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少女漫画と小説の感想ブログです

黒豹のように恋をハントするのではなく、じわじわと毒を浸透させる杏璃くん★

黒豹と16歳(2) (なかよしコミックス)
鳥海ペドロ(とりうみ ペドロ)
黒豹と16歳(くろひょうと16さい)
第02巻評価:★★☆(5点)
 総合評価:★★☆(5点)
 

挑発に乗ってしまい、超キケンな獣男子・杏璃(あんり)をペットにすることになった、たいが16歳。杏璃に振り回されているところを助けてくれたことがきっかけで、杏璃の幼なじみ・黒鉄(くろがね)への恋に落ちる。男らしくて硬派な黒鉄の不器用なやさしさにキュン! そんなピュアな恋心を杏璃に気づかれてしまって……!? 黒い獣がその爪と牙で恋をもてあそぶ、衝撃の第2巻!

簡潔完結感想文

  • 自分がなるか 黒鉄がなるか、たいが にとってのヒーローを決めるのも脚本家・杏璃。
  • 借り物競争を使って、読者が見たい物を お見せする。4人全員のコスプレはサービス。
  • 一度 決めたことは貫き通す たいが は告白も早い。その結果も杏璃には お見通しで…?

つけられているペットはどちらか、の 2巻。

低年齢向けの「なかよし」連載だからか、それぞれのキャラクタを掘り下げる前に展開が重視されているように見えた。なんで男女が同居するのかとか読者を我に返さないように夢を見させ続けていく。しかし展開を重視するあまり体育祭では、樹人(みきひと)と瀬那(せな)が なぜ たいが のために動くのだろう、という動機が分からなかった。そんなに仲良くない個性の強い4人組の割に彼らは ずっと一緒にいる。個人回が始まるのは もう少し連載が軌道に乗ってからなのだろうけど、体育祭の行動は あまりにも作品の都合(もしくは読者サービス)でしかないように思えた。

通常、ダブルヒーロー体制に見える場合、一度 どちらかに失恋すると、そこから もう一方へのルートが開通するもの。しかし『2巻』のラストで本書のヒロイン・たいが は もう一度 同じ人への挑戦を宣言する。ここから どのように話を展開するのか、果たして作者は ちゃんと道筋を作っているのか、信用ならないところが多々ある…。

少女漫画ルールでは男性同士の友情が成立する場合、当て馬は作品外追放を免れる

『1巻』でヒーロー・杏璃(あんり)の外見が爬虫類っぽいと書いたけれど、『2巻』を読んで彼の行動も爬虫類っぽいと感じた。例えるなら蛇で、杏璃の たいが への行動は毒を少しずつ相手の体内に侵入させているように見える。知らない間に相手に絡みつき、もう離れない、そういう時間をかけて相手(たいが)をいたぶるような態度だと感じた。または実は たいが が蛇であり、蛇の生殺しのように、彼女を何度も何度も痛めつけても立ち上がるように仕向けている気がする。杏璃は絶対に負けない たいが が好きだから、彼女が窮地に立つのを放っておく。放っておいて たいが が強さを見せる時にエクスタシーを感じるのではないか。自分で いたぶってしまうと たいが から嫌われてしまうので、自分の手は汚さずに彼女が自爆もしくは他者の悪意に巻き込まれるのを待っている。そういう粘着質な遊びをしているところも やっぱり爬虫類っぽい雰囲気に繋がる。

これも『1巻』で言及した通り、たいが と杏璃は飼い主とペットという関係性に落ち着いているように見えるが、それは杏璃が仕組んだこと。たいが を飼い主という上位存在に置いていると見せかけて、彼女を操作しているのは杏璃の方だろう。そういう視点で読んでいくと全てが杏璃の手のひらの上で起きていることが良く分かる。転校で広がったように見える たいが の世界も実は杏璃が用意したもの。「絶対君主」のトップに立つ杏璃には そんな演出 お手の物。黒鉄(くろがね)への告白も、その結果も杏璃は分かっている。

たいが の上手くいったことも上手くいかなかったことも杏璃はコントロールすることで たいが の杏璃依存の度合いを高めていく。杏璃は すぐには動かないけれど狙った獲物は どれだけ時間をかけても確実に仕留める。前半は たいが にとって杏璃が不可欠な存在になるまでを描いており、黒鉄への気持ちは表層上の動きに過ぎない、とも考えられる。

