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少女漫画と小説の感想ブログです

半年違いで同じ掲載誌の追加キャラの設定が酷似。これは編集部のチェック機能が問題…?

S・A(スペシャル・エー) 14 (花とゆめコミックス)
南 マキ(みなみ まき)
S・A(スペシャル・エー)
第14巻評価:★★(4点)
 総合評価:★★(4点)
 

2年生に進級して早々、光が実力テストで二位の座から転落!? 一位・滝島彗の下には転入生の常磐 庵の名が。この学校で一位をとるという高い向上心を持つ庵に、光は意気投合!! しかし、そんな二人の様子を見ていた彗は…!?

簡潔完結感想文

  • 終盤での意味のない当て馬の投入はアニメ化で連載継続を余儀なくされたからか。
  • 美容関係の進路、一人暮らし、ヒロインの看病など『悩殺ジャンキー』と丸被り。
  • SA下位の順位変動。竜が株を上げる一方で、ワガママ放題の芽の株がストップ安。

こにきて舞台を学校に戻すことに驚く 14巻。

SAメンバーは学校内に友達がいないため、いつも学校の外でイベントを繰り広げてきた本書ですが、
物語も終盤になって、2先生に進級したら心機一転なのか、
学校を舞台とする話が ようやく始まりだした。
これはフィンに続いてSA以外の学校生徒の新キャラが生まれたからだろうか。
色々と遅きに失している部分はあるが、ようやく学園生活が始まった。

そして「少女漫画の3巻 三角関係の始まり説」が私の持論なのですが、
本書の場合、終盤と言っていい14巻で ようやく三角関係が始まったといえる。

恋愛的には完全に決着がついている この時点で当て馬を投入するのは、
『13巻』の感想でも書いた通り、アニメ化による人気再燃を持続させるためなのだろうか。

この三角関係が何か物語に意味のあるものだったら良いのですが、
本当に間に合わせのための新キャラという感じなのが残念なところ。

これまではSAの「つがい」として新キャラが出てきたが、
これからは それもなく、使い捨てのような扱いになるのが残念。
アリサに続いて常盤も、一定の役割を果たしたら、さよなら だろう。

そして滝島(たきしま)の祖父が再始動するまでの間の時間稼ぎにしか見えない。
ロンドン行きを阻止した『13巻』前半以降、日常回が続くが、それは束の間の平和だろう。

誰かと誰かが勝負したり賭けをすることでしか話を作れない、作らない本書。
遂に禁断の、光を巡る男性の争いを始めたようです。

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(右)『悩殺ジャンキー』(左)『S・A』。一人暮らしの男性宅に のこのこと上がるヒロインが2008年の流行。

だ気になるのは追加キャラ・常盤 庵(ときわ いおり)の設定。

転校生である常盤は いきなり学年二位の成績を収める。
長らく二位を維持してきた光(ひかり)と同率の二位。

どうやら病院の院長の次男らしいが、彼には進みたい道があるらしく、
その為の資金を稼ぐために、バイトに明け暮れ、一人暮らしをし、それでも成績は二位の苦学生である。
それはバイトが禁止されている お金持ちが集う私立トップ校の中で異質な存在となる。

庶民というべき生活をし、夢の実現のためには努力を惜しまない常盤の姿に光は強い共感を覚える。

少しネタバレになりますが、常盤が努力してまで進みたいのは美容師の道。

ヒロインが、追加キャラの一人暮らしの部屋に上がり込み、本棚の本から美容関係の道に進みたいと知り、
追加キャラの高熱をヒロインが不器用なりに看病して、
その接近により物語終盤の恋愛成就が確定しているような時期に追加キャラがヒロインを好きになってしまう、
という展開をどこかで読んだ気がする…、と記憶を辿ったら、
福山リョウコさん『悩殺ジャンキー』でした。
上記の描写は、2作品の中で順番が少し違うとはいえ、ほぼ同じことが起きてます。

しかも この2つの作品、掲載誌が同じ白泉社の「花とゆめ」なのである。
しかも該当する巻の発売が2008年というところまで一緒。
本書は この『14巻』で発売は2008年の07月、『悩殺』で該当するのは『12巻』で こちらは2008年01月の発売。

つまり悩殺の方が発売も掲載も早いということだ。
同じ掲載誌で半年違いで同じような状況が重なる状況に当時の読者たちは ざわつかなかったのだろうか。

これは偶然に似てしまった結果なのか。
でも同じ雑誌の作家陣で、掲載誌を読んでいる可能性の方が高い訳で、後出しの方が圧倒的に不利な状況だ。

というか作者本人は気付かなくても、雑誌の編集者は気付いて指摘するべきだったのではないか。
『悩殺』の方の追加キャラは、物語の結末のためにも美容関係の進路でなくてはならないが、
本書の場合は、美容師でなくても話は通用する。
ならば編集者が類似性を指摘して、後発に設定の変更を申し出るのがベターだったのではないか。

