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少女漫画と小説の感想ブログです

小人閑居して不善をなす。暇すぎてストーカーしてたら下痢の人と呼ばれた件。

桜蘭高校ホスト部(クラブ) 12 (花とゆめコミックス)
葉鳥 ビスコ(はとり びすこ)
桜蘭高校ホスト部(おうらんこうこうほすとくらぶ)
第12巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

研修旅行でフランスへ発った鏡夜。環の欠席により秘かに環の母親探しをするのだが…。一方、学院では光と馨のケンカ続行中。放課後ハルヒを遊園地に誘った馨はついに告白!! でもその真意は…!? 果たして2人は無事に仲直りできるのか?

簡潔完結感想文

  • 双子編。同じ人を好きになったことよりも、2人の気持ちが同じ強さではないことが辛い。
  • 旅行編。旅行中に忙しい鏡夜と、欠席中に暇を持て余す環。暇すぎてストーカーしてみた件。
  • 報告編。自分の育ってきた家庭、将来を話して別れのキス。鏡夜からの報告に静かに流す涙。

かのために自分以上に相手のことを考える。それって愛だよね の12巻。

最終ページにある「ホスト部終焉」の言葉に強いダメージを受けます。
仲良しごっこも終わってしまうのかと残念に思う気持ちが強いが、
考えてみれば 全18巻の2/3が終わったところで、まだ1/3残っている。

リアルタイム読者からすれば近い将来終わると思った切実な言葉だろうが、
後追いの読者からすると、終わる終わる詐欺で読者の気を引き締めたのかと勘ぐってしまう。


ただ『12巻』は2つの大きな結論が出た巻で、
その結論が物語を終焉に導いていくのは間違いのない事実。

私としては恋愛方面の拡充は待望の展開なのだけど、
ただ予測される方向性からすると、環が大人たちに自分を認めてもらう、
というシビアな展開になりそうで不安だ。

白泉社的な漫画のシリアスさを出す手法として、
主人公などに重い荷物を背負わせる。

だが、これって探偵が標準的な頭脳で、他の登場人物の頭が働いていないだけのミステリのように、
主人公たちに箔をつけて、まるで家族に問題がない人たちは木偶の棒であるかのような、
主人公周辺だけを美化・カリスマ化させる手法なんですよね。

私はあまりこれが好きではありません。
『1巻』など序盤ではホスト部だけが正しく、
その他の生徒は性格や素行に問題がある者として描いて、
ホスト部の地位を向上させていたが、終盤の展開もそれと同じです。

同じく『1巻』で二次元オタクの れんげちゃんが言っていた通り、
「乙女は美男の『トラウマ』に弱いもの!!」という予言通りの展開。

常陸院の(ひたちいん)の双子は「個別意識されない(認識の方が適当か?)」悩みがあるし、
環(たまき)は「孤独な王子」だということも予言的中である。

悩みこそ乙女からの支持を得る(安直な)オプションなのである。

そういう意味では、多くの読者が大好きな漫画「ホスト部」の終焉が近い気がする。
それまでの「ホスト部」を壊してもクライマックスが欲しいのでしょう。
ただただ重苦しい話が続かないように祈ります。


れは『11巻』の感想文タイトルに使用した言葉だが「モラトリアム」が終焉したのだろう。

いつかは向き合わなければならない問題に、双子も環も向き合い始める。
そして一つの結果報告があって、また一つ物語が進む。

常陸院の双子はハルヒを巡るライバル通しになり、
けれど その思いの強さの不均衡が、2人の関係性を悪化させる。

『11巻』の体育祭の環と鏡夜(きょうや)のように正々堂々と全力で戦えれば
相手が自分勝手に行動しても恨みはなかっただろう。

だが、馨(かおる)にとっては光(ひかる)以上に大切な存在はないし、
光にとってはハルヒ以上の存在はなかった。

馨は光に起きた変化が嬉しく、双子から個人へと独立を目指すのだが…。

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別れのイニシエーション(通過儀礼)。まるで次の恋人や結婚相手に笑顔で送り出す元カップルみたいだ。

