《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

Q. あたしのこと どれくらい好き? A. 伊織さんより好き 《解説》比較は愚の骨頂。

パフェちっく! 11 (マーガレットコミックスDIGITAL)
ななじ 眺(ななじ ながむ)
パフェちっく!
第11巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★(6点)
 

お互い両思いだとわかった風呼と壱。うれしいはずなのに、壱のつらそうな表情を見ていると複雑な心境の風呼…。そんな中、風呼が壱のバイト先に行くと、伊織さんもやって来て…!?

簡潔完結感想文

  • 束縛しても解放しても悩みは尽きない。だから悩みの根本から断ち切る。
  • 繋いだ その手から「好き」が流れ込むのを感じる。月が沈んで太陽が昇る。
  • 物理的にも心理的にも遠い存在となった壱。その間に付け込もうとする大也。

ケメン新保クンたちは、恋愛に向かない、の 11巻。

交際前なのに交際後の別れる直前のような雰囲気を醸し出している主役たち。

彼がどんなに そんな関係じゃないといっても、
自分以外の女性に優しくしていること自体が罪なのである。

間違い続ける壱(いち)は優しく面倒見が良い人なんだろうけど、
恋愛におけるマナーを あまり熟知していない様子。

それは壱が優しくする伊織(いおり)も同じ。
恋人が忙しく、自分の寂しさを埋めるために、年下の男性を便利に使っているが、
これも どんなに良い訳をしても恋人からしてみればアウトの行動だろう。

最近の壱、そして伊織が好きではない私は、
いっそのこと伊織の恋人にバレて揉めて双方とも傷つけばいいと思う。


ロイン・風呼(ふうこ)が最初に好きになった大也(だいや)は、
好きという感情が分からず、特別な人を作らない人だったが、
実は、壱も恋愛において好きな人を特別扱いすることを知らない人なのではないか。

風呼、そして女性の気持ちを満たすのは好きな男性からの特別扱いだ。
文化祭で自分以外に髪を結ばせなかった壱を嬉しく思った(『8巻』)。
他の女性からの告白をしっかり断ってくれる壱を頼もしく思った。

でも壱は、一度 自分の庇護圏内に入れた人に対してずっと優しいことが分かった。
彼の線引きの中で、優しくすると決めた人には とことん優しい。
それは1人限定ではなく、同時進行らしいのだ。

ハッキリ言って、壱は結婚しても浮気するタイプである。
遊びや欲求じゃないだけ質が悪いタイプの、浮気男だろう。

彼が庇護しなければならないと思った女性に入れ込んでしまうタイプ。
優しいと言えば優しいのだが、どこまでも手を差し伸べてしまう。
そうやって本来その手に持っていた大事なもの(家庭や恋人)までも巻き込んで、全てを崩壊させていく。
引き返し不能なポイントまでは踏み込まないのがシビアな大人として必要な技量だろう。

ましてや現時点の壱は恋愛初心者の高校生。
彼の中では、どっちも大事という理論が確立しているのだろうが、
相手の風呼もまた恋愛初心者で、自分が愛されている確証が欲しい年頃なのだ。

そういう女性の機微を理解しようとしなかった点で、壱は恋愛失格者と言える。


書は1年の流れとリンクしているのだろうか。

6月下旬の夏至は昼が最長で、太陽である大也のターン、
そこから12月下旬の冬至までは昼がどんどん短くなるから月・夜の壱のターン。

ということは未来予測としては、12月下旬を前に
風呼の心から壱の存在が少しずつ薄れていくのかな。
クリスマスは大也にもチャンスが回ってくるのかも。

大也への失恋から、実は日が短くなっている夏休みで回復していったように、
冬至を越えて日が長くなる冬休みの間に壱のことを忘れられるかもしれない。

作中は早くも年末のことを考えるような季節となった。
風呼は、どんな気持ちで新年を迎えるのであろうか。


に伊織と会わないことを約束させた風呼だが、伊織は意に介さない。

壱のバイト先に食事をしに来ただけという免罪符を使って、
彼に接近し、密会のメモを彼に密かに渡すという手段に出る。

これまでは実の姉が無邪気に弟に会いに来るような関係と言えたが、
今回は策を講じて、不倫の逢瀬のように、誰にも分からないよう待ち合わせ場所を知らせた。
これによって ようやく読者の中でも伊織が嫌な女だということが確定しました。

