《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

少女漫画の青少年が家を出る理由 第1位は…。好きな人が実兄と結婚!

L・DK(2) (別冊フレンドコミックス)
渡辺 あゆ(わたなべ あゆ)
L♥DK(えるでぃーけー)
第02巻評価:★★★(6点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

カラダが触れ合えばココロも触れ合う。――ドキドキ・アクシデントの連続で、二人の同居生活は早くも大混乱(パニック)!! 柊聖(しゅうせい)の意外な一面を知るたびに惹かれていく葵(あおい)だけど……。心を乱す、思わぬ事態が!? とまどい揺れる、ひとつ屋根の下・青春ラブストーリー。

簡潔完結感想文

  • 実姉の襲来。一緒に暮らそうと提案する姉を拒むために偽装カップルを演出する2人。
  • 年下の心配。ペット系男子に告白された葵。連続同居記録更新のために男は選ばぬ。
  • 義姉の生態。義理の姉を寝取るのではなく寝取られた結果が義姉という奇妙な関係性。

た過去に出会った違う男のことを思い出してしまう 2巻。

『1巻』でもヒーローである柊聖(しゅうせい)の後ろに別の男の影を感じた私ですが、『2巻』ではまた別の男の影を感じた。

その男とは、同じ同居モノの12年先輩である『グッドモーニング・コール』の上原(うえはら)くん。

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参考画像『グッドモーニング・コール』の上原くん

といっても今回は容姿が似ているのではなく、彼らの背景が似ている。

自分が想っていた女性が実の兄と結婚してしまった2人なのだ。
家出、同級生との同居、義姉との関係と共通点の多すぎる2人。
青少年が苦労してまで家を出たい理由は同じなのでしょうか。

ちなみに少しネタバレになってしまうが、上原くんにも柊聖にも頼れる両親がいないというのも同じです。

しかも上原くんより柊聖が悲惨なのは、自分が先に付き合っていた女性が後に実兄と結婚してしまったところだ。
十中八九、肉体関係まであった人が兄と結婚するのは女性不信になりかねない出来事だ。

もしかして柊聖が序盤で女性に冷淡なのは、女性を嫌悪しているからなのかなと思ったが、
葵と出会うまでは軟派に身体の関係を重ね続けたみたいだから違いますね(後に判明することですが)。
この辺も柊聖に誠実さを感じないところですね。残念。

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柊聖の元カノで、現・義姉の桜月。えっと取り敢えず ビッチってことで、よろしいでしょうか?

にしても、この噂の元カノ 兼 義姉の桜月(さつき)は、もう少し魅力的に描けなかったのでしょうか。
顔・服装・言動の全てから、ただの軽薄な女性にしか見えない。

どんな人物であれ柊聖にとって大事な人なのだから、もう少しデザインや設定を練って欲しかったところです。
巻数が進むほどに避けては通れない存在なのに、キャラとして弱すぎます。

そして、この桜月の顔が主人公の葵(あおい)に似ているのは必然でしょうか、それとも画力の問題でしょうか。
多分、後者なんでしょうね…。
作者の意図とは違うところで変な意味を持たせちゃうのは良くないですね。


そんなこんなで、またもや別の男と勝手に比べられてしまった可哀想な柊聖。
でも過去に色々あったからって彼の魅力が自然と増すかというとそうではない。
どうしても私には学園の王子様というレッテル一枚分の魅力しかありません。


巻の内容はというと「胸キュン見本市」は続く、という感じですね…。

柊聖の部屋を訪れた実の姉・絵里(えり)に交際中のラブラブ同居していると嘘をつく葵。

だがずっと疑惑の目を向け続ける姉に自分たちのイチャラブを見せつけることに。
腕を組んだり一緒の布団に寝たり首筋を唇で触れられたり、偽装恋人ではあるが胸キュン場面はこれでもかと続く。

最後に絵里が葵とキスできるかと挑発してもキスをしなかったのは柊聖の優しさでしょうか。
一緒にお風呂は入れるがキスはしない。
この漫画の倫理観はどうなっているんでしょうか…。

ちなみ『2巻』で一番大事なのは間違いなくコンドームを買う場面です。
本書で最も大事な伏線と言っていい一コマですので、読み逃しなく。
この後、何回もこすりたおされます。


続く球技大会は、まさに胸キュン場面のために用意されたお話。

球技大会で各人それぞれ名前入りのTシャツをくばる葵たちの学校。
どうやら「スキな人からTシャツもらうの流行って」るらしい。

当日、間違って柊聖のTシャツを着て出てしまった葵。
葵のTシャツは柊聖が着ていたため交換するため、なぜか2人で同時に服を脱ぐ。
その瞬間に部屋に柊聖狙いの女子生徒が入ってきたため、2人は身を寄せ合って隠れるのだった…。

