《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

ヒーローの滝島は その超絶能力によって結婚から遠ざかってしまう運命なのかも⁉

S・A(スペシャル・エー) -場外乱闘- (花とゆめコミックス)
南 マキ(みなみ まき)
S・A(スペシャル・エー)
第18巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★(4点)
 

ライバル・滝島彗に勝つため超エリート校の白選館学園に入学した華園光。学園トップ7名のS・Aクラスで日々勝負する2人は、実は恋人同士★ ある日、光が偽結婚式の花嫁役を頼まれて…!? SAメンバーと仲間達にまた会える、「S・A」番外編!!

簡潔完結感想文

  • SA復活。通常営業に加えて新キャラや その後を描いたりバラエティ豊か。
  • カップルの話。芽と竜にページを割く一方、純はゼロ。SA内に格差が。
  • 滝島のインナーワールドへ ご招待。幼児化・女体化、そして性欲まで披露。

れで『ホスト部』とは単行本の数で並んだことになる、番外編の18冊目。

2009年の本編終了の2年後から不定期に番外編が発表され、
2013年に6話分が収録された「場外乱闘」が単行本化された。
まだ未収録の短編が1つ残されているが、ページ数の都合上収録できなかったらしい。
『S・A』にあと5話分 番外編が発表する機会が巡ってくるのだろうか。
幻の短編となってしまわないことを祈るしかない。

未収録の短編は留学生・アリサと、作品唯一の20代男性・蒼(あおい)の話らしいが、
単行本派の読者は読めないまま、最後の最後の「おまけまんが」の1コマで、
彼らの結婚を知るという悲しいネタバレになってしまった。
本編でも そう読める部分はあったものの、恋愛成就の場面を読めずに、結果だけ先に知るのは残念だった。

てっきり本書のヒロイン・光(ひかり)とヒーロー・滝島(たきしま)が結婚 第一号になると思ってましたが、
あっという間に脇役キャラが おまけまんが で結婚していてビックリ。

しかし光と滝島は、
光が滝島に勝った後で、光がプロポーズをするという約束が交わされている。

惚れた腫れたの勝負はともかく、
どうやら光は知力や体力では滝島には勝てないようなので、
もしかしたら2人の争いは一生続いて、いつまでも お互い独身のままなのかもしれない…。

もしかして光が滝島に勝つのは「寿命」なんじゃないか…。
天寿を全うした滝島が他界し、
その横で光が「勝ったぞ! 初めて滝島に勝ったぞ さぁ滝島 結婚しよう!」と言っても、
滝島は もう光に愛を囁いてくれなかったとさ…。

とんだバッドエンドじゃないかッ!

冗談はともかく、帰ってきた彼らの変わらない姿、
成長する姿、初めて見る人物などなど、ファンのための延長戦の はじまりはじまり。


「第1話」…
光と滝島は今回も新入生の依頼をどれだけ叶えられるか勝負中。
光はストーカーに式の妨害を予告されている結婚式での身代わりを依頼されるが…。

本編でのお約束をしっかり踏襲しようという作者の目標を感じる内容。

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SA制度や勝負は滝島にとっては、毎日が王様ゲームの王様気分を味わえる この世の天国なのかもしれない。

「SAは学園のイベントを全て仕切ってい」るという謎の設定がいきなり出てきて驚いた。
続けて読んでいる私も そんな設定あったっけ?と戸惑うばかり。
そして なぜ この依頼は「お願いコイン」が10枚もらえるのかは謎。
友人たちから かき集めたとかなのかな?
所々 作者の脳内設定と描写が噛み合っていないのが気になる。

例えば、他の学校の桜(さくら)がフィンを女性だと認識しているのは、
本編ラストでフィンが女性として生活し始めて以降の話だからか、とか読者が補完しなければならない。

滝島と似た者同士で、彼の気持ちがよく分かる八尋(やひろ)に忠告されて、
初めて滝島の気持ちを無視していたことに気づく光というのも相変わらず成長がない。
ただ間違っていても一直線に走り続けるのが光。

