渡辺 あゆ(わたなべ あゆ)
L♥DK(えるでぃーけー)
第17巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★☆(5点)
葵(あおい)、柊聖(しゅうせい)、玲苑(れおん)の3人同居が始まった!! 家でも学校でも玲苑のいるところに波乱あり。少しずつ70点女(葵)への感情も変化してきたようで……。そんな中、文化祭でついに柊聖と玲苑の対決が──!? ドキドキが止まらない、 ひとつ屋根の下青春ラブストーリー。
簡潔完結感想文
- 長ーい玲苑編の中の、長ーい文化祭編スタート。高校3年生の2学期、それは永遠なのかもしれない。
- 将来を期待される柊聖に対するライバル意識が玲苑のやる気を引き出す。一人の男としても負けない。
- 葵が柊聖にしていたことを、玲苑が葵にするだけでは胸キュンしない。少女漫画としては致命的欠陥。
修学旅行を たった1話で終わらせた漫画が、文化祭の準備から後日談までは3巻かける 17巻。
ただでさえ長い玲苑(れおん)編の内、文化祭にまつわる話だけで3巻分 消費されます。
この文化祭で何が起きるのかというと、
転校生で柊聖(しゅうせい)のいとこで、そして新たな同居人となった玲苑が
葵(あおい)を好きになるという過程が描かれる。
主人公の葵が柊聖を好きになるのに要したページの何倍も使って…。
作者のバランス感覚どうかしてるぜっ!
何が残念かって、『16巻』の感想文でも書きましたが、全てが想定範囲内であること。
玲苑が葵に惹かれるのも想定内。
その過程の描写も普遍的ではあるが凡庸ともいえる。
連載初期に人気を博したであろう胸キュン場面が上手く機能しないことが痛手か。
そして葵と柊聖の関係性がすっかり出来上がったところに玲苑の付け入る隙はありません。
交際以前の、『5巻』で柊聖と葵をかけて闘った、
学校の先輩・三条(さんじょう)の位置に玲苑が来たら、それはそれは面白かっただろう。
ただ、いくら久我山家の人間であっても、柊聖以上の位置になる訳がない。
葵が10数巻 一緒に暮らした柊聖を追い出して、玲苑と暮らし出したらそれはそれで面白いが(笑)
全てが想定内で、しかも今回は女性が男性にドキドキ・胸キュンするのではなく、
男性が女性に段々と惹かれていく場面や瞬間の描写が続く。
でも、それって読者の多くが望んでいることではない。
そして葵が無邪気に玲苑を魅了していく様子も、葵に慣れ親しんだ読者としては違和感が生じる。
柊聖に対しては聖母に、そして玲苑に対しては無自覚な小悪魔になっていく葵。
平凡な女性の代表例だったはずの葵のインフレが止まらない。
(この辺は少年漫画の戦闘力のインフレが止まらないのと同じ現象かもしれない)。
フォローするならば、これは柊聖が葵に惹かれる時には極力排除していた描写なのだろう。
玲苑という決して素直になれない性格の持ち主が、
自分の中に芽生えた感情に従うまで、それほど葵を好きになる過程を描きたいのだろう。
ただ、やっぱり長い。
葵に柊聖など男性キャラが駆使していた、あざといセリフを言わせるわけにはいかないので、
玲苑が葵に惹かれる場面はインパクトが欠け、それほど印象に残らない。
玲苑が、柊聖の彼女である葵には何か特別な秘密があるのではないかと探る冒頭の回。
これは葵が過去数回、柊聖の肉体に興味を持ってイタズラをしてきた変態行為の逆バージョンだろう。
ただやっぱり男性側が女性側の肉体に興味を持つと生々しくなってしまう。
玲苑は思い留まったが、もし葵の胸の大きさを確かめるために服を脱がせたりしたら、
ただのセクハラで性暴力になってしまう。
公平に見れば、葵が柊聖の服を めくりあげたり、
シャワーを覗いたりするのも、同じことではあるのだが…。
そして葵 → 柊聖ならば葵のセクハラ変態行為に対しても余裕をもって対応し、
胸キュンセリフを囁けば、それだけで漫画が成立し、読者も満足する。
だが前述の通り、玲苑 → 葵の場合は葵のリアクションは無し。
ただ戸惑ったり赤面するだけで終わってしまう。
玲苑はその表情にこそ胸を撃ち抜かれるのだが、連載1回分としては物足りない状態が続くのだ。
その補填としてか、玲苑のコスプレやシャワーシーンがあるのだが、
1巻丸々 玲苑のプロモーション映像に使われている感じは否めない。
着々と玲苑が柊聖のライバルとしての一面を見せる中、
文化祭でも、もう一つ柊聖と玲苑との戦いが繰り広げられる。
それが各クラスの模擬店の売り上げと一般投票で模擬店のランキングを決定するもの。
柊聖と葵のクラスと同じ模擬店をやることになった玲苑は、
経営者の息子としての血が騒ぎ、1位を奪取するべく作戦を練り上げる。
ちなみに模擬店はホストクラブです。
昨年も三条と柊聖のクラスが行っていましたが、今年も少なくとも2クラスはそれ。
玲苑のクラスは彼の提案で女装喫茶になりましたが、
この学校はよく許可してますね、こんな接客業を。
そして読者には受けるだろうが、ワンパターンと思わざるを得ない。
ここは柊聖と玲苑が、それぞれブレインとなって、物品の販売対決で勝敗を決して欲しかったような…。
葵と玲苑の偽装交際もあっさりと認め、
2人の仲が険悪な状態から、心の垣根がなくなったことを見届けた柊聖。
だが、近すぎる距離感に柊聖の嫉妬深い一面が顔を出してくる。
ようやく脇に追いやられたヒーロー・柊聖の逆襲が始まりそうです。
葵も柊聖も考え無しに同居なんてするから、こういう事態になるのです。
読者の100%が予測できていたことですよ…。
葵に急接近して気まずくなった玲苑が小咄と謝罪で、
いつの間にかに葵の設けた境界線を越えて、2人の間に壁が無くなるお話の3話目。
話としては良く出来ているが長い、長すぎる。
この作者は本当に1話、1巻分の情報量が少なすぎますよね。
それでいて お話作りに苦労している様子で時々、作画が汚い。
ネタが枯渇して、いつもカツカツのスケジュールなんでしょう。
『17巻』では葵ってこんな顔だったっけ、と思う表情が散見された。
どうも作者の頭の中で、確固とした「LDKワールド」が構築されていないように思われる。
登場人物たちの使い方 然り、端々にまで意識が行き届いてない。
そういえば、葵は3人同居の事実を家族には話して…、ないですよね、絶対。
今度こそ父親は ふしだらな娘だと嘆き悲しみ、
大らかな母でさえ、柊聖に真意を問いただしに やってくるでしょう。
折角、生まれた家族とのリアリティも台無しにしてしまった気がするなぁ…。
それに真剣交際ならば学校側にも申し開きが出来る余地があるが、
男女3人の同居となると、どんなに言葉を尽くしても弁解できないだろう。
どうやら玲苑の後ろから手を引く黒幕っぽい草樹(そうじゅ)。
柊聖の兄である彼が玲苑をスパイのように送り込み報告を聞く意味はなんでしょう。
私個人としては、もう物語に登場してほしくないぐらいですが。
この辺の話もちゃんと伏線として活かされればいいなぁ…。