《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

高校卒業までに、あなたが理想とする家族像を思い描きなさい という進路相談。

L・DK(13) (別冊フレンドコミックス)
渡辺 あゆ(わたなべ あゆ)
L♥DK(えるでぃーけー)
第13巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

葵と柊聖はラブ絶好調!! 想い出をひとつ重ねるたび、愛はスクスク成長中♪ 一方、亘と柊聖の姉・絵里も、ちょっとオ・ト・ナのラブ・同居の予感…? ドキドキが止まらない、ひとつ屋根の下、青春ラブストーリー!

簡潔完結感想文

  • 脇役たちに花を持たせることで作品の寿命を延ばす。脇役たちに圧倒的に華がないという大問題。
  • 交際の次は結婚を視野に入れ始める青い柊聖。将来の夢はお婿さん。その次は子供が好きだから…。
  • 色々な家族のかたちを見聞きすることで、理想の家族がより明確になる。胸キュンはいづこへ…?

DKというタイトルに、(L)理想は(D)どんな(K)家族?
という意味も入ってきた気がする後半戦開始の 13巻。

段々とテーマが恋人や恋愛から、その先にある家族関係に広がっていってますね。

柊聖(しゅうせい)にとって葵(あおい)が初めて好きだと言った人、何があっても守る人、
そして、将来的に家族になりたいと思う人でもあるらしい。

自身はその生い立ちから家族に不幸なイメージしか持たない柊聖。
自分がどんな家族を作りたいのか、そのために何が出来るのか、
自分の周辺には好例がないため暗中模索の不安の中で、
この気持ちを形あるものにしていきたいと願う柊聖だった…。


巻のメインは「#50 家庭訪問」ですね。

期末テストの結果を報告しに実家に帰ることになった葵。
柊聖は自分も葵の親に挨拶したいから同行すると申し出る。

柊聖は葵の父親とは再び仲良く喧嘩しているが、母親とは初対面。
葵の一回り以上離れた妹・苗(なえ)がいることもあって、
柊聖はこの家の永続的に続く絆に感心する。

その言葉を受けて葵の母は、絆を保持する苦労を語る。
努力と苦労を伴った上にある絆であり、家族だという。
人と暮らして、人を大事にするには想いだけでは足りない部分もあるらしい。

まぁ、柊聖にとっての具体的な苦労が「性交渉禁止」なのかは微妙な問題ですが…。


彼女の実家への訪問と行った際の「少女漫画あるある」といえば、
粗相されて(何かしらの液体が衣服や身体に付着)入浴のパターン。
それが本書でも発動しています。本当に7割ぐらいの確率で発動する あるあるだなぁ。

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影のMVPは葵の妹・苗。柊聖の意外な一面を引き出し、そして無理なく裸に剥いた(笑)

珍しいのは柊聖の服を汚したのが、哺乳瓶のミルクであること。
子供好きという設定の柊聖を活かしつつ、既定路線に誘導しているのが上手い。

そして柊聖の入浴と共に、赤ちゃんの入浴体験までさせている。
これが今後の布石だったりするのか?

柊聖と一緒に入る必要はないような気もするし、
全裸の柊聖を母娘そろって観賞することもないとは思うけど。 まぁサービスか。

ちなみに実家での入浴は、彼氏が父親の衣服を拝借して、
丈などが短い=父親よりスタイルが勝っているまでが様式美だが、本書ではそれがない。

風呂上りにはもう自分の服を再度 着用している。
洗濯や乾燥はどうなっているんだ⁉

そして『12巻』で姉のラブシーンを目撃した弟の不在に何の説明もないけど、どこに行ったんだ。
もしやショックで顔を合わせたくないのか?


にしても葵って15歳ぐらい離れている妹・苗に興味なさすぎですよね。
ここは柊聖の子供好きを前面に出す場面だとしても、だ。

離れて暮らしているし、もはや姪っ子と言ってもいいぐらいの年齢差なのに、
これまで彼女が妹にメロメロになっている様子や、妹の話題が出たことが一度もない。
多分、後付け設定なので作者の頭にも妹の存在が希薄だからだと思われるが…。

しかし葵父は葵と本当に性格が似てますよね。
意地っ張りなのに傷つきやすい、面倒くさいところが(笑)

葵もお酒が入ったら、柊聖が女性とスキンシップするたびに泣いて 部屋の隅にうずくまってそうだなぁ。

忘れてましたが、この巻でより絆が深まった(絆を保持しようと努めるようになった)ので、
葵からの呼び方が変更されます(実際に自然に呼ぶのはもうちょっとかかるが)。

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新しい関係性に、新しい呼称。もしや柊聖と紡ぐ物語は、結婚まで続いちゃう⁉

愛漫画としては、葵と柊聖の関係は多少の波はありつつも高値安定中。
なので、お話は横に広がっていきます。

その象徴が、柊聖の姉・絵里(えり)とアパートの下の階の住人で元 高校の先輩の三条(さんじょう)とのお話。

元彼がストーカーと化してしまい、その避難先として絵里が選んだのは三条の部屋。
ここで絵里が逃げ場所に柊聖の部屋を選ばないのは、その日が葵の誕生日だったため。
なぜ絵里が葵の誕生日という柊聖の都合を把握しているのかは謎ですが、それほど不自然ではない。

ただ、彼氏と(上半身)裸で抱き合っている中、その現場を実の弟に目撃される葵である、
闖入者の出現など、もう慣れっこなのではないか。

絵里と三条は一気に関係が進展するかと思いきや、
絵里の影に柊聖を見てとってしまう三条は、連鎖的に葵のことを思い出し、胸が痛む。

今回は絵里と三条が互いに一歩前に進むために同居するところまで。
L(ラブ)DKではなく、まだまだ ただのDK(同居)。

まぁ正直、手近なところで交際したなぁとしか思いませんね。

誰にも本気で向き合えない絵里の姿は、かつての柊聖の姿なのだろう。
柊聖が元カノ・桜月(さつき)に対して取ってしまったのと同じ態度を、絵里は止められない。
自分から誰かを心から思うことの出来ない心の欠損。
これは彼ら姉弟の家庭環境も影響しているのだろうか。

そういえば、こんな時にもう一人の兄弟である兄・草樹(そうじゅ)は避難先にならないんですかね。
独身な訳だし、家だってそこそこ広いだろうに。
まぁ、決して仲が良くなさそうですよね、草樹と絵里は。

不満としては、三条が男を見せる場面が、暴力と脅しなところですね。
三条に かつてグレていた設定があるにしても、ヤンキー漫画のような展開はウンザリ。


族話が続き、次巻に続くのは、クラスメイトの雄大(ゆうだい)と、
その弟で、かつて葵に告白してきた後輩くん。翔太(しょうた)の話。

何だか とってつけたような義兄弟設定ですね。
BLに読めなくもないような…(腐)

家族になろうよ」という共通のテーマはあるものの、
次巻に引っ張るようなお話ではない。

そもそも雄大も翔太も何の思い入れもないのだ。
脇役たちを掘り下げて「LDKワールド」を広げているようだが、その実、広がっていない。

もっと言えば絵里も三条もだが、一度使い捨てたキャラなのに、
描くことないから再活用して漫画を延命させているようにしか思えない。

主人公たちでしか読者の興味を持たせられないのは作者も痛感していると思うが。