双子に巻き起こる様々な心情に胸が締め付けられるのは、
ギャグの中にも双子の個性を出してきたからでしょう。

双子が出す結論は双子らしくて安心しました。

この喧嘩の中では3年生コンビのお兄さんっぷりが目立ってましたね。
環の問題も含めて、部員たちは部員という以上に
お互いの生活について心配し、干渉していく。

そんな「ホスト部」の結束を感じる『12巻』です。
だからこそ「終焉」の二文字が重く重くのしかかってくるのです…。


んな双子騒動の裏で実施されているのが2年生の研修旅行@おフランス

鏡夜の行動の全てが良いですね。
学校行事の中の限られた時間を縫って、環の母親の所在を突き止めようとする鏡夜。

そのためなら朝起きられない自分の弱点を克服するために車中泊も止む無し。
鏡夜の人生で こんなに快適とは程遠い環境で寝たのは初めてなんじゃないか。

それもこれも環に良い報告をしたいがため。

ここは運動会での対立があってこそ、良いコントラストを生んでいます。
あの時、鏡夜にとって環の重要性を再確認した友情があるから この行動に繋がる。

そうして心身ともに疲弊した鏡夜なのに、
帰国後は何気なく報告する場面には胸が熱くなりますね。

その時の部室に流れる空気が大好きです。
皆に友情があって、思い遣る優しさがあって…。

いつもは騒がしい環が、その時だけは静かに流す涙がまた効果的です。
ハルヒに冷たくされた時に海のように流している涙とは別格の涙だ。


夜が汗水流してフランスを創作している間、
環は誰にも研修旅行を休んだことをしられないように隠密行動の毎日。

自宅の使用人たちも休暇を取ってしまったために暇になる。
そこで環が縋ったのが実の父。
父との会食で環は様々なことを学び、そして自分の心に形作っていくものを感じていく…。

隠密行動を心掛けなければならなかった環だが、
ハルヒに会いたいがあまりハルヒ宅を見つめているところを彼女に見つかってしまう。

そこでの ひと時がハルヒと環の距離を縮めることになる。
今回は、ある意味で双子(や先輩方)を出し抜いた、環の抜け駆け行為である。

これは運命のイタズラですね。
研修旅行先がフランスでなければ起こり得なかったイベント。
独りにならなければ、さすがの環だってストーカーのようにハルヒ宅に張り込むことはしなかった、はずだ…。

そして「少女漫画あるある」の彼女の家で粗相して入浴、っぽい展開が生まれる。

火傷の応急処置とはいえ上半身裸の環と一緒にお風呂場にいるハルヒ
そして後ろから呼び止められるなんて。
まるで少女漫画みたいだ(笑)

この時点でハルヒは環を意識しちゃいけないのだろうけど、
半裸の男と一緒にいて、表情一つ変えないのは流石ハルヒである。

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ホスト部の誰も知らない時間を過ごす2人。腹を壊して、腹を赤くして、腹を割って話した様々なこと。

んなハルヒが赤面するのが、帰り際に環がハルヒの髪にしたキス。

熱にうなされていた前回(『9巻』)とは違い、
正気のまま行われたキスだ。下痢かもしれないが(笑)

環は「父親役」だから してもよいと自分に言い聞かせているが、
今回は、ハルヒの方が環の行動を無視できない状況になる。

帰国した鏡夜を囲んだホスト部室、第三音楽室でも、
ハルヒは環を意識した行動ばかりをしてしまう。

「動機がして息苦しくて…」
そんな症状を風邪だと思う2人は似た者同士なのです。
今度はハルヒが風邪を引く番だろうか。

これは光には旗色の悪い展開。
恋を自覚したばかりだというのに、失恋の予感までしている。

残り1/3、いよいよ物語が大きく動き出します…。


にしても環の母が持っていたホスト部員たち全員集合の写真。
あれは誰が撮ったのだろうか。

一番近しい、それっぽい行動をするのは れんげちゃん だろうか?
ボサノバ君がハルヒの写真欲しさに取った可能性もあるか?

そしてハニー先輩の周辺を飛んでる花は写真にも写るんですね(笑)

桜蘭高校ホスト部 第12巻 (花とゆめCOMICS)

桜蘭高校ホスト部 第12巻 (花とゆめCOMICS)