は、実は紗英が入学し、良と伯王の関係が主人と専属執事という以上に恋愛感情がある事を知るまでと なりそうである。伯王の父は まだ直接は動かないが、その代理人として紗英が父親の目や手となり動くことは十分に考えられる。この『12巻』のように初詣に行ったり、デートに行ったりと何の心配もなく過ごせる日々は、彼らの予想以上に短いのかもしれない。
また年度が変わることは、1学年上の庵(いおり)と隼斗(はやと)の卒業を意味し、伯王の将来を邪魔する者を容赦なく叩きのめす伯王の両腕は奪われることになる。その状況の変化が どう影響するのかも確かめなくてはならない。

両想いまではマンネリで飽き飽きしていたものだが、いざ物語が動くと色々なことが起きて目が離せない。

ただ、ライバルと目される紗英の家柄の中途半端さが気になる。伯王父は絶対に裏切らない右腕の娘だから、神澤グループにとって害がないと踏んでいるのだろうが、せっかく登場するライバルが部下の娘というのはスケールが小さくはないだろうか。神澤グループに並び称されるような家の真琴(まこと)ならいざ知らず、紗英のような人間に良が臆することも無いような気がしてしまう。

ここからは大人の都合で進みそうな話だが、良と伯王が話の中心にい続けるような展開であることを望みます。


45話。年が明ける。良が年賀状を楽しみにしている場面などは どうも古臭く感じてしまう。少女漫画としては正統派の作品と展開だと思うが、リアルタイム読者に響いているとは思えない。
伯王の実家、神澤グループも どこぞの反社会的勢力かと思うぐらいグループ企業との関係性を重視していて古い体質に映る。賄賂や陰謀が横行しそうな組織の体質である。

神澤グループの新年会では これから登場する人たちの顔合わせの場面が多い。1人目は紗英(さえ)。伯王父の右腕として活躍する社員の娘である。彼女によって物語の後半は大きく動く。
他にも庵が溺愛する双子の妹2人が登場したり、隼斗の姉が登場する。執事クラスの3人は個性的な姉妹に、それぞれ振り回される様子が見られる。庵たちの兄弟構成は設定だけはあったが、ここで初めて顔を見られた。

伯王は初詣に訪れた神社で良と同じ場所にいることを知り合流。波乱の起きそうな1年の始まりだが、始まりは穏やかな1日であった。


46話。伯王の憧れの執事・向坂(さきさか)が再登場。『6巻』以来、3回目だろうか。彼は伯王の半保護者的な立場で、彼の変化を如実に観察してきた人。この恋愛も見守ってくれている人と言えよう。

向坂がいると趣向が凝らされ、物語の主導権は彼に握られるのが定石となる。今回はケーキ1ホールの中に1つだけ入っている陶器に当たった人が王様となり、他の生徒は執事・メイドとして働くというルールが発令される。考えてみれば向坂こそ場の王様なのである。

伯王は良を贔屓にして彼女に当たりを引かせようとするが、策士策に溺れ、自分が王様になる。本来、この学校の王ともいうべき御曹司の伯王に、どんなサービスをすべきか悩む一同。
そこで周囲の勧めもあり良がメイドの格好をして伯王に仕える。だが良は伯王の お茶の好みを把握しきれていないし、淹れ方もあやふや。うーん、『4巻』のバイト回で良は お茶について一通り学んだような気がするのだが…。こういう成長を帳消しにするリセットは残念な限り。伯王のサービスが大変な知識と経験に基づいているって話は この回でもしてたし重複している。作品への集中力が欠如しているように思えてならない。

後に神澤グループ当主・伯王は、この衝撃体験をもとにM(Maid)クラスを創立したという(嘘)

47話。良と伯王の関係が学校の新聞部によって狙われる、という話。
学園側は専属間の恋愛を特に禁じていないから問題のある関係ではないが、本来 対等ではない主人と執事の恋愛は物珍しさから下世話で単純な好奇心を呼ぶ。
しかし少女漫画における新聞部は かなりの確率で悪役になりますね。プライベートを守らない独善的なジャーナリズムが蔓延るのは部長の暴走というのも定番。すなわち この手の話は どこかで読んだ、ということだ。清く正しい少女漫画だが、独創性に欠ける。

そんな新聞部の動きを察知するのは、同じく執事を取材対象とする薫子(かおるこ)であった。彼女は愛のない新聞部に妨害工作を仕掛ける。
薫子は自分の正義感と執事への愛情から動いていれば、もし新聞部の報道によって、2人の交際が伯王の家に伝わってしまえば、伯王が成長を証明する前に父子の対決が始まってしまう事態であって危機一髪。この件を面白おかしく報道されてしまうことは2人の将来に大きく関わることであった。薫子の行動は色々とグッジョブなのである。

良と伯王を支援する者たちの妨害はメモリの消去かと思いきや…、という意外な展開は面白かった。確かに薫子の方もジャーナリズムの一環と言えなくもない。今度は「黒燕画報編集部」で1話作って欲しいものだ。


48話。交際後に初めて2人で待ち合わせて出掛ける2人。正真正銘のデート回である。緊張して眠れなくなる良が可愛い。失礼ながら神経 図太そうに見えるけど、意外に繊細なのが良である。

良は色気より食い気で、伯王を食べ放題に連れていく。その後は伯王の提案で彼が良を連れて行きたい場所へ行くことに。それはホテルのラウンジらしき場所。伯王が自分を ここに連れて行きたいと思ってくれたこと、この1日を楽しみにしてくれていることに感動する良。

一時、良が席に立った時に、伯王に話し掛けるのが45話で登場した紗英であった。伯王に屈託なく姿を目撃し、良は複雑。小さい頃からの顔なじみで伯王が呼び捨てにする、上流階級の女性ということで良は意識する。そんな自分の気持ちがやきもちだと気づき良は混乱するが、伯王は良を名前で呼び、落ち着かせる。相手を恨んだりする訳ではないが、良の中に良い独占欲や やきもち が見られたのは本書で初ではないか。これまでは相手の無気力試合(伯王を本当は好きじゃなかった真琴)で勝負になる前に決着がついていたが、正統な彼女として紗英に どうぶつかっていくのかが楽しみである。

そんな紗英は来春から同じ学校に入学し、伯王の父も信頼の厚い右腕である紗英の父との縁戚関係を考え始める…。