
鳥海ペドロ(とりうみ ペドロ)
黒豹と16歳(くろひょうと16さい)
第04巻評価:★★(4点)
総合評価:★★☆(5点)
超危険なケモノ男子・杏璃をペットにしている強気な16歳・たいが。強面だけどやさしい黒鉄に恋をしたけど、失恋。杏璃はそれさえも、弄ぼうとしてきて…! 黒鉄の意外な本音を聞いて、最高潮に幸せな気持ちになるたいが。パーティーの後、イイ雰囲気になった二人は、ついに……!? そのころ杏璃は、一人たいがの家を出ていってしまう……。危険すぎる恋愛トライアングルが交差する、衝撃の4巻!
簡潔完結感想文
- ご主人様の恋愛から逃避したくてペット・杏璃が家出。キスしてないからカムバック。
- 黒鉄に彼女を譲る気配を見せながら一方で監禁して2人だけの時間を楽しむ変態ヒーロー。
- 杏璃が少しずつ少女漫画方程式でヒーローを決定する(×トラウマ)を匂わせ始める。
三者三様の姿勢が恋愛を停滞させる 4巻。
本書のヒロイン・たいが は一見、気が強くて好きな人には最短距離かつ何度も体当たりするような人間である。そんな彼女に お相手の黒鉄(くろがね)も好意を寄せ始めているように見えるけど、彼が気になるのは たいが の一番 身近にいる杏璃(あんり)。たいが は黒鉄を好きでいながら、彼の目の前で杏璃と ずっと交流している。これまでなら杏璃の手のひらで転がされて、感情を露わにしているだけだったけれども、『3巻』のラストで たいが は黒鉄が自分への想いを自重していたことを知る。その原因は杏璃の存在で、黒鉄は彼に遠慮し続けていた。これで たいが は、黒鉄が自分と杏璃が一緒にいることを快く思っていないことを知ったはず。…なのに杏璃との距離を取らない。
もはや ただのビッチ! 杏璃が自分可愛さにペットを辞めて家を出て行ったのに彼を捜すのも意味不明だった。黒鉄と両想い状態であることを自覚しても たいが は杏璃を飼い続けるのなら、もう何も言うことは無い。黒鉄と本当に恋人になってもペット設定が終わることがないのだろう。黒鉄が自分を好きでいながら女性と一緒にいる状況を自分なら どう思うか、そういうことが考えられないのが想像力に乏しい少女漫画ヒロイン様である。


私は出ていった杏璃を たいが が連れ戻した時点で もう彼女のことを理解できなくなった。一体、本書は どこが人気なのだろうか。顔が良ければ好きでもない男性にセクハラされても良い、という考えている女性たちが好んで読んでいるのだろうか。ちょっと過激なシーンを入れて売ろうとする2000年代前半の悪しき習慣が戻ってきたのだろうか。「なかよし」連載の作品で過激バージョンの電子版を売るとか最悪。読者が共感するような感情の推移を描くことが出来ない作者には丁度いいかもね、と嫌味を言いたくなる。
黒鉄は相変わらず義理堅く、杏璃の動きを待っているような状態。硬派な人という印象を受けるけど、これまでの黒鉄は それなりに遊んで、女性に囲まれて生きてきたのだろう。たいが の顔色、杏璃の様子、それらを窺ってからしか動かない。黒鉄がバシッと行動して、バシッと たいが と杏璃を切り離せば そこで話が終わるのだけど、それが出来ない。その優柔不断さを作品に利用されている。この奇妙な三角関係が継続してしまう一因は黒鉄にもある。こんなことで次期社長になれるのだろうか。
そして最も気持ち悪い動きをするのが杏璃。彼は たいが の両想いを見たくないからと家を出たのに、たいが が迎えに来て まだ付き合っていないと分かると家に戻る。杏璃の中では たいが の気持ちが自分に向くのを気長に待つつもりなのかもしれないが、その割に たいが の意識を自分に向けさせようと必死。今回の音楽室の監禁は気持ち悪すぎる。たいが と一緒にいるために「ペット」という恋愛感情の外の存在を利用しながら、たいが に よからぬ願望を持ち続けている。以前から言っているけれど、たいが の杏璃への気持ちが芽生えたとしても、それは彼による誘導。自分が居ないと物足りない、生きていけないと思わせるための調教を杏璃はしている。その効果が出たのが家出の呼び戻しなのだろう。
告白以外のあらゆることをする、それが杏璃の愛し方で、そして気持ち悪さだ。今のところ黒鉄以外の幸せを願えないのだけど、黒鉄の幸せは杏璃と一緒にいることなら、もう作品の未来は絶望しかない。
杏璃に食べさせられたキノコのせいで我を失った黒鉄は たいが にキスする寸前。しかし飼い犬に邪魔され我に返り2人は恥ずかしさのあまり そのまま別れる。たいが が家に帰ると杏璃が達筆な字で家を出ることを宣言していた。最終回のような展開である。
