《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

脳内設定のトラウマから脱したはずの環の ニュー脳内設定という無限ループ。

桜蘭高校ホスト部(クラブ) 15 (花とゆめコミックス)
葉鳥 ビスコ(はとり びすこ)
桜蘭高校ホスト部(おうらんこうこうほすとくらぶ)
第15巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

ハルヒ企画の校内オリエンテーリング大会開催! 優勝賞品は「ホスト部員に一日願いを聞いて貰える権」☆ 部員たちを救うため(?)、鹿谷愛嬢と参加する環だが、次第に企画の意図に気付き始める。そしてついに自分のトラウマと向き合う事に!! 一方、ハルヒと部員たちの反応は!?

簡潔完結感想文

  • 思い出巡り。準レギュラーの方々と校内を冒険。その裏で進行する王の復権作戦が開始。
  • 環の復調、ハルヒの不調。なかなか歩幅が合わないから進まない恋の二人三脚。先延ばし。
  • ホスト部からの卒業。いよいよ作中も2月下旬、3年生コンビは卒業に向けて準備を整える。

(キング)の帰還が果たされたと思ったら、王の暴走が始まる 15巻。

失礼ながら迷走が終わりましたね。
白泉社的なトラウマを、無かった の一言で片づけたのには唖然としましたが、
いつまでも先延ばしにする問題ではなかったので、
この巻で一応の決着が付いたことに安心いたしました。

もしかしてトラウマという言葉に縛られていたのは作者自身だったのかなぁ。

そして中盤からは環も復活。
きっと初期からの読者も納得のホスト部が戻ってきました。

ただ、鏡夜(きょうや)先輩が調査する大人たちの問題に
環が直面するまでの一時の平和という感じが非常に怖い。

作者が環に問題を全乗せしてしまったために、
一つの荷物を降ろしても、彼はまだまだ重荷を背負い続けている。

また環も作者も暗中模索する展開になるのかなぁ…。
明るく楽しいホスト部がみたいのだけれど。

…っていうか、現行のホスト部自体が存続可能なのか⁉
ここで新キャラ投入で延命を図ったら、総スカンでしょうね。


がトラウマの呪縛から解放されるのは、ハルヒ考案の校内オリエンテーリング大会。

ホスト部の常連客、はたまた個人的恨みを持つ者たちが集まって開催される。

この辺りも早くも同窓会や思い出散歩といった感じですね。
中には これが最後の出演という人物もいるのでしょう。

中弛(だる)みするなら早く終われと願う一方で、
本当に終局が近くなると物悲しくなってしまうのがワガママな読者です。


ハルヒ考案の企画には裏テーマが幾つかあった。
校内を巡るうちに、その輪郭を掴み始める環。

急ごしらえということもあり、ハルヒの企画は全てが完璧じゃない。
そこがいいですよね。
臨機応変に、自分の全力をもって対応するハルヒ

環に変革を促す企画だが、ハルヒ自体も変わっていることに気づかされる。

環が自分への恋心をどう扱っていいかで悩んでいることは分かっていないが、
ハルヒは環の代わりに動くことを選択した。

ものぐさで、走ることが苦手な自分も忘れるぐらい全力で動くハルヒ
このハルヒは恋で身動きが取れない環と好対照ですね。

悩んで風邪を引くのも恋の症状だが、
その人のことを考えるだけで自分からパワーが溢れるのも恋なのだろう。


正直、当て馬のような鹿谷(かのや)嬢にこんなに話数を使うのか疑問だが、
環の問題と合わせて一本となると、仕方がないのかな。

環の出した結論にはズッコケざるを得ないものがありますが…。
落としどころを見失ったのか、全体的に茶番劇なってしまいました。

しかし環は鹿谷嬢と校内を歩きながらずっと別の女性のことを想い続けている。
それを言葉に出しているのは、もしかして環なりの牽制だったりして。
誰かを「特別」だと分かってしまった環はホスト部での活動が出来なかったりして⁉

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ブランニュー環の生誕。新しい彼は 底抜けのバカなので風邪など引かないのでしょう。

うして生まれ変わった環だが、彼の脳内は お花畑満開。

ナルシストが恋に目覚めると、こんなに面倒臭くなるんですね。
両想いを疑ってないし、結婚まで一直線だし…。

きっと失恋なんかしたら、環みたいなタイプが、
その高すぎる自尊心を守るために現実を認めずストーカーになるんでしょうね。

『14巻』ハルヒを巡る恋のライバルの光(ひかる)が環に対して失礼だと書きましたが、
環も負けず劣らず失礼なことが判明した。
ゴメンよ、光。

またもや環は脳内設定を構築し、自分は両想い、光は失恋した世界に生きる。

環は自分で生成した脳内物質の分泌だけでナチュラルにハイになれる人なんでしょうね。
それもまた立派な才能だと思いますが、周囲の人には電波の人だとしか映らない。


かし環が「おニュー」になったことでホスト部員たちの交流が戻ってきました。

しかも初期の頃よりも役割分担がしっかりしていて、
更には恋愛という新たな要素まで追加されているので、まさにニューホスト部といった様相。

王が帰還したことで往時の雰囲気が戻ってきましたね。
ただ、遅きに失した感じですが…。

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イムループから脱するということは別れるということでもある。3年生の引退興行。

そう、作中は2月の下旬となり現行ホスト部の最後の活動なのです。

3年生コンビは卒業間近ということもあり最後の大活躍。
特にモリ先輩がフィーチャーされています。

無口キャラ → 小さい物好きキャラ → 動物キャラ → 良いこと言おうとして失敗キャラ、
と漫画内に居場所を作るべく何度かキャラ変更をしてきたモリ先輩。

しかし最後はハニー先輩とのコンビの お話に戻るみたいです。

桜蘭高校からエスカレーター式に進学するとはいえ、
違う学部に進むモリ先輩とハニー先輩。
そのことがモリ先輩の心に引っ掛かるらしくて…。

この決着は次巻に持ち越し。

しかしハニー先輩は、巻末の「特別編」といい思わぬ地点に着地しましたね。

ショタ担当だと思ったら最強の存在で文武両道、彼女もいるリア充の二面性の人。
完全にモリ先輩よりも格上になっているし。
色々と詰め込み過ぎているのに、なんとなく「ハニー先輩」として まとまっているから凄い。

表と裏の顔をしっかり使い分けているという意味ではホスト部で一番、
ホスト部員としての務めを果たしている人なのかもしれません。

完璧なアイドルとしてデビューして欲しいものだ。


そんな新たな展開を迎えつつホスト部だが、ハルヒだけは環に上手く対処できていない。
脳内が お花畑でグイグイの環に対して引き気味にしか応対が出来ないのだ。

またまた2人の恋愛を簡単には進ませないストッパーが登場しましたね。

トラウマが終了したと思ったら、次はこれかぁ~。トホホ。
最後まで焦らせるだけ焦らすつもりなのでしょう。

次は、環の実家問題編が暗くならないことを祈るばかりです。