《漫画》宇宙へポーイ!《小説》

少女漫画と小説の感想ブログです

降り積もる雪も、待ち受ける困難も、自分の力を込めたスコップで掻き分けろ!

君に届け リマスター版 19 (マーガレットコミックスDIGITAL)
椎名 軽穂(しいな かるほ)
君に届け(きみにとどけ)
第19巻評価:★★★★(8点)
   総合評価:★★★★(8点)
 

クリスマスも終わり、むかえた年末。家の事で忙しい風早とはなかなか会えないけど、誕生日でもある大みそか、年越し直前に風早から電話が!? そして爽子の新しい1年が始まります!

簡潔完結感想文

  • 爽子の誕生日は大晦日。年が、歳が変わる前に君に会いに行くよ。
  • 初詣。1年前はみんなで来られた幸せ、今年は貴方といられる幸せ。
  • 進路指導。進路で子に気を遣われるのは親としては嬉しくないかも。


いよいよ第三部・進路編が始動です(勝手に命名)。19巻。

教師・ピンとの進路指導や、親との三者面談、いよいよ高校を卒業した後の未来を描いていく爽子たち。
こういう展開になると恋愛少女漫画というよりは群像劇ですよね。北幌高校青春白書です。

恋愛アドバイスも的確なピンに疑問を感じていたけど、教師としてのピンはやっぱり尊敬しちゃいますね。
私もこういう先生に出会いたかったと素直に思える。

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生徒のことを誰よりも見てくれている ピン。
爽子が実は将来の目標がなく「今を生きてた」というのは妙に納得できる。
ピンにも褒められていたけど、いつでもどこでも頑張ってきたんですよね。
勉学も、家の手伝いも、そば作りだって、いつだって一生懸命に生きている。
だから品行方正だし、成績優秀なのだ。
こうなりたい自分を夢想するではなく、こうありたい自分を目標に今を生きていたのだろう。
その結果である成績の良さは歯牙にもかけないのだ。典型的なガリ勉タイプとはその辺りが違う。


12月から1月の町は雪に覆われているので、出掛けたりせず2人で会話が出来るかと思いきや、その反対。
生家がスポーツ用品店の風早は、店主の父の言うままに雪掻きを命ぜられる日々。
冬休みもなかなか会えず、爽子の誕生日である大晦日紅白歌合戦が終わった頃にしか会えなかった。
深夜に黒沼家を訪れる風早。父親の恐怖政治が敷かれているとはいえ、なかなか迷惑な話。
理解ある爽子の両親のお陰ですね。家に上げないというのも風早の両親に気を遣っての爽子両親の配慮だったみたいだ。
これが逆なら確実に揉めてますよね。
風早父による「こんな非常識な娘とは金輪際、交際を認めない」という天の声によって引き裂かれる二人…。


なので、キス事変以来、あまり長く話し合っている描写がない。
今回、爽子が将来について悩みだしても、矢野や吉田に軽く話している描写はあるが、風早にはない。
風早の近くにいられる未来、遠くに離れる未来、そのどちらも可能性がありそうだ。
また爽子は自分の願望を訴えず、なかった事にしてしまいそうで怖い。
既に親への遠慮が見て取れる。この時の爽子母の反応も良いですよね。娘の性格を熟知して経済的に無理はないから、選択肢を無限に持ちなさいとちゃんと伝えている。でもきっと高校入学直前に購入した中古住宅のローンは残っているはず。親は食わねど高楊枝ですかね。
風早と向き合って話さなかったばっかりに、修旅からクリスマスまでの間のギクシャクした関係が再びという展開は見たくない。それは再放送だしね。


まぁ全体的なコミュニケーション不足の恐れはあるけど爽子と風早は恋愛の点では問題がないはず。
あの日以来、キスの描写もないですけど、大丈夫なはず…。


そんなロミジュリ手前の風早が爽子に選んだ誕生日プレゼントはネックレス。
狭い町なのでプレゼントに悩む姿を矢野と吉田に見られ、更に目ざとい矢野に爽子の首元に光るネックレスを発見されてまたもやイジられる風早。
矢野ちんみたいな千里眼の持ち主の前は、純情男の天敵ですよね。
距離の近すぎるシビアな姉、嫁をいびる小姑、シンデレラをイジメる継母、矢野ちんにピッタリです。

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1年目 ストラップ 2年目 ネックレス では3年目は…?
そんな矢野ちんとの交際直後からグイグイの健人。
しかし健人を囲むケントガールズは一体何が目的なんでしょうかね。
風早の時と違い、彼女となった矢野ちんに敵対心を見せないガールズたち。
健人と遊ぶことは女子として一軍の証明だったのでしょうか。謎です。
作品の目的としては軟派な遊びとの決裂、あやねへの真剣度の証明なんでしょうけど。
ただ、やっぱりその全てが矢野ちんにとって負担になりそうな予感がするなぁ。
健人は健人で喜んでおり、悪意のある男じゃないから、悲しい未来は見たくない。
ちなみに矢野ちんは頭の回転が速いだけでなく、成績も上々の設定なんですね。


一方で龍の告白に対する態度が決まらない千鶴。
龍とは兄弟のように一生つかず離れずそばにいるとは思っていたが、恋人として過ごすとは考えてなかった千鶴。
その話を久々に帰省した龍の兄で、そして千鶴の初恋の人だった徹に出来るほどの関係性であることが描かれている。
多分、千鶴は徹とは恋人になったり、結婚する未来を描いていたのだろう。
だからこそ龍は兄弟としてそばにいると思っていた。
その希望的な将来設計図があったからこそ、徹から弟の龍にその位置をスライドさせるのが難しいのかも。
千鶴や龍もまた進路に迷っている様子。あの町のあの距離感以外の二人は想像できないけれど、どのような道を選ぶのか。


作者の中では作中の北幌高校は北海道のどの辺りに位置してると想定しているのでしょうか。
一番近い四年制大学が電車で2時間、札幌はさらに遠いみたいですね。
北幌ってぐらいだから札幌の北なのかしら?
しかし巻末の他漫画への誘導広告が凄まじいですね。漫画に興味のある何十万の人が目を通すと思えば的確な広告なんでしょうけど、多すぎる。そのページ分、おまけ漫画やイラストにしてくれ!