そんな伊織はバイトはしている模様。
彼女が一緒に食事をするのが、年上の おばさんというのは、伊織に同年代の友達ができないからではないか。
壱に恋愛の相談をするのも同様。

伊織が同性に弱みを見せたくないと思っているのか、
彼女のそういう性格を知って同年代の女性は彼女を敬遠するのかは分からないが、
伊織が同性に敵を作りがちなのは間違いないだろう。

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壱が優しくする女性は特定の人に限られる。ただ それが1人だけじゃないってだけ。

は強い意志で伊織を断ち切ろうとするが、日中 頭がボーっとして集中力が続かない。
こう書くと禁止薬物みたいですね(笑)

そんな禁断症状が出ている壱に風呼は伊織のところに行け、と命じる。
彼を縛ることで、彼の心は悲鳴を上げていることが風呼には分かる。
壱から彼らしさを奪っている自分が嫌いだから、風呼は鎖を解き放つ。

ただし束縛しても解放しても、どちらでも風呼は壱と伊織に振り回され続ける。
もう出口はなくなってしまった。

許容量をオーバーし、臨界点を突破してしまった恋は崩壊するしかないのか。

そんな風呼を見て、大也は学校で一番高い所に風呼を連れて行く。
袋小路に迷ってしまった風呼に、広い視野を持たせたかったのだろうか。

屋上で痛いほど手を繋いで、風呼はまた涙を流す。
やがて風呼は その手から大也の気持ちが流入していることを知る…。


の公園で風呼と壱は2人で話し合いの場を設ける。
だが風呼は サヨナラを告げられる恐怖で逃げ出そうとしてしまう。

この時の壱の発した言葉に嘘偽りはないだろう。
だが上述の通り、風呼ただ一人を特別扱いしなかったことが彼の過ちである。

壱の中では 風呼>伊織 であっても、その数式が成立していること自体に風呼は疑問を抱く。
比較されて愛されても嬉しいと思う人はいないだろう。

この袋小路から脱出する手段は1つ。
2人が歩んできた道時代を壊すこと。

風呼は壱に好きだと始めていった。
だけどそれは既に過去形で、別れの言葉として用いた。

99%上手くいくはずの恋が、1%の方に転がっていってしまった。
原因はやっぱり壱だろうか。

大也は恋愛を成立させる気がなかったが、
壱は恋愛は両立すると思っている人だった。

慰めにもならないと思うが、それが交際前に分かって良かったじゃないか。
交際後に、壱に他に(風呼よりも大事ではない)大事な人が出来る可能性は十分にあった。

11巻経過して分かったのは、ご近所に住む新保クンたちは、2人とも恋愛に不向きだということだ。

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壱で満たされた想いが からっぽになったから、大也の手から想いが流れ込んでくる。

が捨てる神あれば拾う神あり、で、風呼は思いがけない「好き」をもらう。
その相手が大也。
彼女が彼の手に感じた違和感は、自分を大切の想う彼の好意だった。
好かれることが途切れないモテモテ状態の、少女漫画ヒロイン・風呼の誕生である。


逆に壱とは距離が遠ざかる。
壱は学校を休んでいる間に、教室内では席替えがあって、
そして彼は学校を休んで引越しをしていた。

大也への失恋と同じように、
上手くいかない恋に追いすがるか、
上手くいきそうな恋に寄り掛かるか、風呼には進む道が2つある。

ハッキリ言って、2人それぞれに片想いをしたので、もう答えを出していい頃合いである。
しかし完結後から見ると全22巻の折り返し地点に過ぎない。

そして ここからが長すぎる。
やまもり三香さん『ひるなかの流星』全12+1巻や、
南波あつこ さん『隣のあたし』全10巻が、ここまで(11巻)の中で、
三角関係で2人の男性の長所や短所を描いて結論を出しているのに、本書は まだまだ引っ張る。

長編連載でも交際編に突入するならまだしも、
キス我慢ならぬ、両想い我慢選手権みたいに、先延ばしにするばかりなのが残念。
そして ここから風呼がただの自分の気持ちすら分からない少女漫画ヒロインになるのも残念。

作品の面白さも含めて分岐点となる『11巻』である。