
鳥海ペドロ(とりうみ ペドロ)
黒豹と16歳(くろひょうと16さい)
第05巻評価:★★☆(5点)
総合評価:★★☆(5点)
超危険なケモノ男子・杏璃をペットにしている強気な16歳・たいが。強面だけどやさしい黒鉄に恋をしたけど、失恋。杏璃はそれさえも、弄んでくるの! 黒鉄との念願のデートだったのに、途中から杏璃と合流することに。なぜか杏璃は物憂げで…? 黒鉄との恋に集中したいのに、杏璃のことが気にかかってしまう…。危険すぎる恋愛トライアングルが激動! 黒鉄との恋は大進展!? 危険すぎる5巻!
簡潔完結感想文
- 杏璃が執着する限り物語は終わらない。つまり絶対に負けない戦いということ。
- 他の男の前で、物陰に隠れたヒーローがヒロインに悪戯する作品は大抵つまらない。
- いよいよ黒鉄と両想いになりそうなので、その前にアクセサリという愛の象徴で束縛。
負けヒーローが しつこすぎる、の 5巻。
恋模様は前進しているようでしていない。というか今 ヒロインの たいが が夢中になっている相手・黒鉄(くろがね)は収録4話中で1話しか活躍せず、あとは「負け確」の杏璃(あんり)の悪あがきが描かれている。
杏璃は たいが の心の中に少しでも自分の存在があるなら諦めないみたいで、負け戦をする勇気は無いけど、負ける気は無いと言う厄介な存在に成り果てている。デート後半で目の前で黒鉄が選ばれるのを見たくないから たいが に決めさせなかったり、ズルいことばかり。
そして なかなか進まない恋愛を補完するかのように杏璃からのセクハラが続く。物陰に隠れて黒鉄の前で たいが を愛撫したり(そうとしか言えない行為)、黒鉄との両想いの前に たいが の身体に自分が贈ったものを埋め込む。もし今度 たいが が黒鉄に会ったら、好きじゃない男から贈られた物を身に着けたまま黒鉄の前に出ると言うこと。ここまでもデリカシーのない行動をし続けてきた たいが だけど、いよいよ限界を超えそう。執着が強すぎる男に、鈍感すぎる女、そんな異常者の前に常識的にしか動かない黒鉄は後手に回っている。


またも杏璃の口車に乗ってピアスホールを即断で開けてしまう たいが。その2人の好意は完全に性行為にしか見えず、その前の足舐めといい、たいが は杏璃と快楽に溺れている。誘導に乗って、セクハラが気持ちよくなり始めてしまったら、黒鉄は心を満たしてくれる存在で杏璃は身体を満たしてくれる存在になる。しつこいから杏璃が絶対に負けないヒーローだったとしたら、たいが は快楽に導かれたようにも映ってしまう。連載を継続させるために結果を出さず、杏璃の執着を描くことで内容を充実させているが、その分 純粋性が失われている気がする。過激さで売れているのだから それが正解なのだろうけど、私の好きな恋愛の切り取りかたではない。
急に たいが の誕生日が設定されて、時空が歪んでいた『3巻』のゴールデンウィークでは「黒豹と15歳」という、一時的にタイトルと食い違う設定になったことが明らかになった。ラストで出てきた新キャラのこともあって、作品は再び時空を歪ませる。作中の季節を掲載月に合わせた意図も よく分からないし、作者には自分の描きたいものがないのだろうか。
男性たちが互いにライバルであることを確認してから、たいが が相手を選ぶデート後半が始まる。杏璃は本気を出さないのに負けるのは嫌で、たいが が黒鉄を選ぶところを見たくない。だから たいが に自由を許さず、彼女に3人での食事を選ばせる。まるで駄々っ子だ。
たいが は杏璃に振り回されている自分に気づき、彼に主従関係を教えようと また上から目線の態度になる。このターンは何度目か、という感じで話が進んでいる気がしない。杏璃は少しずつ たいが の思考に自分が入り込んでいることを喜ぶ。そしてセクハラをして、黒鉄の前で恥ずかしがる たいが を辱める。スリルを演出する少女漫画は時々アダルトな映像作品と同じことをする。足を舐めてくる杏璃も、足を舐めさせる たいが も どっちも無い。快楽に堕ちていくヒロインなんて誰が読みたいんだよ。
