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少女漫画と小説の感想ブログです

「あと何度 君と同じ花火を見られるかな」って 笑う顔に何ができるだろうか『打上花火』

ココロ・ボタン(8) (フラワーコミックス)
宇佐美 真紀(うさみ まき)
ココロ・ボタン
第08巻評価:★★★☆(7点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

ほんとに付き合いはじめて1周年!!ついについに花火デートの日、新奈と古閑くんが...!? そしてその花火の日に偶然しっかり手をつなぎ合って幸せそうな二人を見てしまった速水くんはモヤモヤとして。。。

簡潔完結感想文

  • 修学旅行。電話を拒否されるなら、迷子になった君を直接 迎えに行くよ。だって大切な人だから。
  • 花火大会。正式交際から1年余り、お試しからは+4か月。1年前の自分へ、1年後も私は幸せだよ。
  • お見合い。古閑くんにお見合い話が到来。持ち込まれた話よりも、その人自身が波乱を巻き起こす⁉

1度目とは違う夏が またやって来る 8巻。

なんだか第二部(完)という感じがした。

『8巻』は表紙にもなっている浴衣での花火大会がメイン。

「お試し交際」だった1年前の花火大会の日は、
新奈(にいな)と古閑(こが)くん、2人の初キス記念日。
ただし それは決してロマンティックなものではなく、
2人の距離を近づけるどころか、一時的に遠ざけてしまった日でもあった(『3巻』最終盤)。

そんな忘れられない思い出の日から1年。

2年目は、この少し前に距離が出来てしまったけれど、なんとか修復。
幸不幸の谷を越えて、絶頂期に迎える花火大会。

今年は昼から古閑くんの家で正式な交際1周年の お祝いをして、
その後に花火大会に向かうという 丸一日デート。

手作りケーキにローソクを立てて、
部屋を暗くした際、新奈が知り合ってからの日々の感謝を古閑くんに伝える。

人を想う温かさに包まれる中、頬に手を添え、口づけを交わす。
そして古閑くんが新奈を床に倒して…。

長期連載ですと、こうやって同じイベントの、違う出来事が描けるのが良いですね。
1年前の出来事があるからこそ、今年が一層 輝いている気がします。

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去年は涙と雨で見られなかった花火が、今年は大輪の花を咲かせている。

書が最終回を迎えるとしたら、この回かな と思います。

1年前に正式に交際が始まった時に続いて、二度目の最終回チャンス。
本書は まだまだ面白いので大丈夫だと思いますが、
少女漫画では、ここで終わっとけば…、という作品が少なくないですからね。

ただ、もしも最終回なら「事後」に花火を観に出掛けるので、
ちょっと締まりの悪い感じになってしまうけれど、幸福度はマックスだろう。

…が、最終回ではないので、事も起こらず。
交際も2年目 突入だし、そろそろ いいかな、なんて思いますが、
清い交際のままの方が、作品の雰囲気には合ってるかな、とも思う。

直接的な性描写は似合わないので、極力カットして欲しいですが、
もし描くなら「朝チュン」ででも匂わせてくれるのは、ありかな。


だ、物語はまだまだ続くので、新キャラを投入した新展開が用意されています。

新キャラは、茶道の家元のお嬢さん・西山 環(にしやま たまき)。

彼女は古閑の友人・速水(はやみ)と同じカラオケ店でバイトを始めた。
なので速水との会話が多くなるのだが、
実は古閑の お見合いの相手でもあった。

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正式な交際相手の新奈 VS. 正式な お見合い相手の環、という構図にはならないのだが…。

ただ、お見合いの事実自体は、
古閑くんの新奈への「いじわる」の材料として使われるぐらいで、
大きな波乱は起こさない。

だが、彼女が新たに物語に加わり、
4人の男女高校生の物語になったことで、何かが起こるらしい。

古閑くんの家は、共働きで両親ともに高収入っぽいが、
茶道の家元の家と釣り合うぐらいの家柄ではないだろうに、
お見合い相手に選ばれるのは ちょっと不自然。

いかにも作品の延命措置的展開だが、それが吉と出るか凶と出るか、は今後次第。

新キャラ・環さん は世間知らずが故に、
言葉が率直で、人の痛いところを突いてくるのが特徴かな。

主にその被害者はバイト仲間でもある速水で、
環の言葉によって、速水が封じようとしていた新奈への気持ちが目覚めそうな予感がする。


式交際2年目という事実は、交際の形としても表れている。

例えば古閑くんは2年生に進級してから一層、勉学に力を入れて時間を割いている。
一方、新奈は古閑くんに会えない寂しさを紛らわすために失態を犯し、
古閑くんや速水に かえって迷惑をかけてしまう。

交際2年目を目前にして、1年目とは違う環境が生まれ、
そして、その環境の違いが今後ますます大きくなるばかりである現実を思い知った。

ずっと高校生ではいられない、ずっと同じ場所にはいられない、
そんな確実に流れる時間を実感させるのも2年目の交際なのであった…。


しかし、その危機を乗り越えるのも2年目の彼らなのである。
これまで重ねてきた1年間があるからこそ、彼らは対話の方法を知っている。
未来の不安を打ち消すのは、自分の希望、そして将来の約束。


そこからは新奈たちは、お互いの個人の時間を上手に過ごしていますね。
新奈はバイトを続けてて良かったですね。

そしてテスト前とはいえ、新奈が独力で勉強をしようとしてるのは大きな成長ではないか。
これは古閑がそれだけ頑張っている影響で、
彼に相応しい自分でいるために新奈は自分を奮い立たせているのだろう。

一人で勉強して、テストで60点も取れているなんて凄いじゃないか(私からしたら…)。


そして高校2年生にして、交際にあまり時間を割けない縛りが、
いつまでも2人の関係を初々しいものにしている気がする。

古閑くんが塾帰りに新奈の家によって作り出す、20分だけの2人だけの時間。
40日以上あるであろう夏休みで、たった1日しか会えなかった花火大会。
(長期休暇ほど古閑くんに会えないというジレンマは健在)

彼にして欲しいことが顔に書いてあるような幼い精神を持ちながら、
会いたいとワガママを言わないで、その分、会える時間を楽しみにする新奈。

そんな忠犬のような彼女が みんな大好きなのだ。