椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第5巻評価:★★★★(8点)
総合評価:★★★★(8点)
くるみとのやりとりを通じて、風早への気持ちが恋だとわかった爽子。くるみとは新たな関係に。お休みの日、矢野と吉田が爽子の家に遊びに来ることに。うっきうきで準備する爽子。恋愛話で盛り上がる。その頃風早と龍は散歩途中に出会い…。
簡潔完結感想文
- くるみの告白。ずっと出来なかった事が出来たのは爽子の存在でしょう。
- 爽子の休日。お友達を家に招いて、教師の部屋に行って、彼と一緒に帰る。
- 千鶴の恋。千鶴にずっと好きな人がいる事が判明します。その名は真田◇。
恋心に気づいた爽子のお話は一旦ここまで。物語は閑話になります。閑話休題はいつなの、の5巻。
自分の中の恋心に気づいた爽子。
それを一番最初に伝えるのが矢野や吉田ではなく、くるみという点が面白いですね。
彼女の前でしっかり「風早くんがすき」という爽子、そして負けじと「爽子ちゃんよりずっとすきだもん」というくるみ。
同じ人を好きになった者同士の奇妙な連帯感が生まれます。
ただ、くるみとはお友達にはなれなかった爽子。
友達ではなくライバル。
くるみの位置づけはそうみたい。
面白い関係性です。
意外だったのは、慎重派のくるみが風早に告白した事。
他の人を好きだと誤解されたくなかった気持ちもあるでしょうが、爽子との会話で素直になった事も大きいのではないか。
風早の答えは正直で、その後は優しくて、告白してよかったなと思わせてくれるものだ。
ただ風早に「好きな子がいる」と言わせちゃうと、いくら自明のことであっても物語としては終わりが見えてきちゃう。
作中ではずっと「下の名前」で呼ばれることが特別な事として扱われていますが、本書の1話目では風早は1話の中で2人の女性の下の名を読んでいる。
1人は最後のお願いとして、1人は気づかれない内にこっそりと。
この辺りが「すけべ」っぽいですよね。
面と向かっては言えないけど、本人に意識がないなら言えるって(笑)吉田と矢野が爽子の家にお呼ばれする回では両親、特に父親の反応が楽しいですね。
常識人っぽい父親からすると不良が2人も家に来た状況。
こんな2人を目の当たりにしたら娘がカツアゲされてないか心配になっちゃいますね。
その後両親が彼女たちを見直す場面が作られている所が優しくて、本当に上手な構成で感心する。
吉田は人との距離感の取り方、すぐに懐に入るようで、彼女もまた嘘のない人だから気持ちが良いですね。
矢野は見た目に反して常識人で、礼儀正しいのが魅力。
見た目とのギャップだけで見直しちゃうかも。
まさか彼女たちと恋バナが出来るようになるなんて…、こちらも親目線で爽子の成長を感じてしまいます。
風邪を引いた教師・ピンを見舞う爽子たち5人。
友達が出来てからというもの爽子はよく男性の部屋に入りますね。
あとは風早の部屋だけですね。
でもお互いに下心があるだけに一番ハードルが高そう。
その日はいつになるやら。
ピンと爽子の関係で言えば、ピンは爽子に霊的能力があると信じてますが、爽子が欲しがる霊感を持っているのは実はピンの方という構図が楽しいです。
神経の太い細いは霊感とは関係がなさそうですね。
相変わらず爽子が他の男に近づいたり、触れたりするのを嫌がる風早。
独占欲強すぎ。
もしやこれは矢野ちんの元カレと同じ属性かもしれませんね。
交際してみたらデートDV、別れようにもDV、爽子逃げて―。
中盤からは吉田千鶴(以下・千鶴)の恋。
いよいよ出ました友人の恋模様。
他の漫画に比べれば友人たちの描写が濃くて、キャラクタが確立してるので楽しめます。
ましてや私のお気に入りキャラ龍が当事者としているので真田兄弟との三角関係でその決着までは見届けなければと思う。
それでもやっぱり爽子と風早の描写は少なくなるし、巻数稼ぎにしか思えない部分もあります。
感想としてはそこを割り切っていきたいと思いますが。
友人の恋模様を挟むタイミングとしては最良の場所かもしれません。
爽子が恋に無頓着だと何も感じませんが、今の彼女は恋がどんなものか肌感覚で分かりますからね。
直球勝負ばかりだと思っていた龍も色々と計算してるんですね。
本人に伝えなきゃいけない事を伝えられないまま最悪の事態が起こるという展開を上手く利用している。
龍にとっては痛恨の失敗で、一番見たくない場面を見てしまったのだろう。
千鶴がその情報を龍から伝えられなかった原因に、龍への誕生日プレゼントを当日まで黙っておくため、浮ついた自分の口を塞ぐために龍を避けていた事情もなかなか面白い設定。
単純さは千鶴の良さでもあります。
龍は鈍感そうなのに風早の恋心を察知してるし、風早も千鶴と龍とその兄の関係を知っているみたいですね。
男たちの恋バナも見所かも⁉