パクリとか大きな訴訟になるような問題では決してないが、
つまらないことで当時の人気連載が槍玉にあげられるリスクを回避できたはず。

まっ 意地の悪い私は、こういう一致を発見した時に嬉しくなってしまうんですけどね…。

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どちらもヒロインのお節介が新キャラの心を動かし、そして叶わぬ恋に火を点けてしまう。

盤が転入してきたのは2年生に進級するタイミング。

「二位さん」だけでなく、努力の人という光と共通点がある常盤。
光の6歳児キャラは、常盤の胸を射抜いてしまった。
『12巻』のアリサと同じく、今更片想いキャラが出現ですね。

アリサ以降の登場キャラは誰かと結ばれる恋愛の空きもなく、
ちょっと恋愛を搔き乱しては静かに去っていくので、大局的には何の波乱も起きない。

光は常盤との交流を また滝島に隠し事として行動し、単独で一人暮らしの常盤のアパートに乗り込む。
こういう天然、というか恋人や交際という一種の契約におけるルールが分かっていない人は、
恋愛しなければいいのにと、いつも腹立たしくなる。

ヒロイン=聖母は誰にでも優しく、その分 隙が多いのだろうけど、
光のような6歳児に恋愛は必要ないと思わされるエピソードでしかない。

お仕置きとして滝島が先回りしてヒーローになれるし、
少女漫画としてはヒロインが身勝手に動いた方が便利なんだろうけど、幼稚さが否めない。


お仕置きとして滝島からキスをされて光が壊れる。
今更、恋の悩みに悩まされる光。

そんな光の様子を見て、滝島は勝負を挑み、そして言うことを聞かせることで彼女の真意を聞き出そうとする。
ここからは何度も繰り返された展開となる。
こういう再放送をするのが残念だ。
なぜ彼女の不満を勝負で聞き出すのか。
漫画としては それがデフォルト展開なんだろうが、
交際しても変わらない2人のコミュニケーション方法に交際の成熟が見えない。


こからは再び日常回が続く。
新入生歓迎パーティーをSAが開催する運びとなった。

だが脅迫状を受け、ハレの日が中止に追い込まれる可能性が出てきた。

この話は犯人をおびき出す手法が雑ですね。

そして こういう日常回で、光&滝島ペア以外が活躍する話が読みたいなぁ。
美味しい役を全てを2人が持って行ってしまうから、他のSAの意味が失われている。

たとえば理事長の息子である宙(ただし)が、新入生名簿に異変を見つけて対処するとか、
純(じゅん)のもう一つの人格が女性の傷ついた心を和らげるとか、もっと個性に合った役目を与えてもいい。

もっとバリエーション豊かに、SA全員が輝いていれば本書の評価は大きく違った。
SAの個性が描けて、物語に厚みが出せれば、作品は もっと格好良くなったと思うが、
どうにも一本調子で、どこかで見た展開が続いてしまう。
ラストで光が粋な言葉を吐く展開にも飽きた。

こういう時、葉鳥ビスコさん『桜蘭高校ホスト部』だったら、
誰でも探偵役がこなせるぐらいの能力と個性があるのに、と比べてしまう。
キャラの立ち方に歴然とした差を感じてしまう。


をフィンに取られることに危機感を覚えた双子の姉弟・芽(めぐみ)と純。
GW休暇の滞在先をフィンのプランから変更するように勝負を挑む。

双子は自分たちが、それぞれに恋をして竜から一足先に遠ざかったのに、
竜が遠ざかると相手を逆恨みする姿が好きにはなれない。
竜は独りで寂しさを乗り越えようとしてたのに。

なんか双子、特に芽は『11巻』の「幸せ石」件もあり どんどん苦手になっていく。
双子の身勝手&幼稚さが目立つから、この3人の話だと竜が大人だなぁ、という感想になる。
私の中のSA好感度では竜は上位に入っています。


2年生のレクリエーションイベントも勝負事。
またも滝島は光と個人的な勝負をする。

一方で、滝島と常盤は密かな男の戦いを繰り広げていた。
6歳児のヒロインは、嫉妬などの感情とは無関係の場所に居るので最後まで蚊帳の外。
威勢はいいが、光も無自覚ヒロイン、守られヒロインなのである。

滝島は光との勝負に勝っても、光に常盤に近づくなとは言えない。
それはただのエゴだから、光に迷惑をかけられない。

これは『11巻』で光が祖父に直接 滝島のロンドンに連れて行かないで、と頼めないのと同じですね。
自分の願望が相手を縛ることにはしたくない。

だが今回は当人同士の直接の会話で、光は滝島の束縛や嫉妬が少し嬉しい。
光がこういう言葉を発するとは意外だった。
少しは恋愛経験値を積んでいるのかな。

だが当て馬はまだ奮起するようで、戦いは続く…。