《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

究極の三角関係⁉ 彼の中をヒロインとは別に男の存在が広がって 心を占める。

パフェちっく! 19 (マーガレットコミックスDIGITAL)
ななじ 眺(ななじ ながむ)
パフェちっく!
第19巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★★(6点)
 

キス未遂事件から、様子のおかしい大也。嘘をつかれたり、冷たい態度に不安が募る風呼…。そんななか、風呼は大也の気持ちが込められたブレスレットのチャームを失くしてしまい…!?

簡潔完結感想文

  • 本書は幸福な時間が短すぎて、交際するメリットや意味を見出せない。
  • アクセサリー紛失は少女漫画の定番だが、貰ってから即 失くすとは…。
  • ヒロイン3回目の失恋。出口のない元カノ・元カレ問題ばかりで辟易。

い方向に物事を捉えると、どこまでも悪く見えてしまう 19巻。

このところの大也(だいや)は、ネガティブキャラの新キャラ・影近(かげちか)よりも よっぽどネガティブである。
影近はネガティブ発言の中に妙なポジティブさを秘めているが、
大也は一度 気持ちが落ちると とことん落ちてしまい浮上しないタイプのようだ。

考えてみれば大也の人生で初めての上手くいかないことかもしれない。
女性にモテてきたし、学校では人気者、
もちろん彼にも ちゃんとコンプレックスがあることは過去に語られてきたが、
これだけ自分の嫌な面を見せつけられるのは初めてだろう。
初めて きちんと恋愛をして自分の嫉妬深さに苛まれているみたい。

逃げても逃げても追ってくる、
もしかしたら大也にとって、イトコの壱(いち)の影がトラウマなのかもしれない。
少女漫画のヒーローが越えなくてはならないトラウマと彼は戦っている。

恋人であるヒロイン・風呼も交際を通じて初めて そんな大也の一面を知った。
ポジティブだとばかり思っていた彼氏の、脆いメンタルを知って、
何の手助けも出来ないまま、彼のペースに巻き込まれていく。
少女漫画ヒロインとしては激動のドラマが生まれるが、当人には辛い日々が続く。


事を悪く捉えるのは、本書後半を読んでいる私も同じ。
どうしても好きになれない展開が続く。

繰り返し書いているのが、交際編の幸福の短さ。
この日々に影を落とせば落とすほど、最終回のカタルシスも失われていくことに作者は気づかないのだろうか。
こんなドロドロした展開では大也を選んでも、壱を選んでも、読者の心に しこりが残ると思われる。

そして問題の起きるスパンの短さも気になる。
序盤は風呼が恋に落ちるまで、そして2人の男性と それぞれ親密になるまでを、
じっくりと時間をかけて描いていた本書。

なのに幸福は短く、不幸は何度でも やってくる。

特に今回、風呼が『18巻』でホワイトデーに大也から贈られたブレスレット(の一部)を早くも失くした事には唖然とした。

ブレスレットに付属していた大也が選んだ3つのチャームの内、ハート型のチャームを どこかに落としてしまった風呼。
貰ってから、まだ1週間余りでしょ?

少女漫画では彼氏から贈られたアクセサリーは紛失することは定番になってますね。
大体、2人の仲が上手くいかない時に、失くなります。

今回も、失くしたのは大也の風呼への気持ちであるハート型のチャームというのがミソである。
ちょっと表現としては安直で直接的過ぎるが。

構想が練られているから余裕を持って進行していた前半と違って、
後半は思いついたことを詰め込んでいる感じを受ける。

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この場合、優しいのはどちらか。手を離した大也よりも自己中心的な壱の姿が描かれている。

1年生も終わる3学期の終業式の前に、風呼の腕を取って呼び止めた大也。
しかし彼と話す前に、壱がもう一方の腕を引っ張る。
2人の男性から両方の腕を引っ張られる見事な三角関係の構図です。

その時、風呼の腕を先に離したのは大也。
これは風呼にとってショックな出来事。
やはり彼は自分から離れてしまうのか、嫌な予感が風呼を襲う。

いやいや、これは本物の愛情を量る儀式であります。

大岡裁き、子争い にもある通り、
「痛っ……」っと声を上げた人のことを慮れる愛情を持った人が、手を離すのです。
(最近「別の作品」でも同じ子争いが出てきて、同じことを書いたなぁ…)

