八田 鮎子(はった あゆこ)
オオカミ少女と黒王子(おおかみしょうじょとくろおうじ)
第7巻評価:★★★(6点)
総合評価:★★★(6点)
エリカの従妹・レナの家庭教師をすることになってしまった佐田くん。教えるレナは生意気盛りの中学三年生。何かにつけては反抗的な態度をとるレナに対して佐田くんのドS魂に火がついた!? 佐田くんの授業(調教!?)が進むうちにレナも徐々に心を開いていくようになりました。そして参考書を買うために行った書店でのある事がきっかけでレナは佐田くんのことが好きになってしまいます。まさかの展開にエリカもタジタジ!! 佐田くんとエリカの選んだ行動とは…!?
【収録作品】オオカミ少女と黒王子 特別編/オオカミ少女と黒王子 番外編~佐田くんの休日~
簡潔完結感想文
- 文化祭。同級生の日下部が恋をしていることが判明。文化祭当日に告白を決意するが…。
- エリカの2歳年下の いとこ・レナの受験勉強を指導することになった恭也 with エリカ。
- 当初は恭也を毛嫌いしていたレナが恭也に好意を抱いて、女たちの正々堂々とした戦い。
四六時中 一緒にいる主人公カップルに なぜだかイラつく 7巻。
ちょっとだけ確執のあった恭也(きょうや)母親との和解、
さり気なく でも 確実に自分を守ってくれている私だけの王子様、
などなど『6巻』で一層 仲を深めた2人。
そうして出会いから1年以上経って、今やニコイチが当たり前の2人。
が、なぜだかイラつくんです。これまでにないぐらい。
文化祭の実行委員にクジで決まった恭也に、クジで外れたはずのエリカが当たった生徒と交代してもらったからでしょうか。
彼氏と同じ実行委員になりたいからクジの結果を変えてもらう彼女ってウザいですよね。
それともエリカの いとこの受験勉強を そこそこ賢い恭也が家庭教師として見る際に、エリカが付いてきたからでしょうか。
彼氏と一緒にいたいからって たいして勉強もせずに居座ったり居眠りするのってウザいですね。
はい、答えは出ましたね。
エリカがウザいんです。
幸福なエリカなど屁の つっぱりにも ならんのですよ。
ちょっと短期連載から長期連載にシフトした弊害が出てきてますよね。
何も起きない。そして当初のキャラの忘却。
全16巻の中で、序盤にイベントやキャラが波乱を巻き起こして、中盤は凪(なぎ)の状態が続きます。
もしかしたら「少女漫画分析」で数字を出したように、
物語全体の40%で告白して、50%でキスをして、80%で性行為に及ぶという平均的な展開の方が。
着実に右肩上がりに幸福度が上昇して読者の満足度も高いのでしょうか。
文化祭。
冒頭は久々の学校行事、文化祭回です。
年に一度のお祭りですが何だか あっさりした味付けです。
ちなみにエリカたちの学校では2年生から出しものがやれるシステムらしい(1年生はお客さん側)。
去年スルーした言い訳にしか聞こえませんね。
そして進学・進路で悩む3年生にはいい迷惑ですね…。
暇な1年が 俺たちを もてなせっつーの、と来年、3年生になった恭也はボヤいているでしょう。
その準備期間で『3巻』で登場した日下部くん再登場・再利用。
かつて優しくしてくれたエリカに告白した彼だが、何でも今はクラスメイトの女性に片想い中。
珍しく恭也が日下部を叱咤激励して、文化祭当日での告白の方向へ話をもっていく…。
分かりやすいサブキャラのサブストーリー回ですね。
でも上述の通り、幸福が高止まりしていて何の波乱も起こさなくなった役に立たない主人公カップルに代わって、
恋愛というトキメキを物語に もたらしてくれています。
片想いの女性の元カレの存在を実際に見て尻込みしてしまう日下部。
そんな彼に恭也は一段と厳しい言葉で彼を焚きつける。
まぁ、『5巻』でエリカの誕生日に「好き」という2文字が言えなかった人が偉そうにしてるわ(笑)
「こんな負け犬なんかよりは」
「相手が恐くてしっぽ巻いて逃げ出したんだろ? 負け犬以外の何者でもないじゃねえか」
「なら一生そこにいればいい ピッタリじゃねーか 負け犬」
これらの言葉はエリカに「好き」と言うと決めたのに言えなくて、
レストランから逃げ出したご自分に向かっていったんですね、分かります。
自分の経験をもとにした ご高説なのかもしれません。
焚きつけて一番 美味しいところを さらっていくのが恭也という人です。
もしかしたら負け犬も、一種の犬だから犬好きの恭也としては見捨てられなかったのかも。
続いても第三者の恋。
といっても、今回はエリカにとって穏やかじゃない恋になりました。
2歳年下の中学3年生の いとこ・レナ。
受験勉強に身が入らない彼女の勉強を そこそこ勉強が出来る恭也が見てやることに。
大人びたいレナと、上から目線の恭也は 当初 水と油だったが、
一緒に過ごす内に恭也の中には優しさがあることに気づいたレナ。
そして いつしか恭也に惹かれていき…。
まず、長い!冗長!
