青木 琴美(あおき ことみ)
僕は妹に恋をする(ぼくはいもうとにこいをする)
第07巻評価:★☆(3点)
総合評価:★★(4点)
「妹だから帰れない」という久々の再開後の頼の言葉。せつなくなってしまった郁は、矢野とともに頼の元カノ・友華もいる頼の学校に変装して潜入する。ところが、友華と遭遇してしまい大ピンチ!しかし、なんとか頼に会えた郁は一緒に男子寮で…!?
簡潔完結感想文
- 郁にキスしたことを報告にくる矢野。そのお詫びにご本人さん登場。ホテルの一夜。
- 頼と別れがたい郁。制服で潜入捜査。だが飛んで火にいる夏の虫。そして敵前逃亡。
- 欲望に任せた頼、感情的になった矢野、2人のブレーンの頭に血が上って郁 大ピンチ!
犬も人も 衣装を変えることで目新しさを演出するコスプレ プレイ の7巻。
そんな演出をしなければならないのは、要するにマンネリだからです。
高校生同士の遠距離恋愛で、会えるのは週末の限られた時間にも関わらず、
中間地点などでは会おうとせず、
新幹線を利用しても片道3時間かかる どちらかの居住地周辺でしか会わない変てこな物語。
物語的にも早々に結ばれた高校生カップルには、その先のイベントもなく、物語は停滞を迎えている。
文字通り、互いの居住地へ右往左往するだけの話が繰り返されます。
頼と郁が会う回数が重なる度、
2人に一層 募る愛情と相反する寂しさを心理描写としては描きたいのだろう。
頼と郁が時間を縫って何度も会うのも、その話が読みたいメイン読者層の要望に応えているのだろうが、
こうも頻繁に会っていると切実さが失われる。
作中の時間経過が不明だが、体感的には結局 毎週末会っているような錯覚に陥る。
(調べてみると、2か月間で4回でした。)
マンネリ感を打破するためなのか、中盤で多用されるのはコスプレ。
『6巻』では寮内イベントで医者のコスプレをしていた頼(より)に続いて、
今巻では、恋人の郁(いく)と、その同伴者・矢野(やの)くんが頼の学校の制服コスプレをして一騒動起こす。
問題点はたくさんあって、どこから制服を調達してきたのか、とか、
頼も矢野も、頼と郁の関係を知る破壊神・友華(ともか)がいるのに、
郁と友華の対面を回避しようとしないなど、決して頭の良い物語ではなくなっていく本書。
展開的にも、より過剰な刺激を求めるからか、破壊的になっていて、
どんどんとカタストロフの足音が大きく聞こえてくるようだ。
そんな物語の破壊衝動を感じたのか、
普段は温厚な矢野くんが、友華の一言で暴力に走る。
どんどんと頼たちがドツボにはまっていく感じがありますね。
一丁前にタバコ吸いながら男の友情を語る気取った感じを自己演出しながら、
一方では、まだまだ どうしようもなく子供の彼ら。
冷静に目的を果たしつつあるのは、友華だけだろう。
友華がいるにもかかわらず欲情して頭の回転が鈍った頼、
好きな子の悪口を言われただけで頭に血が上った矢野、
そしてこの学校に友華がいることも知らなかった郁。
郁を守る騎士たちは順次 排除され、残ったのは愛されるバカただ一人。
頼によく似た登場人物たち以外に描ける、作者の中の男性の顔は悪役顔。
そんな顔をした男子生徒たちが郁を取り囲む…。
『7巻』で必要なお話って、この部分だけですよね。
いや、これも読者の興味を引くための作為的な事件だ。
そして残りは再放送か、side-B の視点変更でページを埋めている。
頼と郁が兄妹である必要性も友華の脅迫だけ。
あとは遠距離恋愛カップルのお話だ。
『4巻』に続いて、郁の飼い犬・犬ヨリ視点の話が挿入されたり、
作者の露骨な引き延ばし工作も見え隠れする。
頼と郁が「2回目」が なかなか出来ないという展開にも飽きました。
特に今回は2人の障害になる物はなにもなく、
ただ単に頼が緊張して不能になっただけとも取れる。
頼は結ばれるという宿願を果たしたことでスイッチが切れたのかもしれませんね。
一刻も早く結ばれたかったのは頼の中の遺伝子の問題。
だからそれが果たされるまでは妹を心理的に巧みに誘導したり、万難を排したりと全精力を傾けていたが、
一度スイッチの切れた頼は、割とポンコツに成り果てている。
こんなサービスシーンでもマンネリ感を打破しています。
表紙でも頼がタバコっぽい物を咥えてますが、
出版社側としては問題がないのでしょうか。
私は前半の やや過激な性描写よりも、タバコシーンの削除を求めたいぐらいだ。