《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

あの子にかける言葉は持ってない。言葉をかけるのは失礼だから。

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椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第11巻評価:★★★★(8点)
   総合評価:★★★★(8点)
 

風早と気持ちを確かめあえた爽子。次に思い浮かんだのは「ライバル」のくるみのこと。くるみはその頃、以前、爽子に絡んできた女子たちと!? あの日以来、風早が見ていた爽子の姿とは? そして風早と爽子は、はじめてのデートへでかける。

簡潔完結感想文

  • 交際の前の清算。くるみをはじめとした風早に好意を持った人との対話。
  • 君に届け side-風早。総集編と未公開映像満載の特典ディスクのような話。
  • 初デート。目標:手を繋ぐ15巻までに、キス20巻までに、って状態です。


良くも悪くも、これまでの貯金を使って借金を返したような清算の11巻。

幸福な『10巻』から一転、剣呑な雰囲気で幕を開ける。

1年生の時に爽子に焼きを入れた過激派女子との対決だ。
ただし主に対決するのは爽子の代理人のくるみ。
くるみは様々な立場を兼任している。
爽子に負けないぐらい風早の良い所を分かっている人、中学時代に裏工作して「風早協定」を作った人、風早に遠慮なく近づく爽子の黒い噂を流した人、爽子を一人の女性として認めている人、協定を自ら破って彼に告白した人。

その全ての立場から彼女は自分の過ちを受け止めながら、彼女たちの爽子への逆恨みをたしなめる。
私たちの好きな風早は今やろうとしている全ての行為を嫌うはずだ、と。
自分自身まで切り裂くような言葉を用いるくるみに胸が痛む。
でもそうしないと清算できないものが彼女にはあるのだ。

失恋した過激派を説得力ある言葉で沈める吉田。
彼女もまた身を引き裂くような思いをしているだろう。
そして彼女たちを包容するようになだめる矢野。

中盤で語られてますが、この加害者に向けたやさしさについて矢野は悩んでいたみたいですね。
頭の回転の速い矢野だからこその悩みかもしれない。
以前、探偵役を演じた矢野ちんの名探偵がゆえの悩みっぽい。
事件が起きると生き生きと解決するが、そこに実直さや情がないと悩む。
でも波風立てないのもそれもやさしさじゃないかな。

これで女生徒たちが爽子に手を出すようなことは多分ない。
それに短気ですからね風早。
キレさせたら怖いよ(笑)
嫌がらせをした女子に見境な暴力をふるい風早停学処分なんて前代未聞の展開になったりしたら、風早が読者からも嫌われちゃうし。


屋上でのくるみとの直接対話は、対話だけど爽子の沈黙が正解という逆転の構図が良いですね。
いつも言葉が足りなくて誤解される爽子だけど、自分を美化するような、相手に遠慮するような言葉を用いないことが何よりも相手を慮っている証明となっている。
幸福に浮かれるだけでなく、色々と考えたことが窺えるワンシーンだ。
くるみも爽子も一層好きになる。

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優越感も罪悪感も持たない だって同じ気持ちだから。
そして、その対話を屋上の片隅で都合よく聞いている健人。
やっぱりクラスから排除されて「ぼっち」なのか…。
なんと健人は爽子のことすきの手前だったんですね。
意外! これは全く読み取れなかった。

でも寸前で思いとどまってよかった。
負け戦だったし、そうなるとありがちな当て馬役で退場させられるところだった。
急ではありますが、健人くんは転校しますって。まだまだ在校するみたいなので健人のこれからの活躍とこれまでの汚名が返上されるように祈ってます。
今のところただの邪魔ものですからね。

そして驚いたのは龍いきなりの告白。
でもこれまでも繰り返されている場面らしく、千鶴の反応は龍の想定内のものらしい。
そうなると、よく自分をすきな男の前で普通にしてられるね千鶴さん。
もう空気みたいな存在なのか。気を長くして待て、龍!

3年生の夏は龍の高校野球編とかあるのかな。
龍ちゃん、千鶴を甲子園に連れてって!
連載時期がちょっと違うが北海道代表の座を巡って、河原和音さんの『青空エール』の山田君とのコラボ対決も見てみたかった。


「episode44.」はテレビ番組で言うと3月とか9月の改編期の蔵出し総集編という感じがする。
作者にとっても改編前の一区切りだったのでしょうか。
いよいよこの次から彼氏と彼女になってのお話ですからね。
あとは最終回チャンスだった気もします。

風早サイドから見た1年生1学期の黒沼。
1年生1学期の描写はなかったので新情報も満載で楽しく読める。
爽子のクラスで最初の自己紹介があれなら確かに黒い噂が立つのも分かる。
どこかの巻の巻末で描かれていた簡略地図を見てから気になってた、爽子と風早の家が割とご近所なのに出身中学別問題は、爽子が高校入学直前に引っ越してきたからという理由らしい。
なんだか後付けのにおいがしますが…。
節目を迎えるにあたっての過去の振り返りは面白かったけれど、もうこれ以上、ありがちな実は2人は幼稚園の頃一度会ってたのだ!運命だ!って番外編は止めて下さいね。嘘っぽくなりますんで。


そして彼氏彼女としての初デート。
手も繋ぎませんねー。
下心も、そこそこのスケベもあるというのに。
一つ一つがイベントになるなんでしょう。
これは本当に気長に待たないとダメかもしれませんね。

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交際開始で 以前よりも 赤面率上昇中。
冒頭でも言いましたが良くも悪くも貯金や借金を使い果たした感じがする。
これまでで引っ掛かっていた事、くるみのアフターフォローや、風早の誕生日発覚。5月のどこかの日。
そしてその遅れたプレゼントとして渡す手編みの帽子やバレンタインのチョコレート問題まで解決されてしまった。

もう二人に問題も過去の隠し事もない。
これはいよいよ新展開を待たざるを得ない状況だ。
しかしチョコってあの時のチョコですかね。
2月に作ったもの7月に食べて大丈夫なんでしょうか…。
悪い黒沼、俺ちょっと先帰るわと妙な足取りで帰路につく風早くんであった(笑)

君に届け 11 (マーガレットコミックス)

君に届け 11 (マーガレットコミックス)

  • 作者:椎名 軽穂
  • 発売日: 2010/06/11
  • メディア: コミック