《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

エンドレスエイトから抜け出した僕たちは、モラトリアムが終わったことを痛感した。

桜蘭高校ホスト部(クラブ) 11 (花とゆめコミックス)
葉鳥 ビスコ(はとり びすこ)
桜蘭高校ホスト部(おうらんこうこうほすとくらぶ)
第11巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

蘭学院初の体育祭がいよいよ開会★ 鏡夜(白組)と九瀬(赤組)の大将対決を仕掛けた環だったが、本当の思惑とは!? 挑発と知りながらも本気になった鏡夜は次々と計略を仕掛ける!! 最終競技、リレーのアンカー対決の相手はなんと…!

簡潔完結感想文

  • 運動会。意外にも庶民寄りのプログラムだなぁ。立場も家柄も捨てて 一瞬の風になれ!
  • 動物回。モリ先輩にキャラ付け。小さい物に好かれるとハニー先輩の弟にも好かれる。
  • ねぇ光、ハルヒのこと、好きかい? 半分こになるのはハルヒじゃなくて僕達だった…。

び二人三脚で歩み続ける人たちと、二人四脚で歩き始める人たち、の 11巻。

1 + 1 の『11巻』は、仲違いの危機にあった2人が仲直りするのに対し、
これまで ずっと一緒にいた2人が別々の夜を過ごす内容になっている。

いよいよ本当に戻れない場所まで物語が進みつつある。

そして『10巻』で提案されて初開催となった桜蘭学院の体育祭に続いて、
高校生活最大の行事である2年生の研修旅行(修学旅行に相当すると思われる)がスタート。

その行先は、お金持ち学校らしく海外。
それも環(たまき)が約3年前まで住んでいた国、おフランス

来日の際に独り母を残してきた かの地だが、
環は自分の立場をわきまえて欠席を決断する。

その立場と環の内心の心情を慮って旅行中に何かしらの計画を立てているのが鏡夜(きょうや)先輩。

『9巻』から1巻分余、仲違いをしていた2年生コンビだったが、
全力を尽くした体育祭を通じて再び良き友になった事が 鏡夜の行動に繋がっている。
この話の流れは滑らかで素敵です。

互いのメリットを超えて思い遣る心、それはもう友情でしかない。

1人と1人が国内外でも手を取り合うのに対して、
今度は同じ家に暮らす常陸院(ひたちいん)の双子が反目し合う仲になる。

早くも続きが気になって仕方がありません。


備万端で行われた運動会編。

環と鏡夜の交流の場面は面白かったが、
蘭学院の運動会としては ちょっと地味な展開で想像を超えず。

ホスト部の内面世界に没入し始めたら、
豪華な世界観が失われてしまった気がする。

もっと想像力を爆発させた展開を期待していた。
それなら馬で合戦して欲しかった。

そして内容も男子生徒たち向けの競技ばかりで、女子生徒はお飾りでしかなかった。

内容的に仕方のない部分も多いが、
女子生徒は将来性のある名家にお嫁に行くことが最大の幸せっぽいのが気になる。


第一運動場が国立競技場ぐらい巨大な規模なことは面白かったが。
明らかに生徒数と観客数に見合った大きさじゃないよね(笑)
維持・管理だけで大変そうだ。


負を決する最後のリレー(庶民的少女漫画と同じではないか!)、
それぞれの組のアンカーに立つのは環と鏡夜。

走る前に子供みたいな口喧嘩を始める2人。
それはまるで、鏡夜が初めて環に心を開いた中学3年生の出会いの頃のようであった(『8巻』)。

f:id:best_lilium222:20210414180452p:plainf:id:best_lilium222:20210414180449p:plain
リレーの勝敗ではなく、こうして2人きりで話す時間が俺には何よりも大事なんだ。