そういう読み方をしていると たいが は台本通りに動かされている滑稽な存在に見えてしまう。たいが の意志が存在することを証明するには黒鉄への愛を貫き通すことだと思うのだけど…。


璃に誘導されるまま彼をペットとして飼い始めた たいが。しかし自分に黒鉄という想い人が出来たから杏璃とは距離を置こうと考える。安易に人間の雄を飼おうと思うから こういうことになるのだ。

敏感な杏璃は たいが の恋心を すぐに察知し、協力どころか黒鉄の前で自分たちの特殊な関係をアピールする。たいが の反応を楽しむのが杏璃の目的なのか、時に黒鉄と たいが を2人きりにさせたりペットの気まぐれな行動に たいが は振り回される。杏璃と黒鉄は4人組の中では一番親しい間柄。幼なじみと言える関係で黒鉄にとって人から恐れられる自分を怖がらなかった最初の人だと言うことが明かされる。

過激さを売りにする少女漫画らしい意味不明な展開で杏璃にコスプレさせられて胸元に歯形を付けられて騒動が起きる。このように遊ばれても
たいが は一度決めたことだからと杏璃の飼育放棄をしない。でも本当に黒鉄が好きで将来的に どうにかなりたいのなら、遅かれ早かれ一緒には いられない。そういう将来的な問題を無視して、特殊な設定は維持される。
たいが は自分の恋のためにも杏璃を放棄しても良いと思うのだけど、ペットを飼い切れなくて捨てるような状況は少女漫画ヒロインとして避けたいのか。でも巻き込まれただけの設定が不自然に続いていくようにしか見えない。


育祭回。たいが は黒鉄に、杏璃の奇抜な性格を知っても逃げないことを褒められて一層 黒鉄を意識した行動に出る。競技を終えた黒鉄に飲み物を差し入れてポイントを稼ごうとする あざとさ もあるが、協議中に暴走する4人組を一喝して気性の荒いところを見せてしまう。

今回の たいが のピンチは出場した借り物競走での「女友達」という お題。噂と奇行で友達が出来ない たいが の実情を知っている杏璃たち4人は女装をして彼女を助ける。上述の通り、杏璃と黒鉄はともかく他の2人は たいが のために動く理由が見当たらない。まだ仲良くなっていないことを示すためにも他2人は静観で良かったのではないか。

助けられて杏璃に借りを作ったら次は困らされるターン。たいが の恋心を利用して遊ぼうとする杏璃に「いえるわけないでしょ黒鉄のことが好きだなんて!!」と叫ぶ たいが の叫びは黒鉄に聞かれてしまう。今回、杏璃は場所的にも たいが を誘導しており、男子更衣室の窓の前で彼女が黒鉄への気持ちを叫ぶように仕向けた。しかし黒鉄は これを杏璃の悪戯だと判断し、告白は なかったことになる。


回の体育祭で たいが はクラスメイトの輪に馴染めるようになる。それもこれも目立つ杏璃を たいが が しつけていると思われているからだろう。たいが も自分の気の強さで杏璃をコントロールしていると思っていそうだが、実際は杏璃がピエロを演じているだけ。全ては杏璃のプロデュースの成果なのである。

クラスの打ち上げに参加し浮かれ気分で帰宅途中の たいが が質の悪いナンパに捕まる。その場面を見ても杏璃は動かず、代わりに黒鉄が動き出す。杏璃が動かないのも彼の演出だろう。黒鉄をヒーローにして たいが に接点を持たせてあげる。
一緒の帰り道、これまで以上に自然に話せるようになった たいが は、自分の気持ちを誤魔化さず勇気を出そうと最後に黒鉄に告白する。そこまでが杏璃は分かっていて その状況を楽しんでいるように見える。

杏璃の脚本だと今は黒鉄のターン。だから たいが を助けるヒーロー行動を任せる

白後、たいが は黒鉄を避け、黒鉄は心ここにあらず になる。そんな2人を見た杏璃は、たいが と2人きりの家で彼女が何があったかを話すように誘導する。そこで知ったのは黒鉄が たいが の気持ちを拒絶したこと。たいが は自分の想いが報われなかったことを杏璃に八つ当たりする。今回の杏璃の狙いは たいが の悲しみを全て吐き出させること。憎まれ役になってでも元気のない彼女を励ましたかったのだろう。

それで元気を取り戻した たいが は翌朝から また黒鉄にアタックすることを決意する。それなら杏璃の存在が邪魔では…、と また冒頭と同じ疑問が湧く。