どちらが風呼のことを想っているかは一目瞭然。
風呼の事情など知らずに、脇目も振らず一心不乱に腕を引っ張ってる壱には出来ない芸当です。
壱って、結構 オレ様気質なところがありますよね。
それでいて余裕がないから、女性の痛みに気づかない独り善がりな行為ばかりしている。

大也を含めた3人のことでも、大也は男女3人が1-2になることを気にしていたが、
壱は、3人の関係が壊れたとしても、自分の欲求を最優先している節がある。
一途と言えば一途なのだろうが、バランス感覚が欠落している。

そうやって目先のこと(忘れられない女性・伊織(いおり))を追って、風呼との関係も壊したと言える。


のまま大也との関係を消滅させたくない風呼は、
自分で彼との関係改善を努力するために、大也をデートに誘う。

しかしデートプランを考えるため情報誌を抱える風呼を、
生徒会書記の影近が見ており、彼女は壱とデートの邪魔を計画する。

この時、デート情報を壱にリークして彼と一緒に出掛ける口実を作るあたり影近は策士である。
ネガティブでありながらポジティブ、
そして憎めないようで憎らしいのが彼女だ。

この2人は、デートを通して風呼と大也の2人の距離が元に戻ろうとしている時、風呼たちを発見する。

影近は風呼たちと一緒にスイーツを食べに行こうとするが、それを風呼は断る。
しかし大也が承諾してしまい、2組で入店することになってしまう。

が、「(2人の関係を)壊しに来たんだよ」という壱の一言で大也は怒り心頭に発し、
壱に水を掛け、店から出て行ってしまう。
(こうなることは誰の目にも明らかだったと思うが…)

大也からすると2人の関係が壊れるとしたら、
その原因は 現在の壱ではなく、風呼が好きだった過去の壱の亡霊ということになるのだろうか。

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男性が男性に水を掛けるって あんまり見ない場面である。大也のメンタルの弱さがそうさせる?

2人は、風呼が事前に立てたデートプランである、観覧車に乗り、
そこで大也が放った言葉が、

「ひとりに戻らせて…」

風呼3つ目の失恋は、お互い好き同士なのに別れを選ぶことになった。
これは2つ目の壱と同じような印象を受ける。
まぁ、大也は壱と違って他の女性に走った訳ではないが。

原因は大也の中の男問題。
風呼の中にいる壱の存在への嫉妬が止められない大也。
そして壱のことに さいなまれる自分自身への葛藤が原因だろう。

なんだか分かるような分からないような問題が出てきました。
しかし またも過去と戦い出す始末。

以前も壱の中の伊織という女性や、大也の過去の遊びの数々など過去と戦ってきた本書だが、
大也にとって過去は拭えないもので、風呼がどんなに努力しても、視線一つで大也の嫉妬は爆発するみたいだ。
高校生だから仕方がないが、ちょっと潔癖すぎやしないだろうか。

そして 「さかのぼり嫉妬 ©穂村弘」を相手に口にしたら、マナー違反だと思う。
風呼にはどうしようもできない問題ではないか。

しかも この過去への執着には解決策がない。
先細りする展開に、先が見通せない。

そして確かに風呼は壱を好きだったかもしれないが、
交際してもいない人へ嫉妬し続けるなんて、大也も大也で偏執的である。
この点では、過去(大也の存在)もひっくるめて風呼を想う壱の方が正解だろう。

大也が悩むのは同性のイトコ同士だから距離が近すぎるからだろうが、
3人だけで とっかえひっかえ恋愛しているのが、内輪のことに思えてきた。


ここは全体的な構成で言えば、壱に続いて、大也も風呼のことを大事に想っているのに、
自分から手を離させてしまった、という意味なのだろうか。

これは壱に復活の権利を与えるために必要だったのかな。

男性は(ある意味で)自分可愛さに風呼と繋いでいた手を離した。
宙に投げ出された格好となった風呼が、最後に誰を選ぶのか、というクライマックスに繋がるのだろう。

が 風呼が翻弄されるだけで、男たちの身勝手さばかりが目に余る。