南 塔子(みなみ とうこ)
ReReハロ(りりはろ)
第03巻評価:★★★☆(7点)
総合評価:★★★(6点)
意識してるのは私だけ…? なんか最近ドキドキさせられるんですけど…。 湊の一挙一動にドキドキするようになったリリコ。雇い主以上の気持ちが芽生えてきてしまった…!? そして湊の友人・小泉に頼まれたバイトで波乱がおきる!? リリコと友達・永遠の中学時代を描いた「芽吹ききみどり」も収録。
簡潔完結感想文
- 和服と子供。子供を囲んでの夕食は15年後の私たちの姿? ママじゃなくてリリコって呼んで!
- 恋に落ちたら。オレの好意に全く勘づかない君のことを、オレはもっと好きになってるんだぜ。
- 回避する予知夢と願う不幸。ねぇ リリちゃん、私が望めば永遠(えいえん)だって手に入るよ。
主人公たちの恋より先に、友人たちの恋が先に加速する 3巻。
読者からすれば、恋に落ちるはずの相手は明白なのに なかなか恋に落ちない2人。
ようやく、この『3巻』にて男性側が自分の中の恋情を意識し始めた様子。
だけど告白や両想いは まだ先のことみたいだ。
ただ、このお互い憎からず思っている関係性っていうのも私は好きですね。
気持ちは伝わっていないけれど2人の間には妙な安定感と安心感、
そして歯がゆさがあるので、読者としては一番ヤキモキする時期です。
本書が特殊なのは、2人が単なる高校生の男女という間柄ではないところだ。
本書の場合、リリコと湊(みなと)は他校生なので、
毎日のように必ず顔を合わせる訳でもない。
リリコの家の稼業である便利屋が2人を結び付ける要素。
本書は お仕事漫画のようでもある。
だから時に2人は仕事のパートナーであるが、
湊の部屋に居る時は主従関係のようでもあり、
また一種の同居人のよう。
それでいて登下校時には電車で一緒になる高校生らしい描写もあるから、本書はズルい。
他の漫画より、その人の様々な一面を見る機会が多い。
風邪で弱っている姿、着物を着る姿、料理を作る姿、美味しそうに食べる姿、
まだ季節が変わってもいない短期間の間に、
通常の高校生同士なら見ることのない顔を お互いに たくさん見せている。
外見だけじゃない。学校内の姿だけじゃない。
その人を多角的に見て人間的に惹かれる部分を丁寧に炙り出している。
子供に対しても、自分の態度を変えない湊は、リリコにとって好印象か?
湊がリリコへの恋心に気づくシーンが良いですね。
帰国子女の友人(男性)がテンションが上がってリリコに抱きついたことで、
湊の中の恋が はじけたというのが印象的です。
別の友人の問いかけもあり、自分の リリコへの感情が何か探っていた湊が、
リリコと特別、距離を縮めるようなイベントではなく、
第三者の予想外の動きによって、その正体に気づくという構成が洒落ている。
しかも友人には好意や湊への敵対心、はたまたリリコへの下心がまるでないのが また良い。
本当に薄っすらとした友人への嫉妬や独占欲によって、
「あっ、オレ こいつのこと好きなんだ」と自然体に自覚する様子が微笑ましい。
しかも その後では湊は疲れ果てたリリコに寄りかかられ、
眠ってしまったリリコに抱きつかれるという分かりやすい肉体的接触があるのだが、
彼の恋はその前に芽生えていたというのが、湊の恋心を より清らかなものにしている。
また、その前に、湊が 元カノらしき同級生に対して、キレイだと素直に褒めたが、
それは復縁を求めたりする甘い言葉ではない、という場面も重要だ。
本書では、相手の容姿への執着というものが一切ない。
それはリリコが見る湊でも同じこと。
学校の内外で随分モテる湊に対して、リリコは その外見を一切 褒めていない。
また湊は、自分が外見上はキレイだと思う女性に今は心が揺るがない。
彼女をアクセサリのように考えるのならば、それに相応しい相手は別にいるのに。
大事なのは、彼らが惹かれるのは、その人の「心」。
それを3巻以上かけて描いてきたのだろう。
そんな彼らに先駆けて、告白をしたのはリリコの中学からの同級生・秦(はた・男性)。
相手は同じ中学からの仲の永遠(とわ・女性)。
リリコが湊と急接近している現実を認めたくないがために、
よく知らない湊を全否定しようとした永遠。
リリコに それを咎められた永遠は走り去り、
追いかけて来た秦に対して、1人になりたくない、と心の声を聞かせる。
すると秦が告白して…。
秦の恋心を補完するのは、巻末に収録された、
リリコと友達・永遠の中学時代を描いた短編「芽吹ききみどり」。
永遠にとってリリコがどれだけ大切な友人であるか、
そして秦がどれだけ永遠のことを想い続けていたかが描かれている。
『1巻』以来の永遠の未来予知が出来る設定が登場。
この後、出てきたかなぁ…??
友人Aではないキャラ付け がしたかったんでしょうけど、
本編に ほとんど絡まない設定も要らなかったじゃないかと思うが…。
もしや、このタイミングで この短編を挟んできたのは、
本編への壮大な前振りだったりするんじゃないだろうか。
短編では秦にリリコを奪われると勘違いした永遠が、
ベッドで横になり「秦なんて いなくなれば いいのに!!」と願う。
その願いが直進する車と、倒れ込む秦、慌てるリリコという予知夢を見させていたが、
『3巻』の本編ラストは、同じようにベッドに横になる永遠の姿があった。
もしや永遠は「湊なんて いなくなれば いいのに!!」と願って、
湊が不幸になる夢を見ようとしているのではないか。
そして今度は その夢をリリコに告げないのではないか??
夢が彼を殺してくれるわ。フフフ。
何度でも何度でも終わらない悪夢のように、
リリコに近寄る男を全員 不幸にする女、それが永遠。
Re(再び)Re(何度でも)ハロー、私だけのリリちゃん (ニヤリ)
嘘ですので…。
余談としては、気になったのが、
便利屋の依頼で1日行動を共にしていたリリコと、小学校1年生の結衣(ゆい)。
湊の部屋にも一緒にあがった際、湊の友人である結衣の兄が持ってきた「おゆき」のブルーレイを
湊が結衣に持って帰ってと言う場面で、結衣が「ありがとう」ということが気になった。
その前の晩に、結衣は自宅でBDを鑑賞しているから、
まるで欲しかった物のように喜ぶ場面ではないと思うのだが…。
あと気になるのは、短編内で車に轢かれそうになる秦の場面。
描きたい内容は分かるのだが、あの人物と車の配置だと、
秦が永遠を助ける前に、秦が単独で車と正面衝突しなければおかしいと思う。
そして作者がファンレターに応えているページでの
「チラッとしか出てない」という滝(たき)くんと美桜(みお)(前作『360°マテリアル』)
ってのは、これですかね?
- 作者:南 塔子
- 発売日: 2014/03/25
- メディア: コミック