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少女漫画と小説の感想ブログです

チョコの中にある かなりのシタゴコロ 単純に 渡せないよ。

君に届け 7 (マーガレットコミックス)
椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第7巻評価:★★★★(8点)
 総合評価:★★★★(8点)
 

いろいろあった2学期も終わりに。大晦日に吉田・矢野と風早たちも誘って初詣にいくことに。大晦日は爽子の誕生日。吉田・矢野は、思いもかけぬサプライズプレゼントを準備していて…。爽子の忘れられない16歳の誕生日の始まりです。

簡潔完結感想文

  • 友達の計らいで大晦日は風早と二人きり。実はその日は爽子の誕生日。
  • 爽子は新年を風早と二人で迎えます。二人が引いたおみくじの結果は…。
  • 感謝の気持ちを込めてバレンタインチョコを渡す爽子。でも風早には…。


「激動の2学期」が終わる7巻。そして高校1年生も終わりそうな7巻。

忘れがちですが本書には1年の1学期の描写はほとんどないんですよね。
あるのは入学初日の風早と爽子の出会いのシーンと、連載前の読みきり短編の1学期の終業式前後のみ。
なのでこれまでの本編は2学期のお話のみ。
友達、好きな人、ライバルが出来た、そう考えると本当に「激動の2学期」だ。

今巻でバレンタインの頃まで話が進みますが、完結全30巻ですから、あと約2年間を23巻でお送りするのか。長いなー。
どうしても前半の密度と後半を比べちゃうだろうな―。

でも上記の通り本編開始は2学期から。
だとすると4-6ヵ月で7巻分なので、2年で28巻-42巻分になるのか。
お話のペースとしては変わってないんですね。
まぁ密度はまた別問題ですが。
新キャラっぽい人も顔を出したり、今後はどうなるのでしょうか。


吉田と矢野の協力によって風早と2人きりで大晦日の深夜から初詣に出かける爽子。
巻き込まれる龍。
爽子にとって大晦日は誕生日でもある特別な日。
この日に風早と会える事は本当に特別な思い出だ。
2人にそんな気はないかもしれないが、これは立派なデートですね。

爽子がピン所有の昔の写真に写る風早に感動するように、風早は爽子の小さい頃の話を聞きたがる。
興味津々じゃん、と矢野たちがいたら絶対にからかわれるが、爽子は退屈だと謙遜するだけでその好意はスルー。
本当に一人遊びが得意、というか一人でしか遊んでなかったんですね。
今の爽子に見慣れるとそれまでの彼女の過去を忘れそうになる。

爽子のメールアドレスの数字から誕生日を推察する風早ナイスです。
好きな人に誕生日おめでとうと言われる事はどんなに嬉しいでしょうか。
これだけで大満足の1日ですね。
風早も「短気をいましめて」、爽子のペースを乱さないようにしているから直接的な言葉を使わないのだろけど、髪型が変わって見違えた、化粧をして綺麗になってるのなら、そう伝えればよろしいのに。
自信がないんですかねー。
甘酸っぱくもじれったい、作品の良さは爆発しているのですが。

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一日が終わる前に 誕生日が終わる前に おめでとう。
クラスメイト達と行ったカラオケで爽子が何を歌うのか密かに興味があったのですが石原裕次郎みたいですね。
やっぱり流行歌よりもその辺りですよね。
あとは龍が何を歌うのかファンとしては気になる。
いつか出てこないかな。


バレンタイン回で垣間見えたのは、風早はまだまだ現役でモテるという事。
中学時代から好きだったくるみの描写はあったものの、高校生になって以降、人気者ではあるけれどモテている様子もなく、風早のモテ期は過ぎ去ったかと思っていた。
が当日は下駄箱にチョコがあり、廊下にチョコを持った女子生徒が来る、なかなかのモテっぷり。
そしてそれを ことごとく目撃してしまう爽子。
そういえばクラスメイトには風早の事を好きな子はいないんですかねー。
風早を観察してれば爽子へのバレバレの特別感などすぐに察知しちゃいそうだ。

そんな中、チョコを渡せないことが爽子の本気度の表れという逆転構造がいいですね。
好意がどんどん加速する中で軽はずみな行為と思われたくない思いから渡せなかった苦い思い出となる。
くるみのライバルとしての言動もさすが。爽子に振られたことをちゃんと報告しつつも耳の痛い忠告も忘れない。
くるみはもう風早に好意を示さないんですかね。
純情で奥手な二人に刺激を与えて欲しいところ。

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ともだち ではなく ライバルなので 応援する気はさらさらない。
ifの話になるが、バレンタインに爽子がチョコを渡せていたら風早は少し二人の仲を進展させていただろうか。『1巻』の読みきり短編にあったセリフ「おれ 期待しちゃってもいんだよね?」と言って爽子から好意を聞き出したかもしれない。
爽子もあの頃の自分じゃなく好意を自覚しているから、天然ボケには逃げられない。
赤面したらそれが答えになってしまう。
または爽子がチョコを渡してくれたら風早も我慢の限界で自分から「好きな人からチョコを貰うってこんなに嬉しんだ」と彼なりの勇気を見せたのかもしれない。
そうなったらこの巻で物語の第一部は終了しただろう。


矢野ちんは爽子周辺の環境保全に努めてますね。
風早との接触回数を増やしてあげながら変な噂が立たないように噂の発生防止と消火活動に余念がない。
矢野ちんは龍の恋心も見抜いているのでしょうか。

女性陣の陰謀に巻き込まれ風早に会えず、甘酒も飲めそうにない初詣から一足早く帰ろうとする龍に、千鶴をあてがったのはそういう意図があるのでしょうか。
頭が良くて周囲が見え過ぎると苦労しそうですね。
今回もクラスメイトの好奇の目を逸らすため誤解を恐れず身を挺してますもんね。

矢野ちんにはピンとのフラグがバンバン立っていますが、教師と生徒という危険な関係のにおいが全くしないのはピンの幼稚性のお陰か、矢野のキャバ嬢っぽさが原因か。
要するに差があまりないってことですね。