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お泊りイベントを成立させるために、家を一軒 壊してみた監督の気概。

ココロ・ボタン(9) (フラワーコミックス)
宇佐美 真紀(うさみ まき)
ココロ・ボタン
第09巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★★☆(7点)
 

新奈と古閑くんが正式につきあいはじめて1周年。ドSな彼に振り回され?ながらもラブラブな二人。古閑くんの中学時代からの親友・速水くんは最初は新奈のことをまったく認めてなかったのだけどだんだん、彼女の素直さに惹かれて!?
そんな時、速水のバイト先の同僚・西山環(たまき)が家出してきて、その騒動のさなかなんと古閑くんの家で環、新奈、速水、古閑の4人で共同生活をすることになって…!?

簡潔完結感想文

  • 運動会。一生懸命 応援の練習をする君を見て 変わったオレ。ライバルの応援は絶対にしない。
  • 家なき子。高校生の男女が同居生活するために、家を失う新奈(語弊あり)。宿泊代は勉強で。
  • 恋愛観察バラエティ「4LDK」開幕。深夜の会話、眠った人へ差し出した手、全部 見られてます。

校生の男女のドキドキ同居生活『L・DK』開幕。ただし男女4人で4LDK の 9巻。

季節は また少し移ろって、秋。

去年は作中で扱った学校イベントは文化祭の秋でしたが、
今年は体育祭の秋になっています。
どうやら「去年は雨で流れちゃった」らしい。
そんな高校生活2年目にして初イベントから開幕。
ちなみに文化祭は今年は描かれません。

体育祭では、何事にも一生懸命な新奈(にいな)に感化されて、
応援団員として学ランを着る凛々しい古閑(こが)くんの姿が見られます。

新しいイベントを描くことで、
彼らの違った一面を見られるので、読者も同じように青春を感じることが出来ます。

男女がハチマキを交換するという隠しイベントもあって、
連載1回分だけれど、ハレの日の感じが とても良く出ている。

作者の じんわりと確かに温かい物語の作り方、好きだなぁ。


して秋は、恋の嵐も、本当の嵐も巻き起こる。

その恋の嵐とは、男女4人による四角関係。
いや、四角関係ではないか。
男女4人の点を線で結ぶ、一直線関係か。
しかも新奈と古閑くんは、既に強い線で結ばれているのだが…。

新奈に好意を寄せるのは、古閑くんの友達であり、高校生作家の速水(はやみ)。
そして、そんな速水に段々と惹かれていくのが、お嬢様であり女優志望の環(たまき)。

新奈に勘づかれないように、密かに古閑くんは速水を最大限の警戒をするしている。
(速水に対して見せる古閑くんの表情は、とても男らしくて良い!)

だが、なぜか とある一日、彼ら4人は同じ家で寝泊まりすることになってしまい…。

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彼女に勉強を教えるの と「いじわる」は彼氏であるオレの特権ですが、何か?

その一因となったのが、本物の嵐。

台風によって雨漏りする新奈の家。
一家は家族会議によって、自宅の全面リフォームを決定する。

この間、わずか2ページ。
これから娘たちの進学費用がかさむというのに、
すごいタイミングで大金を使う一家。大丈夫か??

ハッキリ言って、新奈の家がリフォームしたのは、
新奈一家がマンションでの仮住まいをしているさせるため。
そして、その影響で、家出をした環を路頭に迷わせるためである。

このお泊りイベントを成立させるためだけの、リフォーム。
新奈は、古閑くんの家にお泊りできるわ、家は綺麗になるわで一石二鳥です。


んなこんなで唐突に始まった古閑くんの家での男女4人の 4『L・DK』ライフ。
父は海外赴任、母は社長業で帰宅しない日も多いという古閑くんの家庭事情も上手に盛り込んでいる。

といっても、本当に家が広いので、ドキドキ同居生活というよりは、
恋愛観察バラエティみたいなノリに近いですが。

一番お泊りへのハードルが高いはずの新奈の家の説得も、
古閑くんへの信頼度と、近づくテストでの好成績を保証することで問題をクリアしている。

友人たちとの お泊り回、それも古閑くんの家にずっと居られるという幸福で満たされる新奈だが、
古閑くんと一緒に過ごす夜にすることといえば…、勉学で あった。

これは もちろん新奈の家との約束もあるが、
古閑くんなりの理性の保ち方でもあったりするのだろうか。


ただ古閑くんの「先回りのS」による「いじわる」は健在で、
眠る間際にスキンシップと、眠れなくなる一言を放ち、彼のブレない姿を見た。


女の共同生活(といっても一泊なのだが)では、何事も起きていないようで、
恋のベクトルが明確になる場面もあった。

眠る新奈に優しい表情を浮かべて手を差し伸べる速水。
そして、そんな彼の姿を見てしまう環。
なぜ恋は、こんなに苦しくもあるのだろうか。

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古閑くんという鬼の居ぬ間に接触。この家での環は壁に耳あり障子に目あり を体現。

そして自分のこと、料理のこと、将来のこと、自己責任のことなど、
学校は違えど同級生たちとの生活は、皆にとって実りの多い時間だったようだ。


私は古閑くんが新奈に語ること(扉の外で環が聞いている)に、
彼の現実的で、長期的な「先回り」の能力を感じた。

一時的な反発やワガママが、自分の将来を狭めるかもしれない可能性があること、
それに思い至らないことが、視野の狭さだということを私まで思い知らされた。


特進クラスに在籍する古閑くんが勉強についていくためとか、成績の維持という目的ではなく、
1年生の頃から、新奈と会う時間が削られてでも塾に通って、
勉強し続けているのは、彼の叶えたい目標のための最短ルートが彼に見えているからだろう。

「先回り」して、常時、自分に課題を出すことが、
後の、目標の達成や大きな幸福に繋がることが分かっている。


そんな負荷の中でも、新奈の顔に出やすい欲望もしっかりと掬い上げてくれる古閑くん。
どれだけ器が大きいのだろうか。
知れば知るほど好きになるタイプの人である。


一方、新奈も どんどんと可愛さが判明してくるタイプかもしれない。

共同生活中、全員が出払ってしまった家で、言いつけ通り勉強する姿や、
途中で古閑くんの部屋に入って、彼のベッドの上で寝てしまう姿は、
ちょっと抜けているペット(犬)そのもの である(笑)

ココロ・ボタン (9) (Betsucomiフラワーコミックス)

ココロ・ボタン (9) (Betsucomiフラワーコミックス)