《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

これから夜は短くなるからオレに恋せよ乙女。6月と12月に恋が終わる宿命の乙女。

パフェちっく! 12 (マーガレットコミックスDIGITAL)
ななじ 眺(ななじ ながむ)
パフェちっく!
第12巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

大也のラブソングに、困惑した風呼が「やめてほしい」と伝えると大也は素直に反省? そんな時、古都ちゃんに壱がいる家へ連れていかれた風呼。帰ってきた壱を見て思わず涙があふれ…。

簡潔完結感想文

  • 壱から遠ざかり、大也には近づき過ぎない。折り返し地点は恋の やじろべえ。
  • 彼女との思い出の品を捨てたのに、再挑戦を宣言する壱。斜め上をいくの展開。
  • クリスマス回よりも本書において重要なのは冬至。昼と夜の勢力図が変わる。

平を期すなら、ここから4巻は大也のターン? の 12巻。

女1男2の三角関係モノで重要なのは、どちらの男性も同じぐらい魅力的であること。
そして2人をフェアに戦わせることだと思う。

ヒロインの風呼(ふうこ)は、最初 大也(だいや)に恋をして玉砕(『4巻』)。
その失恋の前後から風呼を想っていたのは壱(いち)。

そこから風呼は、即効性の大也とは違う遅効性の壱の魅力に気づいていく。
だが互いに両想いだという認識がありながら、あと1ミリ 交際まで至らなかった2人。

交際前から浮気をしているような状態の壱から風呼は自分で離れる決意をした。
これに壱が改心すれば壱件落着だったが、浮気男にはヒーローは務まらないらしい。

作者は、2人に歩み寄らせるどころか、決定的な終局を用意する。
そうして風呼の2回目の失恋の前後から彼女を想っていた大也が彼女を支える。
これは1回目の失恋と全く同じ状況である。

大雑把に言えば再放送が繰り返されようとしているが、
大也が風呼のことを想い、彼女にアタックするのは今回が初めて。

大也を忘れられない風呼を壱が辛抱強く想い続けたように、大也も彼女を想う。
壱のターンは『4巻』途中から『11巻』前後の約8巻分。

序盤の大也のターンは『1巻』から『4巻』の4巻分があったので、
壱とのバランス・公平性を考えると、あと4巻分は大也単独のターンと考えられる。

次に物語が大きく動くのは16巻あたりだろうか。
正々堂々と勝負をするためにも16巻までの継続は必要だとは思う。
そこで風呼が二者択一の答えを出して、三角関係に終止符を打ってくれてたら良かったのだが…。
結果的には全22巻で、先は まだまだ長い。

感想を書くのにも飽きてきた、というのが正直な感想である。

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男性たちが ヒロインを好きになった後での初対決(多分)。血で血を洗う血縁対決。

人環視の中、何を語るかが問題の『12巻』でもある。

最初は大也が人を集めて風呼へのラブソングを熱唱した余波から始まり、
最後は壱が同級生の前で何を暴露するのか、という場面で終わっている。

そして風呼の恋愛が、テレビ放送を使ったり、ライブをしたりと
劇場型になっていくことで、彼女への反感も再度 湧いてくる。
なので風呼が心身ともに疲れ果てていく内容となっている。

最初は学校に転校生(といっても高校1年生の4月なので転校生という区分ではないが)で、
風呼の中で特別な存在だった新保クンたちが、
その容姿やキャラで学校中から注目を集める特別な存在になっていった。

少女漫画としては 新保クンの価値を上げることで、
彼らが風呼を好きになるという幸運、そして読者の自己承認欲求を満たしていると思われる。

こういう手法で 読者の分身である風呼の恋愛に価値を持たせるのは少し残念。
周囲の評価など関係なく、彼女がただ新保クンを好きでいるだけで良かったのに。


た ここ最近の風呼が辛いのは分かるが、ずっと泣いていて、
恋愛脳に支配されてしまい、序盤の本書独自の雰囲気が失われている気がする。

序盤の大也への恋愛では いつも壱が客観的な視点から助言をしており、
それによって風呼が自分以外の意見を取り入れる余地があった。
失恋の際も友人たちが新しい意見を言って、風呼を悲劇のヒロインにしなかった。