滝島のヒーローとしての活躍も予想通り。
本編で成長が見られなかった部分も きちんと踏襲している、のか…?
終了から2年ぶりに読んだら、これこれ、とお約束の流れに懐かしさが込み上げること 間違いないだろう。

ただ、自分のトラブルを人任せにして、
その後に何事もなかったかのように結婚式を呑気に上げる依頼者の姉夫婦は相当 頭が お花畑である。
そもそも学校外の、プライベートなトラブルは依頼が無効にならないのかな。

「第2話」…
小さい頃から竜(りゅう)にトラウマを与え続けてきた竜の姉が、
フィンに間違った恋愛指南をして困らせる、という内容。

竜と姉の姉弟設定はあったものの本編で描けなかったという話は本編の おまけページで読んだ。
こういう秘話に日の目が当たるのも番外編の楽しみだろう。

けれど姉の横暴は実に不快な描写が続く。
マトモなキャラだったフィンを間抜けにしてまで笑いを取ろうという作者の品格を疑う。

茶道で最後にお茶に唾を入れるとか、残飯みたいなご飯を彼氏に差し出すとか、
フィンが「女性慣れ」していない云々の前に、
人としての世界共通の非常識を、フィンが思考停止して姉の支持のまま受け入れているのが不愉快。
ちょっと姉の変人設定を間違えすぎたかな。

「第3話」…
光には住む町の商店街にバンドをやっている友達がいる、らしい。
そのバンドの代打ボーカルに芽が指名され練習を重ねるが…。

八尋の行動様式は、滝島と似ていますね。
過保護で心配性。
彼女の目に異性の存在を見せたくないぐらいの独占欲と嫉妬。
一歩間違えば「第1話」のストーカー側になりかねない2人だから気が合うのだろう。
女性側は無意識のまま、過剰に愛されているというのが読者の悦びになる。

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八尋から滝島と同じのような邪悪なオーラが出始めている。これは嫉妬と独占欲を極めた者だけが持つ力。

それにしても この時点での世間での芽の認知度が高いみたいだけど、なぜだか分からない。
デビューしている訳でもなく、市井の人々が ざわつく存在ではないはずだが・

また、学校外でもSA(+八尋たち)とその他をしっかり分けていて、彼らがSAを崇め奉る様子に違和感を持つ。
せめて学校内での特権階級なら許せるが、
SAは単なる校内の成績評価なのに、学校外で何も成し遂げていない彼らが崇拝されるのは気持ち悪く感じる。

ラストに向けて どんどん話が壮大になっていくが、
これは八尋の金のパワーで集客した作られたステージと人気なのが気になる。
芽のスター性が認められた結果ではなく、印象操作で用意された場所でしかない。
ここに立つことが芽のためになるとは思えないなぁ。
日本有数の場所での歌なのに、空虚さを感じる。

ステージ上から名前を呼んで大好きと両手を広げるのは『16巻』の光を思い出す。

「第4話」…
SAが1年生の時のホワイト・デー。
明(あきら)と交際半年の宙(ただし)は何を渡そうか悩んでいた…。
宙の人間の器の大きさに比べると明がヒステリックで自己中心的に見えてしまって残念。

「第5話」…
外国の願い事が一つ叶う魔法のチョコを食べた滝島は…。
ここから最後まで魔法のチョコシリーズとなる。

チョコを食べた滝島が4歳のミニ滝島になってしまう。

当然の如く夢オチなのだが、
この夢は滝島の苦悩と願望が見せたものだが、後半は滝島らしからぬ性欲の発現でもあろう。
キス以上のことは話題にも出なかったが、滝島側は ずっと悶々と過ごしているのだろうか。

「第6話」…
5話と同じチョコを光と滝島が同時に食べたら どうなるのか…。

夢であることをいいことに、何でもありの世界が広がる
男女逆転パターン。
他のSAも逆転していて、細かい描写まで楽しめる。

が、このリアリティある、男の妄想が滝島発の創作であると思うと複雑。
想像力が豊かというか、ヒロイン願望が爆発している。

そしてスペシャルおまけまんが5」ではアリサが蒼と いきなり結婚している。
これを描くなら、無理をしてでもアリサ編の短編を収録して欲しかった。
結果だけ見せられてもねぇ…。