《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

君の思いが友達に届いて良かったね。その分、俺の好意は届きにくくなったけど。

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椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第2巻評価:★★★★☆(9点)
   総合評価:★★★★(8点)
 

席替えで風早の隣になった爽子。少しずつクラスの人と話せるようになってきた。なかでも矢野と吉田は親しくしてくれて、爽子は初めての幸せでいっぱい。しかし爽子が流したという矢野と吉田の悪い噂が立ちはじめ…!?

簡潔完結感想文

  • 矢野と吉田に悪い噂が立ち始めます。最初は全く信じなかった彼女たちですが…。
  • 矢野と吉田のために爽子が出来る事。だってあの人は、あの人は大切な人だから。
  • 風早に勇気をもらい噂の首謀者に誤解を解こうとする爽子。そこに現れたのは…。

悪い噂に翻弄される2巻。デマに流されるのは人の世の常ですね、と思う2020年の冬。

今巻は『君に届け』で一番辛く悲しい描写がある巻です。
今までも爽子は忌避される存在ではあったけれど、今回のようなイジメのような描写はなかった。

爽子は実はポジティブシンキングの人ですから、こんなに落ち込むことも珍しい。
願った分だけ失われた時の喪失感は大きい。願わなければ良かった、自分がいない方が周囲に害はないと考えてしまう爽子の間違った優しさに身が引き裂かれそうな気持になる。


出回る主な噂はヤンキーの吉田と淫乱な矢野というもの。
火のない所に煙は立たぬと同じで、悪い噂が立つときはそれなりの信じる根拠もあるもので、今回は矢野と吉田の外見が原因でしょうね。
確かに爽子の周囲にいるには目立ちすぎる存在感。
だからこそ噂に信憑性が出てしまうのでしょう。

また噂の発生源が爽子という情報も爽子の不気味な外見と存在感が根拠にあると思われる。
こうして考えると爽子はもちろん矢野も吉田も外見が故に誤解されてきた人たちなんですね。

最初は笑って否定していた矢野と吉田がなぜそれを信じるようになったのか、という過程もちゃんと描かれている。
爽子に直接言質を取れる機会があっても爽子からいい返事を聞けなかった2人。
もちろんそれは誤解なんだけど、やっぱり信じきれない描写がリアル。
この辺は、ある意味で結論から言わないまどろっこしい、または奥ゆかしい爽子の性格を2人がまだ十分に理解できていないという側面もあるでしょうね。

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親愛の情が 上手く届かなくて…。
しかし矢野が教師のピンの助言と図書館の怪談本の貸し出し記録を見て、吉田が龍の助言と爽子の手作りテスト対策ノートを見て、もう一度爽子を信じる過程が暗示的かつ分かりやすい筋道になっている。
友達をめぐる今巻では矢野も吉田もそれぞれに生きた人間として違う性格を持ち、そしてしっかりと思考してくれる点に感心する。
これだけ爽子に思慮してくれる存在はもう友達なのだ。


女同士の争いには口を出さない風早は賢明ですね。
風早は女性たち、爽子と矢野吉田が解決すべき問題だと思って我慢を重ねているみたいですが、ある意味で今回のトイレ騒動の原因は彼みたいだから、もし入っていったら問題が更に複雑化しただろう。

今回の噂の首謀者は風早をずっと好きだったらしき描写がある。
そしてもう一人暗躍する女の子もいるみたいだが、それは次巻以降に。
今回の爽子への制裁も『1巻』で登場した「風早はみんなのもの協定」の一部なんでしょうか。

爽子からの懸想ではなく風早が好きになったんだから潔く諦めなさいと思うけれど、学校の人気者が恋をすると嫉妬も渦巻くのか。
そこに風早が入り込めない世界というのがもどかしい。
未だ無自覚の初恋ですが成就するにはまた別の問題を解決しなければならないみたいだ。
気になったのは作中で爽子は夏休み初日の出来事を「公開失恋直後」と言っている点。
ここは少し疑問。失恋なのか…?

爽子と友達の間の事には直接首を突っ込まないが、それでもこれまで以上に風早は爽子の一番の支援者というスタンスが明確になっている
。風早をもさけて身を引こうとする爽子に「絶対だめ」と「さける事を許してくれない」。
風早こそ一番の親友だ。本人はその位置イヤだろうけど。
風早は自分がモテることに自覚的なのかは不明。
これまでは協定の影響で告白される場面も少なかったのだろうか。


紆余曲折や誤解はあったものの矢野と吉田と改めて友情を結んだ爽子。
彼女の「はじめてのともだち」という言葉に爽子自身はそうとは思わなくても、客観的にみるとやはり孤独なのだなと胸を打たれる思いだ。
『1巻』にも登場した爽子の幼なじみ的な同級生が再度登場しましたね。
まさか「貞子」の名付け親だったとは。
その事で罪悪感もあるみたいだけどアフターフォローもしなかった人らしい。
爽子も彼女のことを「ともだち」とは認識していないから矢野たちが初めてなわけで、なかなかシビアな世界だなぁと痛感する。
彼女は今回で「晴れて おやくごめん」と描かれているから最後の登場かな(なんと『29巻』に登場)。

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誤解を経て もう一度 爽子の横に並ぶ ともだち
龍は千鶴の噂を耳にした時の「千鶴(の過去)俺 知らねーわけねーもん」という言葉はなかなか重要な言葉。
その際に矢野の事は知らないからフォローしなかったり、その後も爽子の噂を論理的に否定する根拠を提示したりと龍はぶれない人間です。
日中いつも眠ってるのはプロフィールにある、好きなゲームが影響してるのかしら。
爽子とは気が合いそうな予感がするので、彼らの会話にも注目したい。
君に届け 2 (マーガレットコミックス)

君に届け 2 (マーガレットコミックス)

  • 作者:椎名 軽穂
  • 発売日: 2006/09/25
  • メディア: コミック