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今日も夏秋くんの好意は伝わらないけど、彼もまた彼女からの好感度上昇に気づかない

夏秋くんは今日も告白したい(1) (別冊フレンドコミックス)
さとる
夏秋くんは今日も告白したい(なつあきくんはきょうもこくはくしたい)
第01巻評価:★★★(6点)
 総合評価:★★★(6点)
 

“クールな美少年”と女子から注目を集める夏秋くん。顔に出ないから、わかりづらいけど実はクラスメイトの梨子田さんに片思い中! 夏秋くんが想いを寄せるのは歯に海苔がついてたり、テスト中に消しゴムを落としちゃったり、ちょっと抜けてる梨子田さん。(でもそこがカワイイ!!)とにかく気持ちを伝えたい! だけど…!? ちょっぴりズレてるけど超一途♪  恋に全力な夏秋くんの告白大作戦、スタート!

簡潔完結感想文

  • 好きな人の言動は どんなものでもプラス加点。盲目状態の夏秋くんの静かな奮闘日記。
  • 告白は出来ないけど彼女のピンチを守り続けることでヒーローの権利を着々と得ている。
  • 高スペックの夏秋くんだけど自己評価はフラット。自分の好きな人を大切にしたい。

秋くんは既に何回か告白してる、の 1巻。

出版社がスクエア・エニックスかと思うような日常系ラブコメ作品(掲載は講談社の「別冊フレンド」)。毎日、告白したい意志を持ち続ける夏秋(なつあき)くんの奮闘と空回りを描く一方で、着実に彼が好きな女子・梨子田(なしだ)さんの視界に入っていく様子を描く。1話1話は なんてことのない話なんだけど、着実に距離が近づいていく様子が分かって温かい気持ちになる作品。

梨子田さん可愛い!を連呼する夏秋くん。そういう君も可愛い と思うのが読者の正解

本書の1つのルールとして夏秋くんの感情は他者から読まれないことが挙げられるだろう。読者からすれば夏秋くんの恋愛感情はバレバレだと思ってしまうけれど、作中では夏秋くんの友人・真島(ましま)でさえ彼が誰に恋をしているのかは分からない。
夏秋くんは眉目秀麗な理想の男子でファンも多い。だから夏秋くんの恋心は誰もが知りたい情報だが、彼のポーカーフェイスが情報の漏洩を遮断しているらしい。また夏秋くん自身は自分の容姿や人気に全く頓着がない。もしかしたら自分がモテると思っていないかもしれない。んなアホな、絶対 告白され続ける人生じゃん、と思うけど、本書の中では夏秋は無菌状態で育成されているらしい。

そして夏秋の気づかない もう1つのルールとして夏秋くんも梨子田さんから好感度がアップしていることに気づかないという点が挙げられるだろう。夏秋は梨子田に告白という本願が成就されないことを気にしているけれど、彼の言動は少しずつ梨子田さんに刺さっていることを彼は知らない。
告白に失敗しても めげない性格も面白いし、告白できないのではなく告白しているけど伝わっていないという状況も申し訳ないけど笑える。ただし夏秋くんの告白チャレンジは回数を増すほど、恋愛成就の可能性を高めている。頑張ったら頑張っただけ絶対にリターンがあると信じられるから読者は安心して作品を読める。

もし1話で告白しても、梨子田さんにとっての夏秋くんは「“クールな美少年”と女子から注目を集める夏秋くん。顔に出ないから、わかりづらい」という他の人が抱く印象でしかなかっただろう。そんな人に突然 告白されても当惑するだけ。でも夏秋が多少 強引でも接点を作り続けることによって彼女の視界に入り、梨子田さんに偶像ではなく実在の夏秋くんのことを知ってもらう契機となっている。

頑張ったら報われるし、作中で嫌な気持ちにならないチルくてヒーリングな作品

た大きなルールとして本書はプラスのことしか描かれないというものがあるだろう。人の見方が減点方式ではなく無限に加点されていく。そこが読んでいて気持ちがいい。

夏秋くんはともかく、梨子田さんは完璧な女子ではない。授業中寝るし、鼻血を出すし、ペン回しするし、消しゴム落とすし、歯に海苔は付いてるし。夏秋くんなら もっといい人が…、と思うのは外野の余計な お節介というもの。夏秋くんの恋のパワーを使えば一見 欠点に見えるようなポイントも全てが可愛いに変換される。品定めするように、あの人は ここが良いけど ここがダメ、と どこから目線のジャッジをするのではなく、好きになった人を全肯定できることが夏秋の育ちの良さのように感じられた。しかも本人たちは自分の長所に無自覚だから自己愛とか自己陶酔とかとは無縁で、これによって作中のピュア度は倍増する。

大きなドラマやトラウマはないけれど、だからこそ変に こねくり回してない純粋な恋愛感情だけが抽出されている。掲載誌の中に、漫画遍歴の中に気持ちを浄化させてくれる本書のような作品があると嬉しいのではないか。


1話。驚くべきは夏秋くんが梨子田さんに見惚れたのは歯に海苔がついているのを知らずに笑ったから、という理由。人によっては100年の恋も冷めるようなことでも夏秋くんにとっては アバタもエクボ。男子受けを狙って いつも完璧な見た目を保とうとするよりも、こういう隙の多い人の方が好感を持たれるのかもしれない。

夏秋くんは いつも梨子田さんを見ているから彼女の困りごとにも すぐ気が付く。席替えで少々 強引に隣の席を確保するのも、自分の利益ではなく彼女を守るという騎士道の精神からである。こういう頑固なところが夏秋くんの長所であり短所な気がする。

2話目も梨子田さんの困りごとに自分を盾にして守りたい。その自己犠牲によって彼女から名前を呼ばれる(自分が認識されている)ご褒美を頂く。

名前を呼ばれた、名前を知ってくれている、それだけでも嬉しい夏秋くんの現在地

3話。梨子田さんの隣の席、という幸運を少しでも享受したくて夏秋くんは日直の仕事を早く終わらせたい。しかし その やる気を評価されて次々に仕事が舞い込んでしまう。梨子田さんとの時間は全く取れなかったけど、最後に ご褒美を頂く。

4話目、3話目のご褒美のお返しに夏秋くんはプレゼントをしたい。プレゼントは夏秋くんの気持ちの大きさと比例し大きすぎる品になりかけたが、ハンカチに落ち着く。プレゼントをプレゼントすることは出来なかったけど今回も彼女を助けることが出来た。


5話。学校イベント・飯盒炊さんで同じ班になった夏秋くんは梨子田さんと並んで調理。これまでも梨子田さんには色々とアバウト面があったが料理でも同じ。料理下手な彼女の名誉を守るため夏秋くんは自分で具材を切って、班の人に順調な過程を示す。他の班の調理を手伝ったり、ミスをカバーしたり夏秋くんは八面六臂に活躍。今回も梨子田さんに夏秋くんの優しさと人柄・個人情報は しっかりと伝わった。

6話目。引き続き学校イベント。前半の頑張りは梨子田さんと一緒に自由時間を過ごすという ご褒美となる。梨子田さんのために高所への恐怖も克服し、そのお陰で彼女の写真をゲットする。そして意識しての告白したいではなく、自然に告白していた、となってしまい…⁉