《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

2人の描く未来予想図。夫婦になっても感謝する。倦怠期も乗り越える。子供にキスをする⁉

L・DK(15) (別冊フレンドコミックス)
渡辺 あゆ(わたなべ あゆ)
L♥DK(えるでぃーけー)
第15巻評価:★★☆(5点)
  総合評価:★★☆(5点)
 

葵の怒りが、ついに爆発!! 般若の顔で柊聖に牙をむいた!! 解決策は、柊聖の一日○○○○で!? いろいろ乗り越え愛を育み、そして夏――。なんとなく先を考えだした葵だけど……。ドキドキが止まらない、ひとつ屋根の下、青春ラブストーリー。

簡潔完結感想文

  • ゲームデータの消去。それは柊聖を操る絶対遵守の力。西森葵が命じる。今日一日、家事当番!
  • 少女漫画の主人公はいつの間にか犬になり、そして聖母になる。彼氏を庇護する存在へ昇格する。
  • 葵との性交渉が禁止され、ずっとムラムラしている柊聖はつい男の子を襲ってしまい…(語弊あり)

婚感が増し増しの 15巻。子育てにも悩んでるし(笑)

この巻で、ようやく夏休みも終わります。
『13巻』の中盤で突入してから、2.5冊分の長い夏休みでしたね。
『13巻』で「受験生の自覚うんぬんは一旦お休み」して以降、ずーーーっとお休み状態の主人公・葵(あおい)
自覚はいつ芽生えるのでしょうか…。
葵の第1志望は短大で、模試の判定もBだったらしい。
恋愛以外は身の丈に合ったランクを狙うから危機感が薄いのでしょうか。

夏休みの良いところは、思いっきり2人で過ごせることですね。
増えすぎた学校の登場人物たちと絡むことも無いし、
無防備にベランダで2人で洗濯物を干しても、街でデートしてても、
同居を知らない学校の人々の視線など一切気にしなくていい。

連載初期の同居生活感が出て好ましく思う人も多いのではないでしょうか。
部屋から出なくていいので、シットコムとしての面白さも復活。
まぁ最早、恋人の同居というよりも、夫婦の生活といった感じですが…。
今回は、交際が長くなっても言われたい言葉で「胸キュン見本市」開催です。


居開始から約1年、2人での生活もリズムが出来上がっていた。

しかし、それによる問題点が2つ。
1つは、役割分担が明確になっていること。

同じ高校生という身分でありながら、
金銭的に余裕がない柊聖(しゅうせい)は夏休み中はずっとバイトをしており、
葵はその彼を支える専業主婦状態になっている。

そのことに葵自身が不満に思っている訳ではないが、
ある日、柊聖にやり込んだゲームデータを消されたことで(これを機に受験に集中しろ)、
葵は柊聖に絶対服従の権利を獲得する。

手始めに葵は、朝の家事を柊聖に命じてみることにしてみると…。

葵は柊聖が何でも意のままに動くことに快感を覚えたみたいですが、
柊聖の方は、毎日、家事をやってくれる葵への感謝を覚えたみたい。
そして、これまでの葵の内助の功を思い知ったようですね。

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私たち入れ替わってみた。15年後の母の日の出来事みたいだなぁ。その時は子供も一緒かな?

この境地は、最早、高校生のものではなく、
本当に結婚した後、当たり前だった生活が崩壊した時に気づかされるものですね。
(その時は、妻の家事ボイコットだったり、浮気の罪滅ぼしだったり、
 こんなに微笑ましくないでしょうけど)


しかし「まちのポリスさまっ!」ネタしつこいな。
これは読者に受けたと思って作者がサービスとしてやってるのか、
「うたぷり」っぽいものを作者が描きたいだけなのか、どちらでしょう。
登場人物を使い捨てにし続けてきた作者が固執しているので、後者っぽい気もする。

そして胸キュン場面のために、
壁ドンの応用形「壁ギュ」なんて開発していて驚いた。

2014年の流行語トップ10入りを果たした壁ドン。
映画も公開されて、壁ドンフィーバーに沸いている最中でのダメ押しだったのでしょうか。
壁ドンは一般化されましたが、「壁ギュ」は壮大にスベった感じがしますね…。