なぜ2人同時に服を脱ぐのか。
そしてTシャツのサイズ、どうなってるの⁉ と不自然さが目立つが、全ては胸キュン至上主義。

ブラジャーのホックを外すのがお得意の柊聖だけど、
上半身がブラだけの葵には流石に外さないか(笑)
その後、外したけど。

肉食の女子生徒たちと比べて何もしないで柊聖に気に入られる葵という対比が際立ちます。
愛され葵の誕生ですね。
なぜでしょう、少女漫画では平凡な女子だったはずの主人公が、いつの間にかにモテ始めるのは…。


そういえば葵の胸が大きくないという設定も彼女の平凡さの強調なんですかね。

多くの主人公を「中の下」に押し込める少女漫画の価値観。
少女漫画の主人公の多くが胸が大きくないのは、読者にとっての救済でもあるんですかね。
胸が小さくても、頭が悪くても、容姿が十人並みでもイケメンから愛される可能性はゼロではないという救い。

8割方の主人公がヒーローよりも頭が悪く、成績は「中の下」。
容貌に関しては「中の中」が多いが、なぜか物語が中盤を過ぎるとモテ始める謎展開が高い確率で起こる。


約束通り、葵もモテ始めるのが3話目。

『2巻』は新キャラ祭りですね。
まぁ新キャラ投入の連続でマンネリの回避をしたいのでしょう。

作者も巻末の「ごあいさつ。」で書いている通り、
「普遍的なものを面白く見せるって、ほんと難しい」のだと思う。
なので多少 不自然になっても目新しい展開や胸キュン場面を創出する。
そのために必要なのが新キャラ祭りなんでしょうね。

葵の前に現れたのは犬系男子の後輩・翔太(しょうた)。
自分が「あざとカワイイ」ことを熟知している翔太は、その外見とは裏腹にグイグイと葵に迫る。

柊聖がやらないような、こんなことも読者は お好きでしょという、あざとい場面の連続です。

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犬は犬でも噛ませ犬。それより(左)の横顔のノッペリ感と 傘の長さが気になり話がブレる。

翔太は本当に噛ませ犬ですね。
柊聖へ好意を持ち始めている葵が、自分を好きだと言ってくれる男性よりも柊聖を選ぶという展開に必要なだけのキャラだ。

一方で、柊聖の方も気持ちに揺らぎがないことを証明するための元カノ 兼 義姉の桜月の登場なんでしょう。

ただ誰かへの気持ちと比較しないと、自分の気持ちを明確に出来ないのはちょっと嫌ですね。
作者としては気持ちの後押しとか傍証として彼らを使いたかったんでしょうけど。

柊聖は分かりにくいですが、「迷惑なの」と葵に拒絶されたと思って、落ち込んでる側面もあるのだろう。
「自分のために無理してバイトしてプレゼントをくれた」という胸キュン場面のために働いて倒れた気もするが…。

どうにも柊聖の気持ちは伝わりづらい。
色々な過去を創出して、それが彼をためらわせているという描写にしたいのだろうが、
不気味な無表情・無感情人間にしか思えないのが難点。


ういえば翔太の登場後に、大家さんから柊聖の部屋の修繕が終わった告げられるが、
本来ならこのタイミングで連載終了への流れが生まれる箇所だったのでしょうか。

部屋が別々になることで否応なく淋しさが募り、柊聖への恋心を自覚する葵。
その気持ちに柊聖も応え、お互いの部屋を行き来するラブ同居が始まった(完)
という流れだろうか。

これなら翔太も桜月も登場しないまま気持ちを確定させて物語を終えることが出来るのか。
まさかそれが全24巻の物語になるとは…。


ラストで2部屋を隔てる壁に穴をあけた葵。
だが修繕のためなのか、家賃を折半出来て節約のためなのか『3巻』では何事もなかったかのように同居の継続している。

ただ、この2人の関係性の場合、壁に穴が開いたままでも暮らせると思うのだ。
修繕しないでも済むし、まさか内部で繋がっているとは思わないだろうから同居がバレることも無い。

もしや、壁に穴をあけるという展開は本来考えていた最終回のネタなのだろうか。
壁に穴があいて私たち一風変わった半同棲になりました(完)だったはずが、
連載が続けられるようになったから、同居設定のために壁の穴を埋めてしまったのか。


まぁ、同居することで柊聖は少しでも経済的余裕が生まれて、彼の人生は大助かりだろうが。

一方で親の言いつけでバイトを禁止されている葵。
家賃も含めた生活費を親に出してもらっているが、同居によって浮いたお金は着服してるのだろうか。

男と同居した上に、月に何万かのお小遣い。
おいしい生活ですな。
まぁ、しばらくは壁の修理代の補填だろうけど。
修理してる描写は一切ないけど…。

そういえば本書には料理以外の家事のことが一切出てきませんね。
どちらが担当するとかの話も出ないし、柊聖は忙しそうなので葵が担当でしょうか。
何だか女性は専業主婦で家事を担当するという古い価値観にも思えます。