《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

胸を掻きむしりたくなるほどイライラする大嫌いな女のことが 俺は大好きなのかもしれない。

悩殺ジャンキー 12 (花とゆめコミックス)
福山 リョウコ(ふくやま りょうこ)
悩殺ジャンキー(ノーサツジャンキー)
第12巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

遊佐の中に自分と似た部分を感じ、放っておけなかったナカ。誘われるまま一人暮らしの遊佐の部屋へ入ったナカが、そこで見たものは…。一方、ウミはナカの隣に立つ遊佐の姿を見るたびに、心の奥底で鳴る小さな音の正体を自覚して…!?

簡潔完結感想文

  • 虎穴に入らずんば虎子を得ず。遊佐の家で分かった遊佐のこと。ナカ 遊佐 急接近。
  • ヘアメイクの勉強をしている遊佐にナカは仕事を依頼する。8人中6人で挑むお仕事。
  • カメラマン・堤の新たな目標。いつまでも過去には居られない立ち上がれ、走りだせ。

ウミではなくナカというコネが出来たことで万事が上手く回り始める12巻。

『12巻』は新キャラの遊佐(ゆさ)を深く掘り下げていくと同時に、
8人の仲間「悩殺・八犬伝」の内、6人が揃って挑む仕事や、
カメラマン・堤(つつみ)が新たな目標に向かって悪戦苦闘し、その後に走り出す巻となっている。


遊佐の掘り下げとしては、彼が実はメイクアップアーティスト志望であること、
そしてメイクの道に進むために雑誌「メンモン」専属モデルを降りたこと、
しかし師事した人物に否定されたことで、再びモデルに戻ってきたことが明らかになる。

好きな道を断念して、モデルとしても中途半端な立場しか確立できないことが、
彼の焦りになり、一足飛びに活躍が約束されたコネを強く望むことになった。


迂闊にも遊佐の家に上がりこんだナカは、遊佐が美容系コースのある高校に行っていることを知り、
在学する学校の新しい制服パンフレットの仕事をする際に、メイク係として遊佐にも声を掛けようとする。

このパンフレット制作は勝手に命名している「悩殺・八犬伝」の8人中6人の合作となります。
前回の双子のデザイナーのカタログ制作時は遊佐未登場で、7人中5人だったので、順調に人数が増えてます。

…といっても遊佐は ほんの少しだけの参加だし、
新しい制服も双子のデザインした服でもないんだけど。

では誰が制服のデザインしたのかというと『3巻』以来の登場となる奇抜なデザイナー・ヒデト☆スズキさん。
学校の卒業生で、かつてナカがジュースをぶっかけた人ですね。
そして彼こそが双子の花楓(かえで)と苺(いちご)の憧れのデザイナー「ひでちゃん」だったのだ…。
意外なところで点と点が線になりますね。

撮影風景は文化祭のようなお祭り感があります。
なんで生徒が登校する日に撮影するのか、
やっぱり撮影 即 完成なのね、とかツッコミどころもあるけれど…。

そして遅れて遊佐が登場。

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ナカの思いが届いて遊佐 登場。これにて「八犬伝」8人が揃いました。

海にとって遊佐はメンズモデルとしても嫉妬の対象だけど、
ヘアメイクアップアーティストとしても嫉妬しちゃいそうだ。

だってナカの顔に近づいて作業することも、
彼女に秘められていた可能性を引き出すことも出来るのだから。
本当に海様は面倒くさいですね。


これを機に、「八犬伝」メンバーたちと仕事を重ねる遊佐。
最初は口調も態度も厳しくて、徐々に人となりを知っていくと、意外な面や抜けているところが多く見受けられ安心するという流れは他のメンバーと同じですね。
緊張と緩和。雨のち晴れ。
緩みを見つけた時の安心感で主人公たちも読者もその人のことを好きになっていくという、恋愛漫画の手法と同じです。

性格的に抜けているところがないのは千洋ぐらいではないだろうか。
あとは印象的なキャラ付けがされていますね。
そのキャラ付けが段々しつこく感じられる人もいますが。

意外だったのは、仕事を重ねても「八犬伝」の仲間の証、
海=ウミが遊佐にバレていないこと。
『12巻』終了時も露見しておらず、これで2巻以上も秘密が守られています。
本格的に仲間になるのは、もう少し先ということでもあります。


一つ変わったのは、ナカと遊佐の関係。
2人で一緒に参加することになった、とあるパーティー
ナカがパーティーに参加するとトラブルを生むという お約束に漏れず、
遊佐は過去の因縁の相手であるメイクアップアーティストと再会してしまう。

遊佐を挑発するような相手の言動に怒ったナカは自分が挑発に乗り、
華美な服がなくても、遊佐のメイクが映えることを証明するため一肌脱ぐ。

そんな滅茶苦茶なナカの行動は遊佐をイラつかせ、そして もう一つの感情を湧き上がらせる。
海としては厄介な遊佐のもう一つの役割、恋のライバルが覚醒してしまったかもしれません…。


そうして準備(カタログ)も整ったところで、新年度の開始。
花楓と苺も晴れて同じ学校に入学し、楽しい学校生活が始まる予感。

そういえば、そんな説明が『10巻』でありましたが、
「生徒会選挙に誰も立候補しなかった為 特例措置」として「中高合同の生徒会」となり「高等部に上がっても同じメンツで」活動出来るらしい。
なので高校1年生の生徒会長が誕生します。
とっても不自然極まりない作為ですね。

でも良かったね。海はいまさら役職のない人間になんてなれないだろうから。
彼のプライドを保つためにも、偉そうな生徒会長は適任じゃないでしょうか。

これにて全員高校生(堤は留年)。


そんな堤も新たな目標を見つけて邁進し始める。

遊佐をメイク係に指名し、ウミナカをモデルにして写真を撮影する。
かつて自分たちが集まっていた場所で、
かつて自分たちがその年齢であった、15歳の2人を撮る堤。

だが、撮っても撮っても、あの頃の写真にはたどり着かない。
自分が追う「理想」は過去のものか、それとも…。

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過去の幻影を振り切って、今の関係をもう一度構築しようとする堤。

巻末の短編とあいまって、堤の物語もこれにてハッピーエンドですかね。
ただ美羽(みはね)に恋するもう一人の男・千洋(ちひろ)にとってはバッドエンドです…。


悩殺ジャンキー -番外編-白の秋」…
堤と美羽、2人の交際から別れまでを描いた一編。

年長組3人の物語は、色+季節の4部作になるんですかね。
これが3つ目の短編です。

好きになった人の才能に負けないように努力した結果、
仕事の多忙さですれ違う高校生カップル。
目標を目的にしてしまい、間違えてしまった2人。
これも本編の内容に対応する短編です。

作中で堤が作者から愛されて、存在感を示しているけれど、美羽は存在感が弱いですよね。
いつぞや同じ事務所の人に嫉妬されていたように、
仕事を休んでも元の位置まで戻れたり、別れても愛されていたり、
ちょっとズルい人と思ってしまう汚い私です…。
しょうがないけど、千洋が空気で可哀想。

とっても今更ですが堤の天然パーマにモジャモジャ感はありませんよね。
ゆるふわって感じで。