《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

人を輝かすのは恋だけじゃない。いつでも一生懸命な人は輝いているから、オレは君に恋をした。

青春しょんぼりクラブ 15 (プリンセス・コミックス)
アサダニッキ
青春しょんぼりクラブ(せいしゅんしょんぼりくらぶ)
第15巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

ハリウッド行きをめぐる隠岐島とのケンカを悔いるにまに大事件!! さらに、まさかの交際禁止令が発令!? にまと隠岐島の長く曲がりくねった恋路の行方は…!?

簡潔完結感想文

  • ハリウッド挑戦という些細なことで初めて喧嘩をした にま。また当て馬に転落⁉
  • 頼まれごとばかりだった隠岐島の要望。我儘かな意地悪かな失いたくないよ~♪
  • 接近禁止からの大騒動。隠岐島だけじゃない、皆 にま のことが大好きなんですよ。

は めぐる いつも うつくしく いつかまた この夢のつづきを~♪ の 本編完結15巻。

桃里(ももさと)にま の激動の1年間を描いた作品もフィナーレを迎えた。
確かに この1年で にま の学校生活は大きく変わった。
高校でも当て馬人生を痛感し失意のどん底にいる時に出会ったのが青心研(青年心理研究会)。
そのメンバーたちとの交流が 彼女の青春となる。
そして そこで出会った隠岐島(おきのしま)が最愛の人となった。

一度は振られても 好きでいることをあきらめずに、
それが実を結び、交際が始まり、別離の危機も喧嘩も乗り越えて、彼女の新しい日は続いていく。


だし成長や変化という意味では、隠岐島の方が多いように思う。

隠岐島は人の役に立とうとすることを優先してきた。
役割を引き受けることが隠岐島にとっても楽で、他者からは寄り掛かられていることは充実感にもなっただろう。

でも本編最終巻である『15巻』を読むと、隠岐島は にま に寄り掛かってることが分かる。
といっても それは依存ではない。
本人にも自覚がある通り「甘えてる」。
それは隠岐島の生き方が変わったからである。

だから学校内で荷物を任されても、一人で持たず、
にまが近くにいれば、にま と一緒に持ってほしいと提案できる。
抱えるものが重ければ、それを にま に包み隠さず伝えて、
出来る限りのことを にま と共有したい、それが彼が言えるようになった我儘ではないか。

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好きだから気配が分かるし、好きだから同じ荷物を持って共に歩いていきたい。

生き方の変化は、交際編がスタートした冬休みからの彼の生活を見ても分かる。
3学期、彼は 文化系部活の助っ人に参加していない。

誰かの役にも立ってないし、「女装島」にもなっておらず、
男性のまま自我を保ち、にま の彼氏でいることに専念しているように思われる。
もちろん3学期は2人に色々あり過ぎて、そんなエピソードを詰め込む余地がないのもあるだろうが、これもまた彼の変化だろう。

ちょっと意地悪をしたくなったり、心の底から安堵して屈託のない笑顔を見せたり、
隠岐島隠岐島の顔をしている時間が長くなっている。
表情が ちょっぴり少年めいて見えて、そこにまた萌える読者も多かろう。

自分から みんなの隠岐島になっていた節のある隠岐島だが、
にま と青心研という自分の居場所が出来たお陰で、
ゆっくりと着実に自己を回復していったように思う。
少女漫画的には、トラウマも複雑な家庭環境の問題が出てこないままなのは驚いた。

少しずつ素直になっていく、という面では、
にま に絡んできた強気女性たち(香菜(かな)や六日市(むいかいち))と隠岐島は同じである。
こじれてしまって素顔か仮面か分からなくなった自分の性格を、
しっかり素に戻してくれるのが にま という人なのです。

このカップルは、出会えてよかったね、と心から思います。
私自身も、同じ作者の『星上くん』に続いて、良い作品に出会えたことに感謝です。


て最終回間近なので、少女漫画的に これまでになかった危機が必要なクライマックス。
ただし交際編になって間もないので、喧嘩や浮気騒動は唐突過ぎる。

そこで考えられたのがハリウッドからのスカウトである。
うん、これなら納得☆

にま か隠岐島か、どちらがハリウッドに選ばれても、どちらにしろ遠距離恋愛の危機となる。
これは高校1,2年生の彼らには1,2年早いけど、進路問題を先取りしているとも言えるのではないか。

恋人の進学先が遠かった場合、どういう態度で どういう未来を選ぶのが適切かを、
重くなり過ぎない この段階で、突飛すぎて非現実な仮定の下、シミュレーションしている、のかも。

実際、にま も頭の出来は悪くないが、
隠岐島が にま の彼氏に相応しいように勉学にも力を入れているため、学力に差がありそう。

前述の通り、隠岐島は人に合わせるのではなく、自分の精一杯の生き方をしようとしているので、
進学先も都会(というか より高度な教育を受けられる場所)を選ぶだろう。

なので このハリウッド話は、本編終了から1年未満に起こるであろう、2人の進路話との共通点が多そうだ。
『14巻』で にまが隠岐島に「先輩が どんな選択をしても応援します」と言い切れたのは、
今回の隠岐島も、そして未来の隠岐島にとっても安堵できる立派な態度なのではないか。