居生活長期化の2つ目の問題点は、倦怠期。

新婚生活を越えて一気に倦怠期のような状態の2人。
というのも最近、柊聖からスキンシップやキスを求めることが少なくなってきたのだ。

まだ性行為をしていないのに既にレス状態に陥ったことを大いに悩む葵。
そこで、女子会で得た知識を用いて、柊聖を誘惑しようとするのだが…。

少女漫画の中盤における あるあるの1つ、彼氏に飽きられたと思い、彼女が孤軍奮闘する話ですね。
話の展開も、彼女が救われる結末も既視感たっぷり。

この辺は、交際から性行為までの間が長いカップルならではの問題です。

女性側が無自覚に彼氏を我慢を強いていたというのも、女性読者には嬉しい胸キュン場面。
これは夏休みで、暑くて短パンを愛用する葵の足の露出が多いというのも伏線になっていて上手い。

いつもクールな仮面を被って本心を隠している柊聖に、こんな葛藤があるなんて、
というのもニヤニヤしちゃう場面じゃないでしょうか。

柊聖の自制の効力が、葵の父親の標語だけじゃなく、
家族を作るという大問題にまで発展していることが本書ならではですね。

ただ、女性主人公が犬になるって「ワン」と恋人にじゃれるという内容、
先日読んだ『オオカミ少女と黒王子』でも読んだなぁ。
どちらも2014年の発売だし。交際から性交渉までが長いのも似てるし。
まぁ、あるある、なんですかねぇ。
これを素晴らしき様式美と捉えるか、発想が貧困な作者たちと捉えるかは難しいところ。
この後の展開、最終盤では彼女の母性・強さが爆発していくところなんかも、似ちゃってるんだよなぁ…。


がどんどん無自覚に時に小悪魔に、時に聖母になっていくのと反対に、
女性の打算的なところを背負わされてしまったのが、親友・萌(もえ)。
ただでさえ親友ポジションの割に出番が少ないのに、嫌な子の役を与えられて不憫。

『8巻』で彼氏が出来たと報告して以降、
ずっと葵に写真の一枚も見せなかった、エア彼氏疑惑すらあった彼氏が初登場。

学校一のイケメンと交際する葵は「べつに外見で すきになったわけじゃない」(『14巻』)、
と言っているが、外見はやはり大事な一要素。
ましてや、彼氏を人に紹介する時は値踏みされること必至。

そんなこともあり お調子者の彼氏と葵・柊聖が出会うこと避けていた萌の、
気苦労の多い一日の悲喜劇が描かれる。

聖母となった葵では決して描けない引け目やコンプレックスなどは萌に託されました。
別れなかったのが奇跡のようですね。
彼氏が寛大だ。


終話は、新婚生活を飛び越えて、子供を持つ苦労のお話。
やはり全体的に家族関係にシフトしていますね。

柊聖のバイト先の店長の子供・大輝(だいき)を1日預かることで起こる騒動を描いた一編。

恵まれた環境で育ったからか生意気な大輝。
だが、自分がどれだけ恵まれているか自覚していない大輝の姿に、
複雑な家庭環境で育った柊聖は、
他の大人と同じような説教をしてしまい…。

空前絶後の子供好きで、子供に好かれてきた男・柊聖が初めて子供と軋轢が生まれる。
そんな時、柊聖に助言をしてくれるのは聖母となった葵で…。

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調べに対して久我山容疑者はキスをした事実は認めたものの、あれは激励のスキンシップだったと供述しています。

作者としてはネタとして描いてるんでしょうから、
ツッコむのは野暮なのかもしれませんが、
子供に いきなりキスするのって、児童(性的)虐待なんじゃ。
トラウマレベルですよ、これは。

兄弟間とは訳が違うことを柊聖は気づかないのかしら。
柊聖の将来を踏まえてこの話を描いているなら、尚更、
柊聖なりの解決法で物語を閉じて欲しかった。

しかし、その前の倦怠期の回で葵とキスしていて良かったですね。
もしキスしてなかったら、↑ のキスシーンが唯一のキスでしたから(苦笑)

子供たちの年齢が不明だが、大家さんの息子と遊ばせればいいのに。
そういう人と人の交流がないのが、本当に本書の残念なところ。

彼が家に帰って「今日、久我山にキスされた」と親に言ったら柊聖は一巻の終わり、の15巻の終わりです。