『4巻』『5巻』と巻をまたいだ神谷の時ももそうだったけど、初登場の人を大事にし過ぎですよね。
後々大事にする訳でもないのに。
神谷回よりはマシですが、明らかに恋の決着が見えている物語なので、読者こそ作品に身が入りません。
そういえば恭也は実は頼みごとを断れないタイプなのかもしれませんね。
もしくは篠原家(エリカの苗字)の遺伝子に弱いのかもしれない。
上目遣いに女性にお願いされたら、結構な確率で言うことを聞いている気がする(チョロい)。
ここは血縁関係的にレナにも一発逆転のチャンスはあるかも。
結末まで分かり切っているお話ですが、
他の登場人物の純愛(たとえ片想いであっても)を見てると、
本当にエリカは情緒の欠片もない恋愛をしてるなと思い知らされます。
今更ですが、人を好きになる過程がすっ飛ばされてるんですよね。
恭也というウソ彼氏を仕立て、一緒にいたから情が移ったとしか読めない。
あれっ、何か気になる。とか、あの人と会話が出来たという些細な、そして積み重ねていく喜びがない。
またレナの片想いが判明してからも彼女を邪険に扱わないエリカも情に厚い・お人好しではあると思うのですが。
ただ親戚として彼女としての立ち回りに、あんまり頭がよくないところが出てしまっている。
典型的な少女漫画の主人公のウジウジした感じではないのですが、右往左往してウロウロしています。
レナの純愛に、彼女面(づら)してウロチョロしてるのがウザいんですよね…(笑)
正直あんまり気になりませんが、この恋の結末は次巻。
「オオカミ少女と黒王子 特別編」…
王子がまだ王族だった頃のお話。
自分の外見とステイタスを求めて近寄ってくる女性をバッサバッサと斬り捨てるサムライ王子。
でもエリカも自分に恭也という彼氏という存在がいるという事実に満足している部分も少なくないので、
これらの女性とエリカの違いがあんまり分かりません。
これは本編でも致命的な欠陥ですよね。
恭也側の視点のこの物語でも、肝心な惹かれた部分をすっ飛ばして交際しているから心情が解明できません。
『1巻』の悪役・木村くんが悪の道に堕ちたのは、この元カノが原因ですかね。
そして木村くんは そこそこモテる。
近寄ってくる女性に黒王子部分を見せたら学校中の噂になると思うけど、そんな勇気のある者(もしくはバカ者)は少数なんですかね。
「オオカミ少女と黒王子 番外編~佐田くんの休日~」…
省エネ人間・恭也の一日。
恭也の好きなことって描かれませんね。
映画鑑賞は趣味みたいですが、好きな科目とか好きな料理とか進路とか作品内では何も描かれていない。
元・黒王子以外の特徴がない無味無臭の人です。
付き合ってみたら つまんない男。
だから、後半そんなに面白くないのかな…。