《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

仮定:滝くん≠天然、が成立するとき、滝くん=俺様彼氏 ⁉

360°マテリアル 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
南 塔子(みなみ とうこ)
360°マテリアル(さんびゃくろくじゅうどまてりある)
第1巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)

IQ高めでポーッとしてて――。滝くんはそんな男子です。
大高美桜は、駅のホームで空を見上げてる男子に遭遇。次の瞬間、彼は電車にひかれそうに!! 美桜が間一髪で助けます。そんな滝くんを好きになったきっかけは…?

簡潔完結感想文

  • 丸井が当て馬じゃなく、重要なポジションになるとは思わない1巻の頃。
  • 著者の初長編。長期連載は想定外? けど、それが奏効した稀有な作品。
  • 再読すると滝くんの欠点も見える。ハッピーエンド ≒ バッドエンド?


漫画には「表紙詐欺!」と肩を落とす作品もあるけれど、本書の場合は心配ご無用。
この爽やかな絵柄と色調の表紙の通りの「ゆるふわ(2巻あらすじより)」の恋愛が待っています。

まず1話目の完成度の高さに驚かされた。
主人公の美桜(みお)が滝くんへの思慕を徐々に募らせるエピソードの重ね方も良いし、ミスコンに選ばれるぐらいの女子生徒を失礼なほど意に介さない滝くんの素朴さや天然っぷりの描写も見事。
数学や飛行機雲といった物語のキーワードも上手く活用されているし、美桜の女友達、天敵の数学教師・イッチー、そして後に重要なポジションを占める丸井っぽい人も1話目にして登場している(空似かも)。

雲に見とれて昇天寸前の滝くん、を助ける美桜。出会いでは美桜がヒーロー的な行動を取る。

教室から飛行機雲を見て、自分の中の確かな思いに気づかされる見開きのページは印象的。
最終巻8巻の著者あとがきによると、本書は著者の別の読切の外見や設定を流用したらしい。
だから1話に流れる空気がゆったりと、それでいて確かなものなのだろうか。


「ゆるふわ」の二人なのだけれど、早くも1巻で両想いになり付き合い始めている。
その後はお決まりの展開の、恋の行く手を阻むライバル(っぽい茜)が登場し、そして彼女から滝くんの元カノの存在が明らかになる。
しかし元カノといい美桜への「彼女宣言」といい、滝くんはなかなかの手練手管の持ち主なのかしら。

天然=純朴という等式は成立しないのだろうが、どうにも滝くんという人物は雲を掴むような性格だ。
ただ流されるだけではない女性への恋愛感情はあるみたいだし、男子生徒への対抗心や嫉妬心もある。
けれどメールに返信しない事が多いし、何より美桜の不安に一回も思い当たらない。
こんなに携帯電話が機能していない漫画もいまどき珍しい。

あれれ、1巻だけでも彼氏の欠点に枚挙に暇がないな。
こんなだから美桜の心も読者の心も、丸井くんに半分持っていかれるのだ(笑)
まぁ、そんな気持ちのすれ違いが少女漫画として読者をヤキモキさせる材料なんですが…。

1巻の段階では まさかこの4人が…。早い段階で関係者が集められていることに驚く。

本書の特徴としては少女漫画の中の学校生活にしては、勉強シーンが多い所だろう(笑)
主人公カップルに与えられた唯一最大の特徴であり、結び付ける共通点だもんね…。
私が気に入ったのは、作者が美桜にちゃんとお洒落をさせている点。
服や髪型をちゃんとアレンジしていて、作者が作品を登場人物を大事にしているのが感じられる。
ただ、美桜がポニーテールにした時は作中の滝くん同様、「えっと、どなた様?」となった。
どうも美桜がポニーテールにすると友人・由仁ちゃんだと勘違いしてしまう。

興味のある/なし が偏っている滝くん。長時間一緒にいたら こちらが疲弊しそうである。