《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

主に少女漫画と小説の感想ブログです

希薄な存在感を利用して 消えたように移動する 黒(沼爽)子のサッカー。

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椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第3巻評価:★★★★(8点)
   総合評価:★★★★(8点)
 

土曜の夜にラーメンを食べに矢野、吉田と出かけた爽子。その後みんなで集まって話して嬉しい一時を過ごす。体育祭が近づくが、風早とはドキドキしてうまく話せなくなってしまった。そしてかわいいくるみが爽子に声をかけてきて…。

簡潔完結感想文

  • 爽子は初めて友達と過ごす週末を迎えます。そこに風早も現れてより笑顔に。
  • 爽子は同級生のくるみちゃんと急に仲良くなります。友達がまた増えそう。
  • 思い通りの行動しない爽子に胡桃沢梅の逆襲が始まります。でも爽子は…。


会話量・情報量が格段に増える3巻。

登場人物もほぼ出揃った感じで、各人のキャラクタの掘り下げや、あの人とこの人の会話などバリエーションが広がってますます楽しい。
そしていよいよ爽子の胸に恋心が去来する予感です。


苦しかった『前巻』とは違い、今回は笑顔の多い爽子。
彼女が笑うだけでこちらもホッとする、本当に福の神のような存在になっている。

今回は友達とクラスメイトと一緒に時間を過ごす描写が多い。
まず『前巻』のラストでも描かれていた放課後ラーメン。
前回は定休日で断念したが今回は土曜日の夜に再挑戦。
「ともだち」に呼びだされて皆でラーメンを食べることに。

そこは同級生・龍の実家のラーメン店で食後は2階の龍の部屋でみんなでお喋り。
けど初めてお邪魔する友達の部屋が男の子の部屋という事に何の違和感や動揺を示さない爽子は何なんだろう。
他の事に感動してたのか?

帰り道は途中参加の風早に送ってもらい忘れられない一日になる。
そういえば龍とも普通に会話してましたね。
爽子に男子が苦手な設定は乗っかってないんですよね。
異性として意識するよりも人類愛が強そうだ。

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焦らず ゆっくり 君に 想いが 届きますように。
その反面で爽子に妙に馴れ馴れしく近づいてくる新キャラ・くるみちゃん。
『1巻』から登場はしていましたが、今巻で本格始動します。
始動というよりも暗躍ですかね。
爽子に対して最初から警戒心を持たないなんて、さては敵対心を持っているな、という私の中の善悪チェック機能に気づいて楽しかった。
まず警戒心を持たせるのが普通の少女漫画ってやっぱり前代未聞だ。

自分の本心を隠したまま自分の思い通りに女子生徒を動かしてきたくるみ。
爽子に対しても誘導し行動を封じようとするが、ある意味で鈍感で天然な爽子はくるみの思い通りには動いてくれない。
苛立ったくるみは直接、風早への好意を爽子にぶつける。
その時、爽子は…。

くるみちゃんの深謀遠慮も実に人間臭くてそれほど嫌悪感はない。
他者を傷つけるのが目的じゃなくて自分の思い通りに行動させてるだけだからかな?
くるみと出身中学が同じの吉田によって「風早はみんなのもの協定」の成立時の様子が明らかになる。
これはくるみの策謀ですね。
この時のくるみ自身の考えとしては両想いが確定するぐらいに風早との仲を進展させる時間的猶予創出のために協定を望んだのだろうか。


今回思ったのは、風早ってもし女子だったら結構あざといんじゃないか説。
例えば下駄箱の影で爽子を見つけたので顔をひょいっと出しながら言う「くーろぬま!」。
ワザと「くー」と伸ばしている所があざとい。
その時の表情も己の顔のレベルを熟知している表情だ(邪推)。

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毎晩 鏡の前で顔の角度を研究してるんだぞ☆
今巻序盤の、風早は髪が伸びるのが早いから「すけべ」に違いないという話を扉越しで聞いた時もあざとい。
その後の風早のセリフを女子風に換言すれば「確かに私はエロいよ。でもちょっとだけだからね!」とツンデレ風味になる気がする。
うむ、あざとい。

風早は中学の頃、少なくとも数回は告白されているみたいだ(「協定」以前)。
モテの自覚少しはあるんですかねー。
くるみの好意にも鈍感そうだから自惚れてはないのかな?

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ともだち は 宣言して なるもんじゃない なってるんだよ
爽子自身はクルミを通して少しずつ風早への気持ちに気づき始めている。
爽子が自分の中の「引っ掛かり」に気づく箇所も読み所。

爽子の中で異性を下の名前で呼ぶのは特別な証しでくるみちゃんを「くるみ」と呼ぶ風早にショックを受けている。
また、かわいいとか綺麗とか容姿を気にし出すのは、誰かにそう見られたい人がいて初めて生まれる気持ちだ。
ちなみにくるみに憧れた爽子が自分の髪型を変えようと矢野たちに相談した時の、彼女たちの空想の中の爽子には、なぜか眉がないのが笑える。
いつもは前髪で隠れているだけなのに。眉がないからやさぐれて見えるのだ。

風早への牽制としてくるみが爽子に近づいているのに、窮地に追い込まれている構造が皮肉だ。
もし爽子がくるみと自分を比較するようなことがなければ、くるみはまだまだ幸せでいられたのかもしれない。
策士策に溺れるって感じですかね。


吉田と矢野は爽子の友達で決して後ろ盾ではないのですが、くるみの企みを見通す矢野には爽子を守ることを期待してしまう過保護な私です。
もちろんこれまで通り、風早や友達の助力があっても何事も爽子自身がやり遂げなければカタルシスは生まれないのですが。

本当に龍は友達としても恋愛の面でも良いポジションにいますね。
余計な事や嘘は言わないし、ボケ倒してるように見えるけど本人は真面目にやってるつもりなのがいい。
何気に人気キャラなのでは。

君に届け 3 (マーガレットコミックス)

君に届け 3 (マーガレットコミックス)

  • 作者:椎名 軽穂
  • 発売日: 2007/01/25
  • メディア: コミック