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少女漫画と小説の感想ブログです

私の となりの席の子は こないの高校 かなりの偏向 ふたりの反響。

となりの怪物くん(1) (デザートコミックス)
ろびこ
となりの怪物くん(となりのかいぶつくん)
第1巻評価:★★★★(8点)
  総合評価:★★★★(8点)
 

となりの席の吉田くんは入学初日の流血事件以来、一度も学校に来ない…。自分の成績と将来にしか興味がなかった水谷雫は、たまたまプリントを届けたため、その吉田春に勝手に友達認定されてしまう。しかも、春の純粋さを知って優しくすると今度は告白までされちゃって…!?

簡潔完結感想文

  • 努力型天才の女の子が同級生の破天荒な男の子に出会い世界が一変します。
  • 同級生の男の子は真の天才です。好ましさと妬ましさ隣り合わせの2つの気持ち。
  • ハルの周囲にはなぜか人が集まります。私もその隣にいるので関わります。


「春が二階から落ちて」くるのは伊坂幸太郎さんの『重力ピエロ』の冒頭の一文だが、ハルが三階から落ちて逃亡するのが『となりの怪物くん』の3ページ目である。
本書はそんな奇行種・ハルと関わりを持ち始める堅物少女・雫の物語である。

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水谷雫と吉田春の初対面。まさかハルが自分の人生に深く関わるとは雫は想像すらしていないだろう。
本書を一言でいうと読者が登場人物たちに身体を慣らしていくような作品、ですかね。
初対面の彼らの印象は最悪だ。
怪物に堅物、ここに甘い恋の香りはしない。
でも確かな画力に導かれて読み進めれば、その内に彼らの魅力が見えてくる。
そして間違いなく惹かれる。

自分の延長線上にあるものではなくて、全く想定外の方向から惹かれる。
これが人と人の間によく起こる不思議な現象。
彼らは最初からこの作品の中に生きている。
だから少し共に時間を過ごせばいい。
自分のとなりに彼らを感じられる。
それでも問題児は問題児のままですが…。


正直言ってハルという男子は全く分からない。
学年トップで高校に入学した元登校拒否児。
性格は気まぐれで一般常識もないし他者に暴力だって振るう。
喧嘩も超強い。
その喧嘩が原因で入学早々停学処分をくらい、それから高校も行くのが怖くなったという。

色々と設定が盛り込まれ過ぎて手が付けられない。
でも悪い子でもなさそうだし、嘘のない言葉にドキッともするから少し惹かれる。
恵まれた容姿もその頭脳も喧嘩に強い所も性格が安定しない所も含めて定型外の彼の魅力なのだろう。

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何気ないことがキッカケで、となりに怪物くんを召喚してしまったみたいだ。
確かに彼が教室にいたら目が離せない。
そして分からないから分かりたいと思うのかもしれない。
これは多分、主人公の雫の気持ちと同じだ。
穏やかな日常を壊す害悪でありながら、自分とは違う物の見方をするハルは日常から退屈を奪っていく。
本当の天才・ハルが高校に通う意味はなんでしょうかね。
そこは今のところ疑問です。

ハルの天才の設定は雫に相反する2つの気持ちを持たせるため、またそのきっかけのために必要だったのかな。
明確に信じられる点数の上で自分の上をいき、ライバルでありながらも惹かれていく。
それでいて自分には生来欠けている動物への愛情を全身全霊で表現できる人。
このあたりに愛憎が入り混じりそうな予感のする今後が楽しみ。


主人公・雫は逆に分かりやすい設定だ。
テストの点数、将来は収入の多さが自分の価値だと信じて邁進する堅物な女の子。
無感情人間だとか服装がダサいとか既視感のあるキャラクタだが、地に足のついている彼女の性格は、恋愛で舞いあがっているだけの人よりは私は好感を持つ。

それにしてもこんなに目が死んでいる少女漫画も珍しい。
黒目がちの目というよりは虚無の目をしている。

2人が共存共栄していく様子が読み所だろうか。
また似ているようで似ていない2人が楽しい。
友人が欲しくてたまらないハルは不器用さ故に友人が出来ず、友人など人生の足枷にすぎないと言わんばかりの雫は自然にその輪を広げていく。
例え利用されている事を知っても、暴力を振るわれても、あまり根に持たずに再び近づいてくる登場人物たちがいいですね。

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たまに違う道を進むことで広がっていく世界がある。
夏目やササヤンといった今後の主要登場人物も1巻から登場している。
夏目ちゃんは良いキャラですよね。
かわいい容姿をしているが故に男は近づき女から嫌われてきた人。
そこでネットの世界で友人を探しているという設定。

しかも勘違いじゃなく本当にモテちゃう所が凄い。
彼女もまた社会と折り合いが付けられない人だ。
学年トップを走る主人公たちと成績の面では雲泥の差のアホの子ですが、彼女の明るさや前向きさが物語の起爆剤となる。
彼女はなぜ入学できたのでしょうか。
ササヤンは本書唯一といっていい常識人でしょうか。
完全に脇役の一人だと思っていたのでその後の活躍にはビックリ。


煎じ詰めるとありがちな物語にも思えるが、読書中はそう思わないのはやはり画風が独特で、この作者ならではの世界が広がっているからだろう。
根本的に絵が上手いと感心する。
ハルが衝動的な性格なので結果的に漫画に動きが出るのですが、多人数が登場したりバットを振ったりといったどのシーンでも絵が生き生きと動いている。
絵の事は詳しくないが多分デッサンとかそういう技術面がしっかりしてるのだろう。
こんなに人物を動かせるのだから今後は部活漫画とか描いて欲しい。