南 マキ(みなみ まき)
S・A(スペシャル・エー)
第08巻評価:★★(4点)
総合評価:★★(4点)
彗をデートに誘うことに成功した光。だが何かと邪魔が入って二人★きりになれないまま彗の誕生日に。何とか彗に喜んでもらおうとする光は、プレゼント選びに奔走し…!? スペシャルショートも収録!
簡潔完結感想文
光&滝島日記報告。収録の連載6回分で何も起きませんでした。以上、の 8巻。
続々とカップルが成立していく本書。
ただでさえ影が薄い3人(双子&竜・りゅう)は個人回が1,2回しかなくて、
思い入れのないまま、恋愛が進行していく。
こうやってSAメンバーの恋愛が進行していくのは、
それで主役の光(ひかり)と滝島(たきしま)カップル成立を先延ばしに出来るからだろう。
最初から存在しているSAをしっかりと活用できないまま、
八尋(やひろ)や桜(さくら)の方が、作品にとって便利だからか登場機会や活躍場面が多い。
いつぞやも書いたが、これはSAには自主性が無いからだろう。
まとまりに欠けるし、彼らには自分たちで日々を楽しくしようという気概がない。
だから八尋や桜が彼らをあちこちに引っ張って、そこを物語の起点としている。
結果的に、学校外での活動が多くなり、学校内のSAという特別な地位も ただの仲良しグループの名前となっていく。
序盤で もっともっと読者とSAの距離を縮める話を用意できたら良かったが、
読者の分身=異邦人がいない本書では それも望めない。
こうして大して仲良くなれなかった人の恋愛話が続いていく。
だから読者も八尋や桜など 新キャラの方が、
知らない人と仲良くなっていく過程が共感でき、彼らの理解を深めやすい点なのかもしれない。
要するにSAは詰んでいる。
『8巻』は表紙が誰が誰だか全員分からなかった。
両端はいいんです。滝島と八尋の弟たちという完全にマイナーな人選をしているから。
問題は真ん中。
これは光、なんですよね…?
なぜこんなに目が離れて顔がふっくらしているのか…。
本当に光の顔は いつまで経っても安定しない。
これだけの長期連載で、作者が漫画における何かを獲得していく様子、
成長していく様子が見られないのも残念だ。
明かな成長・変化が見られたら、それだけで読者は応援したくなるものなのに。
前回、光に「らしくないこと(自分がお嬢様だと嘘をつく)」をさせてまで果たしたデートの約束。
だが、そうまでしたのにデートは2人きりではなく、桜と純(じゅん)を合わせた4人での待ち合わせとなる。
2人の恋愛に関しては詐欺的な展開が続きます(溜息)。
デート回かと思ったら、純の話で大変 残念に思った。
こうでもしないと 純の恋愛は進まないんでしょうけど、予告詐欺でしかない。
そして純と桜が いきなり両想い。
避けて逃げて追いかけて告白、って展開は明(あきら)と宙(ただし)の告白に似ている。
2巻続けて脇キャラの恋を描かなくてもいいのに。
脇キャラの恋愛を ちまちま描いて、肝心な問題から逃げているようにしか見えない。
桜が純を好きなのは明確だったが、いきなり純が桜を好きになっていて驚く。
というか全く共感できない。
作品やSA自体を好きな人には嬉しいのだろうが、俯瞰で見ている私は、何が何だか分からない。
随分 簡単に好きになるなぁ、ぐらいの感想だ。
純の滝島への不意打ちだけは楽しかったけど。
そのまま4人で桜の別荘に移動して いきなり お泊り回になる。
どの家庭も子供の宿泊に寛容すぎやしないだろうか。
そこで酒癖の悪い光が、間違って飲酒してしまったために起こる騒動。
スピード感と狂気が渾然一体となっていて、楽しいのだが、
またもやリセット機能が起動するのには辟易する。
作者は高熱・飲酒・催眠術、人格を変えて騒動を起こすジャンルが好きですね(ワンパターン)。
そこに八尋も招待されて、男女9人が勢揃い。
翌日は、宙と八尋が2人だけで山を探検をする。
八尋は、宙が明の彼氏として相応しいかを見極めるために同行した。
少女漫画の山といえば、遭難か怪我が定番。
今回も、宙の命を八尋が握る場面がある。
ここは八尋が宙を事故死に見せかければ、明が自分を好きになる可能性が出てくる場面。
それでも八尋は宙を助ける。
これまで明に近づく者を排除ばかりしていた門番の八尋から、宙は合格を貰ったようだ。
更に八尋は明にちゃんと告白をして、全てを清算する。
明も、八尋が一番見たかった笑顔で、告白に対する答えを述べる。
一方で失恋によって、もう一つの恋愛ルートが開拓されていく。
明&宙はともかく、純と桜も このぐらいの ゆっくりとしたペースで話を進めたら応援できたのに。
続いては滝島の祖父が送り込んだ刺客・蒼(あおい)が光を使って滝島の祖父の要望を呑ませようとする話。
それを察知した滝島がヒーローになり、光を蒼から遠ざける。
上司と滝島の間で揺れる中間管理職・蒼はストレスで吐血。
蒼は滝島の祖父に対して、判断保留を明言する。
それは玉虫色の決着だが、滝島たちの笑顔を見られる結果となった。
2話続けて好きな人(八尋の明・蒼の滝島)の笑顔が見たい、という話でしたね。
ここで蒼は光の良さに気づき始めたが、それを察知した滝島に牽制されて好意には変換できない様子。
滝島の当て馬は、滝島と同じぐらい有能な蒼ぐらいしかいないと思われるが、その芽は芽吹く前に根こそぎ排除された。
ここで三角関係で話を引っ張るのも悪くない展開だったのではないか。
物語の終盤で中途半端なことをするぐらいなら、ここで長期の戦いにして欲しかった。
続いては滝島の誕生回その1。
最初は光視点で誕生日プレゼントに悩む描写が続く。
またまた頑張り過ぎる光と、それを見抜く滝島の様子が描かれるが、
逆に滝島家主催の誕生回でよろけたのは滝島だった。
それを潜入捜査していた光が見ていられずに、彼をベッドで強制的に寝かせる。
だけど これ、光特有の小っちゃな正義感で、パーティー出席者からすれば失礼な対応に思える。
蒼が代理人を務めているが、本日の主役は滝島な訳で、
いくら義理で祝っている人が多くても、人の厚意に対して、一方的な振る舞いだ。
これは光が好きな仁義とは反する行動ではないか。
良い話風にまとめているが、まとまっていないのが本書。
特に光の行動が近視眼的すぎて好きになれない。
そして高校生同士で祝う滝島の誕生回その2。
場所は、桜の家が所有する島、らしい。
SAも相当な金持ちなのに、桜の家が所有する場所が続くのは、
桜や八尋を無理なく登場させるためなのかな。
今回は滝島視点。
滝島が多忙なのはロンドンの祖父に色よい返事をしないことへの嫌がらせ。
ロンドン転校問題を引っ張り続ける本書。
1回で決着をつけずに、こちらも恋愛と同じく何度もダラダラと同じようなことを繰り返す。
ちゃんとラスボスに設定して、最後の最後で戦えばいいのに。
しかし祖父側も自分の思い通りにならないから、嫌がらせをするなど人間的に小さい。
ここもラスボスとして堂々としていて欲しかった。
光だけが最初に滝島の誕生日を祝うのは『1巻』の読切連載の時でもありましたね。
『1巻』の誕生日はリセットされているが、さすがに今回の誕生日は大丈夫でしょう。
好きな人が笑顔になれば、それだけで万事OKな『8巻』でしたね。