走る前に仲直りして、結果がどうであれ正々堂々と戦う2人。

走るモチベーションは男の意地。
この人には負けたくない、
この人と「お互い本気でぶつかり合える親友になりたい」という思い。

家柄もメリットもスタート地点に置いておき、
高校2年生の男子として友人と駆けっこを純粋に楽しむだけ。

負けても裸一貫で、ふんどし一丁から始めればいいのだ(笑)


比較対象がないから分からないが、実は この戦い、2人とも鈍足で、
果てしなくレベルの低い戦いだったらと想像すると笑える。

まぁ、環はアメフト部員に負けない脚力が実証されているので(『6巻』)、
そこまでスローな速さではないだろうが、顔を演出に比べて遅かったら楽しいな、と妄想する。

この1年で読んだ少女漫画の中でリレー回で忘れられないのは、
やまもり三香 さんの『ひるなかの流星』ですね。
あれは環と鏡夜ぐらい魂の戦いだったのではないでしょうか。


育祭と研修旅行という2大イベントを繋ぐのは ほのぼの動物回。

モリ先輩の「ちっちゃいものクラブ」に新入りが加入するというお話。
ハルヒ争奪戦も離脱し、ハニー先輩には恋人らしき人物が現れ、
お払い箱寸前のモリ先輩、動物キャラで個性を出そうと必死です(笑)
好きですよ、モリ先輩。影が薄いところが…。

ほのぼの回かと思いきや、
蘭学院の敷地に迷い込んできたタヌキを探す中で、
個々人の秘めた思いが発露し始める。

2年生の研修旅行の行き先が環の先の住まいだったフランスであることも、
ホスト部員が いつも以上に騒がしくタヌキ探しをする要因となる。

環が余計な気を回さないようにホスト部員たちは気を遣っているのだ。
この辺は、ホスト部としての結束を感じますね。

ただし個々人としては別。
常陸院の双子は、ハルヒが環を思い遣るだけで胸が痛くなるし、
その痛みを共有するはずの相手は、もう一方に対して
ずっと指摘しなかった真実を話してしまう…。

そんな中、環は研修旅行の欠席を「親友」の鏡夜にだけ伝える。

f:id:best_lilium222:20210414180541p:plainf:id:best_lilium222:20210414180538p:plain
あの夏休みを越えてから これまで気にならなかったことが気になり始める。

そうして環と鏡夜は国の内と外に、
双子の光(ひかる)と馨(かおる)は別々の場所で夜を過ごす。

環の不在(国内に入るが雲隠れ)の間に双子問題を採り上げるのかな。
これまで仲良くやっていただけに、2人の心が離れていくのは私でも辛いです。

事情を知る3年生コンビが色々と気を遣っているのも分かる。
考えてみれば、もう時間が戻れないのなら、3年生コンビの高校生活も あと僅か。

何だか色々と起きすぎていて 取り敢えず泣いて気持ちを落ち着かせたい気分だ。


本当に終わらなければいいと永遠を願った夏休みが終わってしまった2学期から、
物事は静かに、でも確実に動き続けている。


番外編の「モリ先輩のピヨちゃんとチカくん」は本編の暗さを払拭してくれる一編。
ちょっと険のあったハニー先輩の弟・チカちゃん(靖睦・やすちか)が一気にラブリーになる お話です。

自室で秘密の写真集に耽っている際に、兄・ハニー先輩が侵入して一蹴するのは完全にギャグ漫画。
チカちゃんの得意技は蹴りなのだろうか、
その後も携帯電話、ハニー先輩(2回目)をお空の彼方に蹴り上げている。

これはハニー先輩が弟の名誉のためにワザと蹴られているのか、
それとも秘密を見られたくない弟が実力以上を発揮しているのか。

チカちゃんは 峰倉かずや さんの『最遊記』のキャラっぽいですね(未読ですが)。

桜蘭高校ホスト部 第11巻 (花とゆめCOMICS)

桜蘭高校ホスト部 第11巻 (花とゆめCOMICS)