杏璃に一つだけ質問に正直に答えると言われて たいが は悩む。そうやって一層 思考を支配されていく。質問を決めかねて、たいが は自分で杏璃の素性に繋がるものを探索する。クローゼット内の杏璃コーナーを勝手に漁って、彼の通帳を手に入れる。そこに記載されていた金額は4500万円以上。定期的に お金が振り込まれているが、杏璃は1円も使っていないことが分かる。この入金の答えは最後まで読むと読者は何となく想像できるけど、明確な答えは描かれていない。この作者に伏線を張るとか回収するという高度なテクニックが駆使できない。答えを期待する方が無駄だと長編3作目の付き合いとなると一定の諦念が湧く。
謎が深まる杏璃のことを知りたくて たいが は彼と一緒に行動する。その時は黒鉄は副産物でしかない。なぜか男装する たいが。あの圧倒的なボリュームの髪が どうやったら こんなに短くなるのか…。ファンタジーすぎる。
杏璃は たいが が無理言って同行していることに付け込み、男装の麗人にナンパを強要する。杏璃にとって たいが の誘導など造作もない。同性へのナンパは失敗するけれど、たいが はどこに行っても目立つメンズたちと遊ぶ特権的な立場にいる。
ちなみにプール回だけど真冬らしい。『3巻』で掲載月に合わせて季節を変えていたけど、それ以降も同じらしい。もうすぐ進級かと思われたけど、また季節がリセットされるようだ。
たいが は杏璃と既知の女性たちから情報を集めるが どの話も噂程度で しかも内容が一定ではない。ますます杏璃が分からなくなる たいが だったが、自分の目の前にいる彼を信じるとヒロインらしいことを言い出す。ついでに自分が通帳を盗み見たことも自白し罪には問われないのもズルい。
自分のことを追求しない たいが に杏璃は好きだと言葉を漏らす。だが すぐに そんな告白なかったかのようにピエロを演じて、今までのように たいが が黒鉄と接近できるように世話を焼く。杏璃は たいが を自分で手に入らない存在でいて欲しいようだ。それを病院の息子・樹人(みきひと)は医者のように自己逃避であり、それだけ たいが に溺れていると分析する。
こうして たいが は頭の中が杏璃から黒鉄に ようやく切り替わる。黒鉄の顔見知りに手を掴まれて彼の肉体を指で確認していく逆セクハラが発生する。2人きりで行動した後、冒頭で自分の意志を表明してから随分 経っているが黒鉄が たいが に告白する。ウィッグを取り、たいが を女性に戻してから告白しているのが芸が細かい。絵的にも ちゃんと男女にしたかったのだろう。


念願の両想い状態になったことで たいが は浮かれる。浮かれすぎて杏璃の孤独が募っていることに気づかないし、黒鉄への返事も忘れる。
告白されてギクシャクする黒鉄との関係は、たいが が告白した後の『3巻』の再訪を嘘みているようだ。浮ついた状態の たいが の地に足をつかせるために杏璃は母親の前に姿を現したり生活に緊張感を与えているようにも見える。
そして恋が上手くいかない臆病になりそうな たいが にピアスを贈る。ピアスを付けたことがない たいが は杏璃に穴を空けてもらう。それは杏璃の独占欲とか束縛、自分が黒鉄より早く たいが の身体に痕を残したという意味にも見える。このシーンが完全に性行為を念頭にして描かれているのも そのせいだろう。
ちなみに杏璃が贈ったのはペリドットが使われたピアス。8月31日生まれの たいが の誕生石らしい。ということは『1巻』1話の出会いは9月1日から学校が始まるとすれば、その前日は たいが の誕生日だったことになる。完全に後付けの誕生日設定だから特に意味はないのだろうけど。
ピアスを身に着けた たいが は自分が一人じゃないと思えるが、それはつまり黒鉄といても杏璃の存在を感じるということだろう。この状態で黒鉄と交際するのだろうか。
