《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

蝉が鳴いていた1話、体育祭の6話、そして9話は同じ年のゴールデンウィーク??

黒豹と16歳(3) (なかよしコミックス)
鳥海ペドロ(とりうみ ペドロ)
黒豹と16歳(くろひょうと16さい)
第03巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

超危険なケモノ男子・杏璃(あんり)をペットにしている強気な16歳・たいが。強面だけどやさしい黒鉄(くろがね)に恋をしたけど、失恋してしまう。傷心中のたいがに、杏璃はどんどんつけ込んできて、それさえも弄んで…!? 黒いケモノが喉を鳴らして獲物を追い詰める、危険すぎる第3巻!

簡潔完結感想文

  • 『3巻』で ようやく人の雄をペット飼育することに疑問を持つ人が登場。でも すぐに退場。
  • 『3巻』で4人組の内3人の素性が明らかに。これで杏璃だけが一般人、なんてことは絶対ない。
  • 黒鉄の気持ちが明らかになったのだから、これでペット飼育が正式に終了するんだよね??

ばれたいけど、選ばれようとしない面倒臭い男の脚本、の 3巻。

この作品、『1巻』1話では蝉が鳴いて花火が上がっていたのだけど、『3巻』冒頭は いきなりゴールデンウィークとなる。新年度を迎えて学年が上がった訳ではなくて、単純に時空が歪んでいる。雑誌掲載が5月号だから現実に合わせたのだろうけど、「なかよし」読者は細かいこと気にしないと思ってのことなのか。ヒロイン・たいが が、上手くいかなかった最初の高校生活から抜け出し、年度の途中から転校してくることに意味があるのかと思っていたが、作品的には普通に4月に入学したことに改変しているのだろうか。もしかして悪いのは作者だけじゃなくて、いい加減なことをする編集側も悪いのか…?

少女漫画ヒロインは顔とステータスで相手を選ぶ人の集まりだから、黒鉄の勝ち!?

内容も蛇行を繰り返しているというか、いつまで経っても本題が見えてこない。たいが だけじゃなく、たいが が好きな黒鉄(くろがね)も杏璃(あんり)の手の上で踊っているように見える。その杏璃は非常に こじらせているようで、自分は動かないけど相手に動いて欲しいらしい。けど それを望む たいが は黒鉄のことしか見ていないから、杏璃は彼らの仲が進展するように動き、その裏で寂しそうな表情を浮かべている。その様子が非常に面倒くさいし、未練がましい。体育祭など学校イベントや今回のようなセレブパーティーなど読者が喜びそうなシーンが続いたり、杏璃と黒鉄2人の魅力的な男性とスタイリッシュなセクハラを受ける場面の連続は読者を喜ばせる。けれど こうやって感想文を書く段になると、果たして本書は何が面白いのか分からなくなる。たいが と黒鉄の恋物語にしては杏璃が邪魔だし、杏璃に愛されていることで読者が満たされる、というには確信が足りない。杏璃と同様、のらりくらり しながらページだけが浪費されていく。何が本題なのか まだ見えてこない。

『3巻』の冒頭では杏璃をペット飼育していることが たいが の家族にバレそうになるが、なぜかペットの存在を知った人は黙って撤退していく。1話の中でドキドキしたものの、この話は作品にとって必要だったのかが分からない。完全なフィクションとして現実感を無視していたのに急にリアリティを持ち出した。それなのに結末は また非現実的なものになっていく。

いつまでもヒロイン・たいが が魅力的な4人組と仲良く毎日を過ごすことを目的としそうで怖い(読んだことのない『ヤマトナデシコ七変化』を念頭に)。一応、恋愛の軸は黒鉄と杏璃になっているが、結果的に どちらも選ばず、作者の好きな世界に好きなだけ耽溺する可能性も否定できない。ちょっとHなシーンがあれば それなりの数の読者が読み続けるのだろうけれど。
私以外の誰かのフェチズムに訴える作品で、刺さる人には刺さるけど、それ以外の人には よく分からない作品というのが今のところの評価です。


鉄に振られても諦めないことを決めた たいが は彼とメッセージを やりとりするほどの仲になる。

上述の通り、いきなり作中の時空が歪んでゴールデンウィークとなり たいが の母親の仕事が休みのため在宅で、いつも以上に緊張感を持たなければならない。ちなみに1度も登場していない父親も存在するらしい。母子家庭かと思った。
だが杏璃の存在がバレるのは母親ではなく、たいが の妹・こまき にだった。こまき はスポーツの特待生で全寮制の中学に通っていて、GWだから帰省してきた。たいが は最悪 彼氏として逃げ切ろうとしたのだが、杏璃がペットだと自己申告してしまう。そのピンチを救うため、たいが は妹の接待を始める。そこに例の4人組を招集。いつも通り、樹人(みきひと)と瀬那(せな)は どうしてきてくれるのか謎。