ペットのいなくなった これまで通りの日常を迎えるが、その一方で行方不明の杏璃が気になって仕方がない。だから たいが は雨の中、杏璃を捜すのだが、遭遇した彼は女性とデートを楽しんでいた。周囲の心配をよそに享楽的に過ごす杏璃に たいが は鉄拳制裁して彼を家に連れ帰る。杏璃は本気で出ていくわけないと言っているが、たいが が本気で捜さなかったら戻ってこないつもりだっただろう。でも たいが の本気を知って我慢が限界を迎え、自分と黒鉄を たいが に比べさせる。そして たいが が黒鉄とキスもしていないことを確認して、1話以来の野性的なキスを交わす。たいが は1話と同様に張り倒そうとするけれど、雨に濡れた杏璃が泣いているように見えて思い止まる。


この回は なぜ たいが が杏璃を連れ帰ろうとするのかが問題なのだけど、そこを追求しない。杏璃を連れ帰ったのに、杏璃が近づきすぎると怒る。『1巻』から延々と同じことが繰り返されている。
杏璃とは反対に、キノコを盛られたとはいえ黒鉄は たいが にキスしようとしたことを自分を謝罪する。絶交を覚悟していた黒鉄だけど、たいが はキスを拒まなかったことが自分の答えだと彼に想いがあることを伝える。そんな2人のイチャイチャを杏璃は面白くない。だから たいが を調教するために彼女を音楽室に閉じ込め、孤独と恐怖に襲われたところで窓から侵入して彼女との時間を強制的に過ごす。自作自演の時間の中で たいが が自分の過去をポツリポツリと話し出すと満たされる。たいが を怒らせながらもイチャイチャすることしか杏璃には出来ないのだろう。たいが の隣が自分の居場所と考える杏璃は、たいが の自由を奪って自分の隣にいてもらう。そうして束縛して彼女に頼られて喜ぶ気持ちの悪い男である。もし杏璃と一緒になる人生を選んだら たいが は自由の全てを奪われるだろう。それが幸せとは思えない。
たいが は『3巻』のキノコ事件で黒鉄が何を嫌がるか分かったと思うのだけど、それでも彼の前で杏璃とイチャつき続ける。そんな たいが の態度に業腹なのは、これまでも たいが に厳しかった樹人(みきひと)。しかし負けん気の強い たいが は嫌われている人にもアタックし続けることで分かり合うことを望む。
なので杏璃の助力してもらって樹人と2人きりで お出掛けする。この2人の様子を尾行するのは女装した杏璃と その彼氏という設定の黒鉄。杏璃は自分の好きな、負けん気の強い頑張っている たいが が見られれば それでいいのだろう。
たいが に しつこく付きまとわれて樹人は我慢の限界を迎え、つい自分のトラウマを滲ませた発言をしてしまう。樹人にトラウマがあることを察知するが、たいが は敢えて無視することで彼の名誉を守る。そして樹人を自分のペースに巻き込み共同作業することで仲が深まる。一緒に作業する文化祭回みたいな内容だ。
そして樹人は そのまま杏璃と出会った高校入学式の日を思い出し語り出す。樹人が たいが を遠ざけようとしたのは仲良しグループに入ろうとする異分子を排除したかったからという友情に厚い性格が裏にあることを たいが は見抜く。こうして樹人は たいが への嫌な態度を撤回する。さすがヒロイン様である。
その裏の、たいが の与り知らないところで杏璃が どうやら名の知れた存在であることが匂わされる。
冒頭以来、黒鉄との動きがないからか、気まぐれな杏璃が たいが をデートに誘う発言に黒鉄が反応し、男性2人が たいが の前に出て同時にデートに誘う。たいが は優柔不断な反応をせず黒鉄一択。実は杏璃は本気で たいが に一緒にいて欲しかったようだけど、その気持ちはデートに浮かれる たいが には届かない。
たいが は黒鉄が犬を飼っていることから動物好きだと推察して2人で動物園に行く。楽しく、そして恋人同士のような雰囲気が流れるが、たいが から杏璃の異変と8日という日付を聞いた黒鉄は たいが を連れて駆け出す。この8日は京都で杏璃を育ててくれた彼の祖母の命日。杏璃が居たのは生前の祖母が見たかった風景が見られる場所(なぜ黒鉄は それをピンポイントで分かるのか…?)。
杏璃は京都で祖母に預けられ、途中で東京に呼び戻され、祖母と あまり会えないまま永遠の別れをしたことが心残りだった。自分の存在を希薄に感じていた時に たいが に出会った。全然 平気そうにしていたようにしか見えないけれど、1話の杏璃は傷ついており、その傷を忘れさせてくれたのが たいが だった。だから杏璃は たいが に執着する。
そのことを思い出した杏璃は黒鉄に断って、デートの後半戦を再び男性2人で申し込む。
