ななじ 眺(ななじ ながむ)
パフェちっく!
第18巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
壱からの告白に戸惑う風呼だが、隣にいる大也の笑顔をくもらせたくないと思う。そんななか、試験休みに磯っちカップルと一緒に泊まりでキャンプに行くことに!! 妄想大暴走の風呼だけど…!?
簡潔完結感想文
- お泊り回。ここで契りを交わしておけば、物語に終止符が打てたのに。
- 嫉妬に狂った男性にグイグイ迫られる。究極のモテ構図の完成だが…。
- 嫉妬に狂うのは彼氏も同じ。三角関係継続のために交際に暗雲が広がる。
交際しててもモテて仕方がないヒロイン絶頂の 18巻。
ヒロイン・風呼(ふうこ)と、かつて彼女が好きだった壱(いち)の関係が破綻した
『12巻』以降、他の女性に走った壱に恋愛再参戦の資格はないと思っていた。
アチラがダメならコチラに、という そんな場当たりなヒーローはいない、と。
しかし考えてみれば、これは壱の私利私欲というよりも、
作品上、仕方のない流だということに今更 気がついた。
物語には同級生の壱と大也(だいや)の2人を同じ立場にしなければならない必要性があったのだ。
大也は最初に好きになった人だが、失恋した。
その失恋後、壱がフォローしてくれて、好きになったが、結果的に両想いに至らなかった。
そこから大也のフォローが始まり、彼が自分を想ってくれることが判明する。
ここまでで風呼に彼ら それぞれからの失恋と恋情が必要なのだろう。
『12巻』までで1回も描かれなかった大也からの想いを描くためにも、
壱とは悲恋でなくてはならなくて、壱が風呼から離れる理由が必要だった。
結果的に壱が二股して、風呼を捨て他の女性に走ったような描写になってしまったが、
それもこれも風呼に泣いてもらうために必要だった。
その壱が恋愛に再参戦することによって、甲乙つけがたいイケメンからモテるという夢のような環境が成立した。
ネタバレ前提の感想文になってしまうが、
考えてみれば、一度は他の女性に走った壱と、
そして他の男性と交際している風呼が結ばれる未来は限りなく少ない。
そんなことをしたら読者の反感を買い、風呼がビッチ呼ばわりされてしまう。
衝撃の結末として後世に名を残すだろうが、作者へのアンチが増えかねず、作家生命を縮める恐れすらある。
だから軟着陸するためには、あの結末しかなかったのだろう。
最初からビッチであることを前提としている 幸田もも子さん『ヒロイン失格』とは訳が違うのだ。
また こうして物語の構造を眺めてみると、
同じような構成(ヒロインは別の男性と交際、ヒーローは他の女性に走る)をしていた
咲坂伊緒さん『アオハライド』は、本書を よりブラッシュアップさせたことが分かる。
本書の後半のような 何が正解なのか見えないグダグダ展開に陥っているのは、
春田なな さんの『スターダスト★ウインク』を連想した。
あちらは幼なじみ3人の3角関係で、本書よりも関係性が変わっていく恐怖は共感が出来るところ。
本書の場合、どうして3人がいつまでも一緒にいようとするか、の説得力が やや足りない。
壱が恋愛に再参戦することが、三角関係の究極の楽しさなのは分かるが、
同時に彼の卑怯さ にも感じてしまうのだ。
上記のような物語の必要上という理由を除けば、
壱が今更 風呼に迫るのはマナー違反である。
力づくで奪おうとする姿勢は暴力的で、しつこさはストーカーのようである。
壱の身勝手な行動に腹が立つぐらいだ。
そして いらない1ターンを加える作品にも腹が立つ。
どちらに転ぶにしても、本書では少女漫画読者が望む様な「ほんとの恋」には ならなそう。
作品が長編化するごとに説得力とかカタルシスが減っているような気がしてならない。
最終盤は主要キャラ3人3様で良い所がない。
作品内に性行為・性体験の話を持ち出すと、長編漫画だなぁ という気がしますね。
それだけ交際が順調に進んでいる証拠でもありますから。
そして大抵、女性が身構えている内は何も起きません。
ヒロインが勝手に右往左往している様子を描くだけで、ページが稼げるし、
読者の興味も惹きつけられるから一石二鳥の展開なのでしょうね。
2人きりで星を見たり、語らったり、
ホワイトデーにアクセサリーを贈られたりと充実した交際の様子。
まさか同じ巻で交際にヒビが入るとは思わなかった。
そして少女漫画におけるアクセサリーは紛失することが前提です。
以前も書きましたが、交際で幸福な時期が短すぎます。
しかし このお泊り回の真の目的は、壱の焦燥感を煽ること。
風呼への好意が露見したものの、大人しくしていた壱が、
彼女をグラグラユラユラ揺らし始める契機となる。
ここからは、これまでになく力づくでも奪おうとする強引な壱の姿が見られます。
そんな壱からのホワイトデーのお返しは一説には、
クッキーだと「友達」、マシュマロだと「嫌い」、キャンディーだと「好き」らしい。
(アサダニッキさん『青春しょんぼりクラブ』15巻より)
今回、壱が渡したのはマシュマロですね。
好き過ぎて憎いのでしょうか。
まぁ 俗説ですからね。
風呼に近づける権利は、壱と大也、新保(しんぽ)家の2人で1人分の余地しかないらしい。
壱が風呼に近づいてくると、大也が離れていくのは必至。
今回は大也の自分の心との戦いという印象を受けるが、
だからこそ風呼には手出しできない領域で見守るしかない。
彼が何と闘っているのか不明確なまま、物語に暗雲が立ち込める。
そして やっぱり大也との揉め事や問題点を自力で解決できない風呼。
自分が不機嫌になると黙り込むのは男性特有の行動で納得するが、大也らしくはない。
彼にとっても初めての男女交際だからかもしれないが、
交際が2人によるものだという自覚が少し足らないのではないか。
この頃の新保クンたちは、相手のことを気遣うことなく、
自分の都合ばかりを風呼に押し付けている。
物語序盤の方が彼らは大人だったような気がする。