だし、遠距離恋愛の攻守が交代した隠岐島の方は にま への心配が勝って、彼女の気持ちを濁らせてしまう。

そういえば上手い話は詐欺だ、と決めつけるのは『13巻』で、にま の いとこの海潮(うしお)が、
にま と超絶美形の隠岐島の交際を詐欺だと決め込んだ時と同じ展開なんですね。
どちらの男性も 彼女が悲しまないように先回りして、物事に対処したというのも同じ。
みんな優しいんですよ、この世界の住人は。

浮かれる にま の家の内情を知らせてくれるのは海潮。
彼は今回も現実派で、にま と一家の目を覚まさせることを隠岐島に託す。
(その反面、にまが海外に行くことで隠岐島を落とせるとガチ思考が見え隠れする…。)

隠岐島はスカウトに浮かれる にまがかわいいし、
自分が指名されていた時のにまの対応が完璧だったから、自分もそう在ろうとする気持ちはあった。

にま の心を治める最大のチャンスに、隠岐島は言葉を間違え、彼女のプライドを傷つけてしまう。

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好意から抱擁ではなく、丸め込むことを目的としていることに にまは気づく。

これが実質、初めての喧嘩となります。

原因はハリウッドに挑むかどうか(笑)

遠距離恋愛の危機の理由も、初めての喧嘩の理由も、犬も食わないような壮大でバカバカしいのが良いですね。
読者の誰も心配していないだろう。
珍しい喧嘩の場面が見られてラッキーってなもんだ。
そのぐらい非現実的にしないと、この2人は喧嘩しないし別れの危機もないんでしょう。
リアルな嫉妬や すれ違い とか似合いませんもの。


岐島にキレて失礼な態度を取ったことから にま の転落人生は始まる。

一晩、冷静に頭を冷やす時間が設けられ、そこで自省をする にま。
この時に、にま兄が初登場。
背が高くなった津和野(つわの)にしか見えません(おでこが広いか)。
ちなみに彼も もれなく優しい。

そうして 予期せず ちょっとした別離の機会があったことで、
喧嘩も乗り越え、なし崩し的に遠距離の危機も消滅した。

クライマックスは終わった。…と思いきや。


後の危機は、交際および接近禁止。
公共の場所でキスをしていた場面を生徒会長・オカンに発見され、彼の命により公開破局となる。
(この学校は どんだけ生徒会に権力が集中しているんだ…)

『14巻』の感想で学校カレンダー通りに交際は進む、と書きましたが、本当にその通りになった。
夏休みは別れ、冬休みは初デート、春休みは交際禁止です。

生徒会長を納得させるための条件は にま の成績の向上。
そこから始まる勉強回です。
本書で成績や勉強にまつわる話は初めてかな?

春休みは自主的な勉強で毎日のように青心研で集まる。
ここは最後にまた青心研の色が濃く出ていいですね。

ここで簸川(ひかわ)の最後の無駄スペックが明らかに。
1.容姿、2.運動神経、3.成績。

音痴でリズム感のないのが隠岐島だが、簸川の弱点はどこにある??
アニオタは弱点ではないし、
やっぱり3次元を愛せないところ?
それとも性別の壁を乗り越える人しか好きにならないところ??

簸川・琴引(ことびき)兄・海潮は、次に好きになる人が現れないことには安心できない。
ずっと隠岐島(女装島)を引っ張るのではないか…。

最後に にまが起こす大騒動で、学校中の人が大騒ぎに。
全員参加のにま大捜索。
愛されてるなー。

『11巻』で にまが、珍しく落ち込む隠岐島
「(面倒な事態に)巻きこまれるのは 全部 先輩が好かれてるからです」と言っていたが、
彼とは逆に みんなが にま の騒動に振り回されるも また同じ構図である。
誰も彼女を放っておけないし、好きだから振り回されているのだ。


うして騒がしいまま桃里にまの1年間は終わる。
春はめぐって、にま たちは高校2年生に、隠岐島たちは3年生に進級した。

私は少女漫画における高校3年生アンタッチャブル説を唱えている。
余程の覚悟がなければ描かない方が良い。
なので隠岐島たちが高校3年生になった4月で幕を下ろすのは非常に堅実だと思う。
それに先の話(進路や遠距離恋愛)も、先取りして済ませているし。
どんなことが起きても2人は大丈夫、と読者に思わせるだけの説得力がちゃんとあります。

ちなみに ほぼ出番のなかった日御崎(ひのみさき)は番外編集の『16巻』で登場。
津和野・日御崎という歴代の男当て馬の恋愛模様が読めます。