こまき は読者の気持ちを代弁する常識派の人間として描かれる。姉のことが大好きな こまき は、たいが の黒鉄への想いも見通して、読者の誰もが思っていた、好きな人がいるのに それ以外の男性と同居する意味不明さを指摘する。こまき に説得されても態度を曖昧にする たいが を見かねて、こまき は杏璃に直接 出ていくように訴える。杏璃も のらりくらり と蛇みたいな顔をするので、こまき は母親にバラす直接行動に出る。

たいが は慌てるが、杏璃は落ち着いている。実は たいが が慌てる意味はないけれど、これは彼女の深層心理が杏璃と離れたくないと訴えているのだろうか。杏璃が諦めたように落ち着いていることに たいが は腹を立て、母親に杏璃を庇うような発言をする。これもまた杏璃の思う壺の行動な気がする。たいが の必死な表情を見た こまき は急遽 話を誤魔化す。こうして杏璃の居場所は確保された。作品に常識が適用されるかと思ったのに、結局 よく分からない理屈で無理が通っただけだった…。

同居モノは秘密がバレかねないスリルも売りの一つ。本書の結論はバレたけど不問

鉄への気持ちを知りながらペットとしてセクハラを繰り返す杏璃に業腹の たいが は杏璃と絶縁。しかし彼への腹立ちで やけ食いをしていたら体型が丸くなり、元に戻すために男性たちの協力を得てダイエット回が始まる。

この回で杏璃は黒鉄に嫉妬を買いたい願望があることが垣間見える。だから彼の前でセクハラを繰り返す。杏璃は黒鉄が動かないことを確認している。ということは たいが に対して最初に真剣になったのは杏璃の方であるという論理も成立する。これは黒鉄の初動の失敗と言えるものだろう。杏璃は体型をイジって たいが をからかう。そんな2人を見て黒鉄は たいが が本気で起こるから杏璃が からかうのだと彼らの循環を見破る。本気で怒りをぶつけ、本気で守ろうとする たいが に杏璃は惹かれている、というのが黒鉄の見解。

意地を張って走り過ぎた たいが は足腰が立たなくなり、そこを杏璃に付け込まれる。ただで起きないのが たいが の信条で『2巻』の時とは逆で たいが が杏璃の身体に痕跡を残す。しかし それが黒鉄に2人の関係を邪推されることになるのだから自業自得の反抗と言える。


鉄は、たいが と杏璃の仲に遠慮して たいが からの誘いを断り続ける。それで たいが が落ち込むのも杏璃の計画か。そんな たいが を杏璃は また おもちゃにして黒鉄のコスメブランド・御條(ごじょう)の跡継ぎ お披露目パーティーに潜入させる。黒鉄が御曹司であることも初出しの情報だが、瀬那が人気声優だとか、樹人が病院の御曹司などの情報も初めて明かされる。たいが(と杏璃)以外は お仕事や招待客として このパーティーに参加している。ここまで女装したり伴走したり たいが のために行動してきた樹人が いきなり たいが が好きじゃないと言い出す。人格的にも家柄的にも仲間に相応しくないというのが樹人の結論のようだ。

黒鉄の容姿は一般受けしづらく、コスメに相応しくないから陰口も大きい。それを たいが は不器用に励まし、パーティーに迷惑も掛けるが、たいが が黒鉄に喝を入れる。たいが は彼を励ますついでに黒鉄は誰よりもカッコイイと自分の好意を滲ませる。黒鉄が落ち込んでいたのは公に人から陰口を叩かれているからではなく、たいが と杏璃の仲を気に掛けていたからだった。


分が黒鉄から嫌われていないと知りたいが は喜びと恥じらいを覚える。杏璃は自分から たいが の背中を押して恋のキューピッドになったのに、本当に彼らが近づき、自分の存在が軽視されると傷つく。面倒臭い性格だ。それでも面白い事態を楽しもうと黒鉄に本当のことを言うキノコを食べさせ、キャラ変させる。

いつもは しない甘い言葉を囁き、ボディタッチをする黒鉄。彼の本音は たいが の気持ちを嬉しく思っていることを知り たいが は舞い上がる。そんな2人が盛り上がると杏璃は邪魔に入る。自分で演出して自分でカットをかける よく分からない演出家である。

しかし杏璃は黒鉄の本音を引き出して、たいが を黒鉄に託す。やっぱり誰よりも本音を隠しているのは杏璃だろう。そして このパーティーで最後に明かされる新情報として杏璃の実家の話に触れられる。杏璃も本来は裏方ではなくパーティー参加者として招待される側なのだろう。