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少女漫画と小説の感想ブログです

君にとどめ、を刺しそうな白球から守ったのは 俺じゃなくてあいつ。

君に届け 4 (マーガレットコミックス)
椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第4巻評価:★★★★(8点)
   総合評価:★★★★(8点)
 

くるみに風早が好きなので協力してほしいと言われた爽子。風早はとくべつなので手伝うことはできないと断った爽子。「とくべつ」の気持ちをなぜ風早に抱くのか…? 体育祭の中、爽子は「とくべつ」の理由を確かめようとしていく。

簡潔完結感想文

  • くるみの企みも爽子には柳に風。焦るくるみは再び犯行を重ねますが…。
  • 名探偵あやね。証拠を積み重ねくるみを追い詰める準備をしています。
  • くるみと爽子は犯人と被害者だった。真相を知った爽子がとる行動は…。


倒叙ミステリのように犯人が先に分かっているうえで、どうやって犯人が特定されるかが読みどころの4巻。


『前巻』から敵対心を隠し持ちながら爽子に近づいてきた同級生・くるみ。
彼女は中学時代からの数年、風早をずっと好きで、自分の好意を伝えない代わりに風早に彼女が出来ないようずっと目を光らせてきた。

そんな中、高校最初の夏休み辺りからくるみの視界に入ってきたのは黒沼爽子という陰気で自分よりも風早に不似合いな同級生。
何かにつけて風早と爽子の間に入り、その接近を邪魔してきたくるみだが、空気を読まない爽子に痺れを切らし、遂には風早への好意を爽子に打ち明けてまで爽子をコントロールしようとするが…。


4巻のメイン人物のくるみちゃん。
どうにも彼女のこと嫌いになれないんですよね。
そこに風早への純粋な好意があるからでしょうか。
私にはそんな能力も豪胆さもないので、風早を協定によって共有化し、自分も得をしないが誰かに得をされない世界を構築できる能力は尊敬すらしてしまう。

何よりも魂胆があるにしても「爽子ちゃん」と呼び続けるくるみを悪くは思えない。
猫を被ったまま「貞子ちゃん」と接近し、笑顔の裏でその陰気さを小馬鹿にし続けることも出来たはず。
これはやっぱり自分の名前・呼び方に執着があるくるみだからでしょうか。


とは言うものの、『2巻』で爽子が大変な目にあったトイレ事変もくるみが原因といえるので、マイナスの要素も大きいですが。
それでも噂の発生源と過激派の実行犯では罪の大きさはやっぱり違うかな。
この問題を学校の社会の授業の教材として、この場合のくるみと過激派女子の罪状や判決を考えて裁判を学んでみるのも楽しいかもしれない。
私なら恋心ゆえの情状酌量の余地ありって感じですかね。
まぁ爽子の立場になったら大変ですが。


その当人の爽子は真相を知った上でもくるみを責めたてたりせず、真相を心の中にしまう。
そんな爽子の行動に彼女の美徳が表れる。
それは多分、彼女の中に共感するものが多かったからだろう。
『前巻』の感想でも書きましたが、多分、くるみの工作があって初めて爽子の中の恋心にはっきりとした輪郭が生まれたのだと思う。

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友情にも超正攻法の爽子 は 生まれたての気持ちを くるみに伝える
一方で爽子と龍の熱愛疑惑が風早の中で生まれる。
爽子周辺の事に敏感になりすぎている風早。
龍が爽子の名前を憶えているかどうか言った「さわこ」という言葉に嫉妬が混じり、彼女を助けたナイトとなればその立場を羨む。
爽子の純粋さに比べてなかなか黒い感情に支配されている風早。
ブラックなのはこっちだ。

このままいけば風早ってくるみのように「爽子はみんなのもの協定」を提案しかねない。
彼氏にしたら束縛激しいかもしれないね。
「今日、龍と喋ってたね。本当は俺より好きなんでしょ」
「あいつにノート貸してたよね。そんなに好かれたい?」怖い…。


連載という事は承知しているけれど、龍への恋心を確認して終わらす若干ヘタレな風早はもどかしいを越して苛立つ。
この微妙な距離感が少女漫画の醍醐味で私も好きなのですが、なんでそんなこと聞くのか、という疑問を爽子が持たないのも流石に不自然。
今までは天然や無自覚だったが、今巻からは風早への恋愛感情を強く自覚しているのに。
果たしてこの両者とも告白しそうにない二人が告白するまであと何巻消費するのでしょうか。
4巻で早くも不自然さも感じるが、この後も全30巻という途方もない数字がそびえ立つ。


誤解という点ではくるみがピンを好きという誤解は、くるみに対する罰の意味もあって好きだ。
教師には思えないほど同級生のような言動して、たまに教師らしい事を言うピン。
龍と同じく良い所を持っていく人である。

誤解を払拭したのは龍で、彼の実直な物言いに胸を打ち抜かれた人も多いのでは。
特に今巻の風早のヘタレっぷりとは対照的で、私が爽子だったら人がいてもあんな風に断言できる性格を好きになっちゃうかもしれない。

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真綿で首を締める 矢野探偵の容疑者への尋問
矢野ちんは敵には回したくないですね。
爽子のためとはいえ、あそこまで追求するとは思いませんでした。
風早に執着しない点が名探偵の条件でしょうか。
矢野ちんには風早はいいおもちゃですが、矢野ちんが爽子が風早への好意を知ったらどうするのでしょう。
アシストするのかな、それとも黙って見守るのかな。
2人の恋の行方はもちろん、矢野・吉田・龍たちがどう関わるのかが気になります。