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少女漫画と小説の感想ブログです

唐突なヒエラルキーの復活。お坊っちゃんヒーローが属するリッチな上流階級のチープな描写。

ReReハロ 9 (マーガレットコミックスDIGITAL)
南 塔子(みなみ とうこ)
ReReハロ(りりはろ)
第09巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★(6点)
 

いつも、キミのそばに。 お片付けの最中、懐かしの香水の瓶を偶然見つけた湊。それは昔、亡き母が使っていたものだった。過去の記憶がよみがえり、湊はなんだか元気のない様子…。湊の実家の複雑な事情を垣間見て心配するリリコだけど、そこへ現れたのは…!?

簡潔完結感想文

  • トラウマ過去編。別に母を求めてないけど 横にいられると思い出す その香水のせいだよ。
  • 猫の恩返し。助けた猫の飼い主を探す過程で、彼氏の良さを知っていく彼女の弟。
  • 恩を あだで返し。急に お金持ち設定を前面に出す展開。革命によって主人公も交代⁉

に お金持ちを誇示し出した。違和感満載の 9巻。

私は ずっと本書の長所として、主人公カップルの間には明らかな格差がありながら、
それを全く問題にしないところを挙げてきた。

これまではヒーローの経済的な裕福さは、
恋愛におけるドキドキの拡張手段として示されてきた。

高校生でありながら広いマンションでの一人暮らし、
その中で高校生の男女が時間を共にし、やがて育まれる恋。

湯水のごとく お金は使うが、性根の優しいヒーローと過ごす時間は、
これまで自分が体験したことのない世界を見せてくれる時間でもあった。

ヒーローが実家を飛び出したのは、俗世の しがらみから解放された象徴だとばかり思っていたが…。


だが、この『9巻』から急に ヒーロー・湊(みなと)の
家柄や社会的立場、お金持ちの家庭の悲哀をクローズアップするから
作品内の雰囲気が一気に変わってしまった。

しかも作者の発想の貧困さが原因なのか、
お金持ちの世界はリッチなはずなのに描写がチープ。

家の存続のために子供を産んだとか、
上流階級同士の10代半ばの男女が お見合いをするとか、
2010年代に昭和のにおいのする いかにもな設定のオンパレード。

私に お金持ちの世界のことが分かるはずはないので、
現実にあるのかもしれないが、
少なくとも本書のこれまでの爽やかな恋愛とは異なる価値観を持ち出してきたことが残念。

主人公カップルが格差など ものともせず 純粋に人を好きになっていく様子が好きだったのに。


供は全然悪くない。大人がすべて悪い、湊が育った周防(すおう)家。

湊を生んだ実の母は子供に関心がなく、
多忙な旦那は家に居ないことが多いため、
子供が小学校入学を境に夜な夜な遊び歩くようになった。

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心に疑念が生まれるのは、自分にやましいことが思い当たるから。奥さん、浮気しましたよね?

それでいて数年後、自分が不治の病に侵され入院した際には、
夫と担当の看護師の仲を疑い、子供に黒い感情をぶつけ、
そして彼を自分のもとに縛り付けようとした。

更には、母の1周忌を前に父が本当にその担当看護師との再婚を告げ、
その結婚生活を邪魔しないようにするために、湊は家を出た…。


って被害者ですよね。
小学校の頃も、そして母の死後も、
両親それぞれから その存在がないかのように振る舞われている。

中でも私が疑問なのは、父親の再婚ですね。

一周忌が近づいてきた日に、担当の看護師と再会して、
一周忌の直後に再婚を果たしたという父。

交際期間短すぎ!
そして、思春期の息子の扱いというものを知らなすぎ。
再婚相手をすぐに「お母さん」と呼ばせようとする独善性。

湊は(親のではあるが)お金があったから自分が家を出るという選択肢があったが、
もし広くはない家で再婚した父夫婦と暮らしていたら、
完全にグレるパターンですよね、これ。

お金持ちの大人には人の心がないのか。

ちなみに、この話は再婚した父夫婦のキャラデザも不満です。

まず父・40代(推定)は全く描けていない。
湊の兄にしか見えない人が、再婚だの
「お母さんに謝りなさい!」など言っても絵に説得力がない。

ちなみに最終巻でハッキリと顔も描かれますが、やっぱり兄にしか見えない。

そして再婚相手の女性・弥生(やよい)。
地味な容姿で献身的な感じを出しているのだろうけど、
彼女もまた交際後すぐ1周忌が済んだらホイホイと結婚した時点で、夫と同類だろう。


湊に何らかのトラウマがあるのは『1巻』から描かれていたが、
再婚話は当初からの設定だったのだろうか。

『8巻』の感想でも書いたが、
湊の父に再婚相手がいるのならば、家政婦のエツコはもっと地味に、
一目でおばさんと分かるようにしなければならなかったのではないか。

20代後半以上の男女の描写に年齢を全く感じさせられないから、
エツコと再婚相手の年齢差などが分かりにくい。

なぜ湊の母はエツコを不倫相手と疑わず、看護師を不倫相手と特定したのか。

そして湊の父も即再婚するぐらいの旺盛な人なら、
エツコも…、という不必要な疑惑が湧いてしまう。

エツコ美人設定が本当に要らない。


金持ちの話にシフトしたことが明確になるのがラストのお見合い話。

湊と、新キャラの華族のお嬢様・万里小路(までのこうじ)さんのお見合いで『9巻』は終わる。

まさか本書が お金持ち漫画あるある を連発する漫画になるとは思わなかった。
つくづく残念である。そして悪い予感しかしない。

ちなみに湊の通う私立校・齊旺(せいおう)の女子生徒は全員 性格が悪い説は今回も成立してます。

転校生でチヤホヤされる万里小路さんに悪意を持つ女子生徒が登場。

しかし万里小路さんも また齊旺の女子生徒である。
ということは彼女の性格にも問題があるのだろうか…。

そういえば万里小路が呼びにくかったら「マディ」って呼べばいいって『この漫画』は教えてくれてるよ。


書における私の理想形は、中盤の お話です。

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塁の汚物を見るような目が最高です。実際に弟として一番目にしたくない光景だろう。

ある日、リリコの弟・塁(るい)が イジメられている猫を救出したことから始まる一編。
リリコと湊、そして塁の3人で、飼い主を探し回ることになるのだが…。

こういう便利屋稼業の話が本書らしくって好き。

しかも その流れの中で、姉のリリコのことが大好きな塁が、
湊を彼氏として認める経緯まで描き切っている。
猫を助けたことで 男同士の間に信頼感が生まれた。

湊の懐の広さや、人としての正しさも見られるし、
お金持ち設定も こういう風に使ってくれて良かった、という種類のものだ。

まさかリリコの家の便利屋ではなく、
湊の家の上流階級を漫画のメインにするとは思わなかった。

てっきり一番最初に切り捨てた価値観だと思っていたよ…。

ReReハロ 9 (マーガレットコミックス)

ReReハロ 9 (マーガレットコミックス)

  • 作者:南 塔子
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: コミック