ななじ 眺(ななじ ながむ)
パフェちっく!
第16巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
事故でしてしまった壱とのキスで、風呼と大也の関係は険悪に。小森と大林からの、このまま応援してていいのかという質問にも答えられない風呼だが、大也へのニット帽は編み続けていて…!?
簡潔完結感想文
- 未来のために大也はバイトを続け、風呼は編み物を続けている。
- 脇目も振らぬほど好きな人は、あなただけ。良い最終回だった。
- ここにきて「友人の恋」に手を出す。止め時を見誤ったのでは…。
なぜ これ以上 話を引き延ばしたのか作者と編集者に問い質したい 16巻。
さぁ、蛇足の始まりだ!
いきなり失礼な言葉を書き連ねるなら、
『16巻』の中盤から、いよいよ蛇足ゾーンに突入していく。
本当に存在を消したりたいほど、作品の完成度を低くしていく。
作者が連載当初 描きたったことは描きつくしたことは明らかである。
秋桜(あきお)先輩はともかく、今更クラスメイトたちの恋愛模様を読まされても困る。
作品前半の面白さに比べて、後半も同じ密度で面白いかと問われたら 答えは NO。
物語を横に広げても、読者が読みたいのはヒロインの恋愛模様であって、
これまでとは少し視点を変えた学校生活や、新キャラの参入を試みても、
読者が心から読みたい内容とは かけ離れてしまう。
そして やはり三角関係モノは、交際編をやってはいけないのではないか。
両想いまでの過程がドキドキする訳であって、その後の交際は オマケ程度で良い。
なのに本書は交際編も 三角関係編に迫る分量で扱っている。
そうすると残された1人は身動きが取れないし、あからさまに遠ざけることも出来ない。
これほど 飼い殺し、という言葉が相応しい状態はない。
今更、適当なキャラを見繕って あてがうのも読者は納得しないだろう。
ヒロインが心を決めるような大事件を起こしたのだから、ここで終わりで良いじゃないか。
ますます出涸らし感が増して、好評を博した作品に悪評が湧きおこりかねない。
最終回直前のような大事件とは、
大也(だいや)がバイトするガソリンスタンドに、
雪で凍結した道路でスリップしたトラックが突っ込むという、いかにもクライマックスな内容。
ガソリンスタンドの爆発炎上という大惨事になりかねないが、
結果的には大也1人の入院だけで済んだようだ。
その一報を遅れて聞いた風呼(風呼)が、迷いなく一目散に大也に駆け寄ることで恋愛の答えとする。
これでハッピーエンドでなく、何がハッピーエンドか、というぐらい、
これまでのモヤモヤを吹き飛ばす大事件と大団円である。
その前の風呼たちときたら、廊下ですれ違っても目も合わせないし、
大也も彼女のことで思い悩む日々が続くのなら、風呼のことを壱に譲渡しようとするぐらいの心境であった。
壱との事故チュー以降(『14巻』ラスト)、
罪滅ぼしのように作り始めたバレンタインデーの贈り物であるニット帽は手を止めることなく編み続けている。
渡せるかどうか微妙な状況でも、大也のことを考えて編み続けたニット帽こそ愛の象徴であろう。
それを退院した大也にかぶせて上げることで、彼らの愛は盤石になった。
これ以上、2人の愛を確固たるものにするイベントも もうないだろう。
なぜ、ここで終わりにしなかったのか…(しつこい)。
風呼は大也が入院していることを半日以上 遅れて聞かされる。
これは前日の夜に事故を知った壱が、状況の整理に時間を要したのと、
大也から口止めされたからの2つの理由があるのだろう。
前日の夜、大也が運ばれた病院に向かう時の位置の表情も見てみたかったなぁ。
事故を知った風呼は、入院先の病院名も場所も聞かずに ただ走った。
それだけ彼女の中の大也という存在が大きいのだろう。
我武者羅に走る様子は とても風呼に似合っている。
ここ最近、小難しく考えて身動きの取れない彼女より、泥だらけの方がよっぽど似合う。
大也もまた一晩 入院したことで自分の来し方行く末を考えたらしい。
どんなに軽症であっても、非日常の空間、しかも病院というのは人を不安にさせるものだ。
(先日読んだアサダニッキさん『青春しょんぼりクラブ』でも入院で主人公が正気に返っていたなぁ)
壱は大也に口止めされていると自己弁護することで、
事故のことを風呼に言わない選択肢も わずかながらあったはずだ。
それでも風呼に知らせたのは、
自分ほど彼女の幸せを願う人間はいないからなのだろう。
そして壱にとって大也は彼女を幸せにできると信頼の置けるイトコなのだろう。
2人が再会したのはナースステーション。
風呼はようやく入院場所を知り、大也は彼女の声が聞きたくなり電話を探しているところだった。
お互いの頭を お互いが独占している、初めて2人の「すき」が重なった瞬間だろう。
いつもは冗談を言い合えるが、
真剣な雰囲気になると険悪になり、傷つけ合ってしまうのが これまでの2人。
だけど今回は、嘘偽りない言葉で自分が 相手をどれだけ想っているかを語り合う。
そうして風呼は、今度こそ本当の愛を込めてニット帽を編む。
大也の退院に間に合うように、秋桜の助言をもらいながら必死に取り組み続ける。
そして退院の日、2人が住むアパート前でタクシーから降りた大也に、
完成したニット帽を かぶせてあげるのだった…。
ホント、なんで ここが最終回じゃないんだろう。
小道具の使い方も、告白への流れも全てが機能した良い大団円なのに、
どうして ここで終わらせてくれなかったのだろうか。
ここまでの物語への感謝と共に、作者への恨み節が爆発しそうである。
恋愛では敗者となった壱(いち)には、学校のトップという立場が与えられる
彼は生徒会役員選挙にトップ当選を果たし、会長職に就いた。
どうやら この学校は1年生でも会長になれるらしい。
風呼と大也のラブラブっぷりを腐しながらも、満足気の壱なのであった。
そうした場面を挿んでからは、物語は日常へと戻っていく(戻らなくていいのに)。
風呼は壱にバレンタインデーのチョコを渡すか悩むし、
固有名はあったものの物語に深く介入してこなかったクラスメイト達の恋模様が語られる。
「友人の恋」って作品内で上手く機能しているところ見たことがないかもしれない。
例えば本書のような恋愛成就型の作品なら、
先行して男女交際の様子を見せる友達カップルがいてもいい。
秋桜と磯っち(いそっち)が それに近い役割を果たしている(カップル成立が遅いが)。
だが大団円を迎えた後の、友人の恋など誰が読みたいのか。
作品世界が永続的になることを望む読者は少なからずいるとは思うが、
いかにも引き延ばすために用意されたエピソードと分かる内容を読みたい人は少ないのではないか。
ハァ…、最後にもう一度 言います。
私の中で、本書は16巻の中ほど で完結いたしました!