壱への恋愛、そして失恋の過程では 大也がいた。
しかし彼は励ましはするものの、風呼に冷静さを取り戻させるようなことは言わない。
その大也も今は風呼が好きなことを隠さず、相談者にもなってくれない。

だから風呼は1人で問題に対処しなくてはならない。
これが彼女の成長への契機となるのだろう。

だけど風呼だけで考えることは堂々巡りしてしまい解決への糸口すら掴めない。

以前の大也の話ではないが、
3人の男女が男1-男女2に分かれていた構図が、女1-男2に分かれた。

2つの恋愛を通して風呼は2人の男友達を失った。
今、彼女の前にいるのは2人の異性なのだ。

良き相談者でもあった男友達たちに頼れなくなって、
自分の足で歩きだしたら、テンポが遅くなってしまったように思う。

風呼自身は男に媚びたりしない人だが、
作品としては男に頼り切った構造だということが判明した。


也と壱、2人を太陽と月と評することと、恋愛カレンダーには深い関係があるだろう。

『11巻』の感想で書いた通り、冬至を前に風呼の壱への気持ちは清算されていく。
読み返してみると『4巻』の大也への告白は7/5の期末試験より前なので、夏至に近いことは確定している。
そして今回の壱との失恋はクリスマス前なので冬至付近である。

夏至から冬至までが夜を支配する壱のターンであった。
そして冬至を境に夜(壱)よりも昼(大也)の方が長くなる。
恋人たちの行事 クリスマスより、太陽の動きを重要視する作品なのだ。

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当て馬であっても 諦めずにアタックし続けることで希望が見える。©『青春しょんぼりクラブ

そんな冬至付近に起きたのが、壱の決断。

『1巻』1話から登場していたマグカップを壱は公園のごみ箱に捨てる。
これは伊織との思い出の品であり、それを捨てることは過去を捨てることと同義と考えていた読者たちは裏切られる。

なんと壱は、マグカップを捨てるが、伊織との関係を再構築すると言い出す。
彼にとって壊れたマグカップは、過去の関係。
彼女の前で良き相談相手に徹していた自分を捨てて、
異性として彼女の前に立つことへの決意の表れらしい。

これは本当に予想外の行動で、読者も壱のことが分からなくなったのではないか。


こで壱が風呼に戻って来る選択肢も可能性としては十分にあったはず。

だけど単純な連載継続のための延命措置として壱に無理矢理な行動を取らせたのではない、はず。
なぜなら ここで壱と風呼のハッピーエンドを迎えては、大地にフェアじゃなくなるから。

彼にも壱と同じ分量だけターンを設けるのが筋なので、
少なくともここまでは作者の当初の構想として必要な展開だったはず。
1話のマグカップの由来がようやく明かされて、それを捨てることで物語は未知の領域に突入したとも言える。

この壱を擁護するならば、
1年前は他者の介入で引き裂かれた2人の関係を、
今回は とことん追求することで、あの時の続きの恋を始めようとする
男性特有のセンチメンタリズムなのでしょうか。
初恋とか過去の恋に囚われるのは いつも男性なのです。

ただ風呼の言う通り、今の恋を最優先に出来ない時点で、壱との恋は終わっていたのでしょう。
壱は何年経っても何十年経っても伊織の話を聞き続けそうな気がする…。


巻へ続くのはクリスマス回。

風呼と一緒にいたいけど、距離を保つことにも腐心する大也が考案した苦肉の策のが、
立派な邸宅に住む祖父母の家での2クラス合同クリスマスパーティー

これ、壱が風呼のクラスにいなかったら、あからさまな選別ですよね。
隣同士でもなく離れてクラスが どうして合同パーティーをするのか疑われるところ。
壱がいることで新保クンたちの新保家への招待という形で落ち着いている。

でも大也は その計画と下心をあけすけに風呼に語る。
適度に責める姿勢が良い。
風呼を見事に翻弄している。

クリスマスを前に冬至を過ぎ、大也のターンは始まっている。
彼のターンの期限は6月下旬までの半年間。

楽しみなのは、大也がどう風呼にアタックしていくのか。
恋を知った彼がどう変わっていくのか、である。
女遊びは激しかったが、大也には元カノ問題は発生しないはず。

もう これが三角関係の最後のターンで良いが、そうはならないことは全22巻が証明している…。