《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

お金を潤沢に使い有能さを示す桜蘭学院生徒たちと、紙面を贅沢に使う作者。

桜蘭高校ホスト部(クラブ) 6 (花とゆめコミックス)
葉鳥 ビスコ(はとり びすこ)
桜蘭高校ホスト部(おうらんこうこうほすとくらぶ)
第06巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

超セレブ☆桜蘭高校の学祭って一体!? 注目度随一の中央棟サロンを賭け、最強ライバルのアメフト部へ闘争心を燃やすホスト部の元に「争奪戦を辞退せよ」との脅迫状が!! 果たして犯人は…!?

簡潔完結感想文

  • 文化祭準備。桜蘭の学院祭は親に自分の有用度を示す場。親もまた子の活躍を鑑賞。
  • 文化祭本番。親子や家庭の背景が主題になる。典型的な白泉社の話の広げ方ですね。
  • お料理回。カロリー高めの お祭から箸休めの お料理回。食べ物を粗末にした結果…。

カーニバルの扮装で学院祭前からお祭り騒ぎの 6巻。

『6巻』収録の6話中5話は学院祭の準備と本番に割かれています。

文化祭回の初回は掲載誌の11月号で季節にピッタリだったのですが、
1回の休載もあって文化祭の終了は4月号となっている。

作品に人気が集まるに従って、段々と紙面の使い方が贅沢になっている気がするなぁ。
まさかこの時点(6巻)で ようやく全体の1/3を経過したところだとは当時は誰も思わなかっただろう。


『6巻』は作品の中でも かなり重要な場面が多い。
中でも一番大事なのは環(たまき)の家庭環境が初めて語られる場面だろう。

作中の よく分からない設定「7名家」の一つ、須王(すおう)家の直系としての環の苦悩が明らかになる。

明らかに環に「影」の部分が足されましたね。
少女漫画のヒーローって、実はヒロインよりも
複雑な家庭の事情や、心の傷を持ってたりしますね。

ヒロインが それを解決したり癒す聖母となるのも お決まりの展開。
それが「運命の恋」を強調する表現なのでしょうか。

ヒーローの格好良さをお膳立てする展開が続くのも辟易。
これは私は絶対にトップ オブ トップを好きにならないタイプだからかもしれませんが。

環やホスト部のために世界が(不幸ですらも)あるような世界観はあんまり好きではない。


そして私のように まとめて一気に読んでいる身としては そろそろ飽きてきたのも本音。

雑誌で1か月に1回、単行本で約半年に1回ぐらいの頻度で読むのが正解だろう。
まとめ読みするには疲れる作品です。

そして今回の文化祭回は文字通り お祭り回でテンションが高め。
そこにシリアスを配合しているから、気持ちが追い付かない。


金持ち学校として有名な桜蘭(おうらん)学院ですから文化祭も、
庶民の学校が舞台の少女漫画で80%の確率でやる メイド&執事喫茶なんて地味なことは やりません。
きっと本物のメイドや執事が毎日 身の回りの世話をしてくれるのでしょうから。

そんな桜蘭学院の学院祭は、親に向けて自分がいかに有能であるかを示す場らしい。

学祭のモットーは「企画力」と「統率力」。
無尽蔵にお金を使って
「お金と人を上手く使って いかに他より優れた企画をスムーズに成功させるか」で
自分たちの「将来性が試されている」らしい。

学生の学生のための内輪の文化祭というより、企業の出展ブースみたいな感じだろうか。
なんか息苦しそうな文化祭である。
まぁ帝王学というか上に立つ者の役目を早くから理解できそうだ。
(出入りの業者は高校生に へつらって ストレスが溜まりそうだが)


そして保護者たちが来訪することで、ホスト部の保護者達が初登場する。
それによりホスト部の家庭の事情も初出しとなる。

常陸院(ひたちいん)の双子の母親は精神的に彼らと瓜二つ。
鏡夜(きょうや)先輩は3男1女で、兄姉がいる末っ子の三男。
3年生コンビは文字だけですが、弟がそれぞれいるという設定らしい(後に登場)。

それぞれの家庭を描く回で少なくとも1巻は成立しますね。

この辺は、連載が安定した人気を誇ったことで、
時間をかけて各人の背景を展開させていくぞ、という布石なのでしょうか。

中でも2年生コンビ、環と鏡夜の2人の家庭は彼らにとって複雑な状況であるようだ。

込み入った家庭環境でも唯我独尊を貫く環の強さ、
そして環をも利用して自分の未来を切り拓く鏡夜の したたかさが示された。

この2人の話は長くなりそうですね。
あんまり「影」が強調されないことを望みます…。


頭から3話は、来賓の親御さんたちの注目度がダントツに高い中央棟サロンの使用権を巡る争い。

そんなサロン争奪戦に参加を表明しているホスト部に脅迫状が届いており、
ハルヒは、トランプの大貧民で負けた罰ゲームもあり鏡夜に命じられて犯人捜しを行う。

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文化祭の場所取りだけで脅迫状が回る学校。脅迫に屈しないホスト部は探偵部になる。

脅迫状の犯人捜しのミステリ仕立てです。
作者とミステリ仕立て、意外なオチの相性はとても良い。
中でも柑橘系の匂いという共通点が後に効いてきます。

構成が手慣れていると思ったのは、その裏で鏡夜と環の父親を初登場させていること。
そして鏡夜の父親を類推材料に使い、環の父親像を読者にミスリードさせている点が上手い。

更に脅迫状の真犯人の手掛かりをフェアに提示しているところも凄い。
犯人は意外であり、それでいて分かりやすい動機だった。

語弊があるかもしれないが、普段から しっちゃかめっちゃか な描写の連続だから、
伏線が隠しやすいという面もあるんでしょうね。

木を隠すなら森の中。
文字量とハイテンションのジャングルの本書では簡単なことである。

鏡夜先輩の複雑な家庭事情は ちょっと蛇足かなぁ。
私が鏡夜先輩を重視していないのもあるけど、
環だけでお腹がいっぱいなのに、更に鏡夜先輩の葛藤まで描き込まれると胃もたれする。


化祭当日では、環の家庭の背景が続々と明らかになる。

環の最大の障壁となるのは彼の祖母らしい。
須王家の跡取りではあるが、祖母からすれば息子の不貞の子。

受け入れがたいが受け入れなければならないアンビバレントな感情が祖母にはありそうだ。
今回のように暗くならず、環らしさを保ったまま この問題が解決されればいいなぁ。

そういえば同じ白泉社の漫画、呉 由姫さん作画『金色のコルダ』でも、おばあさま が絶対の権力を持つ家庭がありましたね。

コルダの柚木先輩と環は気が合うかもしれない。
連載誌も連載時期も被っていたのでコラボ漫画を描いて欲しかったなぁ。

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ハニー先輩は善悪センサー搭載。彼に嫌われるということは悪い人に違いない。

かった文化祭回の後は、箸休め回。
もはや安心感すら覚える通常回の展開です。

この お料理回のオチはハルヒこそ、ホスト部の絶対権力者だというところでしょうか。
食べ物を粗末にすることを許さないハルヒの姿は、聖母どころか肝っ玉母ちゃんである。

ちなみに料理を作った様子のない鏡夜先輩も、
完成させたゲテモノ料理を残さず食べさせられて、食中りになったらしい。

この辺もまたハルヒが女王たる証拠だろう。

桜蘭高校ホスト部(クラブ) (6) (花とゆめCOMICS)

桜蘭高校ホスト部(クラブ) (6) (花とゆめCOMICS)